聖地巡礼の旅、始まりまーって、えっ…?
私の荷物は既にアイテムボックスに入れてあったので準備完了。
ミリィも同じく、なので略式結婚を済ませたその足で王都の門へと向かったわ。
そしたら………
「んっ。もう来た。」
「思ったより早かったな?」
「えっ…?」
「あっ!パイセンだ!!」
「おう。先輩としてシャルロッテとキリカが来てやったぞ。」
門番の傍に聖騎士団長であるシャルロッテ様と副団長のキリカ様が立っていた!!
もしかして、お見送り…?
ミリィってそんなにお2人から可愛がられてたのね………
ミリィもそう思ったからか嬉しそうに2人に手を振った。
「見送りか?ありがとなパイセン♪」
しかし……?
「ん?何を言っているんだ?」
「んっ。キリカ達は、旅の仲間。」
「は?」
「えっ…?」
「お待たせいたしました。」
「来たか、エル。」
「んっ。コレであと一人。」
どういう事でしょうか…?
いつの間にか私とミリィはシャルロッテ様、キリカ様、エルーナ様に守られる様に囲まれていました。
そして更に、そんな私達の前に馬車が止まりました。
「お待たせしましたっ♪」
「ありがとうございますエトワールちゃん。」
「いえいえ♪エル姉様の為ならトワさん張り切っちゃいますよぉ☆」
そこに乗って馭者をしているのは聖教会所属の賢者様で私の従姉でもあるエトワール姉様………で…………
「「えぇぇぇぇっ!?」」
馬車は走り出し、私達は幌の中。
………けれど、恐らく賢者であるエトワール姉様が作成した馬車は幌の中が空間魔術で拡張されていて、まるで小屋の様なのよ……
調理場、ベッド、机や椅子、暖炉にソファー………ちょっとした宿泊施設ね。
そんな馬車を持っているなんて、流石エトワール姉様……それはともかくとして!!
ーもぅ!黙っているなんて酷いですよエルーナ様っ!!」
「あらあら♪ごめんなさいねリリアーナさん。」
私がエルーナ様に抗議すると、いつもの様に優しい笑顔で答えるエルーナ様……
たまに茶目っ気をだすのよね、このお方。
「パイセン達も酷いぞ!!」
「ははは!サプライズだよミリア。」
「んっ。今回の巡礼の旅。
偶然にも、キリカ達重鎮組の【定期巡礼】に、重なった。」
「あ、わたしも同じく定期巡礼を兼ねた物資配達ですぅ。賢者使いが荒くてやばいですね☆」
そんな偶然、あるのかしら…?
聖騎士団長様と副団長様、上級シスター様に賢者様………
そんな豪華メンバーと行く安全保障バッチリな聖地巡礼の旅……
まぁでも……
「じゃあ!旅先でもロッテパイセンが相手してくれんのか!?」
「おう、何時もみたいにミッチリ扱いてやるから覚悟しておけミリア。」
「よっしゃ!!ロッテパイセンが稽古つけてくれるなら日課も退屈せずに済みそうだ♪」
ミリィが楽しそうだから良いかな。
と思う私も実の所、姉の様に思っているエルーナ様や従姉であるエトワール姉様が居て嬉しいのは事実ですし。
「………それで喜ぶミリア、おかしい。」
「…聞こえてるぞ、キリカ。」
「ん。なんでもない、よ?シャロン。」
「聞こえるって言ったぞ?キリカ。」
「……………たしけて、エル。」
「キリカちゃんの自業自得では?とは言え、はいどうぞ♡」
「んぁぁぁ〜♡エルのおっぱい最高〜♪」
「…女しか居ないとは言え、節度が無いぞ。エル、キリカ。」
…この3人、相変わらず仲が良過ぎて胸焼けしそうだわ。
それとー
「リリア!困った事があれば姉さんになんでも言ってね!」
「ありがとう、エトワール姉様……ううん、私はもう平民だから、格式ばらずに“トワ姉さん”って呼ぶわね?」
「もちろんおっけーだよ!
あっは♪やっぱり今のリリアの方が素敵だね☆」
いつも私を気にかけてくれていたトワ姉さんも居るのは安心出来るわね。
態々馭者台から大声で言ってこなくても、とは思うけど。
っと、ミリィが私の方に寄りかかってきた……
「へへっ…♪楽しい旅になりそうだな!リリィ!」
「そうね。」
私は、そんなミリィにこちらからも寄りかかり、頬を合わせて笑いあったのだった……………
さて、贖罪の旅がそんなに快適な旅で良いのか、ですって?
良いのよ。だって私、何にも悪い事をしていないもの。
それに関してはエルーナ様が【知識神パスカル様】に問いかけて無罪認定してくれたし。
※この世界での知識神は裁判の神様でもある。
その為、聖教会では裁判での最終的な審判を知識神に委ねる。
※2知識神による審判は間違いがないので絶対。
神の目からは逃れられない為、犯罪の抑止にもなっている。
※3その為、知識神を介さない“裏裁判”も後を絶たないのが現状。
リリアーナが最初に処されたのも王太子と側近の独断による裏裁判だが、上級シスターであるエルーナが知り合いだった為、正しく裁定し直されて聖教会が横槍を入れる事が出来た稀有な例。
※4 こ の 世 界 に は 神 も 天 罰 も 実 在 す る 。
(ここ重要)
改めて言うけれど、私が身分を笠に着てアリスとかいう名前の元平民の子爵令嬢を虐めたですって?
幼馴染みで大好きな人でもあるミリィ自体が平民である、私が??
ハッ。馬鹿馬鹿しいわね。
そもそも私、あの子が貴族としてのマナーを尽く無視して勝手に振る舞うのを生徒代表として注意しただけよ。
確かに、自由気ままに振る舞う彼女は、好意的に見れば天真爛漫、って事になるのだろうけどね。
そんなの、マナーやルールを無視してもいい理由にはならないのよ。
そうね……分かりやすく例えれば、教会で礼拝をしていて、厳かで静寂な雰囲気の中、司祭様が説法を説いて下さっている時に1人だけ騒いでいる人がいたとして、その人をシスターとして注意したら騒いでいた本人とその周りに居た人達に
『ちょっと教会内で騒いだ位で注意してくるなんて横暴だ!お前に良心は無いのか!?シスターだからってここでは何言ってもいいのか!!恥知らずめ!!』
と言われる様なものよ?
その程度の人間なのよ、あの子と王太子達は。
ただ、見た目だけは儚げで愛らしいからそれで王太子と側近達を篭絡したのよね……
そして、婚約破棄騒動。
四大公爵家の人間が、誰も王太子の側近じゃ無かったのは幸か不幸か………
私だけが陛下命令で婚約者だった訳だし…………ハーレスト家のご令嬢は何故婚約者じゃないのか、と聞いたら『本人が相手は女の子じゃなきゃ嫌だと辞退した』かららしいけど………ハーレスト家のご令嬢、何してるのかしら。
まぁ、婚約破棄騒動の時にちゃっかりクール美人なお嫁さんを本人同意の上でハーレスト家に攫ってった訳だけど。
そもそも。
その割には平均年齢24歳の四大公爵家の嫡子全員が16歳のベイル王女付きだったのってどうなのかしら?
まぁ、そうなったのも全部あの王太子が『俺様に歯向かう側近なぞ要らん!!』って捨てたのをベイル王女が迎え入れたからなんだけど。
……………ハーレスト家のご令嬢すら拒絶したのは、何故?
彼女、マナーがなってるタイプの天真爛漫で可憐な美少女なのだけれど??
なんならあの子より可愛いと思うのだけれど。
……………まぁそもそも、陛下がそう決めたからなんの能力も無いおバカさんでも王太子だった訳で……独裁国家かしらね?この国。
今となっては然るべき破綻だったとしか言えないわ。
はぁ………………………【ベイル王女殿下】が【ベイル女王陛下】になる日は近いわね…………。




