第九話……宇宙海賊の依頼!?
艤装が完了したストロング号を宇宙港に移した後、私は星間ギルドに顔を出した。
そう、色々と買ってしまったのでお仕事をしなければならなかったのだ。
「すいません。割のいい仕事はありますか?」
私はギルドの受付に単刀直入に問うた。
「これなんかいかがでしょう?」
「……どれどれ?」
パネルで説明してもらったお仕事は、なんと宇宙海賊行為であった。
……うわぁ。
相手も足元見て来るなぁ。
どっちかというと海賊討伐したいのになぁ……。
確かにお金がない。
通信機の売り上げはしばらく入金されないのだ。
仕事を選んでいる場合では無かった。
「……でもこれ、私掠船みたいなものですよ」
ギルドの職員さんがさらに詳しく説明してくれる。
海賊行為の相手は同じレーム星系内、第六惑星にあるシャンプール政権。
シャンプール政権はレーム星系の完全支配を狙って、我が第四惑星の反政府組織を支援していた。
……つまり、その援助物資を狙って襲撃してくれという話であった。
ということは、この仕事のスポンサーは、第四惑星のジャグシー政権ということになるのだろう。
「あと、注意事項としては、もし捕まったとき。この仕事を当ギルドから請け負ったことを白状しないでください。もし、白状した場合は暗殺者を送らせていただきます!」
……げ、なんじゃそれ。
「ただ、報酬も破格となります。どうでしょうか?」
……うぁ、凄い金額。
提示された金額は0が沢山並んでいた。
成功したら首都のタワーマンションまるまる一棟のオーナーになれそうだった。
ギルド職員のお姉さんがニコニコ笑ってくる。
なんかとても悪魔的な笑みに感じる。
……どうしようかなぁ?
と迷っていると。
「やるポコ~♪」
と返事した奴が……、もちろんその声は我が船の整備長だった。
彼の右手にはアイスクリームが握られていた。
私が話し込んでいる間に、ギルド員に貰ったのだろう。
「ギルドとしても出来たらお願いしたいんです。もし受けて頂ければ、カードのランクもBになりますよ。失敗は許されませんけども……」
「わかりました」
私は結局受けることにした。
傭兵時分から、反政府組織は不倶戴天の敵なのだ。
それに、星間ギルドに恩を売ることも、ときには必要だとおもうのだ。
私は個室に案内され、詳しいデータを受け取る。
目標は宇宙空間をやって来る輸送船団。
それらを宇宙の塵にして欲しいとのことだった。
□□□□□
『管制からストロング号へ! 発進を許可する! 良き航海を!』
「了解!」
ストロング号はずんぐりとした形の飛行機型の宇宙船である。
よって離陸方法は、飛行機の様に飛行場を滑走して行う形式であった。
『離陸可能速度に達しました!』
「了解!」
私は船のAIに応え、手元の操縦桿を引き上げ、一気に高度をとる。
強力な加速Gで背中が強張り、目が少し霞む。
そして、眼下の街並みはどんどん小さくなり、厚い雲の上に出た。
さらに高度を上げると周りの大気も薄くなり、宇宙空間という暗い世界へと飛び出すのであった。
私は赤茶けた惑星に暫しの別れを告げ、作戦宙域へと向かうのであった。
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――離陸より八時間後。
「クマ船長は宇宙船の操縦が上手ポコね」
ポコリーヌが話しかけて来る。
そもそもこいつは、私の名前を忘れたのだろうか?
「……ああ、戦車兵になる前は、宇宙船の砲手とかをしていたんだ。一応なんでもできるつもりだよ」
「へぇ」
彼は安堵したのか、備え付けの非常食のウエハースをぼりぼりとやり始める。
……てか、非常食の意味わかっているのだろうか?
だが、私は任務中にそういうことは言わない。
だって、いつ死ぬか分からない。
死ぬ前に好きなだけ食べればいい。
私はそういう発想だった。
「あの小惑星がいい感じポコ?」
「ああ、そうだな。あれにしよう!」
俺達はストロング号を隠す場所を、とある小惑星の裏側に決めた。
そこは宇宙航路の近くであり、餌をとるためには絶好の場所だった。
しかし、レーム星系は片田舎の星系だ。
そうしょっちゅう宇宙船が通ることもなかったのである。
私は餌が来るまで二週間ほど、小惑星の陰でこっそりと爪を研いでいたのであった。
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『センサーにエネルギー反応!』
「……うん」
私は船のAIに起こされ、餌が来たのを確認した。
「敵が来たポコ?」
ポコリーヌも目を擦りながら起きてきた。
「……ああ、明かりを全て消せ」
「了解ポコ!」
……だが、レーダーに映る敵影は3隻もいた。
「……ちっ」
相手は美味しい500m級の中型輸送船だが、護衛に200m級の駆逐艦が二隻もついていた。
ストロング号は僅か50mしかない小型船だ。
戦闘になったら一瞬でやられてしまうだろう。
「こいつらはやり過ごす!」
『OK!』
船のAIにも手を出すなと念を押す。
そうして私達はコッソリと敵をやり過ごしたのだった。
「……でも、相手も馬鹿じゃないから、いつも護衛を連れているんじゃないポコ?」
ポコリーヌが怪訝な顔で聞いてきた。
きっと、彼は戦いたかったのだろう。
こういう逸る気持ちが、新兵を殺すのだ。
「ああ、そうだな。だがどんなときにも例外はある。のんびり待とう……」
私達は更に7日間待った時。
その機会はやってきたのだった。
「砲撃戦用意!」
『了解!』