第八話……『信頼と誠実のバルバロス社』
「星間ギルドまでお願いします!」
「あいよ」
私とポコは壊れかけたディーゼル車のタクシーに乗って、首都にあるギルドの支店を目指した。
首都の支店と言うとおかしく聞こえるかもしれないが、相手は多数の星系をまたにかける巨大商社。
レーム星系の第四惑星の首都などに本店があるわけがなかったのだ。
タクシーは町の中を走るが、茶色い砂ぼこりばかり立って、景色はあまり見えない。
見えるのは、赤茶けひび割れたコンクリートの古い建物ばかりだった。
「つきましたよ。お客さん」
「ありがとう」
私は料金と共に気休めのチップを払った。
懐が温かいおかげである。
人は貧すれば鈍す、出来るだけお金に余裕を持ちたいものだ。
「いらっしゃませ」
古ぼけたビルの一角に、ギルドはテナントとして在った。
フロアの天井にはレトロな扇風機が回り、ただ単に涼みに来ている人もいた。
私は、木と古ぼけたガラスで出来たカウンターに進み出る。
「ご用は何でしょうか?」
「武器屋の紹介を頼みたいのですが……」
そう言って私はギルドカードを受付に渡した。
このカードで、様々な私のデータが閲覧できると考えると結構怖いものである。
「この地図のところへ行ってください」
数分待って、手渡されたのはなんと紙の地図。
私は少し驚いたが、ポコリーヌを連れてギルドを出て、地図が指し示す建物へと向かったのだった。
30分ほど歩いただろうか。
そこは、先ほどのギルドとは違い、メンテナンスの行き届いた建物だった。
『信頼と誠実のバルバロス社』という大きな看板が掲げられている。
私は大きな回転ドアを抜け、受付けに地図を渡した。
「ジロー様ですね? 先ほどギルドから連絡がありました。どうぞこちらへ」
女性の方に勧められた席は、外の景色が一望できるソファー席だった。
金蔓だろうと思われたのだろうか。
心してかからねばならぬ。
「お待たせしました」
対応にやってきたのは、清楚なスーツを着た営業マン風の男だった。
「こちらをどうぞ!」
男は厚手のパンフレットを差し出してきた。
ギルドからの情報で、こちらの要望は伝わっている様だった。
「……うっ」
……高けぇ。
居並ぶ商品の価格群は目がくらくらするほどだ。
しかし、先日の通信機が売れれば買えないことはない。
「こちらの硬X線ビーム砲はどうでしょうか?」
男はサックリと、とても高価なビーム砲を提示してきた。
カタログスペックを見る。
……く、よだれが出るほど欲しい。
が、大気中で使う時の減衰率がキツイ。
空気がある空間で使うとビーム砲は、エネルギーがいくらあっても足らないのだ。
「大気中でも使いたいので……」
「では此方の砲塔型レールガンは如何でしょうか?」
……う?
連装レールガンかっこいい。
レールガンは実弾兵器の為、エネルギー効率も良かった。
ポコリーヌに助言を求めようとしたが、彼は受付の女性が持ってきたショートケーキに夢中だ。
篭絡されおって、この役立たずめが。
「じゃあ、それください」
「有難うございます。それと防御シールドと対空機銃、それにVLSのセットは如何ですか?」
……ぬう。
この商売上手め。
相手は、あたかもハンバーガーのセットの如く、欲しいものをササっと勧めてきた。
「中古とか無いですか?」
私も食い下がった。
歴戦の元傭兵が、勧められるままに新品兵器ばかり買ったらカッコ悪いのだ。
「それだとメーカー保証が付きませんが……」
……なんだって?
この武器屋はメーカー保証までついてくるのか。
私は敗北を悟った。
「セットでお願いします!」
「畏まりました」
男は満面の笑みで請求書を渡してきた。
ぐはっ……、高いが、セット割引で40%も値引きしてくれていた。
私は渋々サインをした。
「あと、整備の関係のかたとお話してもいいですか?」
「ええ、構いませんよ」
私は兵器を買ったが、それぞれの細かい設定には、沢山の注文を付けた。
特に防御シールドの展開濃度や出力カーブなどの細かい設定を求めた。
私には沢山の戦場で経験してきた知識があったからだった。
翌日には、ストロング号に各種新品の装備が取り付けられた。
ちなみに、サービスでごくわずかにエネルギー反射塗装をしてもらう。
それは気分くらいに、敵のビーム兵器に強くなるはずであった。
「僕は何処に乗るポコ?」
「ここだよ」
私の席の隣に、可愛いチャイルドシートが据えられていた。
「カッコ悪いポコ!」
「だって他に部品がないって言われたんだもん」
クマ用は無かったが、操縦席にはかなり大きめの人間用シートを据えてもらった。
だが、タヌキ用は無かった。
よって人間の子供用のシートを取り付けたのだった。
「まぁ、これやるから我慢してくれ」
「わーい」
私はポコリーヌにチョコレートパフェを手渡した。
先日の武器屋で、タヌキ対策には甘いものが有効だと判断したためだ。
ストロング号の整備をある程度見た後。
大きめの金融機関へと出向く。
武器屋に払うお金を都合してもらうためだ。
ギルドからの情報が伝わっていた為、すんなり融資してもらうことが出来た。
ゼロが沢山、自分でも信じられない金額だ。
こんな大金、もう二度と見ることが無いかも知れない……。
私は思うとこがあって、さらに支払いの2割増しのお金も借りた。
私はそのお金を、元部下の遺族に送金したのだった。




