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第六話……ストロング号の購入

「おう! ジローだっけ? 今しがた修理が終わったとこだぞ!」


 宇宙船屋に顔を出すと、日に焼けた元気そうな親父が応じてくれた。


「もう飛べるんですか?」


「ああ、隔壁も完璧だ。俺様を信じろ!」


 ショーケースの宇宙船の外殻らしきものを叩き、親父は陽気に応じる。


「恩にきます」


「なに、金さえ払ってくれれば仕事はきちんとやるさ」


 親父に案内され、店から離れた倉庫に向かう。

 紛れもない私の船だ。

 だが、全長は50mあるかないかで、宇宙船としては最も小さいものに分類されるサイズだった。



「これが起動カードだ。あとで生体認証しておくんだぞ!」


「はい!」


 親父は私の肩を叩きどこかへ去っていった。


 私は宇宙船を見上げた。

 夢にまで見たマイシップ。

 ところどころに赤さびは見えるが、紛れもなく私の宝物だった。



□□□□□


 私は自分の宇宙船のロックを開く。


 プシュー。


 隔壁型エアロックが開き、私は宇宙船の中に入る。

 狭い通路を通り操縦席へと向かう。


 着ぐるみ型のクマである私の大きな頭が、狭い通路の壁を擦る。

 どうも私の頭のサイズにはあってない通路だった。

 いつか改良せねば……。


 私は操縦席に座り、各種操作パネルの点検をした。

 ……うん、問題はないな。


 ちなみにこの船は小さいのだが、居住区画は更に狭い。

 輸送タイプの宇宙船の為、ほとんどの容積が運搬用区画となっていたのだった。



「じゃあ、牽引頼む!」


『了解!』


 私の船は、親父の店の作業員が運転する牽引車両にひかれ、離陸用の広場まで運んでもらう。

 後は広場を滑走して、大空に羽ばたくだけであった。




□□□□□


「シグナル、オールグリーン。セーフティーロック解除。気圏用翼展開!」


 私は計器の類を確認。

 スロットルレバーを引き上げ、発進態勢をとる。


「GO!」


 誰に言うでもなく発進。

 猛烈な加速Gが、背中をシートに押し付ける。

 ……正直、この感覚は好きなのだ。


 十数秒を数えたころには、私の船は雲の上だった。

 後ろには濃いオレンジ色の排気煙。

 それはエルゴ機関特有の現象であった。



『船の名前は如何しますか?』


 雲の上を呑気に飛んでいたら、いきなり船のAIに話しかけられてビックリする私。

 ……そうだ、船の名前とか考えてなかった。

 なんにしよう?


「前の名前はなんだったの?」


 この船は中古船だ。

 きっと前の持ち主による名前があるはずだった。


『ストロング号です』


 ……ぉ?

 強そうな名前、モノが一杯運べそうだな。


「じゃあ、もうすこしストロング号でいくよ」


『有難うございます』


 相手は、旧型AIで無人格電脳のはずだが、なんだか喜んでもらった感じだ。

 これだと船名をなんだか変えにくいな。


 私はそんなことを思いつつ、惑星ジャグシーの上空を飛んでいたのだった。




□□□□□


「あ、あれだ!」


 先日、大統領と上空を飛んでいた時に、偶然に密林の中に見つけた産業遺跡。

 きっと私だけが見つけられたのは、このクリクリの黒目がちなクマのお目目だからだろう。

 いままで他の人に見つからなかったのだから。


「降下用意!」


『降下用意します!』


 私はAIに降下を指示。

 AIはその指示を忠実に実行した。


 ストロング号は巨大な推進用ノズルを地上に向けて逆噴射。

 ときおりの横風に、船はフラフラとしながら密林の中へと降下した。



『降下完了しました』


「了解!」


 私は安全ベルトを外し、通路を駆け、いそいで地上に降り立つ。

 そこは小さな湖を中心とした、砂漠に点在するような小さなオアシスだった。


「この辺かな?」


 私は草を刈りながら、遺跡を探した。

 ほどなくして、遺跡はそれなりの大きさを持った宇宙船であったため、すぐに見つかった。

 それはあちこち錆びていたが、なかなかに立派な船だった。



「……デカいな」


 私は独り言を言いながら、宇宙船の入り口を探す。

 30分くらい探した後だろうか、小さな扉が開いているのを確認した。


「よいしょっと」


 私は小さな窓から宇宙船に入り込む。

 通路を伝って船倉へ、きっとそこがお宝のありかだ。

 内部は最低限の電源も生きていた。


「ビンゴ!」


 船倉には沢山のコンテナが積まれており、中身を検めると、超極周波通信機が山のように詰まっていた。

 しかも、これらの品は全て新式だった。

 私のストロング号には、予算上旧式を積むのが精いっぱいだったのに。


 超極周波通信機とは、超光速航行より速く画像や音声データを伝えるシステム機器。

 非常に便利だが、機器自体が重くて大きく、大人の人間と同じくらいの容積があった。


「……ふむう」


 多分、通信機一台で3000万クレジットは堅い。

 今までの労働が馬鹿みたいに思えるほどのお宝の山だった。



「よいしょっと」


 内部から隔壁式エアロックを開け、通信機が入ったコンテナを運び出す。

 凡そ人間の力では無理だが、こちとら生体アンドロイド製の怪力クマさんだ。

 頑丈な短い脚でよちよちと歩き、とりあえず10個ほどストロング号の船倉に移したのだった。


「……ふう」


 一仕事終え、何か冷たいものが飲みたいと宇宙船内を探すと、大きな食糧庫を発見。

 巨大な冷蔵庫や、それに負けないくらいの大きさの冷凍庫がおかれていた。

 流石に冷蔵庫のものは食べられないが、冷凍庫の中身に関してはワンチャン可能性があった。


――ギギギ。

 近くにあったバールのようなもので冷凍庫をこじ開ける。


「……げ」


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― 新着の感想 ―
[一言] これからモフモフ伝説が!? その前に! 冷凍庫の中身、お弁当用の冷食ではないのは確実ですよね……。きっと。
[良い点] ジローさんも宇宙船ゲットかあ。 ここから銀河モフモフ伝説が始まるのかな? ここまでは順調ですね。 でも冷凍庫の中身が気になる……。
[一言] 遺跡(作中では宇宙船だけど)探検ってワクワクしますよね( ´∀` ) さてさて中身は……?
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