第十八話……ニャーゴ~♪
「助けて欲しいニャ―」
「うーん。どうしようかなぁ?」
命乞いをするニャーゴに困ったふりをする私。
「お金なら払うニャ―」
この惑星ジャグシーの法律。
悪いことに身代金制度がある。
どんな悪人でも、法外な身代金を払えば釈放されるのである。
それも皆、戦争で出費にあえぐ各惑星の政府のせいなのだが……。
「とりあえず、人間の方は引き渡してくるポコ」
電子手錠と電子首輪を嵌められた人間の海賊3名を、ポコリーヌがギルド員に引き渡す。
この電子なんとか、暴れると高電圧が流れる優れもの。
嵌められたら逃げることはほぼ不可能だ。
「お金を貰って来たポコ」
海賊狩りが海賊をギルドに引き渡してお金がもらえるのも、裏側で多額の身代金が動いているせいなのだ。
いくら捕まえてもお金次第で釈放される。
なんだか悪事に加担しているみたいだ。
「あんたも引き渡せばお金で逃げられるよな?」
「それはそういかないニャ。ニャ―は誇り高いニャ。捕まったなんて仲間に知れてら生きていけないニャ」
「……ほぉ。じゃあいっそ寝返るってのはどうだ?」
「クマさんの部下になるニャ?」
「そうそう」
そう言って、私は一枚の写真を見せた。
それは、港湾都市セレネースで建設中の養殖所の写真だった。
そこにはおいしそうなカツオが沢山映っていた。
「なるニャ! 頑張らせて頂くニャ!」
「但し、次裏切ったらだめだぞ」
「はいニャ。あとこの写真頂戴ニャ」
「ほいよ」
ニャ―ゴは写真を貰うと、いそいそとしまい外の車の方へ駆けていった。
「凶悪犯とか仲間にして大丈夫ポコ?」
ポコリーヌが心配そうな顔をする。
「……ああ。データによると、やんごとない方の飼っている金魚を食べてのお尋ねモノらしい。他の被害にも凶悪犯罪はない。多分大丈夫だろ?」
「そうポコか……」
ポコリーヌも納得したようで、車の方へと歩いていった。
「お客様、次回も期待しております!」
私はギルド員から新たなデータを貰う。
お尋ね者の海賊3人分のお金は、意外なことに三下クラスでは無く、そこそこ良いお金になったのだった。
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ギルドから車に乗って移動。
今回の運転手もレオンさんだ。
「クマの旦那。喋るタヌキの次は喋る猫ですか? へんなものを集めるのが趣味ですなぁ」
「……ああ、気にしないでくれ。私もクマだしな」
「ええ、お金さえもらえば気にしませんよ」
車は港湾都市セレネースの工場へと着き、私はドックの方へ顔を出した。
「あ、クマの旦那。おかえりなさい」
工員に出迎えられる。
「あの宇宙船使い物になりそうかな?」
あの宇宙船とはニャーゴの乗っていた船だ。
インテグラ号と共に、こっちへ曳航させていたのだ。
「機関室に一発食らってますが、丁度部品の余分があるので治りますぜ!」
「ああ良かった。ならインテグラ号にくっつけてくれ」
「……ぇ? またくっつけるんですかい? 少しお時間を頂きますけどいいですかね?」
「ああ、構わないよ」
エルゴ機関を治せる部品は貴重だ。
丁度予備の部品があって良かった。
その後、ニャーゴを連れて魚の養殖場を見学。
帰りに魚を買って、晩御飯は焼き魚にしたのであった。
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――二週間後。
「旦那ぁ~、船が完成しましたべ!」
「おう、ありがとう!」
トムさんに呼ばれて工場のドックへ。
ニャーゴの宇宙船をくっつけたインテグラ号は、いささか不格好になったが、より大きく多機能になった……、はず。
今回、船の大型化に伴ってバルバロス社から武器も購入した。
変わった武器としては、地上用の大型ドライビングアーマーと個人用のバトルスーツなど。
これからも海賊狩りをする予定なので、お金の都合はつくはずであった。
「毎度あり! ジロー様。今後ともごひいきに!」
「ありがとう」
お金のあるところに人は集まる。
私にお金や水があると聞き、最近はいつも千客万来だった。
特に多いのが水屋さんである。
「クマ様、当方の方へ水を売って頂けませんでしょうか?」
……名前間違ってないか?
「当方リッター当たりこれくらいをお支払いしております」
「わかりました。支払い事務はメリーさんの方でお願いします」
「毎度あり」
惑星にいる間に、水販売はもちろん、養殖施設を建て、鉄工所と発電所を再稼働。
他にも鉱山経営や水脈探査などの新規事業をやってみた。
……成果は、まぁイマイチだった。
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『エンジンスタンバイ。離陸開始します!』
再びの、インテグラ号での離陸。
今回はトムの発案で燃料節約のために、着脱式の補助ブースターを使う。
この補助ブースター、重力圏を抜け出すための初速を稼ぎだしてくれ、燃料が切れると本体と離れて地上へと落下する。
それを地上班が拾い上げて再利用するという仕組みだった。
『衛星軌道へと到達します』
……まぁ、宇宙船のAIに、ニャーゴやポコリーヌも手伝ってくれての離陸。
私のやることがどんどんなくなっていく。
今回の作戦目標も宇宙海賊狩りの予定だ。
さらに言えば、今回はニャーゴというナビゲーターもいる。
『長距離ワープします!』
前回より安易に、より安全に宇宙海賊を退治できるはずであった。