表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/20

第十四話……惑星ジャグシー艦隊司令官モルドフ

「……ふう」


 惑星ジャグシーの宇宙艦隊の現場責任者であるモルドフ提督は、旗艦の艦橋部で彼我の戦力差にため息をついた。

 そこに彼の参謀が口を挟む。


「提督、かの要塞が我々の味方をするはずです。そうなれば、そう落ち込む必要もないでしょう」


「君はあれがそんなに頼りになると思うのかね?」


 提督は不満げに参謀を見やる。


「わかりません。ですが、要塞を頼みにしろと言ってきたのは政府です。我々はそうれに従うしかありません」


「そうだな。だが我々も軍人だ。やることだけはやらねばならぬ……」


「はい」


 モルドフは要塞に対峙するシャンプール艦隊の後背を脅かすべく行動に出ることにした。

 今後の戦いの為に、少しでも敵艦隊を削っておく必要があったためだ。


 惑星ジャグシーの首都宇宙港に朝日が昇る頃。

 モルドフ率いる艦隊の麾下の艦艇は、各地の宇宙港及び基地から一斉に離陸。

 衛星軌道上に集結したのだった。



――その後。

 三度の短距離ワープの後。

 落伍なく星系外縁部に到達。

 さらに見事、予想会敵位置に敵艦隊の捕捉に成功したのだった。




□□□□□


「敵影発見! 方位B-62」


「了解!」


 モルドフ艦隊は小惑星帯に隠れたまま、最大望遠の距離で、惑星シャンプールの艦隊を捕捉していた。

 その距離は戦艦の最大射程までも程遠い。



「提督。攻撃態勢へと移りますか?」


「……いや、待て。ワシはあの要塞の全貌が知りたい。敵と要塞が抗戦するまで身を隠したままで様子を見よう」


 モルドフは知りたかった。

 オメガ社が政府から沢山の支援を受け取って作った要塞の全容を。

 それは普通の要塞を作るような金額だけではなかったのだ。


 多分、堅牢な要塞を作ると言って、オメガ社は政府からお金をだまし取ったのだ。

 そうであれば、この張りぼての要塞はすぐに陥落する。

 モルドフはそう見当をつけていたのだ。


 ……だがそうなれば、モルドフの艦隊も無事では済まされない。

 なぜなら、ほぼ無傷の状態のシャンプール艦隊と戦わねばならなかったからだ。



「敵の通信を傍受!」


「開戦する模様です!」


「よし! そのまま傍受を継続せよ!」


「了解!」


 モロゾフの目の前で要塞攻略戦は開始された。




□□□□□


 ――要塞テナジー。

 直径6kmの球体型要塞である。

 外殻は複合セラミック装甲及び、それの鏡面加工である。

 要塞上にレールを多数張り巡らし、対艦用の列車砲を多数配置していた。



『砲撃開始!』


 シャンプール艦隊は要塞に近づき、高出力のビーム砲を斉射。

 それに応じて要塞側も対艦用のビーム砲を撃ち返した。



『前衛ビーム艦の被害甚大』


『ビーム艦を装甲の厚い大型艦の後ろにさげろ!』


『了解!』


 最初の砲撃戦は要塞側が優勢だった。

 対艦列車砲の火力も秀逸だったが、それ以上に巧みに、この宙域に機雷原が構成されていたのだ。

 攻撃側は砲撃だけでなく、工兵隊を小型舟艇で発進させて、機雷原の撤去も行っていたのだ。


 当然ながらに工兵隊を狙う要塞側砲群。

 攻撃側は失血を強いられる時間が続いていた。



『Q-97番方面、機雷原処理完了!』


『よし、ミサイル艦の突入開始!』


 時間が経ち、一部機雷原が掃除されたことにより、短距離ながら破壊力の高いミサイル艦が前進。

 砲火に数を撃ち減らしながらに、要塞に肉薄した。



『ミサイル発射!』


『了解!』


 ミサイル艦は全長50mほどの小型艦だが、長さ30m超の大型ミサイル二基を中心に、短距離攻撃武装に特化した艦艇だった。

 主に要塞や鈍重な大型艦に対し高い攻撃力を発揮。

 近接攻撃に関しては戦艦をも凌ぐ打撃力だった。


 発射された多数のミサイル群が要塞表面に着弾。

 つぎつぎと爆発し、凄まじい爆風が要塞外殻や構造物を襲う。

 レールごと列車砲群は吹き飛び、外殻複合装甲がめくれ上がった。



『ん!?』


「ん!?」


 この疑問符は、攻撃側の士官だけでなく、遠くで見ていたモルドフのモノでもあった。


 要塞外殻の破孔から覗き見えたのは、要塞内部の構造物では無く、明るい茶色色をした細胞のような物体だった。

 その物体は、自ら外殻装甲を内側から破壊しながら這い出て来る。

 まさしく巨大で奇妙な生き物だった。


 要塞外殻から這い出てきた全容は、直径5kmの茶色の球体であり、無数の数キロに及ぶ触手を纏っていた。

 驚いた攻撃側の艦艇が散発的に砲撃するも、あまり利いた風がない。



「巨大生命体検知! 未だかつて見たい事のない兵器です!」


「……、な馬鹿な!?」


 モルドフは驚く。

 それ以上に驚いたのは、要塞攻略を企図していた惑星シャンプールの艦隊だった。


 無数の触手は、巨大な氷の塊を次々に吐き出し、攻撃側の艦艇に浴びせかけてきた。

 それに伴い、大型の球体本体もが、攻撃側の艦隊に急速に肉薄。

 そのまま体当たりを浴びせかけていった。



『退却だ! 全艦反転しろ!』


『了解!』


 堪らず攻撃側のシャンプール艦隊は多数の被害を出し、無秩序なままに退却していった。



「モルドフ提督。我々は如何しますか?」


 幸いなことにモルドフ率いる艦隊は、強大な生命体の探知外のようであった。

 巨大な生命体は元の位置へとゆっくりと戻っていく。


「我々も撤退せねばなるまい。このことを政府に報告だ」


「はっ! 全艦の進路方位を惑星ジャグシーへ、帰投を開始する!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 直径5キロで茶色の、触手うじゃうじゃな球体!? めっちゃキモい!! でもなんとなく、クマさんがあれと戦う気がしてなりません^^;
2023/03/24 12:33 退会済み
管理
[一言] 要塞っつうかネストだったのですか(;゜Д゜)
[一言] 巨大な生命体キターーー!!!!(大歓喜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ