表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

世界の終わり

作者: 黒部

世界の終わりがくるとニュースが言っている。

「そうか、俺も覚悟しなきゃなんないのか」

そんなことを言いながら、俺はテレビを消した。

そして、少し考えてから再び電源を入れる。

ちょうどその時だった。

『速報です』

アナウンサーの声とともに画面に映し出されたのは、街の中で起こる暴動の様子であった。

その様子に俺は息を飲む。

画面では人々が口々に何かを訴えていた。

しかし、何を言っているのかは分からない。

「おいおい……これってまさか?」

俺は嫌な予感を覚えた。

次の瞬間、アナウンサーの口から信じられない言葉が出たのだ。

「今、内閣と国会、全ての行政機関の解散が決定されました。国の首脳陣も民間人として、世界の終わりを迎えることになります。これが正しいのかどうか、我々国民も戸惑いしかありません。一体、このままこの国は、世界はどうなのってしまうのでしょうか?

」「はぁ!? 何言ってんだこのアナウンサー! ふざけんなよ!」

俺は思わずテレビのリモコンを叩きつけた。

壊れてしまったかもしれないが、今はそんなことは気にしていられなかった。

「こんな馬鹿なことがあってたまるか……」

俺が呆然としている間に、リモコンはいつもの位置に戻っていた。俺はそれを拾うと、再びテレビをつける。

『臨時ニュースをお伝えします。先ほど、総理大臣より発表がありましたように、本日正午をもって全政府機関の解散が決定しました。これにより、現在行われている閣議や各省庁での決定は全て無効となり、今後は天皇のみが最高決定機関となるようです。」アナウンサーの言葉を聞き、俺は頭が真っ白になる。

もうわけがわからなかった。

なぜ突然こうなったのか理解できなかった。

いや、本当は分かっていたが、認めたくはなかっただけなのだ。

「あー、ついに来ちまったか」

俺は頭を掻き、執事に連絡を取る。「はい、陛下」

「ああ、お前らには世話になったな。今まで本当にありがとう」

「いえ、私は陛下にお仕えできたことを誇りに思っています。どうかこれからも末永くよろしくお願い致します」

「おう、こっちこそ。じゃあ、おれはこれからこの国の象徴として最後の仕事をしてくる。またな」

「かしこまりました。それでは失礼いたします」

そう言うと、執事との通信は切れた。

それからしばらくすると、俺の元に政府の役人と思われる男たちが次々とやってきた。

彼らは俺に一通の手紙を差し出してきた。

「これはなんだ。お前たちは誰の使いだ?」

「申し訳ございません。詳しい話はできかねるのですが、我々は貴方様のことを信用しています。必ずや、貴方様ならば世界を救ってくれると。なので、この手紙をお渡しするように言われております。では、これで」

「ちょっと待て!」

俺が声をかけるが、彼らは振り返ることなく去っていった。

そして、誰もいなくなった部屋の中に俺は一人取り残されたのである。

「なんなんだよあいつらは……」

俺は手元に残された手紙を見る。

そこにはこう書かれていた。

『北千住駅で待つ』

「ここに行けばいいのか……」

俺はその手紙をポケットに入れると、外に出るために扉を開ける。

すると、そこに立っていた人物を見て驚いた。

「お前は……」

それは先程までテレビで見ていた女性総理大臣だったのだ。

彼女は俺の顔を見ると、ニヤリ

「わたし、総理をやめたわ。これで、一般人としてあなたと事態を収束するために自由に動けるようになった。」

彼女は悪戯っぽい笑顔を浮かべながらそう言った。

俺はその言葉を聞いてため息をつく、最愛の人には安全な場所にいて欲しいがなかなか叶わないものだ。

「さあ、行きましょう。ついていくわ」「わかった。でも、気をつけてくれよ」

彼女は先人を切って歩き出す。

向かう先は北千住駅である。そこで一体何が起こるというのか? 俺達は急ぎ足とタクシーでその場所に向かう。

「着いたぞ」

俺がそう告げると、目の前にあった光景を見て俺は目を見開いた。

駅の入り口には沢山の人々がいた。

老若男女、様々な人々が集まっている。しかし、その群衆のなかにいたって一眼でわかる見覚えるのある人物がにこり、とこちらに微笑んでいた。俺はその姿に見覚えがあった。

「父さん……」

そこにいたのは父さんであった。

俺は思わず駆け寄ろうとするが、それを彼女の手が止めた。

「待ちなさい。いまは父さんのことはいいでしょう?お家に帰れば一緒にお話しできるんだから」


「そ、そうだな……」

確かに、ここで立ち止まっている暇はない。

俺は改札を通り抜け、ホームへと降り立った。彼女とは改札の入り口で、別の件で口論となったので、ここで一旦別れることとした。

そして、手紙の差出人が来るのを待つ。

快速の電車が俺の前に止まった。中からジャージにスリッパでサングラスのスキンヘッド男がこちらに歩いてくる。「待たせたな」

「あんたが差出人の人か」

「ああ、俺の名は田中一郎だ。まあ、偽名だがな。とりあえず乗れ。目的地まではそこまで遠くないはずだ」

そう言って、男は運転席に乗り込むと電車を発進させた。

電車の中では、初対面にも関わらず会話が弾んだ。俺と田中は互いに質問をし合い、それに答えていた。

「ところで、あんたは何者なんだ?」

「俺かい?実はアメリカで世界の終わりを止める方法についての結論が出されたので、あなたに協力してもらうためにきたんだ」「なるほどね。それで、協力って具体的に何をすればいい?」

俺は窓の外を見ながらそう聞いた。

「まずは、この世界の成り立ちについて説明しよう。この地球が生まれた時の話だ。」「えっ!?」

俺は驚きの声をあげる。

「この星が誕生した時、そこには生命など存在しなかった。しかし、雷が鳴り響き、海ができた。やがて、気候が安定したころ。突然にある生き物が地球にいた。それは高度に高い知能を持ち世界を創造することができるものであった。その者は種を創造し、この星に解き放った」

「それがこの星の誕生か。神はいたってことか?」

「そうだ。人間は、動物の突然変異によって誕生したのではない。ある時に、神が創造しただけだ。そして、神は今この世界を一度終わらせようとしている。だれともなく世界の終わりの予言が流布して、実際にこの短期間でこれだけ世界が混乱している。具体的な方法はわからないが、もう間も無くのことであろう。」

そういうと、田中はタバコに火をつけた。

「じゃあ、俺たちはその終末を止めるためにどうすればいい?」

「神を撃つ。」

「はぁ?どういうことだ」

「世代交代だよ。神はもう長く生き過ぎた。この強行を止めるのは君に神を撃ってもらい、新たに世界の象徴として君臨してほしい。これは各国の総意なのだ。まだ、公にはされていない秘密なのだが、成功した暁には我々がこの新体制への改革を最大限にバックアップする」「そんなことが俺にできるのか?」

「可能だ。あなたの持つ血統だけが唯一神と対峙する力を持つ。世界の終わりを食い止めて欲しい」

「なにをするんだ」

「まずこの国で天に近い場所に行く。そこから神のいるところまで登っていく。そこで、あなたが神の心臓を撃ち抜くのだ」

「まじかよ……」

「さて、そろそろつくぞ」

「どこにだ?」

「スカイツリーだ」

電車が止まり、扉が開く。


俺たちは急ぎ足に展望台に向かうエレベータへ向かった。世界を終わらせないために俺が神に対峙するしかない。展望デッキを目指すため、チケットを買いエレベーターに乗り込み、屋上へと向かった。

「うわー!すごい!」

田中は子供のように喜んで、窓から見える東京の街並みを眺めている。

俺はその横で今日までの日々を思い起こしていた。この国のために、尽力してきたつもりであったがまだ満足のいくものではなかった。より良い国に、より良い世界にするためこの国難を乗り越えるしかない。

エレベータが止まり、扉が開く。その先には一人の男が窓を見つめながら立っていた。スーツ姿で小綺麗さを感じさせる男だ。その男はこちらに振り向き口を開いた。

「やあ、ここは実にいい眺めだ。人間たちの苦悶の姿がよく見える。君も一緒に見に来たのか?」

「こいつが神か?」俺は田中に問いかける。一見すると俺よりも若そうな男であるが、重圧感を感じさせる風格がある。

「ああ、おそらくな。NASAの調査では今日ここにいることが示されている」田中が答えた。

「ふむ、きみはなかなかに面白い力を持っているようだ。」

「なんの話だ?」俺は警戒しながら聞く。

「君は自分の力を理解できていないのだね。生まれながらにして、国を統治したり象徴となったりできるのにはそれなりの理由があるということさ。ただ、世界を統治し、象徴となる力がある僕とは比べ物にならないだろうがね。」

「その象徴が世界を終わらせようだなんてしているようじゃ、分不相応だったってことだろう。世代交代の時がきたようだね。神よ」俺は挑発するように言う。

「ふっ。世界の終焉を司どり、創造する。それも僕の意思一つでできる。これが神たる所以だ。そのために、君がまず障害になるようだね。さあ、神は一人で十分消えてもらおうか」

神がそう言った瞬間、田中が銃を取り出して神に向けて放った。弾丸は急所を突いたようで、神はその場に倒れこんだ。

「これで終わりか?呆気ないな」

俺がそう言い放つと、田中は首を縦に振った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ