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「仲間がいた〜!」
私の部屋でミーシャさんは縋るような眼差しでそう喜んでいた。
その口から出てくるあれやこれやの情報は、ミーシャさんの苦悩を感じさせた。ヒロインって辛いよ。
「絶対に家を継ぎたかったので、王太子殿下に言い寄られた時は本当にどうしようかと…」
「それで選んだのがヒュバードお兄様で大丈夫ですの?」
「あ、大丈夫です。最初は色々考えましたが、余所見さえしなければあの方溺愛気質のはずだと思い直しました。まぁ、元から宝物は閉じ込めたいタイプの人っぽいですけど、絶対浮気もないし」
一歩間違えたらヤンデレの男を「溺愛気質」と言い切れるのヒロインの強さだなぁ、と思います。
というか、愛情に絆されている…というやつでしょうか?
「それより、フィーネ様はどうしてクリストファー殿下とご婚約を?」
そう問われて顔が赤くなるのを感じる。
わくわくした顔をする彼女に「一緒に過ごすうちに…」と言うと微笑ましそうな顔をしていた。
「クリス様と過ごす未来を約束していただけたことは、心より幸せだと思います」
そう言いながら、指についた婚約の際に贈られた指輪を撫でる。クリス様の瞳の色の石を見てミーシャさんも惚気始めた。お兄様とは本当に上手くいっているようだ。
「そういえば、ミーシャ様は良かったのですか?」
「何がですか?」
「リオンハルト殿下の治療の件、他の方々の研究の成果とすることになったでしょう?」
「わたくしは構いません。ヒュバード様もそうした方がいいと言っておいででした。何か理由がお有りなのでしょう」
理由というか、陛下に目をつけられるとヤバいみたいなお父様の判断らしいのです。王家の影とかうちのに比べるとガバガバだから平気みたいな事を笑顔で仰っていたあたりお父様の万能感がやばいですわ。ラブですわ。永遠にお膝元で保護されていたい。
まぁ、何かわかりませんが最近陛下も体調が思わしくない、という情報もちらほら聞きますので個人的にはあまり気にしすぎることもないかしら、と思っていますけれど。
「そういえば、こちらの公爵家ではアルヴィン様だけが婚約者がいないと皆さま目の色を変えておられるらしいのですが」
「アルヴィンお兄様、わたくしに対する態度でおおよその令嬢を除外しているらしいのですわ。お父様がそれをお認めになっている以上、再選考にはもう少し時間がかかるかと思いますわ」
そんな話をしていると、扉が叩かれてお返事をする。
ヒュバードお兄様がそわそわしながら立っていた。
「ヒュバードお兄様」
少し引っ張って離れる。内緒話をする様に小さな声で言っておかなくてはいけない事を口に出した。
「お兄様の若干重いところを“溺愛気質”で済ませてくれる御令嬢はそう多くありませんわよ。嫌われてはいけませんよ」
私の声のトーンがガチだったからかお兄様は真面目な顔で頷いた。
なお、ミーシャさんは「兄妹仲が良いのですね」とにこにこしていた。何かあった時のためにお母様と直接連絡がとれるようにしておいた方がいいかしら。




