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サマーパーティー当日。
クリスの瞳の色を身に纏って彼を待つ。
寮まで迎えにきたクリスは「クリストファー殿下」として王子に相応しい衣装を纏っていた。その色が自分の瞳の色であることに顔が熱くなる。
私の姿を見つけたクリスはその表情を綻ばせて「フィー!」と私を呼んだ。
「綺麗だよ。よく似合ってる」
そう言って私の手に口付け、上目遣いで私を見てきた。狡い。自分が美少年とわかりきった行動である。その狡さすら愛しい。恋って怖いな、と少し思ってしまった。
咳払いの音が聞こえて振り向くと、レティシア様と共に立つクラウス殿下がいた。たまにエスコートをサボるという噂が出ていたけれど、今日はちゃんと参加するらしい。いつもして差し上げろ。
「クリス、お前も婚約者殿を迎えにきたのか?」
「ええ。僕の唯一の人の隣を渡すわけには参りませんしね」
「…随分とご執心だな」
「僕が妃にと望んで、頼み込んでようやく婚約していただけたのです。変わりない愛を捧ぐのは当然ではありませんか?」
そう言うクリスにクラウス殿下は苦笑して、頷いた。
レティシア様を見るといつもより若干落ち着いたドレスではあるが、どこかセクシーだ。そこまで露出はないのに。
よく見るとアクセサリーはクラウス殿下の瞳の色で、それがレティシア様にとてもよく似合っている。
「今日のレティシア様は一段と美しくいらっしゃいますね」
「ありがとう、フィン。殿下がわたくしの趣味をガン無視で選んだドレスやアクセサリーなのだけれど、なかなかどうしてセンスは良くていらっしゃるわ」
「仮にも王族である婚約者のセンスを疑っていたのかお前は」
あれ?
なんかいつも喧嘩してばかりのイメージだったけど、今日は仲良しだ。
何か思うところがあったのかなぁ。レティシア様もなんやかんや嬉しそうだし良かった。い、一応未来の義兄夫婦だもの!そして未来の王様と王妃様だもの。仲良しに越したことはないよね。
「ですが、やはり大きなリボンとかたくさんのフリルが好きですわ」
趣味には合わないと釘を刺されたクラウス殿下は「クリス、俺の気持ちもわかるだろう?」と疲れた声で言った。
「兄上も折れればいいのに」
「俺だっていつも自分好みの格好でいろとは思わん。だが、たまにはいいだろう」
「余計なお世話ですわ。だいたい、夜会くらいでしかああいうドレスは着れないのですから良いではありませんか」
そう言い合う二人だけれど、それはそれ。
政略結婚なので割り切ってはいるようだ。手を取り合って馬車へと乗り込んだ。王族だからって馬車で最後に入場とかどうなのか、とクラウス殿下も言ったらしいけれど、警備上の都合もあるから後で来いと言われてしまったらしい。
私もクリスに手を引かれて馬車へと乗り込む。
私たちが先に、クラウス殿下たちはその次に入場となるので、先に馬車から降りる。
クリスにエスコートされる私を見た生徒が驚いたように目を開いた。
会場に入ると、一瞬広間が静まり返った。
病弱なはずの第三王子クリストファーがグレイヴ公爵家の末娘をエスコートしている意味を勘づいた方もいるようだ。
そうでなくても、全身で愛しいと表現してくれているので、少なくともクリスが私を望んでいるということは伝わるだろう。
クリスに話しかけた令嬢が見下すように私に視線を向ける。そんな彼女に「今日はずっと彼女の側にいると決めていますので」と宣言して私の腰を抱く。すると、一瞬で顔を真っ赤にした彼女は「申し訳ございませんでした」と頭を下げて離れた。しっかりと私を睨んで。
「彼女、伯爵令嬢だったよね。君に敵意を剥き出しにして無事に済むと思っているのかな」
「なぜか、わたくしにならどんな対応をとっても構わないと思っている方がいるらしいですわ。普通に全部お父様に筒抜けですけれど」
人によっては青褪めた表情の家族に連れられて泣きながら謝りにくる時もある。自分で言うのも何ですが、上が手がかからなかった分、私が手がかかるのが嬉しいらしく可愛がられております。侮られているのは分かりますが、私の後ろにいるのは優秀な両親と姉兄。私は絡むと爆発する地雷みたいなものなので放っておいていただいた方が良いと思います。




