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バレンタイン→ホワイトデー

隣の席の彼女と、俺のバレンタイン。

@短編96


「ふふふ、バレンタインで告るぜぇ」


忘れ物を取りに来た俺は、隣の席の同級生の声を聞いて、思わず身を隠した。

明日はバレンタインデーか。

へぇ・・好きなやつ、いたんだ。誰だろ?


隣の席にいるからちょくちょく話をしているんだが、面白いやつだ。

誰に恋したんだろうなぁ。

俺はわざとドアをカタンと音を立て、話を中断させる。

教室に入ると、彼女と話をしていたであろう、もうひとり女の子がいた。


「おす」


俺が言うと隣の彼女も、


「めす」


と返事をする。

机から忘れた教科書を取り出しながら話し掛ける。


「まだ帰んねーの?」

「うん、そろそろ帰るよ〜」

「じゃあな」

「じゃあのー」

「じゃあ・・」


俺の声に隣の彼女は気さくに返事をした。一緒にいる女の子も小声で返す。




翌日。


ちょっと気になって隣の彼女をチラチラとみていた。

もう渡したのかな。それとも放課後かな。

なんて思っていたら、昨日隣の彼女と一緒にいた女の子が俺にチョコをくれた。

正直・・


なあんだ・・・この子に貰ってもなぁ・・


と思った。

俺を好きなんだってさ。

返事は少し待ってくれと言っておいた。



授業も終わり、帰りに隣の彼女がニヤッと笑った。


「ドウデシタカー」


ああ、これは知ってるな。

ちょっとイラッとしたので、


「付き合ってって言われた。彼女いないし、付き合ってみるかな」


と言った。ちょっと意地悪をしたくなったんだ。そしたら隣の彼女は首をこてんと右に傾け、


「良い子だから、泣かさないでよー」


なんて言って来た。くそ、可愛いなぁ・・・


「で、お前はどうだったんだ?」

「ん?」

「渡したのか?チョコ」


するとなんか複雑な顔をした。

笑ってるのか、泣きそうなのか。いや、これは泣きそうな顔だな。


「なんだ、その顔。ダメだったんかい」

「・・・まーねー。ほれ」


隣の彼女が手を俺の顔に突き出し、口に何かをねじ込んだ。


「貰ってもらえなかったんだー。一個あげる」


甘い。チョコだ。


「そりゃ・・残念だったなぁ」


もぐもぐ咀嚼しながら、俺はお悔やみの言葉を言うしか無い。

隣の彼女の失恋を、俺はどうしてだか・・ホッとしていた。



結局、俺はチョコをくれた女の子と付き合うこととなった。

断るつもりだったのだが、


「私の事を知ってから判断して。それでもダメなら諦めます。まずはお試しで1ヶ月・・」


こう言われたんだ。

まあそれも一理あるな、なんてぼんやりと思った。





今日はホワイトデーだ。

ああ、そろそろ1ヶ月になるな。『暫定』彼女と付き合って。

良い子ではあるが、やはり友人の枠から出ることがない。

LI●Eとかも面倒。

一緒に登下校も、話す事などない。

何しろ話が合わないし、話に付き合おうと思わない。

前いた彼女の時は、俺も好きだったから頑張って話を聞いたし合わせたけどな。

好きでもない子といるのは苦痛でしかなかった。

もう、面倒だった。

こうなることは薄々分かっていたんだ。

だけど、隣の子が『良い子だから、泣かさないでよー』と呪いをかけたから・・

その隣の彼女だけど、俺がこの子と付き合いだしてから遠慮しているのか俺を避けるようになってたし。

ああ、やっぱり俺、隣の彼女が好きなんだ。

なんで『付き合ってって言われた。彼女いないし、付き合ってみるかな』なんて言っちゃったのかな・・




「やっぱ無理」


放課後俺は、『暫定』彼女にきっぱり言った。

泣いているけど全然心に響かない。

1ヶ月のお試しに付き合ってやっただけでも感謝してほしい。

あの時俺がすればよかった選択肢は、隣の彼女にチョコを貰った?時に、


「じゃあ俺と付き合えば?」


と言うべきだったんだ。

まあ今更だが・・・やり直しは利く筈だ。

俺は足早にその場を離れ、その子を置き去りにして隣の彼女の元へと急ぐ。



「おす」

「めす」


教室には彼女以外誰もいない。


「誰か待ってたのか?」

「友達」

「俺の『暫定』彼女?」

「暫定って酷くない?」

「いいや、あいつの方が酷い。俺は1ヶ月も我慢を強いられたんだからな」

「え・・?」

「断ったのに『私をもっと知ってから判断して。1ヶ月付き合ってくれ』って言ったんだ。俺は十分に我慢し、付き合ってやった」

「そうだったの・・?」


隣の彼女に暫定のヤツはなんて言ったんだろう。

まあ、碌なことは言ってなさそうだな。

俺はカバンから新品のノートを取り出した。


「バレンタインのチョコのお返し」

「え?チョコ一個だよ?」

「このノートで・・交換日記でもしないか?」

「!」

「俺のことをもっと知ってほしい。まずは1ヶ月、どうだ?」


俺はニヤッと笑った。

そしたら隣の彼女は・・・ふにゃっと笑い、涙をポトっと零したんだ。




まあその後色々分かったんだが・・・


隣の・・いや、燐・・照れるな、まだ名前呼びは慣れない・・

燐がチョコを渡そうとしていた相手は・・俺でしたーーー。


あの時・・バレンタインデー前日、燐は誰に渡すかは内緒にしていた。

そしたら暫定(酷い呼び方だが仕方がないよな)が先に俺の名前を言い、『私も告白する』と宣言したそうだ。


こういう時、女って『先に言ったもん勝ち』『告白権、戴き!』『他の子は引っ込んでて』って感じになるよな。


俺のねーちゃんもそうだった。先に言ったからって、その彼を手に入れられるわけでもないんだけどねぇ・・

ねえちゃんは告白権を取った?女達に先を譲り、夜に意中の彼に『チョコあげたいんだけど』って電話をした。そしたらわざわざ取りに来てくれたんだ。それが今彼だ。男前で良い人です。

男からしたら先も後もあるかい、って事だ。

俺は推察するに・・・

暫定は燐が俺に告白することを知ってたんじゃないか?

で、邪魔をした。

1ヶ月の間に俺が好きになってくれると思っていた・・・図々しいな!

人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて・・・死ねとは言い過ぎだが、邪魔したかっただけかもな。

まあ、俺も意地悪だったし・・反省。




この時始めた交換日記だが、今7冊目になった。

LINEとかもいいけど、絵を描いたりして結構楽しく続けている。


「うっくん(俺の名前は稟・うくるというので)の絵って、画伯〜〜」

「上手い?」

「逆の意味ぃ〜〜。これ、ゾウ?」

「にわとりだけど・・・」

「4足ですらない〜〜!」


嬉しそうに笑う燐が可愛い、今日この頃だった。

次のバレンタインデーは、チョコをしっかり直接受け取るぜ。



短編だけでも90以上ある。笑う。

ここに投稿するようになって、早一年!これからもぼちぼち上げていきます〜。

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