9話 最弱の三人 ⑨
「魔王スライムだ・・・」
カガミはあまりの驚きに身体を強張らせていた。
「魔王スライムってなんだ?」
そこに気の抜けた感じでレイドが聞いてきた。
「え・・・えっと、A級ランクの魔物だけが持っている拳くらいの大きさの魔石の事を『魔王石』って言うんだけど、その魔王石を取り込んだスライムを魔王スライムって言うんだ」
レイドのおかげでカガミは落ち着きを取り戻した。
「えっ!それヤバくね?」
「魔王スライムの強さ自体はそうでもないよ。増殖力がすごくて厄介なだけでBランクの人の魔力で倒せるみたい。魔王スライムのレア度はS級なんだけどね」
「じゃあ今の俺達でどこまでやれるか挑戦してみようぜ!」
「私は構わないわ!3人の力を合わせてどこまでやれるのか気になるところだし!ヤバい時は逃げるだけ!!」
「じゃあみんなで魔王スライムを討伐だ!行くぞーー!!」
「「オオッーー!!!」」
最奥と思われていた壁をよく見てみると隠し扉があり、その扉を開けたら中は光かがやいていた。
そしてその先には結界が張られていて、今にも結界を壊す勢いのひときわ大きなスライムが姿を表した。
「この場所は一体何なんだ?」
「多分この上って位置的に王室管理室あたりなんじゃない?ってよく見たら結界が張られているし、その結界の中に魔王石いっぱい落ちてるね!!」
「王室管理室で下水道に落としたやつが溜まった感じなのかな?っていうか結界壊そうとしてるし、急がないと大変な事になるかも!」
「じゃあさっそくいくよーー!」
「火魔法・ファイア・全方位」
魔王スライムの周りをうごめくスライム達は燃え尽くしたが、魔王スライムにダメージを与える様子はなかった。
「全方位だと全然ダメみたいね。次は一点集中でいくわ」
タマミは魔力を溜め始めた。
「守りは俺に任せろ」
「ガードスキル・シールド」
レイドはタマミとカガミを守り始めた。
しかし、魔王スライムはどんどんスライムを量産し、辺りはスライムであふれかえり始めた。
「レイドさん、ガードばっかりだとダメだと思う。レイドさんはシールドバッシュでスライムを倒し続けて!」
「おいおいカガミ、いくらスライムでもガードなしだとダメージは喰らうぜ!」
「回復は僕に任せて!タマミさんの魔力供給のおかげで永続回復出来るからさ。名付けてゾンビ作戦!!」
「ゾンビ作戦か、その作戦に乗ったぜ!くらいやがれ、シールドバッシュラッシュ」
レイドはシールドバッシュを乱れ打ち、スライムはどんどん弾け飛んでいく。
「オラっ、くたばりやがれ!グハッ!!なんのこれしき!!オラっ!シールドバッシュ」
レイドは縦横無尽に駆け回りスライムを蹴散らしていく。
「回復魔法・ヒール」
カガミはひっそりとレイドを回復している。
(あれ?なんか僕だけやってる事地味じゃね)
「オラっ!オラっ!!オラっ!!!」
「回復魔法・ヒール」
カガミはひっそりとレイドを回復し続けるのであった。