38話 最弱の鍛治師 ⑥
僕達は火山の三合目に来ていた。
「ここまで来るとだいぶ暑いな。みんな体調悪くなったらすぐに言えよ」
珍しく心配するレイド。
「みんな体調は大丈夫?」
安定の気遣いを見せるカガミ。
「「「大丈夫だよ」」」
この時はまだレイドの異変に気づく者はだれもいなかった。
「もう少しでマグマ溜まりがある場所に到達するよ。そこにはマグマ貝を狙う凶暴なマグマヒトデがいるからね。マグマヒトデはマグマ貝が大好物だがマグマの熱はあまり得意ではないらしく、マグマにあまり入りたがらない。だから溶岩真珠の採取でマグマ貝を陸に上げた時にマグマヒトデは襲いかかってくる」
「そんなヤツは俺に任せておけ」
レイドは大口を叩くがすでに大量の汗をかいていた。
少し歩くとマグマがグツグツと煮たっている場所が見えてきた。
「見えてきたよ。マグマヒトデは何もしなければ人を襲う事はないからCランクの魔物になっているけど、強さ自体はBランクの強さを持っている。僕達がかなう相手ではないから防御し続けて溶岩真珠を採取出来たなら、すぐにマグマ貝をマグマヒトデに食べさせてやれば安全だからね。レイドさんは溶岩真珠を採取出来るまで踏ん張って下さい」
「俺に任せておけ」
「溶岩真珠の採取は鉱石の採取と一緒で魔力の扱いに慣れた人の方が品質の良いモノが取れる。ムーアさん採取お願いします」
「わかっただぁ」
「マグマヒトデの相手が無理そうだと思ったらすぐにマグマ貝をマグマヒトデに食べさせるからね。作戦名、命を大事に」
「「「「了解」」」」
僕は1つのマグマ貝をマグマの中から拾い上げた。
その瞬間、マグマヒトデが襲いかかってきた。
「任せろ」
ドンっ!!
レイドが激しく飛ばされてしまったため、カガミはすぐにマグマ貝をマグマヒトデに向かって投げつけた。マグマヒトデは投げつけられたマグマ貝をむさぼり食べ始める。
「レイドさん、大丈夫?」
「とりあえず怪我はない。あまりの威力だったため飛ばされただけだ。次は大丈夫だ」
「じゃあ次いくよ」
カガミはマグマ貝を拾い上げた。
マグマヒトデが襲いかかってくる。
「フンっ」
レイドはマグマヒトデに吹き飛ばされる事なく抑えこんだ。
「ムーアくん、これから言う通りに捌いてもらえるかな」
アイはムーアに指示を出し始めた。
「わかっただぁ」
ムーアはアイからマグマ貝の捌き方を教わった。
そしてムーアは教えもらった通り順調に捌いていってるように見えた。
「よし、まずは一個目の溶岩真珠が取れただぁ」
溶岩真珠の取れたマグマ貝をムーアは素早くマグマヒトデに向かって投げた。マグマヒトデはマグマ貝を食べ始める。
「60点」
アイは冷静に採取出来た溶岩真珠を採点した。
「え?」
戸惑うムーア。
「すまない。次はもう少し貝の口を開く時、滑らかに開けるようにしてくれないか?それだけで品質はもっと良くなる」
「わかっただぁ」
何個も何個も採取して品質は高くなってきたが、ほとんどが75点の溶岩真珠で80点の溶岩真珠は1つだけしか取れる事は出来なかった。
「80点の溶岩真珠であれば父の分は満足だ。今度はタマミくんの分の80点の溶岩真珠をもう一つ欲しいんだ。レイドくん、もう少し頑張ってもらえるか?」
「あ、あぁ、俺なら大丈夫だ」
大丈夫と言ってるもののレイドは汗だくでかなりの疲れを見せていた。
「ムーアくんはマグマヒトデに襲われるかもという恐怖心がわずかに魔力操作に影響を与えている」
「・・・わかっただぁ。オラは溶岩真珠の採取に集中するだぁ」
「そこまで言われたなら俺はマグマヒトデを完全に抑え込んでやるぜ」
カガミはマグマ貝を拾い上げた。
マグマヒトデもある程度マグマ貝を食べた事もあって少し満足をしていて襲いかかってくる力も弱くなっていた。
「よし!」
ムーアは最高の集中力を発揮して、無意識でファントムオーラを操り溶岩真珠を採取した。
「100点!!」
その言葉を聞いたムーアは素早くマグマ貝をマグマヒトデに投げつけた。
「フー、疲れた・・・」
レイドは今にも倒れそうになっていた。
「ようやく最高の溶岩真珠を取れたね。次はクリスタル採取だ」
僕達は次の目的地に向かい始めた。




