2話 最弱の三人 ②
僕は宿屋に帰って来ていた。
「ギルドを脱退したからにはこの街で暮らせるほど僕は強くないからな。王都に行けばスライムもたくさんいるって話もあるし、今日中に荷物をまとめて明日の朝一で出て行くとするか。馬車に乗れるほどお金もあるわけじゃないし、歩いてだと王都までは1週間はかかるから大変だよ」
〜〜〜
次の日
「今までお世話になりました」
僕は1か月間だったけどお世話になった宿屋の主人に挨拶をして、王都に向かう事にした。
〜〜〜
一方その頃、ランドとアリスはギルドのDランク試験を受けようとしていた。
「じゃあステータスを測るから、まずはランドさんから魔法の握力計を握ってね」
ギルドの受付のお姉さんはランドに魔法の握力計を渡した。
「フンっ!」
ランドはありったけの魔力を込めて魔法の握力計を握った。
「もともと俺達3人は冒険者養成所の初めての握力計で最高の潜在能力を示す魔力10を記録しているんだ。俺様の攻撃力にビビるなよ」
そう言ってランドは受付のお姉さんに魔法の握力計を渡したが、受付のお姉さんはポカンとした顔をしていた。
「50ね。目安としてはDランク試験は100欲しいところなんだけど・・・この程度の攻撃力だと試験のゴブリンも大変だと思うけど、大丈夫?」
「Cランクのスケルトンを一振りで5匹も倒せるんだから、余裕だろ!!」
「そこまで言うなら・・・スキルが強いのかしら。まあ実戦でわかる事よね」
「じゃあ次、アリスさんお願いします」
アリスも魔法の握力計を握ったが出た数値は50だった。
「じゃあゴブリンとの実戦始めますから、私に着いてきてください」
(この2人本当に強いのかしら・・・)
受付のお姉さんは不安を覚えながら、ゴブリンの住む森へランドとアリスを連れて行った。
森へ着いた3人は戦闘準備を始めた。
「じゃあまずは探知魔法かけるから、2人は私と『魔力共鳴』してちょうだい」
『魔力共鳴』、それはこの世界では魔物との戦いにおいては必須の戦闘方法であり、魔力共鳴する事によって探知魔法やバフ魔法などのサポート魔法を共有化できるようになるのだ。
「魔力共鳴」 「魔力共鳴」
2人は受付のお姉さんと魔力共鳴し始めた。
「探知魔法・サーチアイ」
受付のお姉さんは半径50メートルの範囲に魔物がいないか調べた。
「ちょうどいい感じに2体少し離れたところにいるわね。まずはランドさんからお願いします」
「わかりました」
ランドはゴブリンに斬りかかったが、あっさりと避けられた。
「あれ、おかしいな。ならばこれをくらえ」
「アタックスキル・スラッシュ」
ランドは魔力を込めた斬撃を飛ばしたが、これもあっさりと避けられた。
「な、なんで・・・」
「もう一度だ!」
ランドは斬りかかろうとしたが、ゴブリンの反撃を食らって吹き飛び気絶してしまった。
「やっぱり実力不足ね。もうこのままアリスさんの試験をやるからね」
受付のお姉さんは冷静に対処して、ランドに回復魔法をかけていた。
「は、はい!」
アリスは気絶したランドを尻目に慌てふためいて、魔法詠唱し始めた。
「火魔法・ファイア」
ほとばしる火炎がゴブリンに向かっていったが、ゴブリンは炎を斬り裂き、そのままアリスに向かって突進してきた。
「グぎゃー」
アリスはゴブリンの体当たりを食らって吹き飛んだ。
「アリスさん、まだ続けますか?」
「お、おわりにします」
その言葉を聞くや否や受付のお姉さんはゴブリンをファイアで一瞬の内に焼き殺した。
「これにてDランク試験を終わります。2人とも不合格です」