1話 最弱の三人
龍を司る女神リタ
人を助ける組織、ギルドは龍の紋章を掲げる。
騎士は剣の紋章を掲げ、魔法使いは太陽の紋章を掲げる。
そしてテイマーは月の紋章を掲げる。
月の紋章を掲げる僕の名前はカガミ、テイマーだけど使役対象は存在しない最弱のテイマー。
「本日を持ちまして僕はギルドを脱退いたします」
人に使われる事しか出来ない最弱のテイマー『人使いのカガミ』、そんな二つ名を持つ僕は本日を持ってギルドを脱退する事にした。
〜〜〜
話は1時間ほど前にさかのぼる。
「俺達は明日からBランクのパーティーに入る事になった。だからお前とパーティーと組むのは今日までだ」
幼馴染のランドとアリスは突然パーティーの解散を宣告してきた。
「ちょっと待ってよ、それじゃあ僕はこれからどうしたら・・・」
「幼馴染だからこの1か月間我慢してきたけど、何も使役しない!戦う事すらできない!やれる事は荷物を持つ事だけ!そんなお荷物な奴はもういらないのよ!」
アリスは怒りを抑える事が出来ず、声を荒げていた。
「アリスもそこまで言ってやるなよ。2人とも少し落ち着け!」
ランドはなだめるように冷静な対応をとっていた。
「カガミ、ギルドの方針で冒険者になって初めの1か月は初心者期間としてDランクには上がれない事になっているのは知っているよな」
「うん」
「だけど俺達2人はCランクの魔物すら一振りで5匹も倒してしまう。1か月間はお前も成長するかもって期待も込めて一緒に冒険していたがお前は一向に成長しなかった」
「ごめん」
「謝らなくていいよ。俺達は明日、個人Dランクの試験とCランクの試験を受けてBランクのパーティーに入る資格を取るつもりだ。カガミ、お前の実力ではDランクどころか個人では最弱の魔物のスライムもやっとの事で倒している。そんな奴とはもう一緒にやっていけないって事だ」
「そんな・・・」
「悪く思うなよ。お前の分まで俺達がしっかりと活躍してやるからな」
こうして幼馴染のランドとアリスは僕の目の前から去っていった。
「どうしよう・・・お供もいなくてスライムにも苦戦する僕をパーティーに入れてくれる人なんかいるわけないよ〜」
落ち込んでいる僕に追い討ちをかけるようにギルドの受付嬢が話しかけてきた。
「カガミさん、パーティーを組む事もできずスライムにも苦戦するようであればギルドを脱退する事をオススメいたします」
受付嬢はまるでゴミを見るような目で僕を見ている。
「どうせすぐにギルドの会費も払えなくなるんだから、滞納する前にやめろって言ってんだからとっととやめたらいいのではないのでしょうか」
受付嬢は面倒くさい仕事を増やされる前にとの思いもあり変な口調になっていた。
「わ、わかりました」
「本日を持ちまして僕はギルドを脱退いたします」
こうして僕はギルドを脱退して、フリーの冒険者としての道を歩む事となった。
ギルドから出た僕はふいに空を見上げたら、ギルドの龍の紋章が微笑んだ気がした。
「ん?・・・気のせいだね・・・宿屋に帰るか・・・」
こうして僕の最弱で最強伝説の幕が上がった。




