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ルピナスの咲く箱庭  作者: 三条 恵
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プロローグ1・高校生デビューはお預け

春。私は高校に進学し、新たな仲間と出会うことはそんなに無かった。

というのも、中高一貫の私立に通っているからなんだけどね。

私立桜森学園は、男子部と女子部、特殊科と普通科の合計4部に分かれている。受ける授業がちょっと違うだけで、あとはほとんど共学と同じ。

「えっとー…えっとー…」

市原だから早いはずなんだけど…。

うろうろと貼り出されているクラス分けを見る私。

「マリアちゃん、出席番号は特殊科在学生が先で普通科は後だよ。半分より後ろって去年先生からガイダンスあったんじゃないかな…?そうそう、私と同じでB組だったよ。」

「わあああああ華ちゃん!?!?び、びっくりした…。」

九条華ちゃんは特殊科だけど私の親友。多分、私がこうなることを見越して待っていてくれたんだろうな。

「ていうか、宿題は?」

「あ。」

家の玄関にきちんと置いた宿題。そのあと…持って来てない。あああああああぁぁぁぁぁぁ…。

ガックリと肩を落とす私の頭をぽんぽんと撫でて、華ちゃんが先に歩き出した。

教室について、春休みの宿題を忘れましたと先生に言う。

「市原さん…。何回目ですか?中学生の時から本当に変わりませんね。」

「すいません。」

「悪気は無いでしょうし、きちんとやっているのは分かります。ただし、本当にそそっかしいです。」

「はい。」

「もう高校生なんですからね。明日持って来なさい。」

「は〜い…。」

「はいはハキハキと!」

「はい!」


入学式、新学期のガイダンス、それと特殊科についての説明。(うちの学校は完全分離を行わない変な学校で、高校から入ってきた人は戸惑うらしい。)

「特殊科、とは特殊能力保持者養成及び能力教育を目的としたクラスです。しかし、本校では《分離から学べるものは無い》として、普通科と特殊科は特殊能力の単元以外は合同で行います。そして、教師側も特殊科を贔屓する事も、普通科を贔屓することもありません。高校生がよく起こす愚かしい事件はこの学校では『能力の暴発』とはならず、『能力の不当行使』となるのでくれぐれも注意して下さい。退学の恐れもあります。」

「えっ…マジかよ…。」

「マジな暴発したらどーすんの?」

ぼそぼそと特殊科の生徒が会話する。

「まあ、さっきのは半分脅しです。ただ、厳格な調査が入りますからね。」

「ねえ、市原ちゃん去年調査受けたよね?何したの?」

「うーんと…。素手で強化ガラス破っちゃって。怪我もしてなくて。結論としては『馬鹿力と幸運』だった…はず。弁償もさせられたよ。」

後ろの子と私の話を聞いていた先生が頭を抱える。

「さて、それでは特殊科の生徒は身体検査です。普通科の生徒は帰ってもいいですよ。」

脱兎の如く消える男子達と、話し出す女子。

「華ちゃん、終わるまで待ってるからね〜」

「今日の検査エレメント量のチェックと軽い実技だから20分以内には帰ってこれるかなぁ。あ、鞄におにぎり入れてあるから食べていいよ。」

「やったぁ!」

「じゃあ、ちょっと待っててね。」

「うん!」

華ちゃんが教室を出て行く。入れ替わるように、私の後ろから声が聞こえた。

「お前、ヒマ?」

「…えっと…。忙しいです。」

「ちっ」

あ、舌打ちされた。

「あー…。あたしは神楽坂桜。女子バスケ部の副部長だ。」

「バスケ部!」

「お前急に態度変えんのかよ!?1年からのエースなんだろ?高校の部活も入るか?」

「はいっ!」

「何部だ?」

「バスケ部です!」

「そうかそうか!」

頭をわしゃわしゃと撫でられる。犬じゃないよぉ。

「んじゃ、これ書いてくれ!」

「はーい!」

入部届けに必要事項を書き込む。

「マリア…ハーフか?」

「お母さんがドイツ人です!お兄ちゃんは見た目もお母さん似なんですけど、私はお父さん似で…。」

「へ〜。よし、早速練習するか!」

「嫌ですけど…。…ひょわ!?」

「式神、こいつ体育館に連れてくから手伝ってくれ。」

「わー!?わああああ!?紙がいっぱい動いたああああああああ!?」

「式神つってあたしの手下だ。」

「ぎゃー!!力強っ!?誰かあああああああ誘拐されるうううううううう!!」

「先輩、何してるんですか。」

「華じゃん!おっひさ〜!」

「いや、あの、私の友達返してください。今からスタバ行くんです。」

「可愛くねえ後輩だな〜。ん、式神、放してやれ。」

地面に放り投げられる私。なんだこの式神ひどい。

「マリア、明日から練習来いよ!じゃーな、華!」

「さようなら!」

「さよなら。」

華ちゃんがぷんぷんしているので、私はもらったおにぎりを半分に割る。

「食べる?」

「それはいいかな…。マリア、あの人悪い人じゃないけど強引だから気をつけてね?」

「う、うん…。」

「あと普通の式神は水ぶっかけたら壊れるから。時々変な式神使うけど普段は紙だから。」

「うん!」

よし、今度からお水常備しよ。

「はぁ…。じゃあ、スタバいこっか。」

「うん!」


こうして、ごく普通の私の普通の高校生活は幕を開けた。でも、それは普通じゃない人を呼び寄せ、普通じゃない道に私を引きずり込んでいったのだった。

人物紹介

市原 マリア(いちはら まりあ)

日独ハーフの女子高生。バスケ部に入部した。能力者ではないが小柄な身体を活かしすばしっこく動き回る。勉強は要領がいいけど勉強しないので中の上ぐらい。小柄なくせによく食べる。好物は五平餅とフォンダンショコラと唐揚げ丼

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