病室の眠り
コバルト・ブルーの小瓶にうつる
輪郭のない獣のひとみ
ひとりの影もない三差路で
くちはてた標識が風になびいて音をたてる
見上げた空には満月ふたつ
どちらがボール紙だか見分けはつかない
帰ってきたのは肉体のかたまり
心はいまだ荒海のなか
カチリカチリと時は刻まれ
振り返れば形而上化のモヤの森
今横たわるのは己自身か
生ぬるい息吹は見知らぬ獣
はらりはらりと落ちる涙に
後悔のしょっぱさを求るな
なくした靴のことは忘れて
やさしき睡魔に身をゆだねんことを