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二十九話 「推しの幸せがオタクの幸せ! ディス イズ 世界平和!」


 翌日

 時計の針が、きっちり5時を指している現在。

 何時もより早く目を覚ました僕は、運動がてら散歩に出ていた。



 いや~いいですね。

 この朝の清んだ空気は、汚れきった僕の心を浄化してくれる様な心地良さを感じますね。

 イヤホンを付け、お気に入りのBLシチュエーションボイスを聴きながら、そんなことを考える。



 分岐点である創立記念パーティーは、今週の土曜日。

 残り約一週間をきった。

 推しカプを成立させる為に、その他キャラクターとのフラぎを折ってきた日々も、もうすぐ終わりを迎えることとになる。

 此処がゲームで世界であると分かったあの日から考えると、長い様で短かい時間だったな。

 


 まぁ、ゲーム中のイベントが無くなるだけで、僕の腐に囲まれたハッピーライフはこれからも続くんだけども!

 それでも、主人公を巡る恋のサバイバルバトルが終わってしまうことには変わりないので、やはり寂しい気持ちはなってしまう。




 人の気配が無い桜公園に着いた僕は、軽くストレッチをしてランニングを始める。

 最近、文化祭の準備で部活が無い為、こうして風を感じて走るのは久しぶりだ。

 少し肌寒い様な、優しい朝の風が気持ち良くて、自然と走るペースが上がってしまう。

 木々が揺れる音。

 小鳥の美しい歌声。

 そして、イヤホンから流れる受けの可愛らしい囀り。

 


 あぁ、今日も僕の耳は幸せのメロディーによって癒されています。

 何と素晴らしい一日の始まりか。



 穏やかな今だからこそ、こうして一人の時間を過ごしていたら、自分が本当に彼らとは違う、極々普通の高校生……ただのモブ何だって実感が湧いてくる。

 ゲームの主流キャラで、僕らモブとは違うハイスペックな彼らが、僕に対して普通に接してくれるから、偶に、本当に偶に、自分が彼らと立つ舞台が違うということを忘れそうになる時がある。





『 信念を持て、霧島凛! 己のモブ魂を誇り高く掲げるのだ! 』



 モブとしての誇りを忘れたわけじゃない。

 モブが居るから主役が輝ける! それは分かってる。

 スペックの違う彼らと僕では、根本的に背負っているモノも役割も違う。

 頭では理解しているのに、最近になって上手く心がついてきてくれない時がある。

 可笑しな話だ。




「考えるより感じろ! 推しが居る世界に感謝して、推しの為に身を削り、生きるのがオタクの指名!! 己の生き方に誇りを持て! 高く掲げろ! モブ魂!!」



 

 何て自分に活を入れるも、どうやったって一度胸中に掛かった靄が腫れることはない。

 今週末には念願の分岐点を迎え、とうとう待ちに待った千紘の運命の相手が決定する。

 そう、運命の日。

 オタクにとっては、自分の結婚式よりも大切で幸せな日。

 当日は晴れやかな気持ちで、最高の笑顔で迎えたい。

 千紘がたとえ、前野先生ではなく、今現在で最も可能性の高い不知火さんを選んだとしても。

 


『 推しの幸せがオタクの幸せ! ディス イズ 世界平和! 』


 

 はい、皆さんもリピートアフターミー! カモン!



『『 推しの幸せがオタクの幸せ! ディス イズ 世界平和! 』』




 それがオタクの義務であり、使命! 

 今更うじうじ悩んだって仕方ないし、僕が考えた所で何かが変わる訳でもない。

 推しのことになると情緒が可笑しくなり、こうやって悲観的な考え方に到達してしまう。

 これは、オタクの悪い所だとつくづく思う。

 僕のモブとしての生き方も、千紘の運命の選択も、もう変えることは出来ない。

 まぁ、僕のポジションについては最初から変えること不可能なんですけどね?

 って、そうじゃなくて!

 僕が言いたいのは、悲観的になるのは今日この時をもって終了ということです!

 残り一週間、

『 推しの幸せがオタクの幸せ! ディス イズ 世界平和! 』

 この魔法の言葉を胸に刻み、皆さんと共に運命の選択を待とうではありませんか!

 



「推しの披露宴は必ずこの目に……いや! 必ずや写真に収めるぞぉぉおお!!おぉぉぉおおお!!」





 朝の清んだ空気を胸一杯に吸い込み、腹から声を出す。

 大声を出せば、少しはこの気持ちも晴れるだろう何て思ってはいないけれど、消化しきれない気持ちも吹き飛ばす位の想いで、僕は雲一つない青空に向かって美声を響かせた。





###



「春樹く~ん、今日一緒に遊びに行こ?」

「ダメ~! 今日は私と約束してたんだから!」

「これ手作りのケーキ! 春樹君に食べて欲しくて作ってきたの!」

「……。 暑いから離れて」

「……。」



 

 今日は日直ということで、一足先に学校へと来た僕は、黒板の日付変えや机の整理整頓、花の水やり。

 日直の仕事を一通り終え、今は前野先生に先生に頼まれた教材を取りに準備室へと向かっていた。

 うちの学校は、少し変わった作りをしている。

 他でも珍しい五階建ての作りで、僕達生徒のクラス教室があるのは東校舎、その反対側の西校舎には理科室や家庭科室、部活動で使用される空き教室など世に言う ”特別教室” と呼ばれるものが集まっている。

 どうしてこんな作りにしたのかは疑問だが、分かりやすくて良いのではないかと僕は結構気に入っている。

 と言っても、数学準備室と生徒会室があるのは、三年生の教室がある階の一番奥側なんですけどね。

 正直、どうしてこの二部屋だけこっちの校舎にあるのかと疑問には思うが、ゲームの関係上、使用機会の多い東校舎に陣地を置く方が色々と都合が良かったのだろう。

 公式様も大変だな。 色々と……。



 話を戻そう! 僕達一年生の教室があるのは、東校舎の二階。

 数学準備室に行くには、此処から四階階まで上がり、三年生の教室の前を通り過ぎて行かなくてはならない。

 先輩の陣地に一人で足を踏み入れるのは、やはり緊張する。

 長い階段を見上げた僕は、大きく深呼吸をし、一歩、また一歩と上り始めた。

 そして、二年生の教室がある三階を過ぎ、三年生の教室がある四階が見えてきた、その時だった。

 この現場に遭遇したのは。




 まだ普通の生徒が登校するには早すぎる時間。

 なのに、

 わざわざ朝早くに登校し、己の教室にも行かず 『今日も一日頑張ろう』 という気持ちで登校してきた男子生徒達が必ず通るであろう階段で、イケメンが女をはべらせながら悠々自適に手すりに腰掛け、座っている。



 こんな事が許されて良いんですか?

 少し気の重い朝の登校時間に、こんな光景を見せて良いんですか?

 いや、良い訳がない!!

 何だ、あの羨ましすぎる空間は!!

 学園中でも有名なモデル女子、低身長可愛い系後輩、少し素朴だが他二人に引けを取らない整った顔の風紀委員。

 その中心に居る男……。




「海棠春樹……」




 階段下からでは、その中心に居る男の顔が見え無いが、先程聞こえた気だるげな声と隙間からみえるグレーの髪で分かる。

 これらのヒントが当てはまり、且つ、女性が群がる程のスペックを持った男は僕の知っている限り一人しかいない!!

 先日、僕の初めてを……僕のファーストキスを奪った男。

 海棠春樹だ!!



 何故このタイミングで春樹君とでくわすんだ!

 今一番会いたく無い人ナンバーワンの人間に!



 幸い、まだ向こうは僕の存在に気づいていない様子。

 僕は足音をたてない様、細心の注意をはらい、静かに、まるで伝説の忍者猿飛佐助にでもなったかの様な気持ちで歩き出す。

 息を止め、踵を翻し、盛り上がるパリピに背を向け階段をゆっくりと降りていく。



 そして、最後の一段を降りきり、ホッと胸を撫で下ろした。



 

 その時、




「凛、おはよう。」

「ヒュッ…??!!」



 突然耳元で聞こえた声に驚き、喉から聞いたことの無い音がした。

 慌てて振り返ると、着崩された制服姿の春樹君が優しい笑顔で僕を見下ろしている。

 


 え、ちょっと待ってください。

 さっきまで僕が居たこと気づいてませんでしたよね?

 だって、女子生徒の影に隠れてて見えてなかったんですから!

 それに、何時の間に後ろに?

 猿飛佐助の如く気配を消していた僕の背後に、瞬間移動してるって何事ですか?

 え、忍び超えて何ですか? スーパーサイヤ人ですか?



 

 驚きのあまり脈打つ心臓がドクドクととんでもない音を鳴らす中、思考だけは意外に冷静な様で、くだらない言葉が流れる様に出てくる。 

 そんな僕の前に立つ男はというと、何を考えているのか僕の髪を優しく優美な手つきで撫で始めた。


 


 この人は一体何を考えているんだろう。

 あのキス以来顔を合わせておらず、僕は凄く気まずさと居心地の悪さを感じているのに、その原因を作った張本人はというと、何も気にしていない様子で僕の前に現れ、声をかけ、挙句の果てには僕に触れて嬉しそうに笑っているではないか。




 可笑しいよな? この状況って普通じゃ無いよな?

 だって、許可も無く急にキスするって、犯罪ですよね?

 僕は許可してないんだから、犯罪ですよね?(二回目)

 え、僕の大切な……。

 た・い・せ・つ・な、ファーストキスを奪って、犯罪紛いの事をしたにも関わらず何だその態度は。

 気に入らない。 気に入らないぞ!!




「触らないで!」




 ーーパチンッ



 乾いた音が静かな廊下に響き、右手の甲がジンジンする。

 さっきまで僕の髪に触れていた春樹君の手は、行き場を無くし宙を舞う。

 目を見開いて唖然とした様子で僕を見ている春樹君。

 その表情を見てズキンッと心が痛んだ気がした……




「……もしかして、この前のこと怒ってる?」



  

 気がしただけでした。

 もしかしなくても怒ってますよ。 何を言っているんだ、コイツは!

 イケメンの憂いの帯びた表情に心が動かされそうになった自分に活を入れ、僕は春樹君を睨み上げ、口を開いた。




「怒らない訳ないでしょ? もう僕に話しかけないで下さい」

「……ごめん、凛。 謝るから……許して?」 

「謝って許されるなら警察はいらないんですよ。 許して欲しいなら、当分僕に近づかないで下さい」




 そう冷たく言い放った僕は、彼に背を向けて歩き出す。

 少しきつく言い過ぎただろうか? いや、でもあれくらい言わないときっと彼には分からない。

 僕は正しいことをしたのだ! そう自分を納得させつつ、準備室への歩みを進める。

 だが、誰も居ない廊下。

 通常なら僕の足音だけが聞こえてくるはず。

 なのに、

 今この廊下で聞こえてくる足音は二人分。

 

 これは……まさか!!




「さっきの僕の話聞いてましたか? 海棠先輩」




 振り返ると、案の定後ろを着いて来ている春樹君。

 その姿は、まるで捨てられそうになっている犬の様だ。



「凛……どうして、そんな他人行儀な話し方をするの? 俺が悪かったよ。ごめん」

「先輩に敬語を使うのは当然ですし、何度謝られても答えは同じなので。 それでは!」

「ま、待って!!」




 しつこく謝罪を述べてくるこの男から逃れようと勢いよく走り出した僕だったが、185cm以上ある人間の手足は想像していたよりも長く、ものの数秒で呆気なく捕まってしまう。

 

 


 何故だ! 僕だってそこそこ身長はある方なのに、どうしてこうも違うんだ! 

 あれか! モブであろうと、イケメンならどんな行動をとっても有利になるということか!

 クソッ!! 平凡な自分を恨みたい!!



 

 掴まれた腕から伝わってくる、他人の熱と微かな震え。

 落としていた視線を上げて春樹君の顔を見ると、不安に揺らぐ視線とぶつかった。



 

 どうしてそんな顔してるの……?




 予想外の表情に僕自身も言葉を無くす。




「凛、もう二度とあんな事しない! 必要以上に触れないし、凛の嫌がることは絶対しないって約束する! だから、背を向けないで……。 お願い」

「………。」




 何処か怯えた様子の春樹君。

 何故だか、僕の方が悪者になった気分にさせられるこの状況。

 人間、自分の予想をはるかに超える状況が出来上がると何もはっせなくなるんだと学んだ。

 


 理由は分からないが、此処まで必死に謝られているのに「嫌だ!」と啖呵をきれる程、僕の心は汚れていない。




「ハァ……次やったら許さないから」

「ッ!?……うん! ありがとう、凛!」

「ちょッ! 言った傍から抱きつかないでよ!」

「あ……ごめん…」



 謝りながら抱きしめた僕の体を放した春樹君は、当たり前の様に隣へと並ぶ。




「そう言えば、凛は何処に行くつもりだったの?」

「数学準備室。 前野先生に授業で使う教材を取ってくる様に頼まれたんだ」

「そうなんだ。 なら、俺も手伝うよ」

「え、いいよ。 一人で大丈夫」

「一人で持てないかもしれないし、着いて行く」



 そう言ってくれるのは嬉しい。

 だけど……。

 チラッと後ろを見ると、此方に睨みを利かせるハイエナ……間違った、女子達と目が合った。

 その瞬間、僕は悟った。

 そろそろ春樹君から放れないと、あのハイエナ達にかみ殺される。




「本当に大丈夫だから。 それじゃ、僕はこれで!!」

「凛?!」




 逃げるが如く、手伝うと言ってくれた春樹君の言葉を無下にし、僕はハイエナに生贄を献上して、一人、数学準備室へと逃げた。

 



###



 そんな朝の出来事から時間はあっという間に過ぎて行き、お昼休みを終え五時間目突入。

 学園祭間近のホームルームは、クラスの出しもの準備へとあてられていた。

 



「凛、こっち手伝って!」

「あーはいはーい」




 男は皆、女の奴隷と言わんばかりに飛び交う女子の声。

 それら全ては、何をすれば良いのか全く把握していない実行委員の僕を含めた、男子生徒への指示の声。

 女子達の血走った眼を見ると分かる。

 彼女たちがどれだけ本気なのかを。。。


 今回の記念パーティーは、毎年行われるものと学園祭とは規模が違う。

 何せ、此処らじゃ超有名なお金持ちの名門校との合同だ。

 故に、一番売り上げの高かったクラスに対してのご褒美も昨年とは比べ物にならない。


 一つ目は、優勝したクラスは来年の四月まで学食の食事何時、どれだけ食べても無料。

 これは、運動部に所属する我々男子生徒にとって最上級のご褒美と言っても過言ではない。

 学食の値段は、平均したら一食五百円と学生の小遣いからすると、少し痛い金額となっている。

 毎日食べる何て金持ちかバイトに励む帰宅部じゃない限り無理だ。

 だが! だが!! 

 今回、この戦いに勝利すれば腹を空かせながら四時間目の授業をのりきる必要も、部活前に家から持ってきたちょっと硬めのおにぎりを食べる必要もなくなる!

 何と喜ばしい事だろう!!


 そして二つ目は……好きな生徒と二人で記念写真が撮れるらしい。

 まぁ、女子の狙いは有無を言わせずこっちでしょうね。

 本命の相手と大きなイベント行事で想い出を形にできるのだ。

 これ程嬉しいことはない。

 因みに、この話を聞いたイケメンメンバー達は、頭を抱えながら「当日休もうかな」と呟いていたけど、僕の様にモテないモブ男から言わせてもらうと本当に贅沢な悩みだと思う。


 

 女子と合法的にベタベタ出来るチャンスを、普通そんな嫌がるものか?!

 何時もだったら、意図せず当たっただけでも『キモ』とか『変態!』とか言われるのに、今回はそんな彼女達から頼んでくるのだから、確実に少しのボディータッチであれば許される! 

 そんな夢の様な出来事が実現されるんだぞ!

 確かに! イケメンと呼ばれる人種の彼らは、日々何もしなくても女子が”ゴキブリホイホイかな?”と思うレベルで寄ってくるのかもしれない!

 だがしかし!!

 我々の様なモブには、こういった行事が無いと可能性と言う名の”希望の光”は差さないんですよ!

 この微かに差す光に全てをかけるしかないんですよ!

 僕だったら喜んで、沢山サービスしちゃうよね!!

 合法で女子に触れられる事なんて中々ないんだから!

 さぁ、未来の優勝クラスの女子の皆さん!

 僕の元に是非来てください! 色々サービスしますよ!!

  



「凛! ボーっとしてないでちゃんと動いて!」

「そっち終わったら、こっちもお願い!」

「は~い」



 そんな心の中の訴えも願いも、彼女達の鋭い言葉によって強制シャットアウトされてしまい、僕の意識は容赦なく現実世界へと引き戻されてしまった。

 家畜とは、こんな気持ちなのだろうか。

 何かよく分からないまま、言われた通りに動くだけ。

 そこに自分の意志何て関係ない。

 何て残酷な世界何だろう。と心の中で涙を流す。

 だが、こんな扱いを受けているモブ共と違い、このクラスのアイドルこと七瀬千紘はというと……




「俺は何をすればいいかな?」

「千紘君は何時も役員頑張ってるんだし、ゆっくりしてていいよ?」

「そうだよ! 無理しないで!」

「千紘君は、そこに座って応援してくれるだけでいいよ!」




 僕らには、鬼の形相で指示を投げてくるクセに、千紘に対してはあんな感じだ。

 これぞ女の差別。

 役員をやっているのは僕も同じなのに……。

 千紘が座ってて良いなら、僕だって何もせず皆の応援というポジションで良いでは無いか!




「千紘だけズルいぞ~! 女子共~それはひいきだ! 差別だ! 最低だ!」



 

 千紘に良い顔をする女子たちの背後から、僕は小学生にも引きをとらない語彙力の野次を飛ばす。

 だが勿論、そんな僕の言葉に力がある訳もなく。




「うるさい、凛!!」

「口よりも手を動かして!」

「ちゃんと働きなさい!!」

「………はぃ」




 女子の冷たい言葉と態度と視線のスリーコンボにより、僕の心は一撃でノックアウト。

 倒れそうになる体と折れそうになる心。

 だがそんな僕を支えてくれるのは、他でもない我がクラスの戦友(モブ男子)達だった。

 



「大丈夫か、凛! しっかりしろ!」

「此処で膝を着いたら、全てが終わるぞ!」

「俺達の人権を奪い返せるのは他でもない……」


「「お前だけだ!!」」



 声を揃えて僕へとエールを送ってくれる仲間。

 我がクラスの戦友の想いを背負い、僕はもう一度千紘を囲う女子たちに対抗しようと立ち上がった。

 が、しかし。



「はい、凛君それ置いてこっち来てね~。 サイズ測るよ~」

「え? ちょ、ちょっと?!」



 何処からともなく現れた別の女子が、僕の両腕を拘束し引きずる様に教室の外へと誘導する。

 まるで囚われの宇宙人を連想させる絵面に僕は困惑して言葉が出ない。



 え、なに?

 さっきまで力仕事をやらされていた僕が、急に連行されるって何事?!

 っていうか測るって何を?!

 一体何のサイズを測るの?!




「み、皆! 助けてくれぇぇえええ!」



 動揺しながらも、さっきまで支え合っていた仲間達に助けを求める。

 だが誰一人、此方を見ない。



 あれ? 数秒前まで仲間だったよな? 戦友だったよな?

 俺達でこの窮地を乗り越えよう!みたいなノリだったよな?

 裏切るの早くない?

 掌返すの早すぎない?

 さっきまで支え合っていたはずの仲間が、一瞬にして敵の支配下に落ちていった。




「この裏切り者共がぁぁあああ!!」





大変お久しぶりです!

なかなか小説を書くタイミングが無く、更新が止まってしまって申し訳ありません(泣)

そんな中でも、繰り返し読んで下さる方や、コメントを下さった方々本当にありがとうございました!

読んだ方から感想を聞かせて頂けると、本当に嬉しくて「書かなければ!」という気持ちにさせられます!! 


今回のお話も是非楽しんで下さると嬉しいです!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 全てがいいですね!!!!表現の仕方が面白いです!!!!! 更新してくれるだけで、テンションアゲアゲでございます!!笑 どうして連れて行かれたのでしょうか…? 普段は本当に更新を本当に楽しみ…
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