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テラー・ナイト

黒騎士王決定戦第1ラウンド。

凄まじく強いオメガドラゴンを無視し黒騎士を倒し始めたガルディン達であったが、思わね障害が立ち塞がる……



「何か、用かな?」


ガルディンは近寄ってきた鎧の騎士に話しかける。

しかし、返事はない。


「ふん、無口な奴だ」


「いやいや、まったく。その上、このお方は我々を殺そうって言うんだから困るよね」


ガンッ!


無拍子(ノーウェイト)

躊躇(ためら)いはない。

恐怖満ちたる騎士は闇を撒き散らし、手に持つ(なた)のようなおぞましい柄の剣でガルディンに斬りかかった。普通の人間ならその瘴気(しょう)で足がすくみ即座に命を落とすところであったが、そこは帝国最後の砦である彼。大斧を薙いで打ち払った。ただ、その手にビリビリと電撃が走った。それほどに重い一撃だったのである。


「まったく、失礼極まりない!」


「……ユル……セヌ……」


「やっとしゃべったか」


「マディ……アクター……」


「んっ?」


「キサマハ……ジゴクニ……墜トス!」


「人違いはよしてもらおうか! 」


ガンッ

ガンッ


激しい打ち合いが始まった。

屈強なガルディンだが、この騎士はそれに劣らぬ力を見せる。

それはまるで、全てを悪魔に投げ売り、ただ強さだけを得たような強さだった。


「おっさん!」


「加勢はするな! お前は他の奴等やドラゴンの様子を見ておれ!」


「わかった! まあ、あいつらこの勝負を見守るつもりだろうがな!」


ガルディンは、この鎧の騎士をこの場で仕留めると決断した。なぜならこの者は、理由は知らぬが、早く呪縛から解いてやらねば哀れと思ったからだ。


「ガアアア……!!」


「貴様は強い。だが、その強さは明らかに自分のものではない。さっさとにあの世に送ってやる!」


ガルディンは、斧の刃に黒炎(こくえん)(まと)わせて、斬り付けた!


死炎裁断撃(ヘルファイアスラッシャー)!!」


「!?」


灼熱の一撃は、鎧を溶かし切り裂く。

呪われし騎士はそれをまともに受けてよろめいた。胸に受けた深い切り口が熱を帯びて赤く発光する。だが、致命傷には至らなかった。


「なにっ!?」


傷口から黒い(けむり)が出てきたと思うと、途端に傷口が塞がり、元の姿に「完全修復」したのだ。


「まさかこやつ、不死身か? あるいは……」


「クルシイィィイタイィィダガ、ワガ憎シミト比ベレバ!」


「むう、これは、ただ戦うだけと言うわけにもいかんか」


ガルディンは距離をとろうとする、しかし誤算があった。この呪われし黒騎士は見た目以上のスピードを兼ね備えていたのだ!


「何だと!?」


「ガィィィ!!」


「ぐっ!?」


ガキィンと言う音とともに、ガルディンの持っていた魔斧が後方に弾き飛ばされた。それだけの一撃を、呪怨極めし騎士は放ったのである。


「おっさん!?」


「寄るでない、若造!!」


武器が手から離れ危機的状況にもかかわらず、ガルディンはモルドレッドを近づけさせない。力を借りるのは黒騎士としてのプライドが許さなかったのである。


「小賢しい怨霊め! この俺が腕力だけと思うなよ! ダークネススフィア!」


「グギ!?」


ガルディンの手から、黒い球体が現れたのも束の間、鎧の騎士の腹にガツンとぶち当たり、20メーターほど吹き飛ばした。この歴戦の黒騎士は高等な魔法も使いこなすのだ。


「さて、どうするか」


ガルディンの魔斧は、オメガドラゴンの側に落ちている。また、鎧の騎士に背中を向けることになるため、取りに行くのはかなりリスクがあった。しかし、いくら高等な魔法が使えると言っても流石に大魔道師のようなレベルの火力は引き出せず、魔斧を用いての攻撃にはかなりに劣り、重装備で再生能力まで持つ相手を倒すのはかなり厳しいものがあった。


そんな迷いを、呪われし騎士は見逃さない。

ガシャリと音を立て立ち上がると。身体中に記された文字のようなものを不気味に光らせ始めた。


「なにを、するつもりだ」


「イビラ・ストレガ・レザン・ニデ・エゼベル」


「詠唱……」


「ジラーハ!」


深き闇が鎧の騎士を包み込む。

そして、それは形をなし、禍々しかった姿を更に禍々しく変える。肥大化する。


「変形した!? 更に強くなった!?」


「ゴテォロロロロ!!」


巨人のように大きくなった恐怖騎士(テラーナイト)は見た目からしてまさに「化け物」だ。それは悪魔よりも恐ろしくおぞましい。


「グァァァァ!」


これに対し、真っ先に攻撃を仕掛けたのがオメガドラゴンであった。知能は低い竜だが、その存在に危機を感じたのが凄まじい威力のブレスを吐き恐怖騎士(テラーナイト)を殺しにかかったのだ。しかし、この魔王も怖れるだろう怨念の騎士は、かわそうともせず、体から吹き出す闇だけでドラゴンのブレスをかき消してしまった。


「……コロス……アラガウモノハ……ナニ……モカモ……!!」


これにより、恐怖の騎士は、ガルディンをからオメガドラゴンを標的にかえた。魔の炎が燃え盛る鉈剣(なたけん)を構えると、ドラゴンにものすごい勢いで突進し、その胸に刃を突き刺す。


ドラゴンはピギャァァと鳴いた。それは断末魔の叫びに似る。

 効いているのだ。そこから闇が、毒のように体内を駆け抜ける。体が闇の炎で燃え盛りはじめる。


「まさか……」


ガルディンのその「まさか」は「まさか」ではなくなった。オメガドラゴンは、その強大な力を持つその竜は、一人の命がそこにあるか無いかの黒騎士の闇に取り込まれ、あっけなく命を落としたのだった。







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