黒騎士狩り
ガルディンをはじめとした黒騎士は、異世界「ネェルタルタロス」に飛ばされた。そこで、オメガドラゴンと対峙するが、あまりの強さにいきなり大量の黒騎士が命を落とした。そのため、ガルディンたちは一時退避して幾らかまとまり、作戦を考える。
そんななかで、黒騎士の一人モルドレッドが提案したのは、「ドラゴンは相手にせず黒騎士を倒す」という作戦だった。
「なるほど、竜を無視して人の方を潰していくと言うわけか」
「その方が現実的だろ?」
その意見に対し、早速反対者が出た。
小柄の女黒騎士だ。
「そんなことできるか!」
「おや、鉢巻きガール。何か問題でも?」
「そんな、むやみに人殺しするなんて、あたしは出来ないね!
」
「この状況で倫理かい? 君は随分と綺麗どころで生きてきたんだね」
「お前こそ、どんな生き方してきたんだよ?」
「裏切りとか普通だったよ? 何万人斬りまくったよ? でも、それがこの黒騎士の日常だったのさ。おっさん、あんたもそうだろ?」
ガルディンは、ふんと鼻息を出したが、それは肯定的な意味であった。
「3日で3万の敵兵の首を飛ばしたのが懐かしい……小僧、なかなか愉快なことを言うではないか!」
「おっさん!」
鉢巻き娘が慌てるが、眼鏡の娘がそれをなだめた。
「アゼルちゃん。この殿方の意見、今の状況なら悪い作戦ではありませんよ」
「サイサリス……けど……」
「どのみち最後に残るのは一人なんです。それに、全員殺さなくても良いでしょうし」
「え?」
「こちらの作戦に引き入れる手もあるでしょう」
「あー、なるほど!」
赤髪の鉢巻き娘は納得したのかそれ以上は反論しなかった。ガルディンは彼女の甘さは感心しなかったが、逆に言えばこれだけ正義感が強ければ裏切らないと確信したので、深追いはしなかった。
「他の奴等は……流石、皆さま濃い血の臭いがしているだけあるねえ」
「よし、ならば、その策決行するとしよう。この幾万人殺しのガルディンの恐ろしさ、見せつけてやる。行くぞ、モルドレッド。言い出しっぺらしい活躍をしてみせろ」
「かしこまりました、ガルディン殿。我が愛剣<クラーレント>の切れ味をお見せしましょう」
黒騎士たちは、再び地上を目指した。
そして、たどり着くと、その地獄に似た大地には、変わらずたくさんの竜と、黒騎士たちがいた。
ガルディンとモルドレッドは先陣を切る。
双者、斧と剣を豪快に振りおろし、強烈な黒きの衝撃波を黒騎士たちに向け放つと、それに反応できなかった黒騎士たちは巻き込まれて木っ端微塵に吹き飛んだ。ほぼ即死である。残念ながらオメガドラゴンには全く効果が無かったが、動揺してスキのできた黒騎士を始末してくれるため結果的に効率が上がる。これは、モルドレッドとガルディンの二人はすでに予想していた。利用できるものは利用するのは強い黒騎士のセオリーなのである。
その一撃のあと、彼等だけでなく他の黒騎士たちも、黒騎士を狩りはじめる。正直揃いも揃って強いので奇襲となればメキメキ敵を倒していく。流石に迂闊すぎてドラゴンに喰われたり返り討ち者はいたが、減らす人数と比べれは割りが良い。もっとも、被害者にしたらたまったものではないわけだが。
「くっそー、なかなか話わかる奴いないな!」
アゼルとサイサリスの二人だけは非効率にも他の黒騎士の勧誘を繰り返し試みていた。しかし、アゼルは見た目が女の子であるため、相手になめられてさっぱり成果はあがっていない。
「ごめんな。倒したくなかったんだけどな……ちゃんと天国行ってくれよ」
「アゼルちゃんやりましたー」
「え?」
「仲間18人確保です」
「う、うっそー!?」
反面、サイサリスは説得が上手いのか、守りたくなる見た目だからなのかぞろぞろと男どもが集まった。鉢巻き娘が内心悔しさで一杯になったのは言うまでもあるまい。
黒騎士が黒騎士を狩る作戦は成功していた。
確かに成功していた。50、100、150と黒騎士はじわじわ減っていた。
「やるなあ、おっさん!」
「お前もな!」
しかし、忘れてはいけない。
狩る相手にも、とてつもなく強い輩が混じっていること。
そして、そこにおぞましいほどの「狂気」を持つ可能性が有ること。
そう、彼がまさに、そうであった。
「むっ」
ドラゴンの陰から見える人影。
禍々(まがまが)しいどす黒い表面に、何かの呪文のようなものが描かれた鎧で全身を覆われた重装備の騎士がそこにはいた。
「ガルディンのおっさん……」
「気を付けろ。あそこにいる者、暗黒に堕ちている」
「ああ、あれは質が悪そうだな」
瘴気に満ちた、最早騎士と呼べるかも怪しく生きているかも怪しいその塊は、亡霊のようにふらりふらりとガルディン達に近づいてくる。無敵のような強さのオメガドラゴンすら、彼には攻撃を加えなかった。
コシュー
コシュー
不気味に響く息づかい。
ガルディンとモルドレッドは武器を構えた。