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Black Knights ~史上最強の黒騎士王決定戦~   作者: 束間由一
第三黒:裏切りの荒野~黒騎士の国~
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崩壊する絶対防衛線

ガルディンはサイサリスに苦戦したが、バルトリバザルの奇策により何とか危機をしのいだ。


一方その頃……


ガルディン達がサイサリスと戦って数日後、汰土たいどの軍勢が、霊木りょうぼくに攻め入った。


「ハハッ! 次から次へと、甘く見られてるねぇ」


先日、ガルディンを退かせたコウジュンは、ビン酒を飲みながら笑う。


「しかも、またも顔見知り。眼帯のお嬢ちゃんじゃねえか」


軍勢の先頭に立つシュターナルは、表情を変えない。その側にいる翠髪みどりがみに風変わりなアクセサリを付けた女黒騎士もまた、同じだ。機械的な表情で、コウジュンにかたる。


「悪いな、私達は気が利かないのだ」


「ハハ! 自分で言うかよ。お嬢ちゃん、名前は?」


「ポラリス、だ」


「へえ、良い名前だなあ! おっかさんに感謝しろよ!」


「なんだそれは」


「母親のことだよ。なんだ、いねえのか?」


「私は、作られし身。人ではなく、神でもなく、精霊でもなく。うつろなる人造生命体、だ」


「何だか良くわからねえけど。要は、人ならざるすげえ奴ってことだよな! いいぜ! この胸が高鳴るぜ!」


「わからんな。何がそんなに楽しいのか。よくわからぬ」


天空と大地ほどの思考の差が、両者にはあった。シュターナルは、さながらその狭間の水平線の如く、魔剣を構える。


「おぉ、もうやる気かよ! お嬢ちゃんも気が早いねえ!」


「決着をつけよう。どのみち、そうなる」


「ガルディンの旦那にゃあもう会わせねぇってか。はは! なら、打ち破ってみやがれ! 俺の陥陣営かんじんえいをな!」


先の戦いと同じように、コウジュンはそそくさ後退すると、自軍の黒騎士達にバリアを張らせた。いかなる攻撃も通さないほどの、鉄壁のバリアがシュターナルの前にそそり立つ。


「ほう、守る気か」


「そのようだな」


「口の割りに引きの一手とは。それでは、こちらの思うがままになってしまうのに」


ポラリスは、バリアから離れるどころか、むしろノーガードでそれに近づく。その威圧感に、霊木の黒騎士達は気圧されてなにも手出しができない。


「悪いな、通させてもらうぞ」


ポラリスは、バリアに手をかざす。

すると、瞬く間にその周囲のバリアが消滅し、大きな穴が空いてしまった。


「う、ウソだろ!?」


そういった黒騎士は、間もなくポラリスの奇異な形の刀剣とうけんに凪払われ、上半身が吹き飛んだ。


「ば、バケモノ!?」


その後は、地獄絵図。

ほぼシュターナルとポラリスのみで、黒騎士達のほとんどは切り伏せられた。そして、残るはわすがな兵と、コウジュンのみとなる。


「けっ、俺の無敵の陥陣営が、これほど簡単に打ち破られるとはな!! ははは! こりゃすげえや!!」


「ここまでだ。抵抗は止めておけ」


「おいおいポラリスちゃんよ、んなことしてもどうせ死ぬんだろうがよ? んなら、最期はいさぎよく将として戦ってやるさ!!」


「ほう、見た目よりも、清々しいではないか」


「俺の、この呂布様よりたまった方天戟ほうてんげきの切れを、あまく見るなよ!」


コウジョンは、槍を構えてニヤリと笑う。

勝機は見えなかった。しかし、強者と戦うことは、彼にとって酒に並ぶ幸福感を得るものであったのだ。


 「しゃああ!! 貴様の首を削ぎとってやるっ!」


 「その覚悟や、良し。だが」


 「ら!?」


 コウジュンの腹を、光の槍が無音で貫いた。

 塵も残さず、その強靭な肉体の一部が消失したのだ。しかし、コウジュンも(おとこ)である。体勢を崩さず方天戟をポラリスめがけて振り下ろす。


 「仕掛けて、来た?」


 「生殺しはいけねーぜ、姉ちゃん!」


 「つっ」


 ポラリスは避けきれず、右手が吹き飛んだ。しかし、表情は崩れず、左手の短剣でコウジュンの下半身を切り離した。上半身はドシンと大地に崩れ落ちる。そして、口からは大量の血がブッと吹き出した。


 「貴様は、よくやった」


 瀕死となったコウジュンに、ポラリスとシュターナルは歩み寄る。そして、(とむら)うかのように、男を見下ろした。


 「美人さんに看取られるか。わ、悪くねえな」


 「すまないな。恨みはないが」


 「気にすんなよ、シュターナルちゃん。武将(ぶしょう)最期(さいご)としては、悪くねえ。戦って、そのまま死ぬんならよ」


 「そうか」


 「まあ、心残りは、ガルディンとさしでやれなかった事と、死に(ざけ)が飲めねえってことかなあ。まあ、しかたねえ。じゃあな……先に行ってるぜ……」


 そう言って、コウジュンはにんまり笑い顔を浮かべ、まぶたを閉じてこと切れた。


 「さて、この国を滅ぼすとするか」


 「怪我はいいのか、ポラリス」


 「気にするな。この程度、後で何とかすればいい。左手だけで十分だ」


 シュターナルの心配はまさに杞憂(きう)であった。

 霊木の軍勢は、2人の女黒騎士次々と凪払われ、わずか数時間で、王の首が取られて滅亡してしまったのであった。


 2つの勢力が脱落し、いよいよ2回戦は大詰めを迎える。


 









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