表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Black Knights ~史上最強の黒騎士王決定戦~   作者: 束間由一
第三黒:裏切りの荒野~黒騎士の国~
19/28

聖なる黒騎士とあの日の涙

ガルディンはモルドレッドと再開する。しかし、お互い敵となった彼らには、もはや共に生きる道はない。


父を殺した叛逆者はんぎゃくしゃ

後の文献では、彼をそう記すものもある。


しかし、モルドレッド本人がそれを知れば、まゆをしか

めて苦笑するであろう。なぜなら、彼は父を裏切ってはいない。彼が本当に殺したのはそのほとんどが「悪魔」とその「徒」であった。


父であるアーサー王の持つ〈エクスカリバー〉は、魔を退ける聖剣であった。しかし、それは表の顔で、実際その内に魔を溜め込み増幅させる、「魔剣」でもあった。


このエクスカリバーが、ある日暴走をはじめる。

剣は、持ち主であるアーサーを取り込み異形の魔物へとその姿を変えた。多くの人々が、この怪物に喰われ、国は地獄と化す。アーサーの部下たる「円卓の騎士」も、この凶悪なるのまえに、次々と殺されてしまい、残るは3人となってしまった。そして、その1人が、モルドレッドであった。


「あの魔術師め、全て知っていたか」


「はあ、親父様もこうなれば終わりだなあ。何がなんでも命を奪うしかないね!」


「随分薄情な言い方だな。肉親であろうに」


「ここで情に任せるは危険なんですよ。アグラヴェインの兄者あにじゃ


「ふん、ある意味において心強いな貴様は。私とあの不義理者のランスロットとお前しか、この国でまともに戦えるものがいないこの状況ならなお際立つ」


「幸い、聖剣は三本ある。まだ、やりようはあるさ」


「三本? しかし、私の〈デュラアンダ〉は、この通り折れてしまった。使い物にならんぞ」


根本と柄しかない剣を見せ、アグラヴェインはため息をつくが、モルドレッドはそれを見て、笑う。


「いや、その剣はまだ死んでないさ」


「何と?」


「ま、腐っても聖剣だしな。それにあの魔術師が言っていたじゃないですか」


「ああ、これは〈エクスカリバー〉の兄弟と言われてるって話しか」


「ならば、話してもらえば良い」


「話す、とな」


「ええ、この〈クラーレント〉には、刃を交えて対話してもらいます」


モルドレッドは、剣に語りかける。

しかし、この行動には「確証」はなかった。しかし、回りを勇気づけるために彼はそうしたのだ。


「身内の暴挙を止めるのは、身内の役目だろ? そうだよな」


剣は、形ある言葉は発しない。

しかし、たしかに、見えざる言葉で、モルドレッドに応じた。


「まったく、お前とは気が合うな! いくぜ、相棒!」


その時、モルドレッドの頬を何かが伝った。

それは、彼の涙だった。

その涙は、駆け抜ける事で押し分けられた追い風に流されて、静かに大地へと消えていった。


「そうか、あの時俺は、泣いていたわけか」


時を今に戻し、モルドレッドはかりそめのてんをぼんやりと見た。身体を動かそうにも、感覚は薄れきってほとんど無い。彼の身体は、ガルディンに真っ二つにされて、下半身は何処かに吹き飛んでいた。もはや余命いくばくも無い彼に、ガルディンは語りかける。


「その剣、悲しい色を帯びておるな」


「ああ、兄弟を、殺したからな」


「そうか」


「俺も、親を殺した」


「同類であったか。どうりで気が合っていると思ったぞ」


「だよな。俺の良い相棒だったよ」


モルドレッドはそう言って、傍らにある聖剣〈クラーレント〉を見る。その剣もまた、刃が真ん中でへし折れて、先がなくなっていた。


「お前とは、つくづく似ているよな。こりゃ、地獄でも一緒かもな……」


小さく微笑むとすぐ、彼の意識は失われ、その命は果てて虚空へと消え去った。


ガルディンは、目をつむり頬に出来た切り傷に意識を集中する。そして、その傷をつくった黒騎士に敬意を込め、その冥福を祈ったのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ