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Black Knights ~史上最強の黒騎士王決定戦~   作者: 束間由一
間話:トピックス(1)
14/28

最古老


今回の黒騎士達の中で最高齢なのは、(よわい)8035歳のバルトリバザルと呼ばれる男だ。


小柄で、仙人のような白い眉毛とあご髭を長く生やした風体。顔に刻まれた(しわ)は、もはや1つの作品のように彼の深い内面を現していた。


「このような事に巻き込まれるとは、フハ、人生とは面白きもの(なり)


雲をも貫かんとする巨大な岩の頂上にあぐらをかいて座り、(まと)う黒い袈裟の袖を夕風に波打たす。それは神々しく、ひとつの悟りを(ひら)いた者である事を身をもって語るかのようである。


「多くの時代を彼方(かなた)まで見た。多くの生き死にを見た。しかし、我が(まなこ)には、まだ新鮮な(しき)が入ってくる。そのなんと素晴らしく贅沢なことか」


彼の傍らに岩に刺さる銅色の打剣。

彼と最も付き合いの長い存在であった。


「ジュグよ。友よ。お主はこの流れをどう見る」


剣は、最古の老にのみ聞こえる声で語る。

最古の老は、それを聞き、うんうんと頷く。


「ふむふむ、根元悪(こんげんあく)か。まあ、奴が動くまでは放っておくのがよかろう。今はまだ、この生を楽しめばよいのじゃ。なに、そうそう簡単には死なんて。イエスマンばかりでないこの極めて幸福な状況を、わざわざこのワシに与えてくれたのじゃ。賜ったものをすぐに無くすのは勿体ない。そうじゃろ」


それを聞き、剣は見えない声で笑った。

山合に眠らんとする夕日を揺り起こさんばかりに。

最古の翁も、数本しかない前歯を見せて、顔をくしゃくしゃにして笑う。


「しゃしゃしゃ。まこと愉快、まこと愉快至極なり。さあ、これからどうやって(わし)を楽しませてくれるかのお」


超人の域に達した者の内は、尋常ならざる好奇心と、エネルギーに充ち溢れていた。その有り余る力の矛先がどこに向かうのか、それは彼すらも知らぬ事であった。






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