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第105話 万引き少女

 七夕当日、昼休みになり、俺はいつもの面々と短冊に書かれた願い事を見に行こうと校庭に向かった。

 そこにはたくさんの生徒たちが賑わっており、笑い合っているグループもあれば、中には恥ずかしそうにしているやつもいる。

「へえ、みんな色んな願い事書いてるね。世界を混沌に包むなんてのもあるよ」

「それ、柊だろ?」

「違うんだけど」

 俺がボソッと言った事に対して、柊が反論してきた。

 もし本当に柊じゃなければ、中二病が他にもこの学園にいることになるのだが。

 もしかしたら名前が書いてあるかもしれないし、ちょっと確認してみるか。

「なあ楓、その中二臭い短冊って誰が書いたかわかるか?」

「ちょっと待ってね。えっと…本田雪奈…」

 なんということだ。もうあいつの中二心は止められないというのか…

 とりあえず帰ったら、雪奈と家族会議だな。無駄かもしれんが。

「えっと…和樹?雪奈ちゃんって中二病だったっけ?」

 楓は苦笑いで尋ねてくる。そういえばこいつは柊の影響を受けてることを話してなかった気がする。

「まあ、あいつは結構影響されやすくてな。ゴールデンウィークは、柊と一緒にいる時間が長かった。つまりそういうことだ」

「ああ…」

「何故そんな納得したような目でこちらを見る」

「そりゃあ納得したからだろ?」

「私は別に雪奈を引きずり込んだわけではない。彼女自身が力を望んだのだ」

 そうだな。お前をかっこいいと思い、それを真似てしまったのはあいつの意思だ。

 もう兄である俺としては、妹が黒歴史を刻まないように祈ることしかできない。

「だ、大丈夫だよきっと。雪奈ちゃんなら何があっても強く生きるよ、うん」

 今小野寺に、黒歴史を刻むことは避けられないと言われたような気がする。

「……ん?」

「どうしたの?」

「いや、あの子の顔」

 俺はそう言って、木陰に体育座りの状態で座っている、茶色の短い髪を生やし、暗い表情の少女の事を指差す。リボンの色を見る限り、俺たちより一つ下だろう。

「……もしかして、あの子が好みだったりするの?」

「違う!そういうことじゃないよ!」

 真顔でそんなこと言うのやめてくれ!怖いから!

「そうじゃなくて、なんかあの子、傷が多くないか?」

 少女の顔には左頬にアザが出来ていて、膝には絆創膏、そして制服も若干ボロボロだ。

「言われてみれば確かに気になるけど、派手に転んだとかも考えられるよね?」

「……だといいんだけどな」




 放課後、俺は小野寺を家まで送り、家に帰る途中で空腹を感じ始めていた。

「久しぶりに買い食いでもしていくか」

 普段は節約も兼ねて買い食いはしないのだが、確か最近コンビニで新商品が出たとテレビでやっていたはずだ。

 ちょっと興味があったので、俺は近くのコンビニまで足を運んだ。

 中に入り、店内を見渡すと、そこには見覚えのある少女がお菓子コーナーに立っていた。

 確か昼休みに木陰にいた子だ。

 彼女は、キョロキョロと辺りを見渡すと、ラムネをポケットの中に入れた。

 ……見ちゃったからには、黙ってはいられないよな。

 少女がその場を立ち去ろうとしたところを、俺は道を塞ぐように動く。

「あ…あの…」

 俺は店員に隠すように立ち位置を調整し、少女のポケットに手を突っ込む。

「!?」

 中に入ってたものを取り出すと、さっき入れてたラムネの他に、チョコやクッキーなども出てきた。

「えっと…これは、その…」

「ちょっとこっちこい」

 俺は商品を棚に戻し、少女の手首を掴んでコンビニを出て、人の少ない裏側の方までやって来た。

「あ、あの…あたし…」

「なんであんなことしてたんだ?」

 俺は単刀直入に尋ねた。すると少女はうつむいて黙ってしまう。

「誰かに頼まれたとかか?」

「……違い…ます」

「そうか」

 まあ十中八九誰かの命令だろうし、万引きのことは見なかったことにするか。

「それじゃあな。もうこんなことするなよ」

「……警察に言わないんですか?」

 少女は意外そうな顔でこちらを見る。

「今回だけな。今度からはあんなことするなよ」

 俺がそう言うと、少女は頭を下げてからどこかへ行ってしまう。

「さてと…じゃあ追うか」

 俺は物陰に隠れながら、少女の後を追った。

 きっと後を追えば不良の巣窟にでもたどり着くだろうと思ったが、別にそんなことはなかった。

 少女は自宅だと思われる家の中に入っていっただけだった。

 なんだ、ただの思い過ごしか。

 肩の荷が降りた俺は、真っ直ぐに家に帰った。

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