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ワールドロード・オンライン  作者: くる~
自分の強さ
8/8

戦争Ⅱ 終結

 「ミラベルさん!?」


 俺は驚いて、つい叫んでしまう。

 そこには傷だらけのミラベルさんが立っていた。


 「あなたほどの人を一体誰が...?」

 「...魔族です」


 死にかけそうな声で応えてくれた。

 魔族、ゲーム時代には聞いたこともないような名前だが、創作物上とかではよく出てくる名前だ、魔物よりも強く、知力も高い、と言ったイメージだろうか。

 疑問に思いつつ、考えにふけっていると、それを悟ったのかミラベルさんはそれに応答してくれた。 


 「トキワさんが知らないのも無理ありません、今となっては学校で少しだけ触れる程度まで存在感が薄れていますから」

 「と言うと?」

 「昔は魔族が世界一強いと言われていたのですが、原因不明の現象で一気に数が激減して以降、魔族を全部集めても数え切れる程度まで減少してしまいました。とはいえ、その比類なき強さは健在です、一体でも国を滅ぼすことが可能でしょう...」

 

 魔族か...

 ここに来て初めて強敵と思わしき敵が姿を見せたな。

 今まで苦戦したことはなかったけど、今回はそうもいかないだろう。

 負けるまではいかないと思うが、こっちの世界でそんなに過ごしていない分、こっちのほうが不利だ。

 逆に、これまでの経験がある分、魔族のほうが有利に立てるだろう。


 「ミラベルさん、できるだけここから離れてください、もちろん味方も連れて」

 「そんな無茶な、相手は魔族ですよ!ここにいる全員の力を合わせれば勝てない相手ではありません!」

 「別に時間稼ぎしようって訳じゃないですよ?ただ勝算があるから行ってるんです」

 「しかし...」

 「早く行ってくれないと巻き込んじゃうかもしれないので、行ってください」

 

 巻き込まれてしまう、という一言でようやく去ってくれたミラベルさんは少々不満げな顔をしていたのだが、魔族の首でも持っていって機嫌を取ればいいだろう。


 今の問題は目の前の魔族をどう仕留めるかだ、現状、相手の力量も技量も何もわからない状態だ。

 ここから勝ちに行くのは、ほとんど不可能だろう、だが、それは普通ならばの話だ。

 俺は普通じゃない、それは自負している、だからこそ勝てる自信があったのだ。


 戦場に舞い上がっていた砂煙が徐々に晴れていく。

 そして、魔族の姿も鮮明に見えてくる。

 姿形は何の変哲もない、人間そのものだ。

 いや、角が生えているという点や、空に浮いているという点から魔力の扱いに長けているということを感じさせられるのだが、それ以外は変わらないというべきだろう。

 これほどの魔力量に、技能、知能も人間ほど持っているとなれば強敵になるのも不思議ではないだろう。

 

 魔族は体をくるりと回転させながら周囲の風景を確認すると、俺を無視して飛んでいこうとした。

 俺はすかさず衝撃波を出す魔法を付与しておいた投げナイフを魔族に向けて投げた。


 その投げナイフは魔族によってあっけなく弾かれてしまった、だが、そのナイフの性能は弾かれても問題ないほど強力なものだった。


 これには魔族も驚いたことだろう、自分が弾いたと思っていたナイフがそれの何倍もの衝撃を自分に浴びさせてきたのだから。


 それは呼んで文字のごとく、弾き飛ばされたナイフは地面に転がり落ちたのだが、ナイフに付与された魔法から大きな衝撃波が放たれ、魔族を弾き飛ばしたのだ。


 魔族はしばらく飛ばされたあと、岩に激突し地面に倒れ込む、人間だったならばこの一撃でどんなに強靭な体を持つ者だとしても倒れていただろう。

 だが、魔族は何事もなかったかのように立ち上がり、怒りの視線を注げてきた。


 「人間か?何をした」

 「ナイフの形をした魔道具を飛ばしただけだよ?」

 「チッ、さっきの女を先に殺したかったのだが、まぁいい、どうせ全員殺すのだ、お前を先にしてやろう」

 「それはありがたい」


 そんなやり取りをしたあと、魔族は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

 その速度は「さすが魔族」と言った感じで、人間と比べるのが馬鹿馬鹿しいほどの速さだ。


 どんな速度を見きれるはずもなく、初撃を豪快に食らってしまった。

 だが、いくら魔族の攻撃といえど、ただの突進だ、そこまで強いわけでもなくダメージ的にはHPゲージが減るか減らないか程度の攻撃だった。

 魔族は驚いたような表情で口を開く。


 「おぉ、さっきの女はこの一撃でほぼ戦闘不能になったのだがな」

 「嘘つけ、こんなのただの突進だろ?」

 「ハハハ、これをただの突進とは、お前は人間軍の最終兵器か何か、か?」

 「馬鹿言うな、ただの旅人だよ」

 「本当にそうだったなら人間も侮れなくなったものだな」


 笑い混じりにそんなことを口走ると、すぐに次の攻撃に移ってくる。

 魔族の足の周りらへんに大きな魔法陣が浮き出てきて、徐々に大きくなっていく、それと同時に前に突き出していた右手の手の平にも魔法陣が三つほど浮き出る。

 その状態が数秒続いたあと、魔法陣が発光して魔法が発動する。


 その魔法は、爆発と同時に不自然に白い煙が放たれ、爆風によって広がったその煙に触れた物は有機物無機物問わず腐食していく、まさに死の魔法とでも呼べるような魔法だった。


 危機感を感じた俺はこれを相殺できるほどの魔法を放つ。

 ゲーム時代に強化した魔法をこっちに来てから更に自己流に変化を加えた大規模で高威力な魔法。

 

 「オールマイティーマジック・エレメンタルバースト」


 その魔法はすべての属性に対応できるように、すべての属性を掛け持つ爆発を起こす、防御魔法にも攻撃魔法にもなりうる万能の魔法だ。


 ゲーム時代になかった魔法だったから名前は自作、結構気に入っている。

 

 当たれば即死だと思えるような魔法も当たらなければ問題はない。


 オールマイティーマジック・エレメンタルバーストによって完全に中和された魔族の魔法は、発生されたと思わしき形跡も残さずに消え去り、あとに残ったのは俺の魔法によりできた大きなクレーターと、そのクレータにできた矛盾する属性が入り交じる空間のみだ。


 俺にとっては思いつきで作ったその魔法だったのだが、それは人間が使うにしては大きすぎる規模で強力すぎる威力を持った、まさに神話に出てくるような魔法だった。


 そう、それこそ魔族が恐れ慄くような。

 おそらく、世界最強とまで謳われている魔族ですらこの魔法を使えるものは少ないだろう。


 「何だと...お前、本当に人間なのか」

 「なんとも聞き慣れた言葉だな、ここ最近でその言葉を何回聞いたことか」

 「そうか、いくら魔族といえど自殺願望者ではないのでな、ここで退散させてもらう」

 「降参するのか?」

 「あぁ、そのとおりだ」

 

 少し煽り気味で挑発してみたのだが、それにあっさりと肯定されてしまった。

 それほどさっきの魔法は異常だったのだろう。


 実際、練習中にもすべての属性を混ぜるという仮定は苦労した。

 単純に混ぜようとしたら散ってしまうのだ。

 無理やり混ぜようとしても無駄だったので、最終的にはそれぞれの属性を回転させてねじ込むように。

 例えるのなら、床屋にあるくるくる回るあれ(サインポール)のような感じで、回しながらそれぞれの属性を隙間に挟むように混ぜ込んだのだ。


 これこそ、日本にいた頃の記憶が生きた瞬間だっただろう。

 

 降参したあとの魔族は少しおとなしくなったようにも思えた。

 先程までの圧倒的な上から目線ではなく、どこか申し訳無さそうな雰囲気を出しながら言葉を発しているようにも思えた。

 

 「追いかけてこないでくれよ?」


 と一言言い残すと、転移扉のようなものを目の前に召喚し、その中に消えていった。

 追いかける気はないのだが、追いかけようとしてもほぼ不可能だろう、あの魔族は俺の実力を見誤っていたのだろうか。

 まぁ、こっちにとっては好都合なのだが。


 魔族が去ったあと、俺も続くようにその場をあとにする。

 もともと草原だったその場所はそこに草が生えていたことすら疑問に思わせるほどすべてが焼け落ち、荒野となってしまっている。

 村には被害がなかったのだが、周囲への影響は重大な問題だ。

 この災害級の被害により、一気に植生が変わってしまうことだろう。


 


------------------------------




 村に戻ると他の魔物たちを倒し終えて村に避難していた人々が、不安と焦りの顔を覗かせながら待っていた。

 別に俺の帰りを待っていたわけではない、待っていたのは俺と一緒についてくるこの村が無事に守られたという事実だけだ。

 だが、俺が救ったという事実が揺らぐわけでもなかった。

 最初に総司令官であるジェーンが出迎えてくれた。


 「よくぞやってくてた!トキワ殿のお陰でこの村が、いや、この国が守られた!」

 「そこまでですか!?」

 「ああ、トキワ殿は知らないかもしれないが、魔族というのは古代から世界の覇者とも言われるほどの実力の持ち主なのだ」

 「そんなに強そうには見えなかったんですがね~」

 「フハハ、さすがだな、態度に恥じない実力だ!」

 

 ジェーンさんと談笑していると、他の司令官たちもよってきて次々に褒め称えてくる。


 「お前、ほんとに、魔族を倒したのか?」

 「撃退しただけですよ」

 「それだけでもすげーよ、それほど圧倒的な実力差を見せつけたってことだろ?」

 「いえ、仕留めきれなかったのでそこまで圧倒的ではなかったのですが」

 「いいや、魔族に勝てるようなやつだ、どちらにせよ凄いことさ、これからも宜しく!」

 

 といってきたのは騎士団司令官マドックさん。

 これからも、と言うのは未定だが一応打ち解けたので良しということにしよう。


 「まさか、本当に撃退してしまうとは...」

 「ミラベルさん、無事でしたか」

 「ええ、私も一応支援魔術師、自分で自分の回復くらいなら簡単ですので」

 「流石国のトップなだけありますね」

 「やめてください、トキワさんに言われるとバカにされている気分になります...」

 「あ、なんかすいません」

 「フフフ、冗談ですよ」


 といってきたのは魔法士団司令官ミラベルさん。

 魔族の話では、一発で戦闘不能になるほどのタックルをかまされたらしいが、本人が回復魔法の使い手なだけあって、生存力はずば抜けている。

 この人なら魔族が使ったあの触れれば即死のような魔法の中でも生き残れそうだ。

 

 他にも


 「アンタが村を救ってくれたのか?」

 「嘘だろ、こんな学生くらいの女の子が!?」

 「何者なんだ!?」


 などなど、様々な村人の声が行き交っていた。

 めんどくさいと思いながらも全てに相槌を打って終わらせると、ジェーンさんが手招きしていた。

 

 「少し話があるのだが、ここでは何だ、場所を変えないか?」

 「いいですよ、なら、俺の止まってる宿で」

 「あぁ、問題ない」


 いきなり場所を変えようと言ってきたのは驚いたのだが、冷静に対処した。

 そして、ジェーンは部屋に着くなりすぐに話を勧めた。

 こっちの世界では要件はすぐに話すというのが普通なのだろうか。


 「戦争前の話に戻るのだが、情報を知りたいと行っていたよな?」

 「ええ、まぁ」

 「なら、学校に行ってみるきはないか?」

 「え?」

 「王国に魔法を専門的に学ぶための学校があってだな、そでは魔法と一緒に政治や地理などもある程度勉強するのだ、そこなら知識がなくったって入れるし、君が入れば宣伝にもなるだろう」

 

 なんとも面白そうな話だ、だが、問題が何個かある。

 一つは金、もう一つは実力差についてだ。


 この歳で自分一人だけで金を払って学校に行っているのは少し不自然だ。

 実力についても、他と違いすぎると目立ってしまい、学校内どころか周辺諸国からも警戒される可能性がある、そうなれば国際問題にまで発展することだって...


 「それにあたって、俺からも一つい願いがある」

 「なんですか?」

 「簡潔に言おう、君にも軍に入って欲しい、もちろん待遇は特別扱いだ、国王や国の重要人物以外には君の存在は秘匿する、さらに、参加してくれたときには学校にかかる費用もすべて免除しようとも思っている」


 おぉ、問題を二つとも奪い去っていったな。

 しかし、そんないい事ずくめでは裏がありそうで怖い。


 「仕事の内容を具体的に教えてもらってもいいですか?」

 「そうだな、国で何か事件があったときの対処や、魔物達が活性化した時に討伐への協力などが主な仕事となるだろう」

 「そうですか、いいですよ、ぜひ協力させてください」

 「君が忙しいのもわかっているし、こっちのわがままだということも自覚している......って、え?いいのか?」

 「ええ、いいですよ、どうせ何もやることなくて暇だったところですし、学校にも興味がありますしね」

 「ありがとう!君がいてくれたらこれ以上に心強いことはない!」

 

 最近褒められすぎて感覚おかしくなりそう。

 あっさり了承されたことに驚いたのだろう。


 まぁ、こっちに来てからというもの、人間的な感情が徐々になくなってきて、最近では人が目の前で殺されてもなんとも思わなくなるまで至ってきてる。

 本当に人間じゃなくなっていっているみたいで気持ち悪いな。


 「本当にありがとう、我々は明日の朝には王国に帰る、王国に来た際にはまず王国軍の拠点である大きな城に来てくれ、そこで正式に発表したいと思う」

 「わかりました、では、俺も何日か後には出ますね」

 「あ、それともう一つあるのだが...」

 「はい?」

 「実力にはあっていないと思うのだが、君の場合魔法の学習が目的ではないからな、一応中級コースに入れることにする、上級コースだと目立ってしまうからな」

 「わかりました、問題ないです」

 「それと、口調も直した方がいい、同じ理由だが、目立ってしまうからな」

 「うっ、努力します...」

 「この強さで、この容姿、ただでさえ目立っているのに、その上、男口調だというのは少々目立ち過ぎだな、目立ちたがり屋なのか?」

 「そんなことはないですよ」

 「まぁ、頼むぞ」


 一気に要求を増やされたのだが、快く受諾して話をすすめる。

 最後にカールのことを思い出した。

 あいつも王都に出るって行ってたからな、一人だと俺も不安だし、連れて行くとしよう。

 本人の意志なんて関係ない、嫌だと行ったなら無理やり連れていけばいいのだ。


 「あの、ジェーンさん?」

 「なんだ?」

 「カールも連れて行っていいですか?」

 「ああ、かまわないぞ、だが、しっかりと口止めすることを忘れないようにな」

 「わかりました」


 これでおーけー。

 準備は万端、出発の日が楽しみだ。

 

 次の日の朝、ジェーンさん達一行は王都へと旅立った。

 ジェーンさんがカールと何か話していたのだが、遠すぎて聞こえなかった。

 別に追求するつもりもないので放っておいた。

 





 そして、その一週間後、俺とカールも準備を済ませて村を後にするのであった。

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