クエスト
「なら、まずは魔法の等級について聞かせてもらってもいいですか?」
「ええ、魔法の等級と言うのはですね、それぞれ、魔法の規模と魔法の威力によってわけられています」
「消費するMPは関係ないんですか?」
「MP?」
MPの概念は無いのか?ゲームのときとは大きく異なっているからその程度では動揺しないのだが。
「なんでもないです、聞かなかったことにしてください」
「は、はぁ」
「それで、等級というのはどういう数え方なんです?」
「はい、魔法は大きく分けて6つに分類されています。攻撃性はないですが誰でも使用可能な生活魔法、低い攻撃力をもち、ある程度の知識があれば誰でも使うことができる下級魔法、攻撃力が高く、訓練された者にしか使えない中級魔法、中級魔法よりも難易度が高く使える相当の実力者にしか使用できない、上級魔法、一撃で軍を壊滅させれるほどの威力を持つ戦略級魔法、最後に自然災害規模の威力と範囲を誇る災害級魔法です」
「下級魔法はどの程度であれば使えるのですか?」
「基本的にみんな学校に通って、ある程度の知識は蓄えているので誰でも使えます、ただし慣れが必要ですね」
なるほど、この世界に住んでいるものなら誰でも学校に通っていて、しかも、魔法を習うことが普通なのだと。
学校があるってのはゲーム時代にもあったから驚きはしない、もっとも、背景扱いだったからプレイヤーには無関係な建造物だったけど。
それ以上に下級とは言え誰でも攻撃魔法を使えるってのに、よくこんなに平和になったものだな。
ならば中段魔法ははどの程度なのだろうか。
なんかめんどくさそう...
ダイアモンドダストは確か中級魔法とか言ってた気がするな。
「なら、俺の使ったダイアモンドダストはどの程度なんでしょうか」
「実際に見たわけではないので憶測ですが、ファイアインプを瞬時に何体も倒せる魔法となると、中級の中でも強い部類に入る程の魔法程でしょう」
「強い方なんですか?」
「強いも何も、人間の限界と言われているのが上級までですので、それをサラッと言ってる時点でおかしいのですが...」
強くはないけど弱くはないと言ったところなのだろうか。
人の限界が上級ならば別に弱いわけではないのだろう、それにこれはレベル40前後で覚えたそんなに強いとは言われていなかった魔法だ、それでも中級ならばそれ以上の魔法を使ったら人類の限界をあっさりと突破しそうな気がして怖い。
「ありがとうございます、あと、周辺の国家についてもいいですか?」
「ええ、では最初にここの村に一番近い街で、周辺国家の中でも一番大きい街、ドルズブラ王国、言うまでもありませんが、私はそこの魔法師団の司令官です、次に、我々の国と友好的な関係にあるロージアン王国、そして、関係が良好とはいえないアルスネス王国の三つが主要な街となっております、もっと遠くに行けば他の国々もあるのですが、周辺ではこんな感じですね」
そこら辺はゲーム時代と変わらないようだ。
俺の作ったギルドの本拠地はドルズブラ王国にあり、そこの街はゲームの中でも色々と有利だった。
具体的には、特産品が多いため貿易するときに様々な物を取引でき、城壁に囲まれた街であるため、ギルドVSギルドで戦争をする大規模チームPVPでは守りが硬かった。
このように、様々な所にて便利なため俺のギルドはここの街を活動拠点としていたのだが、この世界でも、その優位性は変わっていないようだな。
「ありがとうございました、このくらいにしておきますね、あとは戦争が終わってからということで」
「はい、では戦争のときはよろしくお願いします」
そのやり取りのあと、俺も一緒に外に出た。
特にやることもないのだが、こっちに来てからは外にいたほうが楽しいのだ。
何もやることがないまま散歩していると、あいつが現れた。
宿屋の息子で現在進行形で反抗期のそいつは、いきなり声をかけてきた、普通はスルーしてもおかしくない距離だったのに。
めんどくさいと思いながらも一応対応しておく。
「君は、うちのお客さんだったよね?」
「まぁ、そうだね」
「昨日はごめん、父さんがこんな子に助けられたって聞くとなんだか腹がたってさ」
「こんな子で悪かったな、別に気にしてないからいいよ」
「そういう意味じゃないよ!一緒に御飯でもどう?おごるよ!」
さり気なく食事に誘ってくるとは、コミュ力高いな。
起きてすぐ出てきちゃったからお腹も空いてるし、おごってくれるなら行くとするか。
別に金についてはどうでもいいのだが、他人の金で食べるのならそれだけでも価値があるのだ、俺に金を吸われて金欠になるがいい。ハハハ
「う~ん、ならあそこのレストランっぽい所に行きたいかな」
と言いながら、予め調べておいた村一番の高級料理店を指差す。
高級料理店と言っても、小いさな村の中での話だ、王国や都市と比べたら大したことは無いのだが。
「いいよ、金には困ってないんだ、いくらでもどうぞ~」
そうえば、こいつが村でも人気上級の宿屋の息子だということを忘れていた。
俺としたことが、こいつに花をもたせることになってしまうとは...
「そ、そうなんだ、凄いね~」
とりあえず棒読みで返答してみたら、誇らしい顔をしているのだが、凄いのはお前じゃなくてお前のお父さんだろうが。
その辺を突っ込むのはこいつが切れそうだからやめておく。
「あ、そうえば自己紹介してなかったな、俺の名前はカールだ、魔法使いを目指してる、宜しく!」
「俺の名前はもう知ってるだろ?よろしく、魔法使いか...」
魔法使い目指してるとか、現実だった頃ならバカにされるどころか避けられるレベルのことなのに今となっては自分が魔法使いだからな~、驚きもしない。
そんなことを思っていたせいか、俺の顔は呆れたような顔になっていた、カールはそれを見逃さず、自己アピールを入れてくる。
「俺はそのへんの口だけの奴らと違う、もう魔法師としての才能も認められてるし、もうすぐはじまる魔物たちとの戦争にも参戦するんだ」
「そうなの!?」
子供にも戦争に参加させるのかよ、かわいそうに。
本人は誇らしげに思っているから悪くはないのだろうけど、こんな子供にいかせたら死ににいかせるのも同然だぞ?
まぁ、しょうがないから守ってやるとするか、顔見知りが戦争で死ぬのは少し罪悪感が芽生える。
「そうだ、王国に進軍する魔物たちはこの村も通っていくらしいからな、俺が守るんだよ」
粋がってるね~、君が一人や二人いたところで戦況が変わらないどころか、多分一匹に苦戦して気づいたら戦争終わってると思うけどね?
「そ、そうなんだ~、いざとなったら俺が助けてあげるよ」
にっこり笑いながら言ってやった、これで落ちない男はいないだろう、鏡があったなら俺も萌え死んでること間違いなしだ。
「...いやいや、相手は魔物だぞ?何かあったら俺がかけるけてやるさ」
なんか食い違ってるな、それ以前にこいつは魔物との戦闘経験はあるのか?
てか、魔法使えるのか? 下級魔法程度なら誰でも使えるって言ってたけど、下級魔法じゃ足止めくらいならできたとしても倒すのはほぼ不可能だろうに。
それに、顔真っ赤にしながらそんなこと言わないでほしい、そういうとこ意識されてもこまるわ~、最初に意識されるような言い方したのこっちだけどさ。
「照れてるとこ悪いけど、ついたよ?」
「て、照れてねーよ!」
おお~、初めてそんなこと言うやつ見た、青春かよ。
中に入ると、この村の中でなら高級といえるんじゃない?程度の豪華な装飾がされていて、いい匂いが店内を漂っている。
客の量も割と多く、その客足がこの店の味の確かさを表している。
席に座って、メニューを見ると、安いものから高いものまでメニューの端々まで書き綴られている。
一番安いもので15シルバーほどだ、一番高いものでは、なんと、70シルバーにもなった。
村で一泊するよりも高い食事とは、流石高級店なだけあるな。
「それじゃ、俺これね」
といって、一番高い大銅貨3枚のステーキのようなものを指差す。
「うっ...まじか、なら俺はこれにするかな」
そう言ってカールの方は一番安い銅貨5枚の物を指差す。
俺の選択があまりにも理不尽だったのも事実なのだが、ここまでくるとなんか可愛そうに見えてくる。
別にいいか、容赦などしない。
「決まったなら注文しちゃうよ?」
「おう...」
そういって、店員さんにその二つを注文した。
店員さんが驚いていたのだが、その理由はおそらくこの歳でそんなに高いものを注文する客が少ないからだろう。
カールもこの村で言えば金持ちの分類だ、俺が異常なだけで、こいつならば村の娘の一人や二人簡単に釣れるだろう。
それほどのお坊ちゃんなのだが、今回の出費は痛かったらしい、財布のようなものを眺めながら独り言を言ってる。
その後もなんのイベントもなく食事は終わったのだが、店を出てからしばらく一緒に歩いていると。
二人で村を少し離れたところの外に行こうといってきた。
顔を見ればすぐに分かる、こいつは俺に自分の魔法の実力を見せたいのだろう。
こいつにはまだ俺が男だって自白してないからな、必死になっているやつを見るのも面白い。
それにどうせ言っても信じてもらえないだろうし、もうどうでもいいと思ってきてる。
冒険者会館、それは、クエストの受注や報告をするところであり、人によっては依頼もしている。
冒険者への依頼はそれ相応の額を用意できれば誰でも依頼できるのだが、あまりにも単純なものであったり、簡単すぎるようなものは却下される。
そこで、俺とカールはクエストの書かれた紙がたくさん張り付いている、所謂クエストボードの前で、1番簡単な討伐系のクエストを探していた。簡単と言ってもインプの討伐とかは簡単すぎるので、それよりも難しいが、倒せない敵ではない程度の難易度の物を探していた。
そこで、ちょうどいいものを見つけた。
内容としては村から少し離れたところにある道にボブゴブリンが縄張りを張っていて、通るものを手当たり次第に殺してしまうので早急に討伐してほしいとのことだった。
ボブゴブリンか、妥当なところだろう。
「ボブゴブリンか、妥当だろう」
俺と同じことを言うな!
カールにとってはボブゴブリンでも割と強敵なはずなのだがな、死にそうになったらまぁ、瀕死になったら助けてやるから生死の心配は無用だ、瀕死になったら、だけど。
「んじゃ、出発しようか」
「おう!、見てろよ俺の強さを」
カールはものすごくやる気なのだが、こっちはただ連れ回されているだけなのでそんなに乗る気ではない。
まぁ、せいぜい命乞いしてくるのを楽しみにしておくか。
そんな、軽い考えで出発したのだが、到着した今現在、少し危機感を覚えている。
なぜなら、これはついさっき舗道された道を道なりに進んでいるときだった。
なんだか遠くでドンドンドンドンとものすごい大きな足音が聞こえたのだ、それ自体にはそんなに警戒していなかった。
それほど遠くだったし、目的地までも割と距離があるからな。
「何だ今の音?」
「デブが走ってるんじゃない?」
なんていう冗談をかますくらい俺には余裕があったのだが、カールに至っては真面目な顔で
「おいおい...」
とかって言ってきた、こっちの冗談を「何言ってんだこいつ」みたいな目で見ないで!超恥ずかしいから!
そんな風に顔を赤くしているとカールはこっちの顔を覗いてニタニタしている。
さっきまでの緊迫感はどうした、そう問いたい気持ちは山々なのだが、放置して、何事もなかったかのようにあるきだす。
そして、そのまま無言で歩いてしばらくした時、目的地についたのだが...
そこにいたのはボブゴブリンではなく、オーガであったのだ。
そう、先程の足音はこのオーガ達から逃げていったボブゴブリンたちの足音だったのだ
その二つの差は大きかった。
具体的には、少し余裕な雰囲気を出していたカールが脅えて縮こまるくらいは違う。
そして、最初に戻るが、危機感の原因はこいつらではなく、この状況だ。
もしも、ここでカールが為す術なしだとすれば、俺が相手するしかなくなってしまう。
実力は隠しておきたかったのだが、どうしようもない...
とりあえずはカールに戦わせるが、無理だなと判断したら出ていってやろう。
「カール?大丈夫?」
声をかけたらカールは思い出したかのように直立し、一言かけてくる。
「もし俺が無理だと判断したら大声で叫ぶから、その時は一人で逃げてくれ」
と、まるで映画のワンシーンのような会話をしているのだが、自分から声を出してくれるのはありがたい。
どのタイミングで助けに行けべいいのか教えてくれるってことだからな。
それに、この状況でもカッコつけてくるとは、カールもなかなかの精神を持っているな。
その勇気に免じて今回は無償で助けてやるとしよう。
徐々に距離を詰めてくるオーガ達、カールとの身長差は二倍から三倍といったところだろう、緊張感が漂う空気にカールは息を呑む。
そして、自分が使える最強の魔法を放つ。
「エレクトロアロー!!」
そう叫ぶと、カールの周りには三本の電気によって作られた矢が生成される、しかし、電気の魔法を選択したのは間違えといえるだろう、オーガには火属性がよく効くのだ、この状況の中で効きの悪い魔法を打つ余裕などあるはずもない。
魔法はオーガに全弾命中したのだが、5匹いるうちの一匹も倒せずに、それどころかピンピンしている。
「エレクトロアロー!!」
今度は数を増やしてまた放つつもりだ。
バカの一つ覚えとはこの事、まるで学習していない、このままだと圧倒されて終わってしまうだろう。
だが、まだ、何か隠し玉を持っているかもしれないからな、もう少し見ておいてやる。
そう思ったのもつかの間、次の瞬間には
「逃げろ!俺が囮になる!」
と言い放ってきた。
状況的には手も足も出ない相手にただ遊ばれていると言った感じだ。
ただでさえ強力なオーガに知能まで発達しているのだ、カール程度の実力では勝ち目なんて無いだろう、最初からわかっていたことだ。
だが、俺は違う、なんなら接近戦でも簡単に勝てるだろう。
前に出ていく俺に驚いたのかカールが
「お、おい、どうしたんだ、早く逃げろ!」
少し疑問も混じっているように感じた。
少し前に出て、そのオーガ達を憐れみの目で見つめながら手を前に出し魔法を放つ
「サンダーレイン」
言葉と同時に周囲に轟音が鳴り響き、オーガたちに雷が振り落とされる。
属性的には相性が良いとはいえないのだが、その圧倒的な威力にオーガ達がいたところにはその原型すらとどめていない灰のようなものがサラサラと風に当てられて俟っている。
「え、え...え?」
驚きと恐怖で言葉にならない声がカールから溢れている。
それもそうだろう、カールからすれば、今まで守らなければと思っていた女の子に突然圧倒的な力を見せつけられたのだ、色々な感情がこみ上げてきてもしょうがない。
「よし!終わったから帰ろうか」
俺は何事もなかったかのように帰ろうと促すが、腰が抜けて立つこともままならないカールにとっては無理な話だ。
道のど真ん中で立ち往生していたら魔物もよってきそうだし、通る人の迷惑にもなるだろうから速くどきたい。
まぁ、交通量は少ないし別に問題にはならないと思うけど。
とりあえず、しばらくは動けなさそうなほどプルプルしていたのでしばらく背負って移動することにした。
情けないやつだ。
移動中に何度も首元でハァハァと息を荒げるような音が聞こえたのだが、聞かなかったことにしてやった。
それ、本当の女子にやったらまじで嫌われるぞ...
カールが歩けるようになってからは移動がスムーズに進んだ。
行きよりも速くつけたのは俺がこっそりとかけておいた移動速度上昇の魔法が原因だろう。
「体が軽く感じる!」
とか言いながら走り回っていたのだが、安心しろ、お前が変わったわけではない、俺の掛けたバフだ。
村に戻るとテントのようなものが立っていて、そこの屋根には「魔物戦争対策本部」と書かれていた。
文字などは日本語表記になっているのだが、そのへんは異世界補正が働いているのかな。
「おっ、トキワ殿、散歩にでも行ってたのか?」
「まぁ、そんな感じですかね」
そうえば、総司令官にも言ってなかったっけ、めんどくさくなるだろうし別にいいか。
総司令官と話をしていると隣でまた驚いた顔をしていたカールが声を出す。
「そ、そ、総司令官殿とどんな関係なんだ...!?」




