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ワールドロード・オンライン  作者: くる~
自分の強さ
3/8

カナリック村

 そこには、一つの大きめの馬車と、倒れている老人、それを守るように若い男達が剣や弓を持ち、現れた魔物に応戦していた。


 そこまではまだいい、その相手が問題なのだ。


 ファイアインプ族長と取り巻きのファイアインプ達。

 ゲームの世界であったならば初心者がゲームに慣れてきたなら、ある程度の楽をしても勝てる程度の強さで、インプ族長の強化版という立ち位置になるだろう。


 その所謂ザコ敵を相手に計4人いる男たちは為す術なく押されているのだ。

 確かに、ファイアインプはその特性上、近寄るだけで炎ダメージを食らう、ゲームの開始当初には攻略法も提示されていなかったおかげで、何人ものプレイヤー達が犠牲になったものだ。

 だが、とある人物がその状況を打破したお陰でプレイヤーたちはファイアインプを雑魚と呼べるほどにまで圧倒できるようになる、その人物というのは俺の作ったギルドの幹部の一人だったのだが、今はおいておこう。


 ひとえに、攻略法と言ってもそんなに大したものではない、むしろ聞いただけでは「え?そんなことでいいの?」と、逆に質問されることだろう。

 その攻略法が、ダッシュ攻撃でヒットアンドアウェイを繰り返す、と言うものだ。

 ファイアインプの火の継続ダメージは1秒に1回入るようになっていて、ファイアインプの範囲内に1秒間以上いると少しずつダメージを負っていくというものだ。

 これを逆に捉えれば1秒以上その場にいなければ問題はない。

 ジャンプ攻撃による接近速度と横回転の回避行動による移動速度で回避できるのだ。

 

 だが、今目の前にいる男たちの戦い方はなんともバカバカしく思えるような、盾でガードをしながらゆっくりと近づいていくという戦法だった。


 だから俺は見てもいられなかったのだ。


 だが、この世界に来てからはゲームで常識であったことが通用するとも限らないし、止む終えないのか。

 実際の処、ファイアインプには攻撃力の高い弓を何本も放つか、弱点属性である水の魔法で遠くから狙い撃つのが正攻法なのだ。

 だが、この世界に無限と矢を持てるような技術があるわけではなく、ましてや何十本も使わないと仕留められないような相手に無駄に矢を消費するのはもったいないと判断したのだろう。

 それに、冒険者の持っている弓は最下位のレア度であるコモンアイテムの弓だ、攻撃力も足りないのは言うまでもない。


 「村長さんだけでも逃げてください!俺らじゃこいつらには勝てません!」

 「し、しかし...」

 「俺らはアンタの護衛だ!いくら俺達といえど冒険者の意地ってもんがあるんだ!速くいけ!」


 と、ドラマチックな展開が繰り広げられているのだが、相手は普段から初心者の餌食となっているのファイアインプの群れだ。

 しかし、この世界には冒険者という職業が実在するのか?

 よくある話では、冒険者というのは金次第でどんな依頼でもこなしてくれる強者の集団って漢字のイメージなのだが...

 こいつらはそんなに強そうではないな。


 「村長さん!速くいってくれ!」


 その声と同時に冒険者たちにインプが攻撃にかかる。

  

 「う、うわぁぁぁ」


 インプは集団で同時に冒険者たちに接近していき、取り囲まれた冒険者達はインプの纏っている火によって継続ダメージを受ける。

 徐々に焦げていくその冒険者達からは香ばしい匂いが漂ってくる。

 

 「お、おい、大丈夫か?...おい...」


 村長と呼ばれていた爺さんはおどおどしながら焼かれている冒険者を眺めている。

 恐怖で足が動かないのだろう。

 かわいそうに、冒険者たちは短い命だったな、どんまい。

 そう思いながら、遠目で眺めていたその時だった。

 

 「おじいちゃん!下がって!」


 女の子の声がした。

 

 「ヒーリングライト!」


 そう言い放つと持っている杖のようなものからとても明るくきれいな明かりが放たれ、それに当てられた冒険者たちが回復していく。

 回復していくと言っても傷が一気に回復するわけではなく、ましてやヒーリングライトライトなんて下の下と言ってもいいくらいに下位の魔法だ、回復量だって微々たるものである。

 

 ......


 だが、いま出てきたのは正解だったな、俺が気まぐれで助けてやるとしよう。

 そして、どう見ても戦闘には適さなさそうな外見の俺が少女の目の前に姿を表し、声をかけてやる。


 「お疲れ様、あとは任せて休んでな」


 俺は今の自分の見た目を忘れて厨二脳全開で格好つけてしまう。


 少女は驚いた、目の前に現れた自分と同じくらいの金髪で緑色の瞳をした明らかに戦闘向きではなさそうな娘が、クールな口調で自分を促してきたからだ。 

 だが、少女は負けず嫌いだった、いきなり現れた自分より背も低く、可愛らしい声をした娘に、下がってなと言われて黙って下がるほど素直ではない。


 「あなた誰ですか!眼の前にいるのはファイアインプですよ!?下手したら死にますよ!」


 俺はその台詞に影響されることはなく、逆にインプの方に歩いて行く。

 今気づいたのだが、ここで大きな魔法や強い魔法を使ってしまうと目をつけられる可能性があるから加減をしたい、しかし、この世界の魔法の平均値を知らないため、どのくらい加減したらいいのかわからないのだ。 

 少し困った顔をするとその少女は気を使ったように言ってくれる。


 「無理しないでください、あなたでは絶対にあのインプには勝てません、私たちは見捨ててもらってもかまわないので逃げてください、そしてあわよくば私のじいちゃんも連れて行ってください...」


 別にそこの爺さんを連れて行くのはかまわないのだが、全体にインプには勝てないといわてたことにピキンときた。

 インプごとき雑魚に勝てないと思われるのは実に不愉快だ。


 感情的になってしまった俺は少し機嫌が悪くなり、インプの群れを瞬殺してみてやることにする。


 「あんな雑魚、一瞬で消せる」

 「何を言っているのですか!ファイアインプですよ?冒険者さんたちだってあんなに簡単に倒されてしまって... 不可能です!」

 「なら見てるといいよ」

 「やめてください!これ以上死人を見たくありません!」


 なんてわからずやなやつだ。

 てか、この世界のファイアインプってどんな役割なんだよ、過大評価されすぎでしょ...

 しょうがない、ちょっと強い魔法で一撃で決めるとするかな。


 「ダイアモンドダスト」


 別に言葉に出さなくても発動できるのだが、少々カッコつけたいときだってある、と言うか、技名言うのはみんなの憧れだよね?


 その瞬間、俺の目の前にいたファイアインプたちは瞬時に凍り、砕け散る。

 周囲に吹き荒れる吹雪は異常なほど低温になっていて、触れるだけでも凍ってしまうであろう。


 ダイアモンドダストは俺が強化している魔法のうちの一つで、指定した範囲の中に低温の空間を作り出す氷魔法だ、しかし、強化されたダイアモンドダストは普通のそれとは比べ物にならない威力を誇る。

 それこそ、触れた瞬間に凍ってしまうような威力だ。

 その圧倒的な魔法を見た少女は圧巻された顔で震えながら言ってくる。


 「中級魔法?...」

 

 その姿を見ながら俺はドヤ顔で少女にふんぞり返る。

 ついでに焼けて香ばしくなった冒険者たちも回復させてやる。

 プリーストレベル120の力を見よ!


 「リプロダクションサークル」


 香ばしくなった冒険者達の倒れている下の地面にきれいな色の魔法陣が出現し、その範囲内にいた冒険者たちはみるみるうちに回復していく、回復というより再生に近いだろう。

 やけどで真っ黒になった肌は徐々にきれいな肌色を取り戻し、破裂した眼球はまた構成されて、30秒もしないうちに体は元通りになった。


 「あ、あれ...俺らって確か焼かれたはずだよな?」

 「ああ、たしかに焼かれたと思ったのだが...」

 「一体何が?...」


 起き上がった冒険者たちは三者三様な反応をしてくれて面白かった。

 少女に関してはもう空いた口が塞がらない様子だ。

 すると、村長と呼ばれていた爺さんが口を開く。


 「ありがとう、お陰で助かったよ、お嬢ちゃん、名前はなんて言うのかの?」

 「...」

 「お嬢ちゃん?」

 「...あ、俺のことか」


 そうえば自分の見た目を忘れていた。

 一瞬戸惑ってしまった、名前か~、こっちに来てからどう名乗ればいいんだろう。

 

 「大丈夫かい?頭でも打ったかの?」


 こっちでもそんな言葉があるんだな。

 

 「名前は...え~と...」


 とりあえず、ゲーム内で使っていたプレイヤーネームでいいかな。


 「トキワ」


 漢字にすると常葉となり、冬でも緑色のまま不変である常緑樹という意味らしい、俺はこういう漢字とかに弱いのだ。


 だが、ゲーム時代にはこの名前も知れ渡ったものだ、公式主催のイベントで毎回上位に食い込み、ランキング形式の大規模クエストなんかでは常にトップ3に並んでいた。

 それに、外見の特徴も大きく、ソーサラーの中でも最強の部類に入っていたため、初心者プレイヤー以外には知らぬものなどいなかった。


 「そうか、ワシはオイルじゃ、婆さんのほうがオリーブといってな、昔はよくオリーブオイル夫妻とか言われたものじゃ、ハッハッハッハ」

 「..........」

 「..........」

 「..........」


 この場にいる全員から白い目で見られてる、爺さんかわいそう...

 ともかく、オリーブオイルなんてこっちの世界にもあるんだな、とりあえずの目標は常識を学ぶことと文化を学ぶことかな。

 

 「珍しい名前だね~、私はサラ、村長の孫だよ」

 「珍しいの?」

 「まぁ、なかなか見かけないかな」

 

 流石に適当すぎたか...別にいいか、名前なんてそんなに重要なものでもないだろう、多分

 

 「ぜひお礼がしたい、村まで来てはくれんかね?」

 「「「俺らからも礼を言わせてくれ」」」


 村長と冒険者の皆さん方から是非にと頼まれた。

 断ろうともしたのだがサラから

 

 「私からもお願い!」


 なんて言われたのでしょうがなく言ってやることにした。


 馬車が破壊されてしまったため、歩きで向かうことになったのだが、これがまた、意外と遠いい。

 向かっている途中で夜になったので一泊することになった。

 ゲームだった頃はこんな平野のど真ん中で突っ立っていたらすぐにでも魔物に襲われたものだが、この世界ならそんなこともないのか。

 

 気になって確認した所、魔物除けの魔道具を使っているらしい。

 魔道具自体はゲーム時代もあったのだが、どうやら根本的に違うらしい。


 ゲームのときの魔道具は古代の大賢者たちが作り残したと言われていて、今の魔法の技術では作ることさえ不可能と言う設定だったのだが、この世界では、「クレスト」と呼ばれる特殊な石に自分の想像と一緒に魔力をつぎ込むことでその想像に対応した効果を持つ石が出来上がるようだ。

 だが、それだけではなんの意味もなさなく、その石を物に埋め込むことによって初めて効果を発揮するのだとか。


 普通の人たちにはクレストに魔力を注ぐことすらできないのだが、付与術士と呼ばれる人たちの手にかかればあっという間に完成してしまうらしい。

 普通の人ではできないということと、付与術士自体の少なさから魔道具は高価なものになっていて、買うために必死で溜めた貯金を全部費やしたとか。


 その付与術士だが、俺には心当たりがある。

 そう、エンチャンターだ、俺がレベル120まで育て上げた職業のうちの一つにエンチャンターという職がある。


 ゲーム内ではたまにNPCが「おぬし、付与術士か?」とか言ってたから多分そうじゃないかと思っているのだが、今度試してみよう、同じなのだとしたら俺にも魔道具を作れるということになる。

 それを売れば、お金がたんまりたまることだろう...


 そんなことを思っていると、冒険者たちは口々に質問攻めにしてくる。


 「トキワちゃんどこに住んでるの?」

 「トキワちゃん今何歳?」

 「トキワちゃん村についても宛がないならうちに泊まるといいよ」


 なんて奴らだ、まぁ、俺のキャラメイクの才能を褒められているようなものだ、嫌な気はしないが、恩人に対して質問攻めとは、解せんな。


 「えっと、凄く遠いいところから来て、15歳かな、泊まるのは悪いから宿にするよ」

 

 そう返答すると村長から


 「15か、ならワシの孫と同い年じゃないか? よければ友達になってやってくれんかの~?」

 「ちょっと!おじいちゃん!?」


 孫のサラはとても迷惑している様子なのだが、村長は続けて口に出す。


 「村にいる同い年の子たちは皆男の子ばかりでの~、できれば一人でも女の子と...と思ってな」

 

 ここで、俺に今後を左右する選択肢に直面することになる。

 そう、男と女、どっちとして突き通すか、という問題だ。

 ネトゲでもたまにネカマとしてゲームをしていた経験も多いからどちらでもやっていけるだろうとは思うのだが、この選択は割と重要な気がする。


 「う~ん......」


 どっちにも利点はあるのだが、見た目的に男だと言い張るのは少し無理がありそうなのだが、女だと言い張るとそのうちぼろが出てきそうだ。

 ここはひとつ、信じてもらえなくてもいい、正直に言っておこう、リアルネカマプレイ(ただのオカマ)をするのも楽しそうではあるのだが、リスクが大きすぎる。

 背に腹は代えられんしな。

 

 「残念ながら俺は男だからな~、それは不可能な話だ」

 「「「は?」」」

 「え...?」


 村長たちが勢ぞろいで驚いた後にサラも驚愕して口が開く。

 

 「またまた、嘘は泥棒の始まりだぞ?」


 冒険者のうちの一人がなにか言っているが、泥棒の始まりって...

 俺もうシーフレベル120だわ、泥棒の始まりどころか完遂しちゃってるわ、いわば泥棒のプロだわ。


 「本当ですよ~」

 「だが、どう見てもその辺の子よりも断然に美人だぞ?それどころかこの国のトップを目指せるのでは?」


 別の冒険者が俺のことを過大評価してくれる。

 確かに俺のセンスは一級品だと思うが、そこまでか...


 「まぁ、そのうちわかりますから今は女ってことでもいいですけどね」


 なんていうのだが、証明する機会なんてないだろう。

 そもそも証明も何も、できるはずがない、男の象徴たる(ブツ)がないんじゃ証明は難しいだろう。

 人間は外見以外で性別を確かめるすべを持たないのだから。

 そんなやり取りをしている間、サラは終始唖然としていたのだが、だれも反応を示さないので、俺も放置っしておいた。

 

 そうして、昼過ぎに当たる時間。

 ついに目的地であった村に到着した。


 その村には小さな家屋が何件か立ち並んでおり、人口はおおよそ3000人といったところだろうか。

 なかなか大きく思えるその村には大きな建物が5つほど並んでいて、そのうちの3つは冒険者組合が経営しているという宿と酒場とクエスト受注、報告管理場だ。

 あとの二つのうち、一つは村でのお偉いさん方が集まって話し合いをしたり、何かのイベントを開催するときの受付などを行う会館。

 もう一つは緊急事態が起きた時に村人全員がひんできるほどの大きさと強度がある体育館のような施設で、多少のことなら壊れないほどの強度と、魔法によっての攻撃に耐えるため魔道具で魔法障壁が張ってある。


 「おい!とまれ、お前ら何者だ!」


 門番のような兵士が近寄ってくる、が、すぐに村長の顔に気が付き、すんなりと通してくれた。


 「なんだ、村長さんか、どうぞ~、村長さんのお連れなら検査なんかいりませんよね?」


 村長はそんなに威厳はなさそうだが人望は厚いようだ、ここにきていきなりひれ伏せられても困るんだけどさ。


 村長は口を開く。


 「ようこそカナリック村へ、歓迎しますぞ、命の恩人殿!」


 いきなり改まったようにそんなことを言われてもな~。

 とも思ったのだが、こんな対応も悪くはないな、すぐに出発しようかとも思ったけどもう少し滞在していくとするか...

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