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ワールドロード・オンライン  作者: くる~
プロローグ
1/8

プロローグ

 こんなことを体験したことはないだろうか。

 

 ゲームで得た物を現実のものだと考えてしまう、ゲームの中での情報を現実のものだと思ってしまう。


 その間違いには一瞬で気づくのだが、一時的にそういう錯覚に陥ってしまうような、そんな体験をしたことがあるだろうか。


--------------------

 

 カタカタカタ......カチ...カチ...カタカタ......

 

 その日も俺は深夜までとあるゲームをしていた。

 そのゲームというのは「ワールドロード・オンライン」という所謂、MMORPGだ。


 最近サービスを開始したこのゲームは、膨大な規模の戦闘要素、やることが尽きない生活要素が存在しており、基本プレイ無料で遊べるという手軽さとそのクオリティから、サービスを開始して間もなく人気ランキング一位に輝いた超人気作だ。

 

 俺は、そのゲームがサービス開始すると同時に始めて、何ヶ月か経過した今日まで、ずっとこのゲーム一筋でやってきた。


 となると、当然、進行具合もそこらの人よりは早くなる。

 

 学校は一週間に四回は休み、ひどいときには何週間も学校に行かなかったことだってあった。

 現に、このゲームを始めてから外に出た回数は片手で数え切れる程度だ、その内訳も隣のコンビニに行くだけだし、さほど遠くには出てない。


 将来のことなんて考えてもいない俺は一日中ずっとゲームに費やする日が永遠と続くのかとも思った、実際、今のところはずっと続いている。


 ...カタカタ...カチ...カチ......カタカタカタ...


 親は仕事に行き、弟は学校に行き、俺だけしかいない家の中にはマウスをクリックする音とキーボードを叩く音が鳴り響いている。

 

 ...カタカタ...カチ...カチカチ......カタカタ...




 「よっしゃ~!ついに...ついにやったぞ~!」




 そして、ついに俺はその日、成し遂げたのだ。


 学校をサボり、外にも部屋からも出ないで一日中ずっとPCの画面の前に張り付いただけの成果があって、一つのゲームをほぼ遊び尽くしたと言っても過言ではないほどまで、このゲームのキャラを育て上げた。


 このゲームを大体攻略した、といえばわかりやすいだろう。

 

 こういうタイプのゲームを攻略するのは不可能に等しいのだが、大体だから隅から隅まで攻略したわけではない。


 その中でもレベル上げに至ってはものすごく苦労した。

 普通のゲームならレベルの上限値は二桁程が主流だった、だが、このゲームは120までレベルがあり、それに加えて職業が、ランサー、ガーディアン、ファイター、ウォーリアー、バーサーカー、スレイヤー、アーチャー、シーフ、ソーサラー、ガンナー、プリースト、サモナー、エレメンタリスト、エンチャンター、モンク、アサシン、ネクロマンサー、アルケミストと、とんでもない数の種類があるのだ。

 その上、100からの上がりがものすごく遅くなるせいでレベル100周辺で止まっている人も多かった。

 

 それらの職業はキャラごとに作らなくて変更することが可能で、今の俺のキャラはそのすべての職業のレベルが120になっているという、周りから見たらニートと言われてもしょうがないほどまで、レベルを上げてきた。

 

 それに、俺自身の腕もレベル上げをしているうちに上がっていき、今では、PTでないと攻略は難しいとされていた地域を一人で歩き回れるほどになった。

 ゲーム内のそこの地域には一人で歩いているプレイヤーなどいなく、来る人のすべてがパーティーで移動している、そんな中を一人で歩けるというのは優越感がでるものだ。


 「よし、そろそろ寝るかな~」


 と、何日か寝ないでやっていたため、ずっと閉じられることはなかったゲーム画面を閉じ、就寝するために自室のベットに潜りむ。


 ..........


 .....


 ...


 「よしあきー、起きなさーい」


 おっと、言い忘れていた、俺の名前はよしあき、佐々木よしあき、という。

 

 「ううう、母さん?どうしたの?」

 「ご飯できてるよ~」

 「は~い」


 こんな自分にも声をかけてくれるとは優しい親を持ったものだ。

  

 俺はゆっくりと布団から這い出て、のそのそと居間に向かう。

 いつもは楽しげな雰囲気での食事が待っているのだが、今日は違った。

 家族が重い雰囲気でなにか寂しい雰囲気を感じさせる。


 そう思ったのもつかの間、父さんから「座りなさい」と言われて、少し緊張したまま席につくと、母さんがその重たそうな口を開く。


 「もう学校に行くきは無いのかい?」

 「本当にどうしたのいきなり?」

 「いいから応えなさい、行くつもりはないの?」

 「う...うん」


 引きこもりである俺は学校関係の話が嫌いだ。

 というか、現実のことを話すのは嫌いだ。

 

 「母さんたちね、一つ決めたことがあるの」

 「なに?何を決めたの?」

 「このままだとアンタの将来が危ないと思うからね、更生施設の方に引き取ってもらおうと思ってるわ」

 「は?なんで!?」

 「学校に行く気は無いんだろ?そんなやつの分まで払ってやれるほど金は無いんだよ」


 その父さんの言葉に俺は言い返す事もできず、ただ呆然としていた。

 放心状態とはこのことだろう。

 いつもならここで俺が暴れだして、家族に迷惑をかける所なのだが、最近は自分でもそのことを気にしていたせいか、自分でも驚くくらいに落ち着いている。

 

 「いつ家を出るの?」

 「少なくても今週中には迎えに来るといっていた」


 今週中か、一応ギルドの人達に別れの挨拶でもしておくか、俺が作ったギルドだし、いつまでもリーダー不在になるのは少し申し訳ないしな。

 

 そんなことを思いながら残りの時間、家族みんなが一言も発さないで食事の時間は終わった。

 そして俺はすぐさま部屋に戻った。


 「さて、来週からはこの部屋ともPCともおさらばだ、今日から少しずつでも時間を減らしておかないときつそうだな~」


 なんて、至って落ち着いているように見えるが、内面はそうではない。

 むしろどんどん嫌気が差してきている。


 「......クソッ!!!なんでこんなことに!!!」

 

 タンスの下らへんを思いっきり蹴り飛ばす、だが、長らく運動もしていないし、食生活も不安定で少しずづ衰えてきていた体では傷をつけることすらできず、逆に自分の足を痛めてしまう。


 その痛みで我に返った俺は珍しく外に散歩に行ってみようと考え、着替えて親に一言行ってか外に出る。


 「母さん、ちょっと外に散歩しに行ってくるね」

 「え!?え?...」


 戸惑っていたが、無視して外に出た。




 久しぶりの外だ、空気が新鮮な気がする。

 とてもきれいな夜景が奥には広がっていて、そこに並び立つ高層ビル群の明かりがついたり消えたりしているのを見ると、社会が動いていることを実感させられる。

 そのままビルから飛び降りて死んでしまいたいくらいだが、ここで逃げる訳にはいかない。

 なんとなくそんな気がした。

 それに、口で言うのは簡単だが、精神の弱い俺にとってそんなことできたものではない。



 

 「さて、ドラゴンでも呼んで町中に飛んでいくとするかな......あ、それは向こうのことだったか」


 最近はなぜだかこういうことが多い。

 前までは長時間ゲームをやった後に思いつく程度だったのだが、最近は常日頃から何処かで間違えているような気がしてならない。

 

 (ゲームと現実との境がつかなくなるってこういうことなのかな...)


 外に出てしばらくして、あることに気がつく。

 

 (中にいたときより外に出たときのほうがゲームと混ぜてしまうことが多いな)


 そう、中にいた時はそれこそ、たま~に間違える程度だったのだが、外に出てしばらくしたときに気づいた。

 外に出てからは、何分かに一回のペースで間違えている。




 コンビニでなんか買おうかな、この前の周回クエストで大分金たまったしな~

 とか、

 外を出歩いているのになかなか魔物が出てこないな~

 とかだ。




 自分の考え方の異常さに気づいたのはこれが初めてではない。

 少し前に外に出たときもこれと同じ感覚があった。

 その時はコンビニに出ただけだったからここまでひどくはなかったし、ゲームのやり過ぎかとも思ったのだが、今回のは異常だ。

 

 なんだか自分の精神状態が怖くなってきて走って家に戻る。

 そして、その最中に思っていた。

 

 (いっその事ゲームの世界に行けたらいいのに... なんて、アニメみたいな展開あるわけ無いか)


 そう、そんなアニメやマンガの世界のような話、あるはずがない。

 そこら辺に対しては現実主義者な俺は夢も何も持たずにすぐにその考えを捨ててしまう。

 

 そして家に着く頃にはそんな考えがよぎったことも忘れていた。

 

 「ただいま~」

 「...」

 「あれ?ただいま~!」

 「......」


 おかしいな、いつもなら誰かは返事してくれるのに。

  

 そう思いながら家に入っていく、思った通り、家の中には誰もいない。

 それどころか、おかしなことに家の中の雰囲気が微妙に違う気がした。

 

 何かがおかしい、俺の厨二全開で妄想癖の脳みそが警鐘を上げている。

 

 何がおかしいのかわからないが、何かがおかしい。

 そういう展開は危険なことがおおい。


 (なにかがありそうだな、普段と違う雰囲気、家の感じ、いるはずの家族... 出かけたか?いや、それはありえないな、車はあったし、くつも全員分揃っているし鍵もおいてある、だとしたら...強盗?)


 そんなありえないようなことを考えながらも、手慣れた手つきで玄関にあるお届け物開封用の折りたたみナイフを回転させながらてにもつ。

 いつも練習していたからこの程度はお手の物だ。


 この光景だけ見ると完全にやばいやつだ。


 ありえないとおもいながらも、可能性を排除していない俺は警戒しながら居間に向かう。

 


 

 

 結果、誰もいなかった、しかし、それは安心できるものでもなかった。

 誰もいないのだが、その光景は異常だった。

 

 まるで、俺の部屋に吸い込まれたかのような形で家具や傷跡なんかが続いている。

 

 これまでにないほど俺の脳内は警告を上げていた。

 普通の人ならばここで逃げるか腰が抜けるか、もしくは警察に連絡を入れるだろう、どう見ても荒らされているのだから。

 だが、俺は稀に見る厨二脳の持ち主だ、他の人と考える観点が違うと自負しているくらいにな。


 その考えは、どう見ても俺の部屋につながっている傷跡と家具の配置を見逃さなかった。

 そして、おかしいことがもう一つ。

 引きずられた跡が無いということだ。

 吸い込まれたならば引きずられてそのままあとが付くはず、だが、その後がどこにもない。

 ということは、重力の力を横にしたような感じで俺の部屋に吸い込まれていったのだろう。

 そんな物理法則完全無視な動きに厨二脳を掻き立てられる。


 恐る恐る自分の部屋に近づく。


 そして中に入った時、消していったはずのPC画面に大きな文字で「ワールドロード・オンライン」と書いてあるのが見えた。


 「あれ?確か消していったはずなんだけど... うっ...」


 それの文字を見るのと同時にめまいがしてその場に倒れえこんでしまう。




 そして、誰もいない部屋の中でPC画面は大きな電子音を立てて、電源を消した...

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