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過去作置き場

『美食家のためのモンスター図鑑』

作者: アーナンテ・コッター著/伴井訳

伝説を固有名詞のままこねくり回しているので、ご不快に思う方もいるかもしれません(作者の偏見)


 本書は冒険家としても料理人としても名を馳せた、ユーイチ・リーンボックが実際に狩り、調理したものを本人が書き記したメモや日記をもとに編集したものである。これらの資料を提供してくれた彼の孫、パーシヴァル・ド・リーンボック男爵には感謝の念しかない。マジさんきゅー!



竜の眷属

 ドラゴンの類は、基本的に足がついた蛇のような体をもっている。種によっては翼や角がついている。森の奥深く、あるいは海の底、灼熱の火山の中に生息し、獰猛だ。他のモンスターと比べても高い戦闘力を誇る。しかもその骸から採取できるものは大抵錬金術の素材として使うことができる。

 人と意思疎通を図れる知恵ある(ドラゴン)と間違えないように気をつけよう。但し、それらの(ドラゴン)は大変美味で、またその血や気を浴びると強くなれることから多大な犠牲を払ってまでも乱獲され、人間は憎まれているので更に注意が必要だ。

 以下は知性の無い劣級竜(レッサードラゴン)を取り上げる。


アースドラゴン

 美味しさ ★★

 危険度 ★★★★★

 固くてとても食えたものではないが、その肉、骨から取れる出汁はなかなかのもの。鱗に味はないもののミネラルを豊富に含んでおり、砕いて料理に混ぜても良い。

 鉱脈に生息する。体内には種々の金属、宝石が消化されずに溜まっている。中でも胆石は非常に美しく、光の加減で七色に煌めく虹金剛石レインボーダイヤモンドと呼ばれている。

非常に固いため、討伐の際は魔術師を連れていくこと。


双頭蛇(アンピスバイナ)

 美味しさ ★★★★★

 危険度 ★★★★

 潔くステーキにするべし。歯ごたえが素晴らしく、また肉汁もさほど脂っこくない。女性やお年寄りにも胸焼けせずに食べられる。しかし、吸血大蒜ヴァンパイア・ガーリックと合わせれば、男性が好むがっつりとした芳醇な香りが鼻を突き抜けるであろう。ザ☆爽快。

 ニューベリー地方の毒沼に多く生息し、飛びはしない退化した翼と名前の通り二つの頭を持っている。

 個体差が激しいが、二つの頭から相反する性質の吐息(ブレス)で攻撃する。素早く、また回復力に優れ、倒すのはなかなか難しい。


エセックス

 美味しさ ★★★

 危険度 ★★

 その身から得られる脂はさっぱりとした癖のないもので、果物のような甘い香りが特徴だ。この脂をバターのように使った菓子は絶品である。匂いが喧嘩するためバニラはいれない方が良い。肉は正直固くてまずくはないが微妙である。

 こちらから襲わない限り襲ってこない、大きな目と小さい翼が特徴の竜。牙は金属を腐食させるため討伐は困難。ヘナム荒野に極稀に出現する。


稲妻蛇(シシトール)(またはケツァルコアトル)

 美味しさ ★★★★

 危険度 ★★★★

 淡白な味わいの肉が特徴。茹でて割き、濃いがほのかに酸味のあるさっぱりとしたソースを掛けて味わうべし。蒸しても美味。

 羽毛のある少々珍しいドラゴン。その羽毛を使った布団は王侯貴族もなかなか使えない。

 水辺に生息し、雷系統の魔法や吐息(ブレス)を使うので要注意だゾ☆。


テュポン

 美味しさ ★★★★★

 危険度 ★★★★

 香辛料をたっぷりと使った煮込み料理によく合う。牛蒡、鷹の爪などと一緒に炒めても美味しい。キリリとした冷酒で頂きたい。

 シシリア地方のエトナ火山内の迷宮(ダンジョン)に生息。夜のごとき黒い肢体は目立つのですぐに見つかる。破壊衝動が強いので気をつけること。鱗や牙が武器としてもてはやされている。


ニーズヘッグ

 美味しさ もはやゴミ

 危険度 ★★★★★

 ドラゴンにしては限りなくマズい。ねばっとした食感の肉。煮ても焼いても蒸しても炒めてもダメだった。

 素材としては骨が水晶のようで美しいため、高額買取されている。

 腐肉を主食とし、極寒の大陸ニブルヘイムの氷樹付近に生息している。


バジリスク(コカトリスとも)

 美味しさ ★★★

 危険度 ★★★★

 肉は柔らかく、ふくよか。蒸し料理や唐揚げを私は勧めるが、どんな料理にも合う肉である。卵に関しては、殻に弾力性があるため、調理は困難を極める。茹で卵くらいしか素人には作れない。

 灼熱の砂漠に生息する、見た目は蛇の尾を持つ鶏だが、古来より竜の眷属として扱われている。その目玉と鶏冠は錬金術の素材として重宝される。

 深紅の目を見れば石化し、毒を持っている。早々に目を潰すべし。


ヒュドラ

 美味しさ ★★★★★

 危険度 ★★★★

 かば焼きが至高。東方の(ライス)によく合う。酒のお供にしたいなら、燻製にするべし。個人的には妖桜のチップをお勧めする。

 七の頭と十の角をもつ燃えるような赤い竜。角や肝臓、毒腺は錬金術の素材として有用。

 泥沼や毒沼にいることが多く、猛毒をもつ。頭を全て落とすか、心臓を潰さないと死なない。


火竜(ファイアドレーク)

 美味しさ ★★★

 危険度 ★★★★

 血抜きをせずに調理するべし。その肉とともに煮込むのが良いだろう。オレガノなどのハーブ類を入れることを強く勧める。じっくりと煮込んだ肉はほろりとほどけ、最高の一品になる。腸詰(ソーセージ)も中々。

 魔法で稲妻を伴う嵐を呼び、火を吐く竜。極北地域の彗星山脈やヴォルスンガ地方のファヴニール山脈上空をたまに飛んでいる。


ブルーベン

 美味しさ ★★★★

 危険度 ★★★

 脳を人食檸檬とアボカドと一緒にディップにしたものは、大抵の生野菜に合う。肉は白身の魚のような味わいで、大胆に塩で串焼きにするとよい。レモングラスを乾燥させて砕いたものを隠し味程度に振りかけてもいいだろう。

 青い竜。泥沼に生息。その頭蓋は回復薬の材料になることもある。


ミッドガルドワーム

 美味しさ ★★★

 危険度 ★★★

 このワームの骨と幽体藻からとった出汁は至高の一品。スープとして客に供しても感嘆の吐息が漏れるだろう。また雷鳥の肉と痺茸などと煮込めば、パチパチと弾ける食感がとても面白い絶品になる。また食べたい。

 牛類の頭を釣餌にすると比較的簡単に釣れる。

 自分の尾を咥えて眠ることで有名。毒の吐息に注意。深海に生息。


ラドン

 美味しさ ★★★★

 危険度 ★

 肉は熟した林檎。鱗は爽やかな蜜の結晶。この竜から作ったパイは、一度食べると他のパイが美味しく感じられなくなるので注意せよ。

 果樹園や花畑に生息しているが、擬態が上手く、またとても素早い。またこの竜に樹液を吸われた果樹は美味になるので、果樹園の主は討伐を依頼しない。上記の理由のため、討伐は非常に困難である。


リンドヴルム

 美味しさ ★★★★

 危険度 ★★

 干し肉として高級品に当たる。噛めば噛むほどその滋味のある味の虜になるであろう。しかしそれ以外の料理には不思議と合わない。

 羽も足もない、もはや蛇では?と首を傾げたくなる竜。湿地にとぐろを巻いている。見ているとやる気が消えうせるので、サクッと倒そう。


飛竜(ワイヴァーン)

 美味しさ ★★★★

 危険度 ★★★★

 赤ワインでじっくりと煮込んだ、秘境ピクト村の郷土料理のワイン煮が美味しい。この村のヴィーヴルブランデーとは最高の相性を誇る。また、その卵も味が濃厚でプディングに最適だ。もうたまんない。巣から掠め取るのは非常に困難だが、命を懸ける価値はある。

 蝙蝠のように爪のついた翼が特徴的。獰猛で、尾と牙に毒がある。稀に体内に黄泉の紅玉ロートルモンド・ルビーを生成し、高く売れる。



参考 『ドラゴン 神話の森の小さな歴史の物語』 ジョイス・ハーグリーヴス 2009

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