登場人物紹介
9章終了時までのネタバレを含みます。
こんな奴もいたなあというご参考程度にどうぞ。
【ミリアールト】
北方の小国。長い冬に苦しめられる厳しい風土ゆえに他国と争うことは少なく、文化的な気風の国。
シャスティエ
ミリアールトの元王女。イシュテンの侵攻により父と兄が戦死したため女王となる。
金髪碧眼、ミリアールトの女神・雪の女王を思わせる冷たい美貌の少女。聡明さを謳われるが、高慢と言われるほどの誇り高さと強情さも併せ持つ。
「復讐の誓い」を意味するクリャースタ・メーシェを婚家名として名乗り、イシュテン王の側妃となる。
レフ
シャスティエの従弟でミリアールトの王位継承権を持つ。シャスティエとは姉妹と揶揄されるほどよく似ている繊細な美貌の青年。シャスティエに対して肉親の情を越えた愛情を抱いている。
イシュテンの侵攻に際して生き残り、シャスティエ奪還のためにイシュテンとブレンクラーレを行き来しつつ暗躍する。
アレクサンドル
ミリアールト王家に長く仕えた老齢の貴族。人望も厚く、イシュテンの統治に不満を持つミリアールトの民を抑えていたが、人質として守られているはずのシャスティエに対する暴言に乱を起こすことを決意する。後にシャスティエの覚悟に感銘を受けてイシュテン王に仕える。ミリアールトではグニェーフ伯、イシュテンで新たにイルレシュ伯の称号を賜る。
堂々とした体躯、白に近い金髪に、凍ったような薄青の瞳。
イリーナ
シャスティエの侍女。人質として囚われることになったシャスティエに同行してイシュテンに赴く。金茶の巻き毛に若草色の瞳の愛らしい少女。高すぎる誇りゆえに無謀な行動をしがちな主を常に案じている。
【イシュテン】
大陸の中央の草原に構える戦馬の神を奉じる国。しばしば野蛮と称されるほど好戦的で略奪を好み、王族同士や諸侯同士で争うことも多い。
ファルカス
イシュテン王。側妃腹で後ろ盾がなく、王位からは遠い存在だったが、ウィルヘルミナに見初められたことによりティゼンハロム侯爵家の後援を得る。しかし外戚に操られることを嫌って王の力を高めようとしている野心家。王としては忍耐強く武に秀でるが、実際は矜持高く狷介で激しやすい性格。
狼の名の通りに鋭い青灰の瞳に黒い鬣のような髪。戦馬の神の騎手に相応しい美丈夫。
ウィルヘルミナ
イシュテン王妃。近しい人には愛称でミーナと呼ばれる。
政略結婚の道具として利用するため、父によって何も知らず何も考えないように育てられた。年齢の割に幼いとも無邪気とも評されるが、善良で心優しい女性。夫と娘をこよなく愛する。自身の境遇に満足していたが、イシュテンの女性像とは全く異なるシャスティエが身近に来たことで、また、シャスティエを巡る陰謀に触れることで、違和感を覚え始める。
艶やかな黒い髪に黒い瞳のおっとりとした美女。
マリカ
ファルカスとウィルヘルミナの間の娘。現在のイシュテンの唯一の王女。
父譲りの青灰の瞳と母譲りの豊かな黒髪の闊達な幼女。お淑やかに過ごすよりも外を駆け回る方を好むお転婆だが、両親に温かく見守られている。
【国王派】
アンドラーシ
ファルカスの側近のひとり。イシュテンの武人には珍しく細身で女性的な容貌の青年。ファルカスに心酔し、王権を確立するために身命を賭す決意を固めている。
シャスティエを側妃に推し、駒にしようと考えていたが、彼女の誇り高く気丈な性格を知り、王に相応しい女性として心からの忠誠を誓う。
ジュラ
ファルカスの側近のひとり。イシュテン人に多い黒髪黒目、武人と言われて思い浮かべる典型的な姿の精悍な男。見た目に似合った謹厳実直な性格を買われて、ミリアールトの最初の総督に任じられる。後に呼び戻されて、友人のアンドラーシと共にシャスティエを王の側妃にしようと説得を試みる。
【ティゼンハロム派】
リカード
ティゼンハロム侯爵。ウィルヘルミナの父。娘を後ろ盾のない王子に嫁がせて王位に就けることで恩を売る策略家。更に孫を王にして完全にイシュテンを手中に収める計画だったが、ウィルヘルミナに男児が恵まれなかったためマリカの子の世代に希望を繋いでいる。
自ら権力を握ろうとするファルカスとは、表向き協力し陰ながら牽制し合う関係。シャスティエが側妃になることを警戒し、命を狙っている。
エルジェーベト
ウィルヘルミナの乳姉妹で、侍女として常に傍に控えている。リカードの愛人でもあり、王宮の出来事をリカードに伝える役目も負っている。
ウィルヘルミナの幸せな世界を保つことを至上の使命と捉えており、そのためなら自分の全てを擲つことを躊躇わない。
ラヨシュ
エルジェーベトの息子。シャスティエに懐き始めたマリカの気を逸らすため、遊び相手として王宮に呼ばれる。敬愛する母からティゼンハロム侯爵家とウィルヘルミナへ忠誠を尽くすように言い聞かされており、それに疑いを持っていない。
【ハルミンツ派】
ティグリス
ファルカスの異母弟。名前は虎の意味。王位争いに巻き込まれることを恐れた母によって脚を折られ、常に杖を携えている。黒い髪に黒い瞳、長身。日を浴びることがないために色が白く細身で弱々しい印象がある。
優れた知性を持つにも拘わらず、武を重んじるイシュテンでは不具者は惰弱と見做されて顧みられない。そのため、イシュテンの気風自体を憎んでブレンクラーレと組んで乱を企んでいる。同時に優れた武人である異母兄に対しては憧れに似た複雑な感情を抱いて執着している。
ハルミンツ侯爵
イシュテンで最も有力な諸侯のひとり。ティグリスの叔父。リカードに権力が独占されている現状に不満を持ち、ティグリスを王に担ぎ上げようとしている。本人は野心家のつもりだが、神経質な姉や冷徹な甥に振り回されている側面もある。
【ブレンクラーレ】
大陸の東に位置し、武にも文化にも優れた大国。睥睨する鷲の神を奉じる通り、複数の地方や民族を巨大な翼で庇護し纏め上げ、同時に鉤爪で抑えつけているとされる。
アンネミーケ
ブレンクラーレ王妃。病弱な夫に代わって大国の政治を取り仕切る「摂政王妃」。容姿に優れなかったために夫の寵愛を多く愛人に奪われたという苦い記憶があり、美しい者は男女問わず無能・惰弱と信じようとしている。頼りない息子のためにイシュテンの力を削ごうと企んでいる。
マクシミリアン
ブレンクラーレ王太子。シャスティエと婚約していたが、イシュテンのミリアールト侵攻後人質になった彼女を見切ってギーゼラと結婚する。母親には砂糖菓子と形容される軽薄な性格で遊び好き。
赤金色の髪に空のように青い瞳の爽やかな好青年に見える。
ギーゼラ
シャスティエに代わって王太子妃に迎えられる。容姿、才知ともに凡庸で自分に自信が持てず、夫にも関心を持たれていない。顧みられない境遇に同情してくれたレフに仄かな思いを抱いている。
【故人】
グレゴリー
故ミリアールト王の弟、シャスティエの叔父。イシュテンの侵攻に破れた後、シャスティエを救うためにファルカスに首を差し出す。
ルスラン、ヴィクトル
グレゴリーの息子、シャスティエの従兄。父と同じ最期を遂げる。
ゲルトルート
前イシュテン王の王妃。実子が王位を継がなかったため、王太后ではなく王の未亡人に過ぎないとして寡妃太后と呼ばれる。息子ティグリスを想う余りに不具にして過保護に守っていたが、それを恨み疎んだティグリスによって毒殺される。
ゲルトルートの侍女
王妃時代からゲルトルートに仕え、前イシュテン王の寵姫や側妃、その子たちを始末することに加担していた。ゲルトルートの毒殺現場に居合わせ、口封じのために殺される。
イルレシュ伯
ティゼンハロム侯爵麾下の諸侯のひとり。ミリアールトに左遷された息子を助けるべく、寡妃太后と組んで王妃暗殺を企むが、露見して処刑される。
イルレシュ伯の長男
反逆の咎でファルカスに死を賜った弟について抗議したため、懲罰的にミリアールトの総督に任命される。ミリアールトの民を虐げ、更に人質であるシャスティエに暴行を加えたと嘯いたためアレクサンドルらの怒りを買って私刑に遭う。凍死。
イルレシュ伯の次男
リカード主催の狩りで、王の意志に反してシャスティエを暴行しようとした咎で死を賜る。
バラージュ
ティゼンハロム侯爵麾下の諸侯のひとり、伯爵。ミリアールトの反乱に際し、リカードから降伏を認めずシャスティエを必ず亡き者にするよう命じられるが、失敗。家族への罰を恐れてリカードの関与を口外することなく、反逆者ではなく「勘違いで降伏した者を攻撃した」無能者として死を賜る。