かくれんぼと言い伝え
「……きみのお友達、もうみんな見つかってしまったみたいだね」
その視線を追ってみると、確かに拝殿にある賽銭箱の前の小さな階段に、一緒に隠れたはずの友達が座って、つまんなそうに僕を探している千里ちゃんを目で追っていた。
当の千里ちゃんは、木の上にいる僕に気づくことなく辺りを探している。
「のぞみちゃあん!!どこー!?返事してー!!」
何故か半分泣きながら、僕を探すその姿に違和感を感じて首をかしげた。
たかがかくれんぼなのに、どうしてそこまで必死になっているのか……。
「あの子……分かってるみたいね」
「なにが?」
一緒に千里ちゃんを見下ろしていた少女は、「ふふっ」と笑った。
「ここの神社の話、きみも知っているでしょう?」
「……かごめをやっちゃだめっていう?」
「そう。それだよ」
僕は訳がわからず再び首をかしげた。
かごめをやっちゃいけないっていうのと、今僕らがしているかくれんぼとどう関係があるのか。
「きみは……というより、あそこにいる殆どの子はそれしか聞いていないみたいね。あの子だけ全て知っている」
「どういう意味?さっきから何言ってるの?」
相変わらず僕を探して駆け回る千里ちゃんから視線を外した彼女は、まるで何かを企んでいるかのように微笑んだ。
「この神社の言い伝えよ」