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GARAGE~フェラーリに恋した男と三姉妹~  作者: トネ コーケン
62/100

(62)自転車

 修学旅行をすっぽかして行った京都旅行で、かつて仁樹が乗っていたバイク、RC30は舞のものになった。

 どんな手を使ったのか、現在の名義人である仁樹の知り合い、京都桂川のお婆ちゃんが400ccの中型二輪として車検を通したという連絡があった。 

 あと数日でお婆ちゃんが舞の体に合わせて仕立てた革ツナギと共に、東京まで届けられるという。

 舞としては居ても立っても居られない気分。仁樹に頼んでフェラーリで今すぐ京都まで駆けつけ、そのまま乗って帰りたい気分だったが、とりあえず中型二輪の免許が無いことには乗ることが出来ない。

 十六歳の誕生日を数日後に控えた舞は、バイクの免許を取るべく教習所に通うことにした。

  

 周辺に自動車やバイクの教習所が幾つかある東京都下。舞は特に選り好みすることなく一番近い教習所を選び、ネットで入校手続きを済ませた。

 順調に進んでいく免許取得の計画に、舞は焦りを感じていた。

 舞がよほどヘタクソで無い限り、学校の放課後と休日を利用すれば半月ほどで中型二輪の免許が取れるが。その教習所まで行くにはバスを二回乗り換えなくてはいけない。

 直線距離ではそこそこ近いのに、バスは遠回りのルートを通っていて、学校の合間を縫った貴重な教習時間の半分近くが通学に費やされることになる。

 仁樹のフェラーリや真理のトヨタトラックで送ってもらうわけにはいかない。二人とも舞が教習に行く平日午後には家に居ないことが多い。


 教習一日目の舞は遠回りな上に乗り換えの接続が悪いバスで時間を空費し、結局入学金を納付し教科書を受け取った時点でタイムリミットとなった。

 このままじゃ学校が終わってから教習に行っても乗れるか乗れないのかさえわからない。結局、舞は苛立ちを仁樹にぶつけた。

 最近は特に意識せず勝手に入るようになった一階のガレージで、舞の愚痴を聞いていた仁樹は一言で返答した。

「自転車で行けば時間はかからない」

 舞は地図を見る。バスで大回りする教習所までの通学コースをショートカットする最短のルートは、大半が川沿いのサイクリングロードになっている。

 車やバイクで行くと信号の多い県道を通ることになるので、自転車のほうが早いかもしれない。

 道を知り尽くした仁樹の明快な回答を、舞は一蹴した。

「うちには無いわよ」


 買い物等の用は真理のトヨタトラックで間に合ってるので、この家には自転車が無かった。

 舞は頭を掻いた。教習の費用は父の遺産を管理している真理から出して貰ったけど、追加の金を要求しなくてはいけない。近くのホームセンターで安物の自転車を買おうと思った。

 自転車の購入という予想外の手間が加わった舞は、頭の中でいつ自転車を買いに行くか予定を組み立て始めた。真理が帰ってきてからトラックを出して貰うか、その時までホームセンターは開いているんだろうか。

 舞がガレージの中を歩き回りながらブツブツ言っていると、背後から耳障りなエンジン音が聞こえた。

 仁樹がフェラーリを始動させている。またどこかに走りに行く積もりだろうか。舞は自分が抱えてる問題なんて、彼にとってどうでもいい事なんだろうかと思った。


 いっそ仁樹のフェラーリに乗り込み、ホームセンターまで連れていきなさいと要求しようと思ったが、二人で乗るとバッグの置き場所にすら困るフェラーリ。自転車なんて積めるものではない。

 フェラーリの運転席に座っている仁樹は、舞に向かって言った。

「いらない自転車の心当たりがある。今から取ってくる」

 仁樹は舞に一方的に告げ、そのままガレージのシャッターを開けてフェラーリで走り去った。

 ガレージに取り残された舞は、自動的に閉まる電動シャッターが閉まっていく音を聞きながら考えていた。

 仁樹は自転車を貰ってくると言っていたが、あのフェラーリでどうやって持ってくるんだろう。屋根にでも括り付けてくるのか、車体に傷がつく上に見栄えの良くない真似を、仁樹がするわけが無い。


 舞はガレージで仁樹の帰りを待った。さっきまでの苛立ちは消えるとまでは言わないまでも、別の考え事に押しのけられた気がする。

 仁樹はあのフェラーリで、どんな方法を用いて自転車を運ぶのか、思い悩む私をどうやって助けてくれるのか。

 気が付いたら時間が経っていたのか、さほど待つこともなく仁樹のフェラーリが帰ってくる音がした。

 他の車が家の前を通ることはあるけど、普通の車とは異なる音。

 ガレージが開き、仁樹のフェラーリが入ってくる。

 舞は帰って来た仁樹に興味ない風を装いながら、フェラーリのあちこちを盗み見る。

 観察した限り、フェラーリのどこにも自転車は積まれていなかった。


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