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GARAGE~フェラーリに恋した男と三姉妹~  作者: トネ コーケン
31/100

(31)発熱

 季節は春から梅雨前の初夏へとさしかかる頃。

 今年は平年より朝晩の寒暖差が大きく、末っ子のまるの部屋着も昼間は下着をつけずタンクトップ一枚。夜はドテラと節操無い様子。

 新入学のオリエンテーションが終わり、三姉妹が各々の学年の一般授業に慣れてきた朝。

 いつも通り真理、舞、まる、そして仁樹の四人は朝食のテーブルを囲んでいた。

 今朝のメニューはご飯の上にハンバーグと目玉焼きを乗せたロコモコ丼。

 朝食は和食を食べたがる真理とまる、洋食を好む舞と仁樹に考慮して、真理は和風と洋風の朝ごはんを交互に作っていたが、今朝は折衷のメニュー。

 三人で受験勉強をしていた昨年から寝坊する習慣の無い三姉妹は揃って朝から食欲旺盛で、バーベキューソースで味付けしたロコモコ丼を美味しそうに食べている。

 仁樹は美味しくも不味くも無さそうな顔ながら、真理の作った朝食をいつも残さず食べ、必ず食後に感謝を述べる。

 

 朝食が終わり、学園までのバスが来るまでまだ余裕のある時間。仁樹は真理の淹れたお茶を飲んでいた。

 舞も仁樹を真似たわけじゃないが、この時間はお茶を飲んで過ごすことが多くなった。まるは丼一杯の朝食を終えたばかりだというのにお菓子を食べながらテレビを見ている。

 お茶を飲み終えた仁樹が立ち上がる。三姉妹が家を出る時間より少し早いが、彼はいちいち皆を送り出すようなことはしない。 

 いつも通り三階のリビングから一階のガレージに降りるであろう仁樹を、手でしっしっと追い払う仕草をする舞。

 朝食の席の座り位置がそうなっているためか、最近の舞は食後ずっと仁樹の隣に居る。

 まるがテレビ前のソファの上で体を回し、背もたれに寄りかかりながら仁樹に言った。

「お兄ちゃん、わたしこれから学校に行くんだよ」

 ニヤニヤ笑いながら当たり前のことを言うまる。仁樹はごく短い間を置いて言った。

「あぁ、行ってこい」

 まだ家を出るまでには時間があるが、見送ることなどしない仁樹への、行ってらっしゃいの先払いみたいな要求。

 他人の言葉の真意を理解しない、しようとしない仁樹は、まるの言葉に対しては幾らか明察な反応を見せる。


 仁樹がまるを見て発した言葉は、その視界の中に入っていた舞にも必然的に向けられた。舞が椅子を動かしてまるの近くに寄っていたのは偶然かもしれない。

「別にあんたに言われなくたって行くし」

 前借りのお小遣いをせしめたような表情のまる、どこか得意げな顔の舞を無表情に見た仁樹は、そのままリビングからキッチンへと歩いた。

 キッチンで朝食の後片付けをしている真理に、いつも通り歯の浮くような感謝を言うのかと思っていたまると舞は、我関せずといった感じで自分の登校の準備を始めている。

 いつもながら手早い作業で洗い物を終えた真理は、仁樹が近づいてくる気配を察したのか、通学用のワンピースの上に着けたエプロンを外す。

 仁樹は舞やまるに接した時と何も変わらない無表情のまま、真理に行った。

「学校に行かないでください」


 予想外の言葉に真理はキョトンとしている。舞は手に持っていたカバンを落っことした。まるは驚きというより興味深げな顔で仁樹を見ている。

 仁樹の不可解な言葉の後の短い沈黙。最初に口を開いたのは舞。

「こいついきなり何言い出してんのよ!私達の居ない間に真理姉ぇに何するつもり?」

 まるも便乗して仁樹に言う。

「お兄ちゃん、甘えんぼさんするなら真理姉ぇよりわたしにしてよ、学校サボって一緒に居てあげるよ」

 真理は外したエプロンを胸の前で持ったまま、仁樹を見上げている。仁樹は彼にしては珍しく、真理と体が触れるほどに近づきながら言った。

「あなたは熱がある。おそらくは風邪でしょう。今日は学校を休んでください」

 仁樹に言われて症状を自覚したのか、真理はそのまま仁樹の胸に倒れこんだ。


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