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GARAGE~フェラーリに恋した男と三姉妹~  作者: トネ コーケン
27/100

(27)眼差し

 トヨタトラックを停めた玄関下のスペースに、仁樹と三姉妹が揃った。

 仁樹はいつもと変わらぬグリーンの整備用ツナギ服だが、舞は色合いやポケットの位置等からさっきとは違うものだということに気付いた。

 荷物の積み込みで少々の汗をかいた仁樹は、彼なりに気遣っているんだろうと思ったが、舞が知る限り彼から人間らしい体臭を嗅ぎ取ったことは無い。それに、彼がほんの僅かな汗の臭いを気にしているなら、その相手は明らか。

 舞は後ろを振り返り、地味な生成り色だけどオーダースーツ一着ほどの値の張るエプロンドレスを着ている姉の真理を見た。

 末っ子のまるはミニスカートにパフスリーブのシャツ。春っぽいけど歩いている時より体感気温の低いお花見の席では少し寒そうな格好。

 仁樹がトラックを停めたスペースの横にあるドアを開け、一階ガレージに入ってすぐ出てくる。手にはスイングトップと言われるコットンのジャケットを持っている。

 仁樹はスイングトップをまるに放った。

「その格好では寒い」

 まるは仁樹から受け取った赤いスイングトップに顔を押し付け、着古したジャケットの匂いを嗅いでいたが、顔を上げて答える。

「平気だよ~今日あったかいし、でもお兄ちゃんが言うなら着るね」

 仁樹が三姉妹と一緒に暮らしてしばらく経つが、舞は仁樹が真理以外の姉妹に気遣いらしきことをしたところを初めて見た気がする。

 真理に対しては機械的なほどに丁寧な態度である理由は知らされた、真理のおかげで五千万円以上の価値のあるフェラーリを貰い受けることが出来たから。まるへの態度はそれとは違うように見えた。この男が、何かの理由で自分には似合わぬ人間的な暖かみを、まるに感じているような感覚。

 自分だけ軽く扱われたような気がして少し不機嫌になった舞は、四人乗りトラックの右前ドアを開けながら言った。

「さぁあんた運転しなさい、私たちのお花見に連れてってあげるんだから、それくらいは役立ちなさいよね」

 仁樹は舞の顔より、開け放たれたドアの中を見ていた。それから舞に顔を向けて言う。

「俺にはフェラーリ以外のものは運転できない」

 舞が見る限りトラックはオートマ、仁樹がマニュアル車のフェラーリを運転する様は助手席で見たし、運転がヘタクソかといえば悪い意味で上手ことは、あの空を飛ぶような体験で知っている。

 舞が無理にでも仁樹を運転席に押し込もうとしたところ、真理が仁樹と舞の間に割り込むように駆け寄ってくる。

「もちろん仁樹さんは私の運転でお花見にお連れします、出来れば仁樹さんには私の隣に座って欲しいのですが」

 仁樹は真理の言葉には躊躇いなく反応した。

「そうさせていただきます」

 仁樹はトラックの前を回って左側のドアを開け、助手席に乗り込んだ。運転席に乗り込む真理を見る仁樹の目は、少し安心した様子。

 舞には彼が単に苦手な乗り物を運転しなくて済んだことで安堵しているのかと思ったが、仁樹が十数歳年下の真理を見る目は、何か守られている側の者を思わせるものだった。

 真理が仁樹を見る目も、いつもより頼もしく優しげ。

 ついさっき仁樹がまるに向けた視線に、似ている気がした。

 なんだかよくわからなくなった舞は、とりあえず仁樹の弱点らしきものが一つ分かっただけでも収穫だと思い。まるの手を引っ張りながら後部シートに乗り込んだ。


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