第七話 風呂
この話、急にシリアスになったりするけど。気にしないで欲しい。
うちには、風呂がある
といっても、ただ、お湯を沸かすための大きな容器があるだけだ。
俺はお風呂が大好きだ。でも、お風呂は一週間に一度、と決まっている。
その日以外は、濡れた布で体を拭くだけだ。
そして・・・!
「今日はお風呂の日・・・!」
基本的に、俺は二番風呂だ。
仕事に行くライナが、先に風呂に入ることになっている。
俺が川から水を汲み、火を起こすのだ。
たまに、「火の加減を見に来ました」とかいって、ライナの風呂を覗く。
いや、ほんとたまにだ。
そういったことも含めて、俺は風呂が大好きだ。
「じゃあ、行って来るぞ、レイン。」
ライナが仕事に行く。
そうすると、俺のお風呂タイムがやってくる。
はぁ・・・やっぱり風呂はいい・・・
体が芯まであったまっていく。
しかもこれは、ライナが入った後のお湯だ・・・!
何だか、得した気分になってくる。
こうして、お湯に浸かっていると、一年前を思い出す。
ある雨の日。気が付くと、俺は地面に横たわっていた。
俺は、何故ここに居るのか、自分が誰なのかも分からない。
体がずぶ濡れで寒い。おなかも空いた。怪我もしているようだった。
でも、動けない。立ち上がろうとしても、力が入らない。
・・・死ぬんだな、と。俺はそう思った。
その時、誰かがこっちに近づいてきた。
それがライナだ。
ライナは、俺を家まで運び、食べ物をくれて、風呂にもいれてくれた。
そして、「今日からお前はうちの子だ!」と言った。
・・・俺は今でも分からないことがある。
何故、ライナは俺を助けたのだろうか。
俺は金を持っていないし、ライナに何もしてやれない。
ライナにとって俺は、有益な存在ではないのだ。
俺を家に置いておくと、食費がかかる。それでも、食事をくれる。
しかも、学校へ行くための金も出してくれるというのだ。
なのに、俺に何の対価も要求しない。
ライナは、いったい何を考えているのだろう。何が目的なのだろう。
そう考えると、怖くなる。
これが、彼女の言う、「愛」という奴なのだろうか。
・・・いや、やっぱり俺には理解できない・・・
と、ぐだぐだ考えていると、頭がぼーっとしてきた
あつっ!
少し入りすぎたようだ・・・
風呂から上がり、少し体を冷ます。
俺は、今の生活が楽しい。
ライナの考えていることはよく分からない。
でもライナは、俺に剣術を教えてくれる。
そして、俺は日に日に強くなっているのが分かる。それが楽しい。
(そろそろ寝るか)
その夜、俺は心地の良い夢を見た気がした
あと、四話くらいは、ほのぼのした話です。