第十九話 初めてのダンジョン
俺らが、ファウス先生に連れてこられてから、三ヶ月が過ぎた。
シェイドは、めきめき強くなっていくし、アイリスも、新しい魔術をどんどん身につけていった。・・・俺は、まあ、うん。
クロアも戦闘に慣れてきたようだ。良い事だよ。うんうん。
「おーい、君たちー。」
ファウス先生に呼ばれた。
「なんでしょうか。」
「そろそろ、普通の生徒たちが、実戦の授業に来る頃なんだよね。」
ああ、この時期になると、先生から実戦の許可をもらえるんだっけ。
「だから、君たちに付きっきりで指導することは出来なくなるんだよ。」
「そうですか・・・」
「残念です・・・」
「そこで、君達には、お使いに行ってもらうことにしたんだ。」
「お使い?」
「うん。この学校を出て、ずっと南にいくと、洞窟があると思うんだ。」
あぁ、馬車のおじさんが言ってたところか。
「その洞窟の奥のほうにある、真っ黒な花を採ってきて欲しいんだ。」
「それだけですか・・・?」
いやいや、アイリス。それだけって言っても、洞窟には魔物がいるんだぞ?
「はは、まぁそれだけなんだけどね。ただ、魔物には気をつけてくれよ」
「魔物が出るですかっ!?」
「うん。しかも強力な奴がね。最近調査に行った人が、帰ってこないから。」
・・・やばいやばい
「まあ君たちなら大丈夫だと思うし、別に戦わなくてもいいしね。目的は、黒い花。それだけだから。」
・・・不安だ。
「じゃあ、行ってみよう!学校へ届けは出しておくから、三日以内に帰って来るんだよ!」
「はーい!」
って三日以内って何!?そんなかかるかもしれないの!?
「これが、君たちの荷物ね。食料と、武器が入ってるから。」
「なんか、軽いです・・・」
「まあまあ、これも訓練だから。・・・魔物の肉って美味しいんだよ?」
「ひぃぃ!?」
「じゃあ、気をつけるんだよ!行ってらっしゃい!」
「はーい・・・」
「行ってくる。」
・・・シェイドだけ何か楽しそうなんだよなぁ・・・
洞窟は、学校から三十分くらい離れたところにあった。
「ここだな・・・」
「ここですか・・・」
「ここだね・・・」
「早く入ろう。」
「何でお前だけ楽しそうなんだよ!!!」
「べ、別に楽しいわけじゃない。勘違いするな、雑魚。」
・・・顔に全部出てます。お前、100%楽しんでる。
「いいから、入るぞ。」
シェイドがさっさと行ってしまう。
俺たちもシェイドに続く。
「うわぁ・・・まっくらです・・・」
「暗いな・・・よっと。」
手に、火を生み出し、辺りを照らしてみる。
「うわ、なんじゃこりゃ!」
壁や天井にびっしりと、植物の根が張っていた。
「イービルグラスだな。」
「知ってるのか、シェイド?」
「あぁ、これは、憎しみを栄養にして育つ。」
「そうなのか。」
「だから、こういう魔物が出るところで、よく生えてる。」
「へぇ・・・」
「本で読んだ。」
シェイドは物知りだなぁ。
しばらく、一本道を歩いていく。
この洞窟は思っていたより、通路が狭い。
こんなところで、魔物に会ったら大変だ。
「あ・・・道が二つに分かれてるです。」
「レイン君、どうしよう。」
「・・・二手に分かれる、とか?」
「危険じゃないですか?」
「でも、通路がちょっと狭いし、少人数のほうが、戦闘が楽かなって。」
「そうだな、俺たちの実力なら、大丈夫だろう。」
「じゃ、じゃあどうやって分けるの?」
「ん?・・・それは」
「あ、あたし!レインと一緒がいいです!」
「えぇっ!?わ、私も・・・レイン君と一緒が、いいな・・・」
「早いもの勝ちですっ!」
「公平にじゃんけんで決めよう・・・?ね?」
「だ、だったら!」
「れ、レインは、どっちがいいですか・・・?」
「シェイド、行こうぜ。」
「いいだろう。足を引っ張るなよ。」
「「なんでそうなるんですかーっ!!!」」
「え?なんか揉めてたから。」
「そ、そんなぁ・・・」
「あんまりですっ!」
「右だ。右に行こう。」
「分かった。じゃあ、後でな、クロア、アイリス。調査が終わったら、またここに戻って来るんだぞ」
「はーい・・・」
こうして、俺らの初めてのダンジョン探索が始まった。