第十三話 ファウス先生
「・・・はぁ」
ロングの茶髪の、幼児体系の少女。
アイリスは、つまらなそうにため息を吐いた。
たった今、魔術の相殺訓練で、「僕は、天才魔術師です!」とか言った男を吹き飛ばしたからだ。
「・・・弱いです。」
「・・・」
自称天才魔術師、トマスは、ピクリとも動かない。
「通してー、すぐに回復させるからー。」
治癒専門の先生がやってきた。
先生が治癒魔術をトマスにかけると、トマスは、意識を取り戻す。
「・・・はっ!?」
「・・・もう一回やります?」
そう聞くと、トマスは
「はわっ!?・・・あわわわわ・・・こふぅ」
気を失った。
「ほーんと、つまらないです。」
ふと見てみると、皆の視線があたしに集まっていた。
「誰か、あたしと組まないですか?」
全員が視線をそらす。
ここには、骨のある奴は居ないのか。
「ねぇ、君。さっきのは、火の上位魔術かい?」
後ろから声をかけられた。
「そうです。」
この人は誰だろう。眼鏡をかけていて、だらしなくひげを生やしている。
服装もラフで、ヒョロっとしている。黒い髪もボサボサだ。
「おぉ!さすが代表だね。」
まぁ、魔術には自信がある。
あたしが習っていた先生曰く、あたしは、火の大魔術を使うことが出来るらしい。まだ、制御は出来ないが。
「じゃあさ、僕に向かって打ってくれないかな。さっきのアレ。」
「・・・あなた誰ですか。」
「・・・あぁ、ごめんごめん。僕はファウス。実戦の授業担当だよ。」
この人が実戦の先生か。・・・あまり強そうには見えない。
「じゃあお願いしていいかな。」
「・・・いいんですか?」
「うん。全力でやっちゃってよ。」
「分かりました。」
さっきのフレイムカノンに、さらに感情を込める。
手のひらに直径一メートルほどの炎の塊が生み出される。
「・・・ここまでとはね。」
ファウスは、剣を抜いた。
「いきますっ!」
炎の塊を、ファウス目掛けて放つ。
「・・・ふっ!」
ファウスが剣を振った。
「・・・え」
炎の塊は、いとも簡単に吹き飛ばされた。
「なかなかの威力。これは・・・逸材が入ってきたね。」
ファウスは嬉しそうにしながら、言った。
「どうだい、もう実戦の授業に出てみないかい?」
「あたしが、ですか?」
「そう、今、僕は暇なんだよ。誰も実戦の授業に来てくれないからね。」
まぁ、確かに、初日から実戦をしようとは思わないだろう。
「君に、火の大魔術を教えたいんだ。多分、君、使えるでしょ。」
「・・・分かりました。行きます。」
ファウスについていく
これで、また強くなれる。
早く強くなって、あの男に、あの時のお返しをするのだ。
・・・もしかしたら、案外この学校にいるのかもしれない。
「ファウス先生、この学校に、レインという男は居ますか?」
「・・・んー、僕はちょっとそういうの分からないな。」
「そうですか・・・」
「ほかの先生に聞くといいよ。セベクさんか、カルロスさんにね。」
今度聞いてみよう。
一方、レインは・・・
「くたばれえええええええ!!!!」
「遅い。」
シェイドと戦っていた。
「瞬連突!」
シェイドの首に突きを放つ、が。
「だから、お前の剣は、遅い。この雑魚。」
「んだとぉぉぉ!?」
疾風連斬。だが、全てかわされる。
「これでどうだっ!」
「やはり、馬鹿。」
っ!これは、迎撃の型!
剣をはじき返され、隙が出来る。そこに奴のカウンター突きが・・・
「・・・あぶねぇっ!!!」
体をひねり、何とか回避する。
「・・・はぁ、はぁ。」
「どうした、雑魚。終わりか?」
「!!!まだまだぁっ!!!」
紅連斬。剣に火の魔術を込めて斬りつける技だ。
「・・・くっ!?」
シェイドは、剣で受け止めた。・・・馬鹿めっ!
レインの剣から、火が噴き出す。
「何っ!?・・・ぐっ!!!」
シェイドが、まともに火を受ける。
「どうだ、参ったか、このバーカ!!!」
「ふん。この程度。何の問題も無い。」
「あぁん!?」
「なら、俺も、魔術を使おう。」
そう言うと、シェイドの目の前に、水の壁が出来上がる。
「それがどうした?」
「・・・食らえ。」
水が、俺を襲う。
とっさに防御する。だからなんだ。ちょっと濡れただけだ。
目の前に、シェイドが迫っていた。
「ごっはぁぁあ!?」
腹に突きをもらう。痛ぇぇ!!
「だから、お前は、馬鹿なんだ。」
「・・・ごほっ。何だと?こんな突き。どうってこと無い!」
「じゃあ、もう一回、食らってみるか?」
「誰が食らうか!はぁっ!」
「・・・ふっ!」
お互いに、疾風斬で切りかかる。すると、
「ちょっと待った。」
間に誰かが割って入った。
俺たち二人の剣を素手で受け止めて。
「ファウス先生。何か用かのう。」
セベクが問いかける。
「いやぁ、僕さっきから見てたんですけど、この二人強いですね。」
「まぁ、この中では、優秀なほうじゃ。」
「あのぅ、この二人、貰ってっていいですかね?」
「・・・構わんが。」
「ありがとうございます。じゃあ君たち。付いてきてくれるかな?」
「えぇと、何なんですか?」
と、一応聞いてみる。
この人・・・ファウス、だっけ?見た目をまとめて言うなら
ヒョロヒョロ、ボサボサ、ヒゲ、メガネ。といったところだ。
何だか怪しい。人体実験でもされるのだろうか。
「あぁ、君たちには、実戦の授業を受けてもらうよ。」
新鮮訓練場と書かれた部屋の前に来た。
・・・なんか、嫌な予感が。
「あ・・・あんたは!」
・・・予感が当たった。
次回、メインヒロイン登場。
アイリスがメインヒロインだと、いつから錯覚していた?