ある事件
ここは、小さな国トリア。
「相変わらず酷いな・・・」
トリア軍第3部隊の隊長、シグは思わず顔をしかめる。
そこには、腹に大きな穴が開いた男の死体が一つ。
その死体には、足がない。さらに全身に無数の切り傷。かなり猟奇的だ。
「シグ隊長、これは・・・・・うぅっ・・・!?」
あ、吐きそう。まぁ新人なら仕方ないか。
「1年前からずっとだ。1週間に1人、誰かが殺されるんだよ。」
「愉快犯・・・ですか?」
「知らん。」
死体の状態からすると、犯人は遊んでる。人殺しを楽しんでる。
もしくは、新手の宗教の儀式か何かなのか。・・・まぁそれは本人に聞いてみないと分からんが。
とりあえず俺は、もう少し死体を調べてみることにした。
すると、死体の腹に開いている穴に、気になる点を見つけた。
「おい!お前ら、こいつを見てみろ!」
そう言って、部下たちに死体の穴を見せる。・・・その直後。
「た、隊ちょ、おぅぇぇえ・・・!」「うぅっぷ・・・おぇぁ・・・!」「・・・おろろろろろ」
あ、吐いた。
「お前らなぁ・・・少しは我慢できねぇのかよ。」
「むっ、無理です!」
「だらしねえなぁ。最近の若者は。」
「す、すみません・・・こういうのは、見慣れていないもので・・・ぅぇ」
そして、我が第3部隊の3分の1は、もらいゲロやら何やらで一時離脱。
・・・情けねぇ
「いい加減落ち着いたか?」
「あ、はい、大丈夫です・・・」
「そんじゃ、こいつを見ろ」
新人は、吐き気を何とか抑えながら、死体の穴に注目する。
「・・・焦げてますね」
「そうなんだよ。しかも、中で何かが爆発したみたいになってる。」
「魔術、ですか?」
「多分な。しかも、強力な『怒り』の感情を感じる。」
「という事は、破壊系の魔術ですね」
「いや、分からん。俺はそっち方面は詳しくないんだわ。」
「・・・そうですか。それで、どうするんですか?」
「あ?とりあえず、この死体を、魔術担当まで届けて、終わりだ。」
「分かりました。」
にしても、犯人はなかなかのやり手だ。
一年間、ずっと捕まらずに殺人を続けるなんてな・・・