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Happy new year!の裏側で

作者: さいか
掲載日:2013/06/27

賢者の城では、毎年、年終わりの日にパーティーが行われる。

みんなで騒いで、明るく新年を迎えようというパーティーだ。

勤めるものほとんど全員参加で行われるのだが…


例外が、ここに三人ほど。


「はい気の早いお年玉四つ目!」

「いらねえ!リア、パス!」

「そんなもん送り主に言ってよアルバ!」

「駆除完了、ユイズ、次!」


賢者様への新年のご挨拶がメールで山のように届く、その中に。

ウィルスやらなんやらが大量に紛れ込んでいるのも毎年のこと。


その有害プログラムを全て駆除して、城のシステムを守るのは、機械整備を担当する『先見の箱庭』の仕事で。


人数よりも精密さと効率を追求しないといけないこの仕事が、

箱庭で、現在ダントツトップの成績を維持するチームに回されるのも当然で。


唯一、賢者の城のプロテクトシステムが緩む(緩めなければお偉方からのメールが受け取れないから)、

この年が変わるまでの数時間に、ウィルスを送り込んでシステムを壊そうとする輩は掃いて捨てるほどいる。


ただでさえ敵の多い賢者様だ。

その量は尋常ではない。

その対応に忙殺されるのが、彼らの年末恒例行事で。



特に、今年は。



「はい15通目!」

「ちっ、すでに実行されてんじゃねえか!ハニー!」

「だからいないんだってば!」


今日何度目のやりとりだろうか。

そう、今年は、この城で機械を扱うことについて最強の名を欲しいままにする、女性がいないのだ。


ハネムーンで。


「くっそこの忙しい時にハニーは!!」

「忙しいから逃げたんだと思うよ…」

「毎年こうだもんねー…」

一回くらいさぼりたいと思うのは当然だろうとぼやくほどの仕事量。

それを三人で片づけているのだ。

年末の仕事納めも、はるか遠いこと。

「はい次来ました!」

「あーもう!」

「ふざけんなよっ!」


日付が変わるまで、あと3時間23分






日付が変わり、パーティー会場での賢者の護衛からようやっと解放されたジークは、

早足でとある部屋を目指していた。



先見の庭の、最深部にある、メインコントロールルーム。

この城の、脳だ。


そこには、今年もパーティーに参加できなかった恋人と友人二人がいる。

年が明けたら、そこでみんなでレモネードを飲むのが習慣なのだ。

ほころぶ頬をそのままに、ひたすら歩く


名乗るとしゅいんと開いたそこに足を進めるが、



「…疲れきってるな…」


思わず声が出た。


部屋の中には死屍累々。

本当に息をしているのか怪しいほど、ぐったりと倒れこむ物体が視界の範囲内に二つ。


「…ジーク、か…?」


もそ、とその物体のうち銀色の髪の方が動いた。アルバだ。


「あー…あけましたージーク…」

「ああ、うん…あけましておめでとう…」

いつも引きこもりでよくいすの上で寝ているアルバは言わずもがな、

いつもは元気の固まりのようなユイズさえ、つっぷしている


「ちょうどいい…おまえ、それ、回収してけ」


ただ上げるのさえ一苦労、と上げられた指の先を見ると。



ぐたっと椅子につっぷした、一人の少女の姿。


「リア?」

恋人の名前を呼んで、近づいて顔をのぞき込むが反応なし。

どうやらこんこんと眠っているらしい。

「…お疲れ」

頭をぐしゃ、となでると、彼女は少し微笑んだようだ。





「はい」

「…んあ、」

少し眠っていたらしい。

ジークがリアを回収していったのは覚えていたが、今戻ってきたユイズがどこへ歩いていったのかは、知らない。

こと、と机に置かれた、湯気を立てるコップ。

なんとか椅子に座りなおして、コップを口に運ぶ。


甘い、レモネードの味が口に広がる。



それを認識して、ようやっと年が変わったのだと実感できた。

これでやっと休みに入る。



「あー…」

「おつかれー…」

目の前に座って同じようにレモネードを飲むユイズをながめ、

どことなく楽しそうに(ジークの表情が読めるのはリアぐらいのものだ)リアを連れて行ったジークを思い出して

深く深く、ため息をつく。

「…何よ。」

「何がうれしくておまえと二人きりの新年迎えないといけないんだか…」


他のやつらは家族か恋人か仲のいい友人と楽しく新年を迎えているというのに。

何で俺は会えばケンカばかりのこいつとなんだか。


「…それこっちのセリフ…」

二人で同時にため息をつく。

喧嘩する気力も残っていない。小さく苦笑を一つ。


「…ま、今年もよろしくということで」


ユイズが、とろんとした目で笑った。ずい、とコップを近づけてくる。

もう数分で寝るな、と苦笑


かつん、と、コップ同士が音を立てた。


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