四話
「はぁ……はぁ……」
俺は、眠っているサリーから離れる為に走っていた。
真っ暗な森を一人で走る。
「ぐあ! はぁ……はぁはぁ」
上手く体が動かない……。
何時ものように夜目がきかない。
大地の鼓動も何も感じ取れない俺は、岩に躓いてその場に倒れるがそれでもすぐに立ち上がり走り出す。
まだ、数メートルしか離れていない。
これじゃあ、駄目だ。
もう少し我慢するんだ。
俺は走っているつもりだが、多分歩いている程度の速度しか出てないだろう。
くっそ……。
動け、ここじゃあ駄目だ……。
「ぐああ……ぐうううう!」
バシャっと大量の血を吐いた俺は、声を殺す為に服を噛み締める。
「ふ~……ふ~……うううう」
くっそ……。
くそったれぇぇぇ!
「うっ……ごはっ!」
ぐううう……。
おさまれ……。
おさまってくれ……。
服を噛んだままの俺が、亀のように丸まり波がおさまるのを待つ。
****
「はぁはぁはぁ……」
それから一時間ほどで、何とか苦痛の時間が終了してくれた。
それと同時に、雲に隠れていた月が姿を現す。
目の毛細血管が破裂したかな?
月が真っ赤に見える……。
あ~あ……。
少しでも俺の闘争本能が鈍れば、すぐこれだよ。
本当に……。
やってらんね~……。
『あのお方は……』
分かってるよ。
いくら師匠でも、死にかけた人間を都合よく復活させる方法なんて無いんだろ?
青生生魂で、戦いが終わるまでの延命……。
あそこで終わるしかなかった俺には、十分なチャンスだ。
クソコントローラーを、ブチ壊すまでもてばいいだけだ。
それだけでいい……。
【しかし、必ず死ぬとは……】
少し気を緩めただけで、これだぞ?
クソ偽神を倒せば、間違いなく死ぬって。
まあ、さらに黒幕がいたぁぁぁぁぁ!とかなら、そいつ倒すまで死なないかもだけどね。
『あのお方は……』
分かってるっつってるだろうが!
アホか!? ジジィ?
師匠は、誰よりも死ねない苦しみを知ってるんだ。
都合よく、俺の寿命分生きるような方法が無いから、この方法を選んだんだ。
怨むなんてお門違いだ。
感謝してるよ……。
俺はまだ戦える。
【貴方は、本当にそれでいいんですか?】
ああ……。
どうせ俺は不幸の塊だ。
生きてたってろくな事が無いんだ。
やる事やって、笑いながら死んでやる。
【……】
未来なんて必要ない。
今の俺に必要なのは、戦いと負けない為の力だけだ。
それ以外なんて、必要ない。
『絶望に囚われない為に、希望を捨てるか』
捨てるも何も、最初から希望なんて持ってない。
世界は残酷なんだ。
奇跡なんて起きるわけがない。
全ては、あるがままに……。
なるようにしかならないんだ。
これが、人を不幸に巻き込み続けた俺への結果なんだろ……。
後悔も絶望もクソ食らえだ。
それから、修練をした俺はサリーの隣へと戻り眠った。
最近は、誰の夢も見ない。
あれはきっと、俺の弱い心が作ったものだったんだろう。
大丈夫……。
俺は、大丈夫……。
俺は、まだ戦える。
俺は、まだ真っ直ぐ前に進める……。
****
「えい!」
おえっぷっ!
ええ!? 何!?
「レイ! 朝だよ~!」
俺の腹の上には、笑顔のサリーが乗っていた。
どんな起こし方してやがるんだ……。
「ね~! お腹すいたよ~!」
「分かった……。分かったから降りろ」
「え~? おはようのチューとかは、いらないの?」
えっ!?
マジで?
え?
欲しいって言えば、この美人とキスできるの?
マジでか!?
「あははっ! 何真顔になってるのよ! 嘘だよ~!」
嘘かぁぁぁぁぁぁい!
「でも……。そんなに嫌がるなんて、私そんなに魅力ないかな……」
俺から離れながらボソッと……。
ええ~!
ちょ! 待てよ!
キスが……したいです!
出来れば、その先も!
****
なんて言えない俺は、小川の水を汲み何時も通り朝食を用意する。
はぁ~……。
『根性無しが……』
五月蝿い! へし折るぞ!
キスしたいって言った後で、嘘って言われたらどうすればいいんだよ!
【チキンですね……】
お前も粉々にするぞ!?
「え~……明後日には、イザベラ様のいる町につくと思うの」
「そうか……」
「でも、レイが私を担いでくれれば、明日には着くと思うな~」
はぁ~?
嫌じゃボケ!
「御褒美は、私が何でも言う事聞くって言うので……どう?」
はっは……。
そんな見え透いた罠に……。
……。
『何を作っておるのじゃ?』
「レイって器用だよね~。これで私を担いでくれるの?」
「ああ……」
俺が、近くの木を切って作ったのは背負う事の出来るようになっている、ベルトのついた椅子。
【面白いぐらい罠にかかってますけど?】
ど……童貞卒業……。
『エロガキが……』
【情けない……】
いやいや! こっちの方が、早く目的地につくから!
それだけだから!
【作りながら、卒業卒業言い続けてですか?】
『うん! お前は馬鹿じゃ!』
誰が馬鹿だ!
折るぞ! コラ!
****
俺は、サリーを背負い、荒野を走る。
「わ~……。いい天気だね~。鳥が旋回してるよ~」
それ、モンスターだから!
お前気付かないだろうけど、実は走って逃げてるから!
「鳥さんも気持ちよさそうだね~」
お前! 能天気でいいな~!
速度! 速度を上げねば!
追いつかれる!
「ああ~、風が気持ちいい……」
「あんまり……太陽を直視するなよ?」
「も~……、モンスターに追われてても私の心配?」
分かってて、能天気なのかよ!?
馬鹿か!?
馬鹿なのか!?
「そんなに優しくしなくても、私はレイを嫌いになったりしないよ?」
こいつは……。
もしかして、昨日の事まで覚えてるんじゃないのか?
「レイが居れば、あんな私でも倒せるモンスターなんて怖くないよ~」
これが本当に嘘の仮面なのか?
女ってこえ~……。
「なんか楽しいね~?」
「速度を上げる。黙ってないと、舌をかむぞ」
俺は、日が暮れるまで走り続けた。
俺の背中からは……。
歌が聞こえていた……。
サリーが……。
本当に、サリーが楽しんでくれているなら……。
「あっ! 到着ね?」
「ああ……」
****
日が暮れ始めて、森の中にある川についた俺は、サリーを降ろした。
「喉渇いた~!」
「まて! そのまま飲むな。一度沸騰させてからだ」
「え~? 少しくらいいいんじゃないの?」
「ここで気を抜いて、お前に体調を崩されたら面倒だ。少しだけ我慢しろ」
「う~ん……。あ! 魔法で川に炎を!」
「止めろ。むやみに生態系を壊すな。十分くらい待て……」
「は~い……」
この世間知らずは、野宿の作法も知らん。
火をおこし、水を張った石の鍋を沸騰させる。
そこに、一昨日採って乾燥させた野草を入れる。
「うわ~! おいしい! 何これ?」
「体にいい野草だ。紅茶は無いが、これで我慢しろ」
「いい! 全然問題ない!」
さて、食料でも捕獲しに行くか……。
「レイ?」
「うん?」
「えへへっ……。ありがとう!」
****
俺の体内の魔力が落ちたせいもあるけど、ここの大陸のモンスターはレベルが高すぎる。
何でだろう?
付近に居るモンスターを、何時も通り全て斬り殺す。
そして、木の枝で眠る鳥の首を刎ねる。
森の恵みに感謝……。
ジジィから聞いたキノコと、野草を摘んでサリーの元へ帰る。
「……昼間あれだけ歌って、まだ歌ってるのか?」
「うん! 気分がいいと歌いたくならない?」
「俺はならん」
「私、これでも城の聖歌隊にも入ってたの! だから、歌うのが好きなの!」
そう言えば、記憶の中にも歌ってるシーンが出てたな。
【それも、現実から逃れる方法だったのでしょうか?】
『いや……。本当に楽しそうじゃ。純粋に好きなのかも知れん』
まあ、下手ではないな……。
【かなりの癒し効果があると思いますよ?】
まあ、天が二物を与えた奴なんて、嫌ってほど見てきたからな。
こいつもそうなんだろう。
きっと他の事も、色々出来るんじゃね~の?
【そこまで嫌そうに……】
天才なんて大嫌いなんだよ。
胸にチクリと痛みが走る。
ちっ……。
俺は、焼けた鳥肉を食べる。
「今日も美味しかった! ありがとう!」
こいつと居るとペースが乱される。
さっさと、ババァに会わないとな。
「へ~……。じゃあ、そのスケオキって人が、今は国で一番偉いの?」
「多分な……」
痛みが大きくなると共に、体中が脈動し始めた。
おかしいな。
「それから?」
「あのさ……。今日は寝む気はこないのか?」
疲れてないのか?
「うん! まだ、眠くない! 昨日、なんだか何時もよりよく眠れたの!」
ちっ……。
余計な事しちまった。
仕方ない……。
「俺は、モンスターがいないか辺りを見回ってくる」
「あ……うん」
流石に限界だ。
くっそ……。
****
サリーから見えない位置にまで移動した俺は、膝をついて血を吐き出す。
「ぐうう……」
体が強靭になったし、魔力への耐性も高まってる。
それでもこれか……。
聖魔合成魔力は、人間では絶対に扱えないって事か……。
くっそ。
『体内の金属が浸食を速めておるな……』
俺の意思に反応してるのか……。
いったい何に反応してるんだ?
本当に戦闘本能や殺意だけなのか?
【分かりませんね。私達も浸食速度から法則を捜していますが、まだ見当がつきません】
唯一は、以前のように戦闘中には発作が来なくなった事が救いか。
くそ……キツイな。
「うう……ぐうう……」
「……神の慈悲を、我の手に与えたまえ……ヒーリング」
うん!?
ちょ!
しまった! 接近に気がつかなかった!
俺の体に当てられたサリーの手からは、回復らしい魔法の光が出ていた。
見られた!
ちっ……。
もう少しで、おさまるってのに!
「それじゃあ、意味がない。……うっ……はぁはぁ……止めろ」
「うん……」
「心配無い。戻ってろ」
「うん……」
サリーは、意外にも素直にその場を離れて行った。
くっ!
ううう……。
****
それから、しばらくして焚火をしている場所に戻った。
サリーは膝を抱えて座っている。
さて、なんて誤魔化そうか。
「悪いな。少し持病があるんだ。魔法では回復できない」
「うん。回復できないのは、魔法を使ってみて分かった」
「ちょっと大げさなだけで、大した病気じゃない」
「……それも嘘」
えっ!?
それもって……。
「私、知ってるよ。何時もレイが、食料を確保するってモンスターを全部退治してるのを」
こいつは……。
「私が、魔力を感知できないと思ってるでしょ? 出来るんだよ。だから、毎日安心して眠ってたの」
マジかよ。
まあ、俺に出来るんだから出来る奴が居てもおかしくは無い。
会った事がなくて失念してた。
そう言えば、昼間も只の鳥と鳥型モンスターに気が付いてたな。
「レイは、何時もそうやって生きてきたの?」
「そうやって?」
「自分を犠牲に、人の為に生きてきたの?」
何言ってるんだ? こいつ?
「自分を犠牲にした覚えはない……」
「それは、本当にそう思ってるのね……。でも、守ろうとして戦ってない?」
こいつのは、もう勘ってレベルじゃない。
洒落になってないな。
「そんな事してる覚えもない……」
「それは、嘘。でも、きっと無理に聞いても絶対に喋らないんだよね?」
「いや……」
「貴方は、何を背負ってるの? 何を守ろうとしてるの?」
「何も……」
俺は、ただ単に自分がやらかした事の責任をとりたいだけだ。
死ぬ前に。
俺の不幸に巻き込まれて死んでいった奴等に、今更俺は何もしてやれない。
メシアや天使を殺しちまったんだ。
責任から逃げたくはない。
ただ、それだけなんだよ。
「自分にまで嘘をついて……。辛くないの?」
「何の事か分からん」
「そう……」
「ああ……」
「なら! 私が今から独り言! いい?」
そんな事、確認するなよ……。
「どんなに辛い人生でも、逃げなければきっと道は開ける! 人は幸せになる為に、生れてきたんだから!」
ふん……。
綺麗事だな。
世界や人生ってのは、もっと残酷なんだよ。
希望なんて、何の役にも立たない物だ。
しかし……。
「それは、お前の意見か?」
「あ……昔、先生が言ってたの」
やっぱりな。
こいつも人生に絶望してるんだ。
今みたいな綺麗事のセリフは、こいつから出るわけがない。
「もう一つ、先生が言ってたの。いくら助けたくても、その相手が幸せになるつもりが無ければ助けられないって……」
それこそ、恵まれた人間の意見だ。
自分が相手より幸せでなければ、言えない言葉だよ。
「そうか……」
恵まれた人間に、何が分かるってんだよ。
『ひねくれ過ぎじゃ。お嬢ちゃんが泣きそうになっておる……』
こいつも嘘付きなんだ。
本当かどうか分からんさ。
昨日は本当の事を指摘されただけだったけど、人の生き方まで口出しするのは受け入れてやれん。
【昨日? やはり、何かあったんですか?】
何でも無い……。
「お前は、人の事を気にする余裕があるのか?」
「それは……」
「まず、お前自身が頑張って幸せってやつになって見せてくれよ。そうすれば、考えてもいい」
「うん……」
「さあ、もう眠れ。明日も日が昇れば行動開始だ」
「うん……」
俺は、サリーが眠ったのを確認して修練を行った後、眠った。
****
「バシャ……」
うん?
水の音で目を覚ますと、辺りはまだ薄暗かった。
日の出……。
空に太陽と月が浮かぶ時間……。
「ふぁ~あ……」
あくびをしながら、俺は上体を起こした。
う~ん……。
水浴びか……。
悪夢で寝汗でもかいたか?
まあ、ここまで知り合った相手を覗くのも……。
いや……。
でも……。
う~ん……。
サリーが美人なのは、確かなんだよな~。
でもな~……。
後、最低一日は一緒に過ごさないといけないんだよな~。
どうすっかな~。
水浴びをしているらしい、サリーの姿は朝靄ではっきりとは見えない。
あいつ嘘を見通しそうだしな~。
でも、チャンスは逃したくないな~……。
でも、ここで変なことすれば卒業のチャンスがなくなりそうだしな~。
う~ん……。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
へっ?
俺が、腕を組んで悩んでいる間に朝靄がはれていた。
悲鳴を聞いて振り向いた先には、既にタオルで体を隠すサリーの姿が……。
おいおいおい……。
もしかして、見ても無いのにって何時ものパターンですか?
マジでか?
おふぅ!
タオルを巻いたサリーに、ビンタをもらいました。
やっぱりねぇぇぇぇぇぇ!
そんなこったろうと思ったよぉぉぉぉぉぉぉ!
****
俺達はそれから会話もなく、朝食を食べていた。
「見た?」
「見てないよ……」
「あ……本当に見てないんだ」
「そうだよ……」
まだ、会話してくれるだけ今回はマシか。
何時もなら嫌われて終わりってパターンが多かったしな。
「あのね。一応言い訳してもいい?」
「どうぞ……」
「昔、一度城の兵士の人に入浴を覗かれたの」
「で?」
「日頃温厚な先生が、その兵士を平手でうちすえたの」
「で?」
「先生は、生涯で一人と決めた男性にしか裸を見せちゃいけないって、教えてくれたの」
「で?」
「でね? 暴力は絶対駄目だけど、痴漢行為に対しては絶対一度はお仕置きが必要だって……」
妖怪ババァァァァァァァァァ!
お前のせいで、俺は二回も殴られましたよ!
絶対お仕置きって、何ですか~!?
てか、爬虫類の水浴びに濡れ衣なんですけど~?
てか、初めて追いかけてきた時どれだけ必死になってたんだよ!?
どれだけ先生の言う事を、忠実に守ろうとしてるんだよ!?
軽く殺そうとしてたのは、お仕置きじゃない!
死刑って言うんだ!
こいつ馬鹿だ!
クソババァがぁぁぁぁぁ!
「そんなに怒らないで~……」
「怒ってない」
「怒ってるじゃない!」
「怒ってないって!」
「う~……」
あれ?
でも、ババァが一緒に居た時に覗かれた?
「あのさ?」
「なっ! 何?」
「覗かれたのっていくつの時?」
「十一歳の時」
なるほど……。
「その兵士って、ロリコンの変態だな」
「うん。先生も同じ事言ってた」
あれ?
ババァがキレたのって、そいつが変態だからじゃね?
俺、やっぱり殴られなくてよくね?
ああ! もう!
「もう、怒ってないからさっさと飯を食え。食ったら出発だ」
「うん! レイは優しいね」
「はっ?」
「一緒に居ると、相手の気持ちを楽にしていくんだね?」
なんか、みんなそう言うな。
「知らん」
「えへへっ。何でだろう? レイと一緒に居ると、私も本当に笑えてる気がする」
「そうか……」
それは何よりだ……。
うん?
「どうした? 辛い物は入れた覚えはないが、辛かったか?」
顔が真っ赤になってる。
あれ?
なんか変な物いれたっけ?
「いいな~。レイは、そうやって本当に笑えるんだね」
「は? いや……辛くないのか?」
「うん」
「そうか……」
「でも、本当に鈍感……」
「あ? なんだって? 聞こえないよ」
「何でも無い! さあ、早く食べよう!」
そう言ったサリーの笑顔は……。
ちゃんと笑えるじゃね~か。
まあ、俺が気をもむ必要も無かったな。
やっぱり、美人は笑顔が一番だ。
「えい!」
「痛っ! 何するんだ!」
フォーク投げてきやがった!
馬鹿か!?
「レイの、その笑顔駄目!」
「はぁ~?」
脳みそが沸いてるのか?
「だって! ドキドキして、折角のご飯の味が分からなくなるんだもん!」
はぁ~?
「早く~。早く出発しようよ!」
こいつ……。
「ね?」
くそ……。
いい顔で笑うな……。
【薄々は、分かってるんじゃないですか?】
『こいつに素直さを求めてはいかん』
【まあ、そうでしょうね】
五月蝿いよ!
さっきから黙ってると思ったら、何考えてるんだ!
『お前の馬鹿さ加減を、再確認しておった』
【子供の恋愛を、暖かく見守ってました】
ちょ! おま!
「ねぇ~! 早く行こうよ~!」
「あ! ああ」
覚えてろよ!
このクソ共が!
【ほらほら! サリーさんが待ってますよ?】
『ほれ、急げ』
むぅぅぅぅかぁぁぁぁぁつぅぅぅぅぅくぅぅぅぅぅぅ!
俺にはサリーと旅をしたこの数日が……。
楽しかったんだ。
毎日モンスターと発作に襲われるし、訳のわからない我がままに振り回されるけど。
サリーの歌も嫌いじゃないし……。
サリーが笑ってくれると、無性に嬉しくなる。
情けない俺は何時もそうだ……。
気を抜いてしまう。
今はそんな時じゃないのに……。
俺は、自分が大嫌いらしい。
嫌になってくる。
ふ~……。
やってらんね~……。




