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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第七章:終末の旅人編
82/106

三話

「どうしてもか?」


「どうしてもですよ~」


「分かった……。では、三つだけ貰おう」


「へ~い、毎度~」


「お前は、何時もここで商売しているのか?」


「いえ、旅の行商人ですから~。また、どこかで見かけたら御贔屓に~」


道端で出くわした僧侶のようなおっさんに……。


ジジィ直伝の怪しい薬が……原価の八十倍で売れました!


わっふっふっふ~い!


『お前は……』


なんですか~?


『阿漕な事を……』


これが需要と供給の法則だよ、君~。


【確かに、一般では出回っていない物ですからね】


どうしても欲しいって言うから、売っただけじゃんか~。


【貴方のそれは才能でしょうが、今回は酷いですね】


『そうじゃ! 通常はあの三分の一が相場じゃ!』


五月蝿い!


俺の店は、常に時価なんだよ!


『お前、いつか刺されるぞ?』


【いくら根なし草でも、怨みを買うのは……】


何だよ!


俺の目的は、行商じゃないじゃん!


稼げるときに稼いで、何が悪いんだよ!


その方が、本来の目的に集中できるじゃんか!


『やりすぎじゃ』

【度が過ぎます】


なんだよ~!


なんで、そんなに非難されないといけないんだよ~!


もぉ~……。


やってらんね~……。


あ~あ。


はぁ~。


【それにしても、あんな薬どうするんでしょうか?】


『そうじゃな。あれは、一部の魔道士が実験用に使うぐらいのはずじゃが』


はぁ~。


【先程の方は、どう見ても実験をしてるとは思えませんね。どう思います?】


知るか。


『止めておけ、若造。こいつがこうなると、十五分は話しかけても無駄じゃ』


【はぁ。それでも、ちゃんと目的に向かって歩くんですね】


こんなところでへこんでても、いい事ないしな……。


はぁ~。


****


俺は、人が立ち入る事を拒んでいるかのような、深い樹海へと進む。


あ……けもの道。


その樹海へ入り、一時間ほど進むと木々の生い茂った葉で真っ暗だったけもの道に、日の光が差しこんでいた。


生えている樹木の、種類が変わったのか……。


しかし、すごいな。


こんなに濃い魔力が満ちた場所、初めてだ。


『うむ。これでは普通の人間なら、何らかの影響を受けてしまうな』


えっ!?


俺ぇぇ、人間なんだけど?


どうなるの!?


【心配しなくても、貴方に影響はありませんよ】


俺、人間じゃないの?


どう言う事!?


『五月蝿い。お前はわしと若造のせいで、常時普通の人間より身体に魔力が満ちておる。どうにかなるなら、とうの昔になっておるわ』


…………。


【何ですか?】


なんかそれ嫌だ。


俺~、普通の人間がいい。


【今更ですか?】


はぁ~。


無駄なんだろ! 分かってますよ!


言ってみただけさ! こんちくしょぉぉ!


あ~あ……。


しかし、ここは珍しい獣やモンスターが多いな~。


『この魔力の影響じゃろうな』


生えてる植物も、見た事ないのが多いや。


何かアイテムに加工できるのがあれば、言ってくれよ?


『分かっておる。あ、そこの木の根元の草を採っておけ』


分かった。


これ全部?


『うむ。それから、二つほど右にある木に巻きついてる蔦もじゃ』


ああ! これって、さっきの薬の!


『うむ。魔力濃度の高い場所に群生する、珍しい寄生植物じゃ』


群生か……。


いっぱい生えてるな……。


【あ! そこの花が生えている……そう! それです。その植物の根からは、いい薬が作れます】


了解。


しかし、材料の宝庫だな。ここは。


『一般人は、ここには入れんじゃろうからな。手付かずの自然が、この環境を育んでおるんじゃろう』


あ!


あの実も使えたよな?


おおう!?


俺の前に、黒い影が飛び出してきた。


『ほう、珍しい』


【ケットシーですね。実物は、初めて見ました】


少し大きな黒い、妖精猫だ。


人前にはめったに出てこない。


これは……。


「ナ~ゴ……」


こちらに一鳴きしたそれは、すぐに立ち去ろうとする。


逃がすか!


「ニャ!?」


自分に向かってくる俺を見た猫は、森の中を全力で走り始める。


くくくっ……。


俺を舐めるなよ!


幾ら全力で走っても付いてくる俺に対して、ケットシーは必死に逃げる。


「フゥゥゥゥゥ!!」


ついに行き止まりなり、毛を逆立てて威嚇してくる。


さあ! 逃げ場はない!


【かわいそうに、何をする気ですか?】


撫でる!


後、肉球をプニプニにしてやる!


『こいつは、犬か猫を見ると何時もこうなんじゃ……』


「ニャ!? ニギャァァァァァァ!!」


ふ~……。


腕の中で暴れる猫を、思う存分撫でまわしてから解放した。


ちょっと気持ちよさそうにもしてたくせに、風のように逃げやがった。


まあいいや!


さて……。


ここは何処!?


『またか……』


大丈夫!


あっちの魔力濃度が濃くなってるから、きっとあっちだ!


****


あ……。


そういえば、最近獣どころかモンスターにも襲われないな。


なんで?


『当然じゃ。野生の動物は人間と違って、相手が強いかどうかがある程度分かるからな』


ジジィの魔力が原因か……。


ん? でも、襲われなくなったの最近だぞ?


『体内の魔力濃度が、Aランクになったのが最近じゃ』


えっ? 若造の影響?


【いえ、貴方の身体自体がレベルアップしたんだと思いますよ】


う~ん。


『お前の戦闘力自体は学生の頃からBランク相当じゃったが、それは肉体的な強さでしかない。魔力だけでいえば、最大時でもせいぜいCランクじゃった』


ああ、それでモンスターにも襲われてたのか。


でも、どの道人間じゃなくなってね?


俺、ヤバくね?


【大丈夫です。もし、どうしてもの場合は私が消費しますよ】


ふ~。


でも、ゲームだとレベル上がっても、どんどんモンスター出てくるのになぁ。


レベル上げ出来ないなぁ。


『もう、自然のモンスターでは、お前のレベルは上がらんと思うぞ?』


でも、実戦から離れるのは感覚的に嬉しくないんだが……。


ゲームだと……。


【本当にゲームの話題が好きですよねぇ。私の国では、教えて貰ったほど高度なゲームはありませんでしたが、よほど面白かったのですか?】


『このバカ者!』


ふ~……。


【えっ!? 何が……】


『こいつは友達がいなかったんじゃ! 唯一の娯楽がゲームだったんじゃ! 人のトラウマをつつくな!』


【あ……】


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ……。


そうだ! 空を見よう!


太陽を直視して、目がどうにかなっても気にしない!


だって、そうしないと目から何らかの水分が……。


【あの、すみません】


『まぁ、ドンマイじゃ!』


五月蝿いわ!


よけい惨めになるだろうが!


くそ……。


そうだ! 歌を歌おう!


『そ……そうじゃな! それがいい!』


「……ふ~ん……ふふ~ん……か~の~じょをぉぉぉぉ! く! だ! さぁぁぁぁっ!いぃぃぃぃぃ! 二十歳ちょうどの! ……あっ! 童貞ですが~!」


【自分の歌で、落ち込む人を初めて見ました。何の歌ですか?】


作詞作曲、俺で……。


題名、彼女を下さい……。


『何故それをこのタイミングでチョイスする?』


…………。


あっ!


あれじゃないか?


魔力濃度が一番高い!


『そのようじゃな……』


【急に真面目に……。頭が痛い……】


『慣れろ、若造! ON/OFFを素早く切りかえられねば……死ぬぞ!』


えっ? 死ぬの?


『多分な……』


【努力します……】


****


俺は、大きな池の前にある、岩壁に掘られた人工的な洞窟にはいる。


『蝋燭の火を絶やすでないぞ』


分かってる……。


かなり古い洞窟だし、蝋燭には明かりとしてよりも……。


【ええ、有毒ガスや無酸素状態を火が教えてくれます】


壁画に蝋燭台……。


それにこの魔力……。


間違いないな。


と……。


洞窟を少し進むと、落盤事故だろうか?


岩と土砂でふさがっていた。


『この感じから見て、大昔に崩れたんじゃろうな……』


周りの岩盤や地質を確認して、掘る場所を決める。


こういう時ジジィは便利だ。


さて、スコップ装備!


【えっ? これで掘るんですか?】


俺を舐めるな!


そおおおおおおおおおおおいいいいいい!!


「はぁはぁ……」


堅い岩を聖剣で砕き、土砂を掘り出し、二時間かけて洞窟の最深部へとたどり着いた。


運よく中には、空気が残ってるな……。


しかし……。


『餓死か、この魔力のせいかのぉ……』


土着の神を信仰する教会のような場所だったと思えるその場所には、ミイラになった多くの死体があった。


母親に抱かれた子供までいるな……。


【この感じから言って、生き埋めで死んだのではなくその場で、即死している感じですね】


でも、外傷はないな……。


魔力じゃあ、即死はしないよな?


『そうじゃな……』


何があったんだ?


それに魔力濃度は異常に強いけど……。


【現在も動作している、魔法のような物は感じませんね……】


う~ん……。


あの祭壇にある像が、この宗教の神かな?


『そうじゃな。壁画にも何らかの物語らしきものが書かれておる』


像も三体で、壁画にも三人が降臨した事が書かれてるってことかな?


【そうですね。二対一で戦っているようです】


『この絵では三人とも死んでおるようじゃが……』


相討ちってやつか?


でも、封印されてるんじゃなくて死んでるの?


あれ~?


間違えた?


【いえ! 待って下さい! あの絵は……】


右側面から、左側面へ目を移す……。


これは、もしかして復活するって事か?


『そうじゃな。この邪神が復活すると、聖なる神も蘇ると取るべきかのぉ?』


幾ら神でも死んだら、蘇りなんて……。


『転生自体は存在するが、魂の故郷で一度分解され、全く別の魂になると聞いたが……』


やっぱ、死んだように見えて封印されてたって事か?


う~ん……。


おおう!?


調査対象を壁画から像に移した俺は、像の横に穴があいている事に気が付いた。


蝋燭を近づけ、中をのぞく……。


マジでか!?


『なるほど、これが転生のカラクリのようじゃな』


【あの……これは?】


ああ……。


これは、賢者の石だ。


ジジィのコアにもなってるから、俺たちはよく知ってるんだけどな。


『色々な機能を付けられるが、これは魂を保持できるようじゃ』


【なるほど、神ならば魂だけでも死ぬ事はないと言う事ですね?】


今回は邪神か……。


またSランクかな?


やだな~……。


『仕方あるまい』


まあ、いいや!


『何をするんじゃ?』


えへへ! 売るの!


賢者の石だぞ! きっと金になる!


『この守銭奴が……』


おお! 像の中全部にある! 三つもゲット!


これが売れたら、当分働かなくていいかも!


おおう!?


なんだ!? このクソでかいのは……。


岩で出来た祭壇の下を覗くと、そこには真っ赤な岩が置いてあった。


『これも、賢者の石じゃが……。この森の魔力は、どうやらこれのせいじゃな』


ああ……。


今も、魔力が湧き出してるな……。


【もしかすると、眠っていた神への魔力供給の為だったんでしょうか?】


かもね~。


う~ん……。


他にめぼしいお宝も、情報もないな……。


【あれ? この大きな石はいいんですか? 私はてっきり……】


それは、この森の生態系にかなり影響がありそうだしな。


さすがに、持っていける大きさでもないし……。


【なるほど……】


****


洞窟から出た俺は、ドロドロになった顔を目の前の池で洗う。


さて、帰り道はどっちだろう……。


『馬鹿が、考えなしに猫など追いかけるからじゃ』


誰が馬鹿だ!


癒しは人生にとって大事なんだよ!


水を払う為に顔を左右に振った所で、目の前の水面が盛り上がった。


池から、いきなり出現した二メートルほどのでかい虫に、俺は反射的に魔剣を構える。


大きな顎をもつ……ムカデ?


見た事がないな……。


う~ん。


殺気が全くなし、この魔力は……。


【只の棲息動物ですね。縄張り主張でしょうか?】


それにしては、威嚇もしてこないし、殺気もないしな……。


うん?


そのムカデは、ゆっくりと俺に近づき、顎で挟んだ袖を三回ほど引っ張る。


そして、茂みに入ってこちらを振り返る。


付いて来いってか?


まぁ、襲ってきそうな感じじゃないな。


試しに付いて行ってみるか……。


『しかし、用心はするべきじゃ』


そうだな……。


****


ムカデについて森を進む事、十五分。


多分そのムカデを狙ったと思われる、大蛇のモンスターが現れた。


ムカデは……。


固まってるな。


俺の右半身から立ち上る真っ黒いオーラを見たその大蛇は、ムカデに襲いかかることなく森の奥へと逃げていく。


さて、どう出る?


あれ? 本当に敵意は無いのか。


ムカデは俺のオーラを見ても逃げ出さず、立ち止まる俺を見つめていた。


いったいなんだろうな……。


一時間ほど付いて歩くと、樹海の外が近づいたようで辺りが暗くなる。


ムカデはそこで立ち止まると、茂みから人間の子供を引きずり出した。


そのガキを傷付けないように、顎で服の襟を咬んでだ。


「ひゅぅぅ……ひゅぅ……」


ガキの呼吸がおかしいな。


うん?


ムカデは、俺の襟を引っ張りガキに近づけようとしているようだ。


なるほどね。


【助けてほしいんでしょうね】


見た目怖いのに、いい奴じゃん。


『この症状は、高濃度の魔力にあてられたようじゃな』


なるほど、普通の人間はこうなるのか。


まぁ、原因さえ分かれば問題ないな。


しかし、魔力が無いと生きていけないのに、多すぎると病気になるって……。


【どんな物でも、過ぎれば毒ですよ】


俺は、ガキの上半身を起こし秘薬を飲ませる。


この秘薬は、さっきの寄生植物から作れる物で、体内やかけた場所の魔力を薄める効果がある。


何でも、元になった植物が他の植物から魔力を吸収して生きているのを、応用した物らしい。


****


うん、呼吸が戻りだしたな。


しかし、ガキ一人でこんな場所に……。


迷子かな?


『正確にはお前も迷子じゃがな』


五月蝿いな!


『……人生の』


黙れよ! クソジジィ!


ボソッと嫌な事言うな!


「あれ? チャッピー? 僕は……」


ええ?


このムカデの名前チャッピー!?


でっかい上に、クワガタ虫みたいな顎持ったムカデだぞ!?


「起きられるか?」


「お兄ちゃん……誰? あっ!」


うん?


ムカデの背中に隠れた?


あれ? 俺、別に脅したおぼえないよ?


「怒らないで! 勝手に森に入ったけど、友達に会いたかっただけなんだ!」


そんな、泣きそうな顔するなよ……。


後、威嚇するなら殺しますよ? ムカデ。


『この森は魔力のせいで、立ち入り禁止なんじゃろうな』


だろうな。


「俺は、只の旅の行商人だ。怒らね~よ」


「ホント?」


疑うな! クソガキが!


「嘘ついて何になるんだ?」


「うん……。あっ! そうだ! 僕、森の魔力で……」


「薬で中和しておいた。二~三日は、この森にいても問題ないはずだ」


「ホント? ありがとう! これで遊べるよ! チャッピー!」


でかい虫とじゃれるガキか……。


『シュールじゃな……』


あれは本当に楽しいのか?


【楽しいんじゃないですか? 多分……】


物凄く巻きつかれてるぞ?


【どう見ても襲われてますね】


でも、笑ってるし問題ないんだろうな。


『心なしか、ムカデも嬉しそうじゃな』


うん、キモイけどね。


まあいいや。


ここまでくれば、樹海から抜けられるだろうし……。


うん?


「腹減ってるのか?」


俺が食い始めた干し肉を見て、ガキが物欲しそうな目をしていた。


「ほれ……」


「いいの?」


いちいち確認するな! なんかうっざい!


「よくなきゃ出さん」


「ありがとう!」


五月蝿い……。


肉までムカデと分け合うか……。


ムカデは自然の中で生きてるんだし、いらないんじゃね?


怖!


口開いたムカデ、怖っ!


食われるぞガキ!


肉食うって事は、そいつ肉食か雑食だぞ?


最悪人間食うぞ?


【まあ、今はその心配はなさそうですね】


仲良く分け合ってるな……。


「えっ!? これも食べていいの?」


「いらないならやらんぞ?」


「ありがとう……」


ガキは、俺が出した携帯用食料を、ムカデと一緒に食べ始めた。


泣きながら……。


あ~あ……。


『またか……』


自分の事僕って言ってるけど、どう見ても女だからね……。


【その不器用な優しさが、実に貴方らしいですね】


五月蝿いわ!


「おい、ガキ」


「ぐすっ……何? お兄ちゃん」


「ちょっと俺に喋れ……。色々と」


ガキから聞いた話は……。


あ~あ。


また面倒そうだ……。


ガキの故郷は大きな戦争があり、今三百人ほどで、近くの廃村へ逃げてきているらしい。


そして、その難民キャンプ地は最悪の環境だそうだ。


この樹海のせいで廃村になったところなので、魔力に当てられた人間が大勢寝たきり。


食料もほとんどない。


挙句に、森からのモンスターに襲われる始末。


なるほど、飯を渡しただけで泣くはずだ。


小さいのに苦労してるじゃね~か。


「それでね! このチャッピーが罠にかかってるのを助けたの!」


声がデカイ。五月蝿いな……。


「最初は五十センチくらいだったんだけど、半年でこんなになったんだよ!」


まぁ、虫だからな。


てか、五十センチの虫を見て助けようとした、お前の気持ちが俺には理解出来んがな。


「ガキ……。これはお前を治した薬だ」


俺は、手持ち十五個全ての薬を出した。


「えっ? 貰っていいの?」


おっと……。


「よく覚えておけよ。この世にタダの物はない。もしタダの物があれば、それには何か理由があるんだよ。だから、これもタダじゃない」


泣きそうになるな……。


そして! 威嚇するなら殺すぞ! このクソ虫が!


「お金……持ってない」


「俺は、この森の出口が分からない。案内できるなら、これは報酬としてやろう」


「ホントに? 僕出口知ってる!」


「案内できるな?」


「うん!」


五月蝿い……。


声がでかいんだよ、クソガキが。


【酷い言い方ですね】


『まあ、何時もの照れ隠しじゃ』


「ごめんね、チャッピー。明日もくるからね」


なるほど、一刻も早く薬を届けたいのか……。


頭は悪くないようだな。


「じゃあ! こっち!」


****


ムカデと別れた俺達は、十五分ほどで樹海を抜けた。


そこからさらに十分ほどで、バリケードに囲まれた汚い村に着いた。


ガキの説明で、見張りをしていた男達も通してくれた。


あらら……。


『想像以上に酷い状況じゃな……』


ジジィ、今日とった蔦でどれくらい薬は出来るんだっけ?


『せいぜい、三十人分じゃな』


しくじったな……。


まさかこんなに需要があると思わないから、あんまり採らなかった~。


あれ? ガキは……。


ああ、いたいた。


ガキは、大きな教会らしい建物へ入って行くので、俺は後に付いて中に入った。


ここは……。


【病院の代わりでしょうかね?】


ベッドとすら言えない板の上に、多くの人が横になり呻いていた。


地獄絵図ですな。


ガキは……。


「お母さん! 薬! 飲んで!」


「えっ? ごほっ……ごほっ……。これどうしたの?」


「お兄ちゃんがくれたの! 飲んで!」


「でも……」


「早く!」


あれが母親か……。


あの顔は信じてないな。


「えっ? 嘘……」


『当然じゃ!』


流石はジジィ印の怪しい薬……。


よく効くな。


おお……。起き上がった。


うん?


周りの奴らが騒ぎ始めてる。


ちょっとヤバいかな……。


おおう!?


【この場に不釣り合いな方ですね】


めっさ美人だ!


何? あの女?


胸がアンバランスにでかくない?


【あのピンクの長い髪も綺麗ですね】


『……エロガキ共が』


あれ? 腰に剣つけてるな。戦士なの?


「この薬は、どうしたの?」


「あっ! フローレ様! 貰ったんです!」


「えっ? こんな高価で貴重な物を……。誰に?」


「優しいお兄ちゃんがくれたんです!」


う~ん。


デカイ乳だ!


若造は胸にこだわりはあるか?


【あ……いえ、私はもう聖剣なので性欲はありません。でも、美しい方だとは思います】


ちょ! 裏切り者!


「ああぁぁぁ! あいつです! あの行商人です!」


うん?


あれは……。


『朝の客じゃな……』


【なるほど、ここの患者を治す為に薬を……】


ん?


美人が近づいてくるけど……。


ヤバい感じ?


『何時もの事じゃな』


なるほど、ここで嫌われるんですね?


分かります。


最悪だぁぁぁぁぁぁ!!


直接何もしてないのに!


『因果応報じゃ』


「あなた! 恥ずかしくないんですか? 人の足元を見て二倍以上の値段をつけるなんて!」


あら? 怒ってらっしゃる。


「フローレ様! 薬をくれたのは、このお兄ちゃんなの! 怒らないで!」


おおう!?


なんだ? こいつ? 人間なのにコアがある?


「えっ!?」


「ほら! こんなにくれたの!」


「お金は……」


「道案内しただけでくれたの! お願いです! お兄ちゃんを怒らないで!」


「そうなの? そうね、理由を知らないなら仕方ない事だったかしら」


この魔力って……。


【多分ですが……】


『普通の人間は、こんな魔力を持っておらん。間違いないじゃろう』


「あの、すみませ……。あの?」


「はい?」


「何処を凝視してるんですか!」


おっふぅ!


「この変態!」


違う! 違うって!


確かに、胸を見たのは認めるけども!


今は、お前のコアを見てただけなんだって!


今のは違うんだって!


【コアが心臓に宿ってましたからね……】


『気を抜くからじゃ』


「お兄ちゃん……。大丈夫?」


両手で胸を押さえて、足早に立ち去る美人。


そして、殴られて倒れ込みガキに慰める俺……。


ああああぁぁぁぁ! もう!


またこれかよ。


マジ勘弁してくれよ。


はぁ~。


やってらんね~……。

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