十三話
「どこにあるんだ?」
メシアの部屋を探し始めて早二日……。
見つからないんですけど!?
なぁ~?
お前本当に何も知らないの?
【残念ながら】
使えん! こいつ使えん!
『まったくじゃ!』
【なっ!? 賢者様まで!】
聖書の原本って、何処にあるんだよ~?
『やはり、あの不思議な材質の本かのぉ?』
え~?
やっぱりあれが大元?
でも、逆に情報が少なくなっただけの本だぜ?
【原本とは、そういうものではないですか? 増えている部分は、後で書き足されたのでは?】
まぁ、そうなのかな?
あの世からの亡者が復活するのと、世界で大きな戦争、天使の人類への攻撃に、天変地異か。
メシアと悪魔に関する記述が全くないな。
まぁ、俺だけが読める文字だし、見た事もない材質でできた本だし……。
一番それっぽいか……。
それよりも!
『そうじゃ!』
神様との交信用アイテムって何処だよ!
それが一番欲しいんだよ!
【それは、分かりません】
使えん! 使えんぞ! こいつ!
『使えん若造じゃ!』
【そんな事言われても……】
あ~あ……。
面倒だな~。
やってらんね~……。
****
俺は、魔力を感じた物全てを床に並べた。
普通のマジックアイテムしかないしな~。
他に、魔力があるのは……。
あの、訳の分からないゲートみたいなのくらいか?
『そうじゃな。豪華ではあるが、アイテムには見えんな』
ですよね~。
どっかに設置予定だったものかな?
金だよね? これ?
【たしか……弟がよくこのゲートの中に立って、一人ごとを言ってましたね。何でしょうかね?】
はぁ~!?
ちょ! お前!
『最悪じゃ、この若造!』
そうだ! このバカ造が!
【えっ? 何が?】
これが交信用アイテムだよ!
ちょっと考えれば分かるだろうが!
『そうじゃ!』
早く! 言えよ!
俺の二日間返せ!
【でも、お二人も分からなかったじゃないですか……】
『黙れ! 若造が! それよりも、どうやって使うんじゃ?』
【はぁ~……。中に立って、魔力を出してましたね。私はてっきり、魔力を測定でもしてるのかと……】
黙れ! 馬鹿造が!
どうしよう……。
やっぱり、やってみるかな?
『そうじゃな……』
****
俺は、ゲートの中に立ち、左腕に魔力を流してみた。
「うおおおおお!」
その瞬間、頭の中に映像?
いや! 情報が流れ込んできた?
何だこれ!?
聖書に書かれていた情報が、映像として見える。
くそっ!
なんだよ? これ!
頭が割れそうだ!
映像の中で、人が大勢死んでいく……。
老若男女関係なく、圧倒的な力で人が死んでいく……。
空が闇に包まれ、海は真っ赤に染まる。
そして、人の築いたものが全て壊される。
これはいったい何だ?
俺が見ている映像の文明は、明らかに今よりも発展しているように見える。
未来の映像?
そんな事あるわけがない!
只の幻覚なのか!?
俺の見ているこれは、いったい何なんだ!?
人々が抵抗しているようだが、化け物達にどんどん殺されていく……。
何なんだよ!
(それこそ、過去の映像だ)
なっ!?
誰だ!
(私は神……。さあ、新たなメシアよ。人類を導くのだ)
がああああ!
頭が割れる!
(滅びの道から救うのだ。優秀な遺伝子を持った三百人の人間を……)
三百人!?
何を!?
(それ以上は救えぬ……。さあ、真に覚醒するのだ)
やめろ!
くっそ! 頭が!
(さあ!)
意識が……。
『しっかりせんか!』
【私達がついています!】
ジジィに若造……。
頭の痛みが……。
【情報流入を、私達が肩代わりします!】
よし! 意識がはっきりしてきた!
これが啓示ってやつか!?
早く、ここから出ないと……。
うん!?
これは……。
ジジィ! 若造!
後、どれくらい我慢できる?
『なんじゃ!? まだ、もつが……。長くは無理じゃぞ!?』
悪いが少しだけ我慢してくれ!
【ぐうぅ! どうしたんですか!?】
情報に!
情報の先に気配がある!
今、確かに神と繋がってるんだ!
遡ってやる!
『分かった! 早くせい!』
(愚かな……)
おおお!
俺の意識は、情報の波を遡った。
白い光の先に……。
玉座に座る……。
あれが神!?
実体がある!
場所! 場所は?
****
(あくまで抗うか、死神の産んだイレギュラーよ……)
神の力なのだろうが、俺の意識が離れている間に、ゲートが燃え上がり始めた。
もう少し! もう少しで奴の居場所が!
ん?
熱!!
あじゃじゃじゃじゃ!
【いけない! 意識を身体に戻して下さい!】
うおおおお!
「はぁはぁ……。危ねぇぇぇ……」
意識をなんとか戻せた俺は、燃え上がるゲートから、転げるように逃げ出した。
はぁぁぁ……。
あ~あ……。
面倒な事になった。
『むう……』
【ふぅぅぅ……】
俺達は情報を遡り、ある事が分かってしまった。
今見せられた映像は、真実だ。
過去の映像ではあるが、同じ事がこれから始まるらしい。
はぁ~……。
【どうしますか?】
ああ?
馬鹿かお前?
【はっ?】
『やる事は、決まっておるじゃろうが』
最低三百人以上で生き残るんだよ!
じゃないと、俺がやった事が洒落にならなくなるじゃないか!
馬鹿だろ! お前!
【しかし……】
いやいや! お前、自分で地獄って言ったじゃん!
何故ここでしり込みするの?
【あれは、あの三人の事で……】
そんなもん地獄でも何でもないんだよ!
『そうじゃ! ある意味いつも通りじゃ!』
そうだ!
あ……目から汁が出る。
【それでは?】
神に実体があるって分かったからな!
『うむ!』
殴り倒しに行くんだよ!
【なるほど……】
あっ……。
でも、願い叶えてくれるって言ってなかった?
『なんじゃ? 未練がましい……』
彼女……。
『アホか! お前は!』
【情けない……。この後に及んで煩悩ですか?】
五月蝿い!
かなり重要事項なんだよ!
死ぬ前にせめて……。
「あの? 英雄様?」
おっと……。
「なんだ?」
本部探索を手伝ってくれているヒルダが、いつの間にか部屋へ入ってきていた。
「ゴルバさんが……」
「そうか! じゃあ、病院に行くかな。あ! あと、あっちは?」
「囚われていた人と信者達を送り届けるように、マルカの王が取り計らってくれました」
「悪いな。手伝わせて……」
「いえ……。私は、英雄様に二度も救われました」
「じゃあ、ヒルダ。俺は、病院に行くよ」
「はい! こちらは任せて下さい」
「ああ……」
****
俺は、教団本部から病院へ向かった。
回復を行ったが、体力低下で二日ほどゴルバが目覚めていない。
ゴルバには頼みたい事があるから、早く目覚めて欲しかったんだ。
「どうだ?」
「ああ。問題ないようだ」
病室に行くと、食事を済ませたゴルバが柔軟運動をしていた。
まあ、怪我は完全に治したから大丈夫だろう。
「それより、あれからどうなったんだ? この状態を見る限り、解決したのは分かるが」
「ああ、あの失敗作って言われてた聖剣と契約して、メシアを倒した」
「そうか! それで?」
「三人を助けて、信徒二人と地下にいた怪物は全部処理したよ」
「三人は?」
「まだ寝てる。相当酷い目にあったからな」
「何があったんだ?」
「え~っと……」
俺は、あの日の事を細かく説明し、ゴルバに頼みごとをした。
「そんな! お前は……」
「悪いが頼まれてくれないか? お前にしか頼めないんだよ」
ゴルバは顔をしかめたが、やがて大きく息を吐き出した。
「ふぅぅ……。その目は何を言っても無駄なんだろう?」
「ああ……」
「引き受けよう。俺は、お前の従者だ……」
最後まで上からかよ……。
「頼む……」
俺は、ゴルバと一緒に部屋を出る。
そして、途中で買った花束を持って三人の病室へ……。
部屋に入ると、メアリーとリリスがベッドから上半身を起こしていた。
よかった……。
「ゴルバ? ここは何処だ? ここはいったい……」
「病院だ……」
「それは、分かりますが……」
「説明はゆっくりしてやる……」
「そうか……。魔将軍が入院とは締まらないな……」
「そうでもない……」
「その前に、一ついいですか?」
「なんだ?」
「何故ここに、薄汚い人間がいるのですか? 汚らわしい!」
「そうだ! それに、そこに寝ているのはエルフではないのか!?」
「それも、説明しよう……」
****
二人をなだめる事をゴルバに任せ、俺は看護師を呼びとめカーラだけ病室を移した。
まだ目を覚まさないカーラを、俺は抱き上げ、看護師の後について病室を移動した。
ベッドに寝かせた瞬間、カーラが目を覚ました。
バシンと乾いた音が、病室内に響く。
痛いな……。
いきなりビンタかよ。
状況も分かってないくせに。
「触るな! この下郎が!」
そう言えば、こいつこんなんだったよな~。
「私に何をした!? 返答によっては、ただでは済まさんぞ!」
どう見ても危害を加えたのって、俺じゃないだろうに……。
「おい! 何処にいく貴様! おい!」
部屋を出るとヒルダが立っていた。
「英雄様……」
「手間だが、カーラの事……頼むな?」
「はい……。あの……」
「目的はさっき達成した。俺は、行くよ」
「あの!」
「頼んだぞ。じゃあな」
俺は、振り向かずにヒルダに手を振ると病院の出口へと向かう。
****
『皮肉なもんじゃな……』
あいつらが無事なんだ、問題ない。
【あの方法しか……】
だから……。
いいんだって!
これでよかったんだ!
これで……。
『確かに、これより我らが進むは闇の道』
ああ……。
あの三人は、十分すぎるほど苦しんだ。
もう、十分だ。
三人は、俺への想いから聖剣になる事に……神に抗い続けた。
それが、地獄の苦しみを伴うにも関わらず。
そのおかげで、聖剣化がなかなか進まなかった。
でも、身体を復元し聖剣の種を取り出しても、二度と目覚めない心の迷宮に迷い込んでしまった。
若造曰く、想いが余りにも強すぎたせいらしい。
だから、聖剣の力を使い……。
記憶を封印した。
俺への想いが、二度と目覚めない眠りにつかせてしまった。
目覚めさせるには、それを取り除けばいい。
ただ、それだけの事だ。
それで、三人は……。
幸せになる……。
なんの問題もない……。
ゴルバとヒルダがレーム大陸に送り届ければ、幸せに……。
問題ないんだ……。
****
「どうした? どこか痛むのか?」
「分かりません……。なんですか? これは……」
「なんだ? リリムが泣いているのか!?」
リリムの記憶も封印してるよ……。
「カーラ様!? どうされたんですか!?」
「いや……。なんなのだ? いったい私は……」
二つの病室に分かれた三人の目から、同時に涙が流れ落ちる。
まあ、その時の俺にはそんな事分からないんだけどね~。
****
病院の玄関を出た俺は……。
三人がいるはずの病室に、一度だけ振り返りそうになる……。
だが、ギリギリで我慢できた。
情けない。
俺の心は、まだまだ修行不足のようだ。
さあ!
行こうか!
『うむ!』
【はい!】
さて、これからどうなるんだろうな。
きっと面倒なんだろうな。
あ~あ……。
やってらんね~……。




