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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第六章:啓示の救世主編
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十一話

「レイ!」


「さがっててくれ……。聖剣持ち三人と戦うよりは、確実に勝率が高い。奴らの話に乗るのは気分よくないけどな」


「分かりました。勝って下さい!」


「私はお前を信じるぞ!」


「絶対よ! 絶対勝ちなさい!」


「ああ……」


こんなクソ野郎に負けてたまるか!


今日ここで……。


この狂った救済計画ってやつを叩き潰す!


そして、平和になったら今度こそハーレムルートを!


『全く……このエロガキは』


御褒美があるのと無いのじゃあ、モチベーションが違うんでね。


『まあ、わしは狂った神を穿つ剣……』


神様が間違えてるなら!


『止めるまでじゃ!』


おうよ!


「じゃあ、君達もあっちの席で鑑賞してよ」


「はっ!」


ふ~……。


今度は、どんなズルをしてくるかな……。


「じゃあ、そろそろ始めるかい?」


「ああ……」


俺は魔剣を出し、何時ものように身体から真っ黒いオーラを立ち昇らせる。


お前等に、怨みは十分すぎるほどあるんだ。


全部ぶつけてやるよ!


はっ!?


おいおい……。


勘弁しろよ……。


「さあ! 何処からでもどうぞ」


メシアが聖剣を抜いた瞬間、全身から信じられない量の真っ白いオーラが立ち昇った。


部屋全体が、歪むんじゃないかと思うほどの魔力。


マジかよ……。


ミルフォス並みの魔力があるんじゃないか!?


『想像以上じゃな……』


勝敗は、魔力で決まるわけじゃないが。


俺の何十倍あるんだよ!?


勘弁しろよ。


負けられんが、勝てる気がしなくなってきた……。


はぁ~……。


やってらんね~……。


どうする!?


「どうしたの? 早くかかってきなよ!」


くっそ!


ここで不用意に飛び込んでいいのか!?


様子を見る?


どうする?


『相手の能力が分からない以上、様子見が定石じゃが……』


ああ、能力を使われた瞬間負け確定なんて洒落にもならん。


どうする!?


どうすれば、奴に力を使わせずに戦える!?


「早くしてよ。君の力がみたいんだ」


舐めやがって!


今すぐその顔をひきつらせてやる!


行くぞ!


『どうするんじゃ!?』


悩みや迷いは、技を殺す!


全力で仕掛ける!


「おおおお!」


足に練り込んだ魔力を爆発させ、俺はまっすぐにメシアに進む。


もちろん、音速の壁をぶち破りながら。


この速度に、反応出来るもんならしてみやがれ!


<ミラージュ>


メシアの正面に気配を持った残像を残し、俺は奴の左斜め後方の柱に飛んだ。


そして、その柱を全力で蹴り、メシアの背後から全速力で接近する。


俺に出来る最速のフェイントだ!


そのにやけた面のまま死ねや!


<ドラゴンバスター>!


闘技場内に、不快な甲高い音が響いた。


「はい、残念」


「なっ!? 魔法障壁!?」


魔剣は真っ白い障壁によって、止められてしまった。


完全な死角から移動した上に、真後ろから斬り込んだのに……。


何で反応出来るんだ!?


それも、いともあっさり片手で防がれた!?


くっそ!


後ろに飛びのく……ふりして上空へ!


虚像も残した!


これは付いて来れないはず!


『こちらを振り向いておらん!』


よっし!


<メテオストライク>!


空中を蹴り、加速した俺はメシアの左後ろ上空から、剣を振り下ろす。


再び闘技場に、不快な音が響いていく。


ただ、今度は先程と違い、金属がぶつかった音だ。


はっ!?


「凄い威力だね~。剣を両手で持つなんて久し振りだよ」


嘘だろ!?


俺の振り下ろした魔剣は、メシアの振り上げた聖剣にあっさり止められていた。


「ほっ……と!」


うおおお!


受けとめられた剣を軽く押されただけで、俺は壁に背中から激突した。


何だよ!? この威力!?


いって~……。


『やはり、魔力を練った後はフィールドが弱まってしまう……』


集束した魔力の加速状態で放った打ち下しが、全く効かない?


てか、俺の速度に余裕で付いてきやがる! どうなってるんだ!?


くっそ!


奴の剣もコピー?


いや、何かが違う!


何だ!?


何なんだ? この気持ちの悪い違和感は!?


「ふ~ん……。さすが闇のメシア。人間のたどり着けるレベルじゃないね」


くっそぉぉぉぉぉ!


殴り倒したい!


どうする?


どうすれば、奴に俺の剣が届く?


攻撃範囲を広く……。


よし!


<ファルコンスラッシュ>!


神速で放つ二連衝撃波。


ぶつかった三日月状の衝撃波は、回転を始めメシアに竜巻となって襲い掛かる。


触れたものを噛み砕く、凶暴な竜巻!


障壁の大きさは五十センチ程度だった!


少しでもダメージを!


えっ!?


棒立ちで見てるだけ!?


まさか全方位防御が出来るのか!?


いや……。


おおう!


クリーンヒット!?


魔法障壁の気配すらしない!


やったのか?


困惑しながらも追撃に走り出そうとした瞬間、俺の勘がアラームを上げる。


それも、イエローじゃない! レッドだ!


激しい音を立てて、闘技場の石畳が真っ直ぐに砕け散っていく。


反射的に飛びのいた場所を、真っ白い衝撃波が駆け抜けた。


ヤバかった……。


きっと防御を無視した攻撃のはずだ。


「おし~い! 当たると思ったんだけどな~」


はあ!?


なんでメシアが俺の後ろにいるんだ!?


それも、俺とかなり離れている。


あの短い時間で!?


俺でも無理だぞ!?


『何じゃ!? 超高速移動なのか!?』


ファルコンスラッシュを放って、俺が走り出そうとするまでに一秒かかってないんだぞ!?


何がどうなってるんだ!?


まさか、光速移動?


そんなのどうしようもないぞ!?


「どうしたんだい? 他にも見せてくれよ」


くっ!


「君は凄いね~。それに色々な技を持ってるなんて。面白いよ! さあ! 次はなんだい?」


落ち着け……。


焦るな……。


考えろ……。


今分かっているのは……。


強力な魔法障壁と衝撃波……それに、超高速移動?


特殊能力と言うよりは、ベース能力が高い奴なのか?


それとも、能力を出すまでも無いって事か?


てか、何だこの違和感は!?


どうすればいいんだ!?


俺の能力は……。


駄目だ……。


俺は、基本能力が高いのと、回復が出来るだけ。


魔剣の切れ味も通じないし、回復以前にこいつの衝撃波を食らえば、一撃で死ぬ可能性が高い。


超高速移動……。


そうだ! 最低限、こいつの速度を攻略する糸口を見つけるんだ!


ジジィ!


ちょっと無茶するぞ!


『どうするんじゃ!?』


<カノン>を、避けるすき間なくこの部屋全体に打ち込む!


あの技は腕への負担がデカイ!


『よし! 回復じゃな!』


任せたぞ!


「うん? 次はなにかな?」


<カノン>乱れ撃ち!


「うおおおおおお!」


俺は、上空に飛び上がり衝撃砲を地面へ、降り注ぐ雨のように大量に放った。


これで、糸口が……あ?


「はい……。残念」


なっ!?


空気の壁を蹴り、追撃の為に落下していた俺の目の前に、メシアが……。


剣を肩に担いでいる為、防御が間に合わない!


奴の聖剣が、俺の腹に深く突き刺さる。


うげぇぇ!


刺さった聖剣からは衝撃波が出たらしく、俺の腹が半分抉られるように消し飛んだ。


受け身を取る事も出来なかった俺は、そのまま地面へ落下した……。


「レイィィィィィ!」


「さすがに、それでもう動けないよね? 終わりかな?」


華麗に地面に着地したメシアが、うすら笑いを浮かべている。


まるで、無邪気で残酷なガキのような……。


寒気がするうすら笑い。


そんな馬鹿な……。


奴は空中を蹴っていない!


空中を蹴れば、空気の振動が残るのに!


どんなに速くても、それは感知できる!


まっすぐに飛び上がっただけのはず!


いや、不可能だ!


物理的にそんなすき間は無い!


俺が衝撃砲を放つ前ならまだしも、一撃目が着弾するまで確かに地面にいた!


避けられるはずがない!


『まだじゃ! すぐに回復させる! 少し待て!』


物理的に不可能なように、同じ箇所にも放ったし、軌道を変化させたじゃないか!


本当に光速……秒速三十万キロで!?


いや……いや!


おかしい!


なら……なんで?


あ……。


まさか……。


「凄いな……。致命傷が回復するのか」


俺の心が絶望と言う怪物に喰い殺されそうな時に、メシアは回復していく俺の腹部をマジマジと眺めていた。


『どうしたんじゃ!? 分かったのか?』


そんな……。


どうすりゃいいんだよ……。


「うん? 顔が真っ青だね? あ! 気が付いたかい? 流石だね~」


俺の攻撃を防いだ時、途中までは動きが見えていたんだ。


でも、いきなり……。


いきなり後ろを向いていた。


振り返るそぶりが欠落していた……。


奴の靴は普通の材質に見える……。


ファルコンスラッシュを避けた時……。


何も無かった。


俺が音速で移動しただけで、燃え上がるから俺は戦闘時、耐熱の特殊な物を履くか、裸足なのに……。


「あ……ああ……時間を?」


「正解! 僕は、時間を止める事が出来る!」


そんな……。


「はははっ! その顔いいね~! ウケるよ!」


こんな化け物……。


『しっかりせい! まだ、負けと決まったわけではない!』


「あら~? もう駄目みたいだね? じゃあ、遊びはここまでだ」


勝てない……。


『来るぞ! しっかりせんか! このバカ者!』


勝てるわけがない……。


「ぐああああ!」


「魔剣の事も神様から聞いてるんだ。こうやって切り離せば、回復も出来ないんだろ?」


「ああああ……うぐっ!」


メシアは、肩から先が無くなった右腕を押さえている俺の頭を、踏みつけた。


「この魔剣は危険だ。君みたいなのがまた出てくると、計画が狂う。だから、封印させてもらうよ」


俺の右腕ごと、ジジィが六角形の水晶の中に閉じ込められた。


終わった……。


俺は、死ぬのか?


ここで?


嫌だ……。


死にたくない……。


嫌だ……。


怖い!


「情けないね~。魔剣が無いと、這って逃げることしか出来ないわけ?」


ああ……。


殺される……。


誰か……。


助けて……。


怖い!


怖いよぉぉ!


****


闘技場に先程よりも軽い音が響いた。


リリスの撃った魔道砲は、メシアに難なく弾かれていた。


「ん? 大人しくして欲しいんだけどな?」


「やらせん! こいつだけは死んで……も……」


腹を殴られたリリスが、そのまま崩れ落ちた。


「レイにこれ以上は!」


「グルルル!」


止めろ……。


駄目だ! 殺される……。


「逃げろ! 頼む! 逃げてくれ!」


「馬鹿! みんなで帰るって言ったでしょうが!」


カーラが俺の右腕を法術で止血している。


俺は、うつぶせの状態でカーラの服を掴む。


「駄目だ! 駄目なんだ……。お前だけでも逃げてくれ……」


「きゃあああ!」


メアリーが壁に吹き飛ばされ、動かなくなった。


「しっかりしなさい! あんたは! どんな時でも諦めないのがレイ:シモンズでしょうが!」


「ギャウン!」


ゴルバが空中から地面に叩き落とされた。


大きく切り裂かれた腹から大量の血が……。


「やらせない!」


カーラがメシアに向かい走りだした……。


止めてくれ……。


駄目だ……。


止めてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!


「この三人は魔力が強い。いい聖剣が出来るよ。君のせいで信徒が減ったからね~。あっ!君も実験材料になってもらうから。宜しく!」


腹を蹴りあげられた俺は、そこで意識を失った。


最悪だ……。


なんで、俺に近づいた人間はみんな不幸になるんだ?


俺は、生きてちゃいけない存在なのか?


俺を好きだと言ってくれた……。


あの三人は、どうしようもないこんな俺の事を好きだと……。


何でだよ?


苦しめるなら、俺だけでいいじゃないか!


なんでこんな事するんだよ!


ちくしょぉぉ……。


何が死ぬのは怖くないだよ……。


俺があそこで竦み上がらなければ、三人を逃がせたかも知れないのに……。


情けない……。


俺は最低だ……。


やってらんね~……。

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