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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第六章:啓示の救世主編
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七話

「つまり、僕らはみんなメシア候補って事さ。大体みんな八~十五歳で啓示を受ける。そして、聖剣を手に入れた者だけが信徒になるんだ」


えっ!?


何?


じゃあ、俺の本当の親父って神様なの!?


「お前の父親も神なのか?」


「違う違う! あらかじめ遺伝子に仕込まれてるんだよ。それが、選ばれた優良な人間にだけ作用するんだ」


選ばれた人間にだけ!?


「それでね、信徒の中からさらにメシアが選ばれて、神と直接対話が出来るようになる。今のメシアは僕より二歳下だけど、本当に優秀なんだよ」


何がどう言う事だよ?


訳が分からん……。


「う~ん……。うまく伝わらないかな? 啓示が分からないんだよね?」


「そうだよ!」


「ある日突然頭の中に、映像と情報が流れ込んでくるんだよ。世界が終ってしまうって言う情報がね。それで、自分が選ばれた事が分かって、聖剣の作り方を理解するんだ」


聖剣を作る!?


聖剣ってのは作る物なのか!?


「世界の終りの情報だけど……」


「それはさっき新約聖書ってのを読んだ」


「ああ! 助かるよ。後は……」


神からの啓示!?


本当にあれは真実なのか!?


なら何故俺は啓示を受けていない!?


あの馬鹿は嘘をついていない……。


それは分かる……。


どうなってるんだよ!?


「君のように信徒になれなかった人間も大勢いたんだけどね? そう言う人間はどうなったと思う?」


「回りくどい! 早く言え!」


「神様の命令で、全員僕達が始末したんだ。君達のような役立たずは、必要ないからね。聖剣を持たない君が、仲間を撃退したと聞いた時は驚いたよ」


は……ははっ……。


半分冗談のつもりだったんだがな……。


本当に神様は、俺を殺したかったのかよ……。


なるほど。


人生が過酷なはずだ。


やってらんね~……。


「まあ、大体こんなところだね~……」


神は俺の死を望んでいる?


俺は………………。


俺は…………。


俺は……。


『しっかりせい!』


分かってる……。


考えてるだけだ。


何かが……。


何かがおかしい……。


こんな事は……。


そうだ!


「何故、お前達は人を殺そうとする? メシアは人を救うんだろう?」


「それも、神の御意思さ。この星には百五十億人もの人間がいるんだ。全てを救うのは不可能だから、選別をするのも僕らの仕事なんだ」


クソが……。


「どう言う基準だよ! いい人も殺されそうになってたぞ?」


「性格とか中身なんてどうでもいいんだよ。遺伝的に優れている者を、次の世界に導くのさ」


ふざけるな……。


「まあ、それが必要な事と理解できた者が信徒になるんだけどね。君は、啓示を受けても同じ結果になったかもしれないねぇ」


俺の真っ黒いオーラを見て、馬鹿が呆れたように喋っている。


当り前だ!


そんなもん納得出来るか!


「あっ! でも、使命を全うした信徒には、神から御褒美があるんだよ?」


「御褒美!?」


「そう! 神が叶えられる事なら、どんな事でも願いがかなうんだ。富に名声……人を生き返らせたり、殺したりもできるはずだよ?」


そんな奇跡が……。


「おっ! 反応したね? どうだい? 今からでも、こちらに来ないかい? 実は、その為にわざわざ時間を取ったんだよ」


なるほど……。


俺は説得されてたのか……。


この馬鹿どもに協力すれば、何でも願いがかなうのか……。


『………………』


何だよ?


止めなくていいのか?


『わしは、お前を一番よく知っておる。それに、万が一があっても……。わしは止めはせん』


何だよ? その万が一って?


「どうだい? 悪くない話だろ? 信徒を二人も倒した君の力を評価しての、特別措置なんだよ?」


馬鹿に付き合うほど、寝ぼけちゃいない。


「君も、今から聖剣を作るといい! 魔力の強い女性に種を植え付けるだけで、その女性が剣になるんだ! 簡単だろう?」


ふ~……。


さっきも言ったがこいつ! 殺す!


『神は残酷と比喩としてよく言うが、本当のようじゃな』


早い話が、神ごと潰せばいいんだろう?


『ふん。もとよりそのつもりか?』


何時も言ってるだろう?


俺は俺だ!


まっすぐ突き進む!


俺は、魔剣を呼び出し、構える。


「ふ~……。やっぱり出来損ないか……」


ちっ……。


今度のチートは何だ!?


また攻略してやる!


その余裕ぶっこいた顔を、歪めてやるからな!


「あ! そうだ! 最後に!」


この後の及んで!


「何だ!」


「君の行動は、僕ら教団が常に監視していたんだよ。だから、ここに君が来ると分かっていた」


はぁ~?


「分からないかな~? 僕は君を殺す為に、わざわざここに来たんだよ。この意味分かる?」


むかつく!


「お前は、信徒の中でも実力があって、俺に負けないって事か?」


「正解! 頭は悪くないんだねぇ。もう少し補足すると、一対一の戦闘に関しては無敗なんだよ」


相当自信があるようだな……。


『抜かるなよ?』


当然だ!


「僕の戦闘力は信徒で一番弱いんだけど、一番強いんだ」


はぁ~?


頭おかしいのか?


「分からないかい? まあ、すぐに身体で実感するよ」


なんでこの馬鹿共は、全員むかつく奴らばっかりなんだよ!


「僕は第一信徒……ブラド。君を殺す者だ」


「御託は済んだか?」


「ふふふっ……。さあ、やろうか?」


殺す!


一瞬で殺す!


なっ!?


速い!?


「ぐあ!」


くっそ!


実力ナンバーワンは、伊達じゃないのかよ!?


俺が一歩前へ踏み出した瞬間、懐に飛び込まれた。


奴の振り上げられた剣が、俺の体を切り裂く。


体を捻って、致命傷は避けたが……。


俺より速い奴がいるなんて!


「ふふっ……。驚いてるね」


くっそ! 舐めるなよ!


うおおお!


俺がまた踏む出そうとした時、すでに敵の突きが向かって来ていた。


前へと進もうとする体を、無理矢理止める。


はあぁっ!?


俺より踏み込みが速い!?


体を押しとどめてくれた右足には、オリハルコンの剣が刺さってしまった。


くっそ!


馬鹿の剣で傷を負わされた、胸と足から煙が噴き出す……。


避けるのが精一杯だ……。


こっちから攻撃する暇がない……。


どうする?


遠隔攻撃だ!


<ホークスラッシュ>


はっ!?


何だよそれ!


容易く衝撃波を回避した馬鹿が、俺との距離を一気に詰める。


受け流しによって馬鹿の振り下ろした剣の軌道をそらしたが、脇腹を切り裂かれた。


速過ぎる。


高速の衝撃波さえ避けるなんて……。


全速……。


そうだ! 俺はまだトップスピードには乗り切っていない!


トップスピードで撹乱すれば!


<ミラージュ>


相手にではなく、横方向へと走り出した俺は、複数の虚像を作り出した。


気配を持っ虚像だ!


さすがに全部は対処でき……てる!


ヤバい!


虚像に全く目もくれなかった馬鹿は、俺へ向かって真っすぐに剣を突き出してきた。


「ぐが!」


馬鹿の剣が、俺の腹を貫通した……。


「凄いな君は……。こんなに凄いのは初めてだ。これじゃあ、他の信徒が倒されたのも分かるよ」


はぁ?


何を言って……。


ぐううううう!


腹に刺さった剣を抉られる……。


くっそぉぉぉぉ!


だが、この距離なら!


ええい!


俺の振るった剣は、空を切る。


剣を俺の腹から引き抜いて、跳びのきやがった。


くそ! 当たらん!


なんて速度だ!


くそ! くそ!


どうする?


以前ゴルバを倒した時のように、目くらまし……。


一瞬でも目を逸らしてくれれば!


<ファルコンスラッシュ>


超高速で放つ二つの衝撃波は、真空の巨大な竜巻となり馬鹿に向かう。


今だ!


<ミラージュ>


虚像を残して上空に!


「それじゃあ、駄目だ」


な!?


俺と一緒に飛び上がって!?


なら!


俺は高速で右足を突きだし、空気の壁を蹴る。


空中でさらに飛び上がるなんてお前には……嘘……だろ。


「へぇ……。君はこんな事も出来るんだね」


「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


魔剣でガードしたが、肩と足を切り裂かれた俺は、地面に落下した。


実力が違いすぎる。


勝てない……。


このままだと間違いなく負ける。


致命傷を避けるので精一杯だ。


どうすりゃいいんだよ。こんな化け物……。


動きは俺よりも速い。


技も通じない。


ジジィのフィールドは、オリハルコンの剣で難なく切り裂かれる。


勝てる要素が見当たらん……。


てか、こいつも何か特殊な事してるのか?


それはいったい何だ?


考えろ……。


考えるんだ……。


君の能力は素晴らしいと言っていたな。


こんなのは初めてだ?


一番弱くて、一番強い……。


「さすがにそれだけ怪我をすれば動けないかい?」


床にうずくまる俺を見て……。


笑ってやがる!


殺す!


殺してやる!


「うわ~……。この技は凄いね~」


はぁ!?


ホークスラッシュを出した!?


あれはそう簡単には……。


『空を蹴る事も出来たのぉ。つまり……』


くっそ!


そう言う事か!


最弱で最強!


ふざけやがって!


ズル過ぎるぞ!


「ん? 気が付いたかい?」


「お前は、相手の力を使えるのか?」


笑ってやがる!


このクソ野郎!


「正解! さすがだね~。でも、相手の能力をコピーするだけじゃないよ」


まだあるのか!?


「相手の能力に、自分の力を上乗せした実力になるんだよ。どうだい? 凄いだろ?」


それで一対一で無敗なのかよ。


「相手が十の力を持っていても、僕は十一になるんだよ。凄いと思わないかい?」


凄いって言うよりも、ずるいわ!


「さらに言うと、相手の特殊能力もコピーできる! まさに無敵なのさ」


化け物め……。


俺の能力が全部使える?


勝ち目がないってのかよ!


いや!


こんなところで、諦めてたまるか!


こんなクソ野郎に、負けるような修行はしてない!


考えるんだ。


何とか活路を……。


「おや? まだ立てるのかい? タフだね~」


お前にもコピーされてるかも知れんが、回復出来るんだよ!


「でも、そのタフさも貰ってるはずだ。さあ、何時まで生きていられるかな?」


お前を殺すまでだよ!


しかし……。


どうする?


全く案が浮かんでこない……。


たとえ、戦闘中に俺の戦闘力が向上しても……。


『同様に向こうも向上するじゃろうな……』


俺の技は、見ないと使えなかった。


下手に他の技を使えば盗まれる……。


つっても、他に有効な技なんて思いつかんが……。


乱撃……


いや、全て斬り捨てられるのがオチだ。


どうすりゃいいんだよ!


何だよ! この化け物は!


はぁ~……。


やってらんね~……。

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