五話
「う~ん……」
「駄目ね~……」
「このままでは、新たな失踪者が出るな……」
俺達は城の一室で、集めた情報を整理していた。
町の地図に失踪者の家をマーキングして、写真や経歴をまとめた。
情報収集を三日間調べて分かった事は、城の使用人以外にも大勢の人間がここ数カ月で失踪している事と、謎の宗教が関わっている可能性があると言う事くらい……。
う~ん……。
でも、何か違和感が……。
考えろ……。
う~ん……。
ヘイ! ジジィ! ウェイクアップ!
『起きとる。ポイントはやはり悩み事……かのぉ?』
俺もそう思うんだけど……。
当事者に話を聞くって訳にもいかないからな~……。
ん? んんん!?
これは!
『どうしたんじゃ!? 何か分かったか?』
この子とこの子可愛い……。
両方城で働いてたのか~。
会いたかったな~……。
会って、色々したかったな~……。
『あれじゃな』
何?
『お前は下衆じゃ』
ちょ! 止めなさいよ~!
人に向かって下衆とかって、言っていい言葉じゃないんだよ!
『ふん!』
謝ってくださ~い。
俺に……。
謝って下さ~い!
『本当の事を言ったまでじゃ。わしは謝らん!』
まぁ! なんて態度の悪いクソジジィなんでしょ!
これだから最近のクソジジィは……。
『お前は! 大体……』
まぁ、冗談はさておき……。
この二人に共通点があるんだ。
そこから何か分かれば……。
『お前との会話は、ストレスがたまる! 最初からそう言わんか!』
ストレスで死ね……。
『お前が死ね……』
「ねぇ? レイ?」
「なんだ?」
「あんたはさっきから……」
おや?
おやおやおや!?
何故俺はアイアンクローを?
痛い痛い痛い……。
「なんだ? 放せよ!」
「女の写真をじっと見つめて! 真面目にやりなさい!」
その冗談は、さっきジジィと済ませた!
てか、心でも読めるのか? お前は!
俺への虐待は、せめて冗談を言った時にして下さいよ~。
今は、真面目に見てるだけなのに~……。
痛い痛い痛い……。
ちょ……やめて下さ~い。
こめかみが軋み始めた~。
真面目に考えてたのに~!
『お前の信頼はこんなもんじゃ』
マジでか!?
はぁ~……。
やってらんね~……。
「なんであんたは、すぐに他の女を見るのよ~!」
痛い痛い!
爪が刺さってる!
「違う! この二人に……痛いって!」
いだだだだ!
こいつ……。
俺の頭蓋骨潰す気か!
止めろ! 馬鹿エルフ!
「カーラさん、この二人だけ失踪時の状況が違うようですよ」
「へっ? そうなの?」
「早く放せ! この二人は他と違って、突然いなくなってるだろうが!」
「そう言えば……」
放しなさいよ~って!
ミシミシいい始めてるから!
俺の骨が泣き叫びそうだから!
「で? 何が分かったの?」
「まず……放せ」
やっと放しやがった……。
こいつ絶対馬鹿だよ……。
『早く話さんと、また掴まれるぞ?』
分かってる!
「兵士達が、突然失踪して似たような状況だから気付き難かったけど、他の使用人は部屋を片付けたりしてる」
「なるほど、自身が故意的にいなくなったか……」
「さらった相手に十分な時間の余裕があったって事よね?」
「そう言う事だ。使用人側……兵士以外で五十人の中で二人だけって、おかしいだろう?」
なんだ?
みんなが俺をジッと見ているが……。
「なんだよ?」
「あんた、やっぱり頭悪くないんのよね?」
なんですか~?
「私達が見落としていた点に、お前が逸早く気が付くとは……」
何がいいたいんだすか~?
「レイは……やれば出来る子なのに……。はぁ~」
ほう……。
お前等! 俺を馬鹿だと思ってやがったな! こんちくしょぉぉ……。
『お前は、真面目な場面とそうでない時の落差が激しすぎるんじゃ……』
そんなことないもん!
俺~、日頃から頭いいもん!
馬鹿じゃないもん!
『喋り方が馬鹿丸出しじゃ、クソガキ』
五月蝿いわ!
てか! お前らも!
「何時まで驚いてるつもりだ……。この二人の情報を重点的に聞きこむぞ……」
「なんか気持ち悪いわね……」
なっ!
このクソエルフはぁぁぁぁぁ!
好きとか言ったの、絶対嘘だろっ!
「まあ、レイも珍しく真面目ですし……。行きましょうか?」
珍しく!?
俺……結構真面目に生きてるつもりなんだけど!?
「そうだな、レイが真面目なうちに行こう。確か、二人とも城の使用人だったはずだから同僚にでも話を聞こうか?」
リリス! お前もか!
俺はどれだけ信用が無いんだよ!?
『普通の他人を百点中五十点とすると……、三点くらいかのぉ?』
低っ!
『詐欺師並みじゃな』
俺、仲間じゃね~のかよ!?
どんだけ信用されてないんだよ!?
「さあ、行きますよ?」
「ああ……」
なんか気乗りしなくなってきたな~……。
はぁ~……。
****
「そうか……。他に何かあるか?」
「いっ! いえ!」
「助かった……」
「あ! あの! 英雄様!」
「……レイでいい」
「そんな恐れ多い!」
「無理強いはしないけど……。なんだ?」
「私達の為に有難う御座います! 応援しております! 頑張って下さい!」
「ああ……。有難う」
この城では風邪でも蔓延してるのか?
聞く奴聞く奴みんな顔が赤いぞ?
メイド長まで顔が赤かったもんな~……。
『……不憫な』
なんだよ!?
ん?
中庭でメイド達が……。
俺の話?
なんだ!? 悪口か!?
言ってみろ!
『本気で言っておるのか?』
嘘言ってどうするんだ?
俺のうわさイコール悪口じゃん!
俺、まだそんなに嫌われる事してないと思ってたのに……。
あれ?
手を振ってる? 俺に?
なんで?
『わしの予想では悪口ではないと思うが……』
そうなの?
じゃあ、なんの話し!?
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
おいいいいい!
手を振り返したら悲鳴あげられたぞ!
嫌われてるじゃん!
ジジィの嘘付き!
『……もうお前駄目じゃ』
何がですか~?
ああ……ちょ……。
痛い……。
「レイ? 何をしてるんですか?」
メアリーさん?
何で怒ってるの~!?
お前に足踏まれたら、骨折れるんだよ!
止めなさいよ~!
「協力してくれてるから、只の挨拶だろうが! 足どけろ……」
「全く……。油断も隙もない……」
なんのですか~!?
「メイドは、若い者が多いのでご勘弁下さい」
「いえ、問題はレイの態度ですから……。それよりも、わざわざメイド長自らの案内ありがとうございます」
「いえ、我が国の問題を解決しようとして頂いているのですから、喜んでお手伝いさせていただきます」
う~ん……。
メイド長……。
胸デケェな……。
「レイ様? そんなに見つめられたら……」
やっぱり風邪か? 顔が赤いぞ?
ところで、何カップ?
『この塊が』
塊!? せめて煩悩は付けろよ!
何の塊だよ!?
って……。
いだだだだだ!
お前カーラより力強い!
頭蓋骨が陥没する!
「なにを見てるんですか?」
「いちいちアイアンクローをするな! ただ、メイド長を見てただけだ! 別に何もないって!」
「あの、メアリー様? メキメキと音が聞こえますが……」
「気にしないでください。レイにはこれぐらいしないといけないんです」
止めて止めて!
マジでグシャってなる!
即死する!
はぁはぁ。
やっと放した……。
何時か俺殺される……。
『もういっそ死ねば楽じゃ』
ちょ! おまっ!
今死ねっつったよな!?
誰が死ぬか! お前が死ね!
『ふん! お前が……』
あ……。
カーラ達も戻ってきた。
「どうだった?」
『ぬうう……』
「やっぱり他とそんなに変わりないわね。そっちは?」
「妹とのトラブル……。家族問題ってやつだった」
「こっちもよ。どうする?」
「取り敢えず、そっちの詳細を教えてくれ」
「何でも彼女はかなりのブラコンだったらしいんだけど、その兄が仕事に失敗して引きこもってるらしいわ。それを悩んでたみたい」
ふ~ん……。
「で? そっちは?」
「妹がいて、近所でも評判の美人姉妹だったらしいんだが、その妹が姉の真似をする事に命を掛けている奴らしくてな。ただ、この使用人の採用試験に妹だけ落ちたらしくて、仲が微妙になったらしい……」
「家族内トラブルか~……」
さて、やっぱりその家族に聞くか……。
『なにか後ろめたい事があれば、素直に喋りはしないぞ?』
分かってる。
一度聞いて情報をくれなかったしね~……。
まぁ、手段はあるさ……くくくっ。
『拷問はいかんぞ!』
何故ばれた!?
『この変態S男が!』
変態って言うな!
俺はいたってノーマルです!
『わしは認めん! 認めんぞ!』
ちぃ……。
「何してるの? 行くわよ?」
おっと……。
「すぐ行く」
****
「何度もすみません」
「いえ……。娘は無事でしょうか?」
う~ん……。
そりゃ元気も無くなるよね~……。
娘が失踪して、一か月だもんな~……。
「それは、なんとも……。ただ、全力で調べます」
さすがメアリー……。
今、慰めは無責任だよな~。
「お願いします……」
「それで、妹ってのはいないんですか?」
「はい? ああ……、仕事の出ています。三時には戻ると思いますが……」
「分かった。三時過ぎにまた来てもいいかな?」
「それはもちろん……。妹の方に何か?」
「一応全員に聞いてるだけです。では、また後で……」
「はい……、お願いします」
****
さて、次は……。
ブラコンの家か。
『もう少し他の言い方は無いのか?』
いちいち名前なんて覚えてられるか。
「ねえ、レイ?」
「なんだ?」
「もしかして、この事件の推測ついてない?」
「……多少な」
「それならば、私達にも教えてくれないか? 私には検討もつかん」
「いや……。思いこみは真実を遠ざける可能性がある。お前等は、ここで俺の推測は聞かない方がいいと思う」
「そうか……」
「しかし、あれですね~……」
なんだ?
「そうよね~……」
なんだよ?
「本当にそうだな……」
だから、なんだよ!?
勝手に以心伝心するな!
さっぱり分からん!
喋れよ!
「はぁ~……なんで二人きりの時に、このモードになってくれないのか……」
なんの事ですか~?
モードって、何ですか~?
俺って、何時からモードが設定できるようになったの!?
本人が知らないんだけど~?
『真面目な馬鹿は、質が悪いのぉ』
どう言う事!?
何? 俺馬鹿にされてるの?
殴るぞ!
『かまわんが……』
分かってる、言ってみただけだ……。
この三人に手をあげたら、俺が死んでしまう。
それどころか、何もしなくても死んでしまう。
あれ?
どの道、死ぬんじゃね?
『男は……涙は見せんものじゃ』
だから、慰めるな!
余計にへこむから!
****
「ここですね」
「留守みたいだな……。どうする?」
さて……。
前に話をした母親は……留守みたいだな。
『そうじゃな』
無茶はしたくなかったが、急げば助けられる確率が上がるよな?
『まあ、人の命がかかっておる』
「じゃあ、出直し……ちょ! 何してるの!?」
魔剣を出した俺は、扉の鍵を切り捨て建物へと侵入する。
そして、気配のする二階へと進む。
「レイ! 駄目です! 犯罪ですよ!」
目的の部屋にも鍵がかかっていたが、もちろん関係ない。
「なっ! なんだ、お前たちは!?」
部屋の隅に男が座っていた。
手には写真立て……目が腫れてるな。
『泣いておったようじゃな』
想定の範囲内……。
「ひっ! 何する! 放せ! 兵士を呼ぶぞ!?」
俺が、男の胸元を掴みあげると暴れ始めた。
「呼んでもいいが、俺たちは困らないぞ? 俺たちは王からの依頼で、失踪事件を探ってるものだ。妹の事を喋れ」
「あぐぐ……放せ! 話すから! 苦し……」
男を放すと、床にドサリと落ちた。
「で? 何があった?」
「けほっ……。ふざけるな! いきなり! 何なんだ、お前たちは!? 妹を捜すなら早くしろよ!」
「あの……レイ? これはさすがに……」
「喋れと言っている」
「何をだ! 俺は妹がいなくなって悲しんでいるんだぞ! 早く探し出せよ! それがお前等の仕事だろうが!」
ふ~……。
「知っている事を喋れ……」
俺は、少し目つきを変えてもう一度聞いた。
「なっ! ……俺は何も知らない! いきなり居なくなったんだ! 頼むよ……妹を探し出してくれよ……」
男は涙を浮かべて……アホらしい。
「ちょ! レイ! まずいって!」
「えっ!? レイ! どうしたんだ!? お前らしくないぞ!」
俺は、男を押さえつけて剣を首にあてている。
「やめろ! この殺人鬼! 放せ! 放せよ!」
「何度も言わせるな……喋らないと殺すぞ? 一応言っておくが、お前を殺したくらいじゃ俺は掴まらない」
「そっ……そんな……。俺は……俺は……。ひぃ!」
俺の目を見た男が震え始める。
本当の殺気は、初めての経験のようだな。
『そうそう経験がある者は、長生きしておらんじゃろう』
俺はしょっちゅうなんだけどな~……。
まぁ、いいや。
「五数える間に喋らなければ、首を切り落とす。五……」
「ああ……。やめ……」
「四……」
「俺は……俺は……」
「三、二、一!死ね」
『せめて、普通に数えてやれんのか?』
めんどい!
「待て! 待ってくれ! 喋る! 喋るから~……」
泣くなクズが……。
「早く喋れ……。他にあてが無いわけじゃないから、お前が死んでもいいとも言える……」
「うう……。妹を……妹を差し出したんだ……あの教団に……」
男が喋った内容は、なんとも自分勝手な話だった。
仕事に失敗した男は、精神を病んでしまい家から外に出られなくなった。
そして、懸命に慰めてくれた妹と一線を越えてしまったそうだ。
それでも病状の回復しない男を訪ねて、白の教団と名乗る人間が来た。
その教団の人間は金銭を一切要求せず、熱心に男を救おうと通ってくれたそうだ。
一月ほど通ってきた頃、病気から回復させられると言い始め、その方法が妹を教団に差し出す事だったらしい。
もちろん、男は悩んだって言ってるが妹を差し出しやがった。
妹の仕事が休みの日に男が手引きをして、妹は教団の人間に連れて行かれた……か。
ビンゴだな。
『うむ』
しかし、気分が悪い……。
「後、一月待てば俺は救われるんだ! 妹も……妹も分かってくれるはずだ! だから……」
馬鹿すぎる……。
「俺は悪くない! 俺は……俺を裏切った世の中がわる……えふっ!」
俺は、男を気絶させた。
騒がれると面倒だからね……。
何より、教団の場所については知らないそうだし……。
しかし、肉親を犠牲にするなんて論外だな……。
金銭を騙し取られるほうが、マシだろうが。
『自分勝手な人間とはこう言うものじゃ』
今更言っても仕方ないよな……。
「レイ……」
「こいつに騒がれると面倒だ。城に連絡して、こいつを拘束してもらおう」
「分かった……。しかし……」
ん?
『ゴルバ以外は、ショックを受けておるな』
なんだかんだで、こいつ等箱入り娘どもだからな。
戦争で人殺した事あるのに、これくらいでショック受けるなよ……。
「ほら! もうすぐ三時だぞ? 早くしようぜ」
「うん……。分かってるんだけど……」
ええい!
お前等がショック受けてても、妹は帰ってこないっての!
「お前等……ああ?」
俺はゴルバに制止された。
「俺がついていこう。三人は城に連絡をしてくれ」
「分かりました。そうさせてもらいます……」
おお……。
三人が動き始めた。
最近チョイチョイ役に立つな、この犬。
****
俺はゴルバと二人で、妹が戻ってきているはずの民家へと戻る。
「レイよ」
「なんだ?」
「あの三人は、お前よりも繊細だ。そして、一般人よりも色々な事に慣れていないとも言える」
「分かってるよ」
「色々な事があって、恋も知らなかった奴らだ……。分かってやれ」
よ~く知ってるよ。
あいつらの愛情表現がガキみたいで、しょっちゅう殺されかけてんだから……。
恋に恋する乙女より、色々経験がある大人の女性が好みなんだけどな~。
「お前に、気を使われるとは思いもしなかった。理解してるつもりだけど、今回は時間が無いんでな」
「そうか……。ならいい」
なんで上から!?
こいつは絶対従者じゃない!
認めませんよ! 俺は!
『ゴルバも元々人を使う側だったんじゃ。仕方あるまい』
いやいやいや!
こいつ、魔王って言う上司いたじゃん!
二百年以上生きて礼儀を知りません、なんて認めるか!
認めたら、世の中の中間管理職に申し訳ないわ!
「で? どうする?」
「あ? ……悪いが、家族を家から出してくれ。方法は任せる」
「分かった」
妹が帰ってきている事を確認し、ゴルバが母親を家の外へ誘導した。
どうやったんだ?
まぁ、後で聞くか。
「悪いな。少し話を聞かせてくれ」
「はっ! はい! 喜んで! あ……その前に質問いいですか?」
「なんだ?」
「あの! あの! 彼女いますか?」
はぁ~?
また、自分勝手な奴か……。
『姉が失踪した事よりも、恋愛の方が大事なんじゃろう』
「悪いが、俺の事は後回しだ。お姉さんの失踪について、知っている事を教えてくれ」
「ええ~? 答えたら後で質問に答えてくれるんですか~?」
こいつ……。
『もう少し、我慢せい』
「答えてやるから、教えてくれないか?」
「やった! え~と、仕事が休みの日に私と買い物に出たんです。それで~……、別々の店に入ったんですけどいくら待っても帰ってこなくて~……、行くって言ってた店に行ってもいなかったんですよ~。仕方なく捜したんですけど、見つからなくて……」
殴っていいかな?
『好きにせい。今回は止めん』
女の嘘は分かりにくいけど……。
ここまで悪気が無いとは……。
絶対にばれないと思ってるのか?
「で?」
「それだけです。それより! 答えたんだから、私の質問にも!」
ああ……殴りて~。
「まだ、本当の話を聞いたとは思えないんだがな」
「はぁ? もう全部話しましたよ。何ですか~? 私の質問が答えにくいとか~?」
骨折れるまで殴りて~。
「頼むよ。下手に出てる間に答えてくれよ」
「ひど~い! 私が嘘ついてるって言うんですか~? それも、下手って脅しになってますよ!」
ボッコボコにしたくなってきた。
「あっ! 分かった! そんなだからお兄さん彼女いないんだ! そうでしょ!?」
満面の笑みか……。
殺す!
『待て! まだ情報が!』
ちっ……。
しかし、自分の嘘に自身があるんだろうな、喋るとは思えん。
「ねえ! お兄さんってばっ! 彼女が欲しいなら……えっ!?」
「面倒だ。とっとと喋れ」
「なっ! あんたサイテ~! 女の子にそんな目つきするなんて! あ~あ! 折角……」
俺は、軽い気当たりで女の動きを止める。
もう、くだらん話しに付き合ってられるか!
「警告だ。俺はお前に触れることなく殺せるし、それで罪に問われる事は無い。喋れ」
「あ……あうう……」
まだ、首を横に振るか……。
俺は、完全に呼吸がとまるほどの気当たりを女に向けた。
数秒で女の目から涙がこぼれ始める。
そして、一分を過ぎたころ俺の黒いオーラを見て失禁しやがった。
『お前の殺気は、人をショック死させられるレベルじゃ』
「かひゅ……ごほ! ごほ! ……はぁはぁ」
「最後だ。これで喋らないなら、死ぬ覚悟をしろ……」
「いや! 止めて! お願い! 助けて! 死にたくない!」
「じゃあ、早く喋れ……」
「あれは……あれは姉さんが悪いのよ! 小さいころから何でも一緒だった! 何でも一緒で、私の方が必ず姉さんよりいい成績になったのよ! なのに……」
予想通り、嫉妬に狂った妹が教団に姉を差し出していた。
腐ってやがる……。
どおりで姉の評判がいいはずだ。
こんな歪んだ妹と一緒にいれば、気も長くなるよな。
『本当に性格がいいか、よほど腹黒かったのじゃろう』
だよね~……。
俺は、さらに情報を聞き出しこの妹を城の人間に拘束させた。
教団側に情報が流れても面白くないんでね~。
さて、今回はヘビーだな。
『あの三人には少し厳しいじゃろうな』
俺もそう思う……。
それに、今回もしかするとだ……。
『そうじゃな……』
一人で行くべきだ。
****
ホテルに帰り、仲間たちに明日から動くと伝えて自室へと帰った。
そして、俺は夜の闇にまぎれて行動を開始した。
まさか、その事が俺を絶体絶命の窮地に追い込むとは思いもしなかった。
たく……。
やってらんね~……。




