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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第六章:啓示の救世主編
71/106

五話

「う~ん……」


「駄目ね~……」


「このままでは、新たな失踪者が出るな……」


俺達は城の一室で、集めた情報を整理していた。


町の地図に失踪者の家をマーキングして、写真や経歴をまとめた。


情報収集を三日間調べて分かった事は、城の使用人以外にも大勢の人間がここ数カ月で失踪している事と、謎の宗教が関わっている可能性があると言う事くらい……。


う~ん……。


でも、何か違和感が……。


考えろ……。


う~ん……。


ヘイ! ジジィ! ウェイクアップ!


『起きとる。ポイントはやはり悩み事……かのぉ?』


俺もそう思うんだけど……。


当事者に話を聞くって訳にもいかないからな~……。


ん? んんん!?


これは!


『どうしたんじゃ!? 何か分かったか?』


この子とこの子可愛い……。


両方城で働いてたのか~。


会いたかったな~……。


会って、色々したかったな~……。


『あれじゃな』


何?


『お前は下衆じゃ』


ちょ! 止めなさいよ~!


人に向かって下衆とかって、言っていい言葉じゃないんだよ!


『ふん!』


謝ってくださ~い。


俺に……。


謝って下さ~い!


『本当の事を言ったまでじゃ。わしは謝らん!』


まぁ! なんて態度の悪いクソジジィなんでしょ!


これだから最近のクソジジィは……。


『お前は! 大体……』


まぁ、冗談はさておき……。


この二人に共通点があるんだ。


そこから何か分かれば……。


『お前との会話は、ストレスがたまる! 最初からそう言わんか!』


ストレスで死ね……。


『お前が死ね……』


「ねぇ? レイ?」


「なんだ?」


「あんたはさっきから……」


おや?


おやおやおや!?


何故俺はアイアンクローを?


痛い痛い痛い……。


「なんだ? 放せよ!」


「女の写真をじっと見つめて! 真面目にやりなさい!」


その冗談は、さっきジジィと済ませた!


てか、心でも読めるのか? お前は!


俺への虐待は、せめて冗談を言った時にして下さいよ~。


今は、真面目に見てるだけなのに~……。


痛い痛い痛い……。


ちょ……やめて下さ~い。


こめかみが軋み始めた~。


真面目に考えてたのに~!


『お前の信頼はこんなもんじゃ』


マジでか!?


はぁ~……。


やってらんね~……。


「なんであんたは、すぐに他の女を見るのよ~!」


痛い痛い!


爪が刺さってる!


「違う! この二人に……痛いって!」


いだだだだ!


こいつ……。


俺の頭蓋骨潰す気か!


止めろ! 馬鹿エルフ!


「カーラさん、この二人だけ失踪時の状況が違うようですよ」


「へっ? そうなの?」


「早く放せ! この二人は他と違って、突然いなくなってるだろうが!」


「そう言えば……」


放しなさいよ~って!


ミシミシいい始めてるから!


俺の骨が泣き叫びそうだから!


「で? 何が分かったの?」


「まず……放せ」


やっと放しやがった……。


こいつ絶対馬鹿だよ……。


『早く話さんと、また掴まれるぞ?』


分かってる!


「兵士達が、突然失踪して似たような状況だから気付き難かったけど、他の使用人は部屋を片付けたりしてる」


「なるほど、自身が故意的にいなくなったか……」


「さらった相手に十分な時間の余裕があったって事よね?」


「そう言う事だ。使用人側……兵士以外で五十人の中で二人だけって、おかしいだろう?」


なんだ?


みんなが俺をジッと見ているが……。


「なんだよ?」


「あんた、やっぱり頭悪くないんのよね?」


なんですか~?


「私達が見落としていた点に、お前が逸早く気が付くとは……」


何がいいたいんだすか~?


「レイは……やれば出来る子なのに……。はぁ~」


ほう……。


お前等! 俺を馬鹿だと思ってやがったな! こんちくしょぉぉ……。


『お前は、真面目な場面とそうでない時の落差が激しすぎるんじゃ……』


そんなことないもん!


俺~、日頃から頭いいもん!


馬鹿じゃないもん!


『喋り方が馬鹿丸出しじゃ、クソガキ』


五月蝿いわ!


てか! お前らも!


「何時まで驚いてるつもりだ……。この二人の情報を重点的に聞きこむぞ……」


「なんか気持ち悪いわね……」


なっ!


このクソエルフはぁぁぁぁぁ!


好きとか言ったの、絶対嘘だろっ!


「まあ、レイも珍しく真面目ですし……。行きましょうか?」


珍しく!?


俺……結構真面目に生きてるつもりなんだけど!?


「そうだな、レイが真面目なうちに行こう。確か、二人とも城の使用人だったはずだから同僚にでも話を聞こうか?」


リリス! お前もか!


俺はどれだけ信用が無いんだよ!?


『普通の他人を百点中五十点とすると……、三点くらいかのぉ?』


低っ!


『詐欺師並みじゃな』


俺、仲間じゃね~のかよ!?


どんだけ信用されてないんだよ!?


「さあ、行きますよ?」


「ああ……」


なんか気乗りしなくなってきたな~……。


はぁ~……。


****


「そうか……。他に何かあるか?」


「いっ! いえ!」


「助かった……」


「あ! あの! 英雄様!」


「……レイでいい」


「そんな恐れ多い!」


「無理強いはしないけど……。なんだ?」


「私達の為に有難う御座います! 応援しております! 頑張って下さい!」


「ああ……。有難う」


この城では風邪でも蔓延してるのか?


聞く奴聞く奴みんな顔が赤いぞ?


メイド長まで顔が赤かったもんな~……。


『……不憫な』


なんだよ!?


ん?


中庭でメイド達が……。


俺の話?


なんだ!? 悪口か!?


言ってみろ!


『本気で言っておるのか?』


嘘言ってどうするんだ?


俺のうわさイコール悪口じゃん!


俺、まだそんなに嫌われる事してないと思ってたのに……。


あれ?


手を振ってる? 俺に?


なんで?


『わしの予想では悪口ではないと思うが……』


そうなの?


じゃあ、なんの話し!?


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


おいいいいい!


手を振り返したら悲鳴あげられたぞ!


嫌われてるじゃん!


ジジィの嘘付き!


『……もうお前駄目じゃ』


何がですか~?


ああ……ちょ……。


痛い……。


「レイ? 何をしてるんですか?」


メアリーさん?


何で怒ってるの~!?


お前に足踏まれたら、骨折れるんだよ!


止めなさいよ~!


「協力してくれてるから、只の挨拶だろうが! 足どけろ……」


「全く……。油断も隙もない……」


なんのですか~!?


「メイドは、若い者が多いのでご勘弁下さい」


「いえ、問題はレイの態度ですから……。それよりも、わざわざメイド長自らの案内ありがとうございます」


「いえ、我が国の問題を解決しようとして頂いているのですから、喜んでお手伝いさせていただきます」


う~ん……。


メイド長……。


胸デケェな……。


「レイ様? そんなに見つめられたら……」


やっぱり風邪か? 顔が赤いぞ?


ところで、何カップ?


『この塊が』


塊!? せめて煩悩は付けろよ!


何の塊だよ!?


って……。


いだだだだだ!


お前カーラより力強い!


頭蓋骨が陥没する!


「なにを見てるんですか?」


「いちいちアイアンクローをするな! ただ、メイド長を見てただけだ! 別に何もないって!」


「あの、メアリー様? メキメキと音が聞こえますが……」


「気にしないでください。レイにはこれぐらいしないといけないんです」


止めて止めて!


マジでグシャってなる!


即死する!


はぁはぁ。


やっと放した……。


何時か俺殺される……。


『もういっそ死ねば楽じゃ』


ちょ! おまっ!


今死ねっつったよな!?


誰が死ぬか! お前が死ね!


『ふん! お前が……』


あ……。


カーラ達も戻ってきた。


「どうだった?」


『ぬうう……』


「やっぱり他とそんなに変わりないわね。そっちは?」


「妹とのトラブル……。家族問題ってやつだった」


「こっちもよ。どうする?」


「取り敢えず、そっちの詳細を教えてくれ」


「何でも彼女はかなりのブラコンだったらしいんだけど、その兄が仕事に失敗して引きこもってるらしいわ。それを悩んでたみたい」


ふ~ん……。


「で? そっちは?」


「妹がいて、近所でも評判の美人姉妹だったらしいんだが、その妹が姉の真似をする事に命を掛けている奴らしくてな。ただ、この使用人の採用試験に妹だけ落ちたらしくて、仲が微妙になったらしい……」


「家族内トラブルか~……」


さて、やっぱりその家族に聞くか……。


『なにか後ろめたい事があれば、素直に喋りはしないぞ?』


分かってる。


一度聞いて情報をくれなかったしね~……。


まぁ、手段はあるさ……くくくっ。


『拷問はいかんぞ!』


何故ばれた!?


『この変態S男が!』


変態って言うな!


俺はいたってノーマルです!


『わしは認めん! 認めんぞ!』


ちぃ……。


「何してるの? 行くわよ?」


おっと……。


「すぐ行く」


****


「何度もすみません」


「いえ……。娘は無事でしょうか?」


う~ん……。


そりゃ元気も無くなるよね~……。


娘が失踪して、一か月だもんな~……。


「それは、なんとも……。ただ、全力で調べます」


さすがメアリー……。


今、慰めは無責任だよな~。


「お願いします……」


「それで、妹ってのはいないんですか?」


「はい? ああ……、仕事の出ています。三時には戻ると思いますが……」


「分かった。三時過ぎにまた来てもいいかな?」


「それはもちろん……。妹の方に何か?」


「一応全員に聞いてるだけです。では、また後で……」


「はい……、お願いします」


****


さて、次は……。


ブラコンの家か。


『もう少し他の言い方は無いのか?』


いちいち名前なんて覚えてられるか。


「ねえ、レイ?」


「なんだ?」


「もしかして、この事件の推測ついてない?」


「……多少な」


「それならば、私達にも教えてくれないか? 私には検討もつかん」


「いや……。思いこみは真実を遠ざける可能性がある。お前等は、ここで俺の推測は聞かない方がいいと思う」


「そうか……」


「しかし、あれですね~……」


なんだ?


「そうよね~……」


なんだよ?


「本当にそうだな……」


だから、なんだよ!?


勝手に以心伝心するな!


さっぱり分からん!


喋れよ!


「はぁ~……なんで二人きりの時に、このモードになってくれないのか……」


なんの事ですか~?


モードって、何ですか~?


俺って、何時からモードが設定できるようになったの!?


本人が知らないんだけど~?


『真面目な馬鹿は、質が悪いのぉ』


どう言う事!?


何? 俺馬鹿にされてるの?


殴るぞ!


『かまわんが……』


分かってる、言ってみただけだ……。


この三人に手をあげたら、俺が死んでしまう。


それどころか、何もしなくても死んでしまう。


あれ?


どの道、死ぬんじゃね?


『男は……涙は見せんものじゃ』


だから、慰めるな!


余計にへこむから!


****


「ここですね」


「留守みたいだな……。どうする?」


さて……。


前に話をした母親は……留守みたいだな。


『そうじゃな』


無茶はしたくなかったが、急げば助けられる確率が上がるよな?


『まあ、人の命がかかっておる』


「じゃあ、出直し……ちょ! 何してるの!?」


魔剣を出した俺は、扉の鍵を切り捨て建物へと侵入する。


そして、気配のする二階へと進む。


「レイ! 駄目です! 犯罪ですよ!」


目的の部屋にも鍵がかかっていたが、もちろん関係ない。


「なっ! なんだ、お前たちは!?」


部屋の隅に男が座っていた。


手には写真立て……目が腫れてるな。


『泣いておったようじゃな』


想定の範囲内……。


「ひっ! 何する! 放せ! 兵士を呼ぶぞ!?」


俺が、男の胸元を掴みあげると暴れ始めた。


「呼んでもいいが、俺たちは困らないぞ? 俺たちは王からの依頼で、失踪事件を探ってるものだ。妹の事を喋れ」


「あぐぐ……放せ! 話すから! 苦し……」


男を放すと、床にドサリと落ちた。


「で? 何があった?」


「けほっ……。ふざけるな! いきなり! 何なんだ、お前たちは!? 妹を捜すなら早くしろよ!」


「あの……レイ? これはさすがに……」


「喋れと言っている」


「何をだ! 俺は妹がいなくなって悲しんでいるんだぞ! 早く探し出せよ! それがお前等の仕事だろうが!」


ふ~……。


「知っている事を喋れ……」


俺は、少し目つきを変えてもう一度聞いた。


「なっ! ……俺は何も知らない! いきなり居なくなったんだ! 頼むよ……妹を探し出してくれよ……」


男は涙を浮かべて……アホらしい。


「ちょ! レイ! まずいって!」


「えっ!? レイ! どうしたんだ!? お前らしくないぞ!」


俺は、男を押さえつけて剣を首にあてている。


「やめろ! この殺人鬼! 放せ! 放せよ!」


「何度も言わせるな……喋らないと殺すぞ? 一応言っておくが、お前を殺したくらいじゃ俺は掴まらない」


「そっ……そんな……。俺は……俺は……。ひぃ!」


俺の目を見た男が震え始める。


本当の殺気は、初めての経験のようだな。


『そうそう経験がある者は、長生きしておらんじゃろう』


俺はしょっちゅうなんだけどな~……。


まぁ、いいや。


「五数える間に喋らなければ、首を切り落とす。五……」


「ああ……。やめ……」


「四……」


「俺は……俺は……」


「三、二、一!死ね」


『せめて、普通に数えてやれんのか?』


めんどい!


「待て! 待ってくれ! 喋る! 喋るから~……」


泣くなクズが……。


「早く喋れ……。他にあてが無いわけじゃないから、お前が死んでもいいとも言える……」


「うう……。妹を……妹を差し出したんだ……あの教団に……」


男が喋った内容は、なんとも自分勝手な話だった。


仕事に失敗した男は、精神を病んでしまい家から外に出られなくなった。


そして、懸命に慰めてくれた妹と一線を越えてしまったそうだ。


それでも病状の回復しない男を訪ねて、白の教団と名乗る人間が来た。


その教団の人間は金銭を一切要求せず、熱心に男を救おうと通ってくれたそうだ。


一月ほど通ってきた頃、病気から回復させられると言い始め、その方法が妹を教団に差し出す事だったらしい。


もちろん、男は悩んだって言ってるが妹を差し出しやがった。


妹の仕事が休みの日に男が手引きをして、妹は教団の人間に連れて行かれた……か。


ビンゴだな。


『うむ』


しかし、気分が悪い……。


「後、一月待てば俺は救われるんだ! 妹も……妹も分かってくれるはずだ! だから……」


馬鹿すぎる……。


「俺は悪くない! 俺は……俺を裏切った世の中がわる……えふっ!」


俺は、男を気絶させた。


騒がれると面倒だからね……。


何より、教団の場所については知らないそうだし……。


しかし、肉親を犠牲にするなんて論外だな……。


金銭を騙し取られるほうが、マシだろうが。


『自分勝手な人間とはこう言うものじゃ』


今更言っても仕方ないよな……。


「レイ……」


「こいつに騒がれると面倒だ。城に連絡して、こいつを拘束してもらおう」


「分かった……。しかし……」


ん?


『ゴルバ以外は、ショックを受けておるな』


なんだかんだで、こいつ等箱入り娘どもだからな。


戦争で人殺した事あるのに、これくらいでショック受けるなよ……。


「ほら! もうすぐ三時だぞ? 早くしようぜ」


「うん……。分かってるんだけど……」


ええい!


お前等がショック受けてても、妹は帰ってこないっての!


「お前等……ああ?」


俺はゴルバに制止された。


「俺がついていこう。三人は城に連絡をしてくれ」


「分かりました。そうさせてもらいます……」


おお……。


三人が動き始めた。


最近チョイチョイ役に立つな、この犬。


****


俺はゴルバと二人で、妹が戻ってきているはずの民家へと戻る。


「レイよ」


「なんだ?」


「あの三人は、お前よりも繊細だ。そして、一般人よりも色々な事に慣れていないとも言える」


「分かってるよ」


「色々な事があって、恋も知らなかった奴らだ……。分かってやれ」


よ~く知ってるよ。


あいつらの愛情表現がガキみたいで、しょっちゅう殺されかけてんだから……。


恋に恋する乙女より、色々経験がある大人の女性が好みなんだけどな~。


「お前に、気を使われるとは思いもしなかった。理解してるつもりだけど、今回は時間が無いんでな」


「そうか……。ならいい」


なんで上から!?


こいつは絶対従者じゃない!


認めませんよ! 俺は!


『ゴルバも元々人を使う側だったんじゃ。仕方あるまい』


いやいやいや!


こいつ、魔王って言う上司いたじゃん!


二百年以上生きて礼儀を知りません、なんて認めるか!


認めたら、世の中の中間管理職に申し訳ないわ!


「で? どうする?」


「あ? ……悪いが、家族を家から出してくれ。方法は任せる」


「分かった」


妹が帰ってきている事を確認し、ゴルバが母親を家の外へ誘導した。


どうやったんだ?


まぁ、後で聞くか。


「悪いな。少し話を聞かせてくれ」


「はっ! はい! 喜んで! あ……その前に質問いいですか?」


「なんだ?」


「あの! あの! 彼女いますか?」


はぁ~?


また、自分勝手な奴か……。


『姉が失踪した事よりも、恋愛の方が大事なんじゃろう』


「悪いが、俺の事は後回しだ。お姉さんの失踪について、知っている事を教えてくれ」


「ええ~? 答えたら後で質問に答えてくれるんですか~?」


こいつ……。


『もう少し、我慢せい』


「答えてやるから、教えてくれないか?」


「やった! え~と、仕事が休みの日に私と買い物に出たんです。それで~……、別々の店に入ったんですけどいくら待っても帰ってこなくて~……、行くって言ってた店に行ってもいなかったんですよ~。仕方なく捜したんですけど、見つからなくて……」


殴っていいかな?


『好きにせい。今回は止めん』


女の嘘は分かりにくいけど……。


ここまで悪気が無いとは……。


絶対にばれないと思ってるのか?


「で?」


「それだけです。それより! 答えたんだから、私の質問にも!」


ああ……殴りて~。


「まだ、本当の話を聞いたとは思えないんだがな」


「はぁ? もう全部話しましたよ。何ですか~? 私の質問が答えにくいとか~?」


骨折れるまで殴りて~。


「頼むよ。下手に出てる間に答えてくれよ」


「ひど~い! 私が嘘ついてるって言うんですか~? それも、下手って脅しになってますよ!」


ボッコボコにしたくなってきた。


「あっ! 分かった! そんなだからお兄さん彼女いないんだ! そうでしょ!?」


満面の笑みか……。


殺す!


『待て! まだ情報が!』


ちっ……。


しかし、自分の嘘に自身があるんだろうな、喋るとは思えん。


「ねえ! お兄さんってばっ! 彼女が欲しいなら……えっ!?」


「面倒だ。とっとと喋れ」


「なっ! あんたサイテ~! 女の子にそんな目つきするなんて! あ~あ! 折角……」


俺は、軽い気当たりで女の動きを止める。


もう、くだらん話しに付き合ってられるか!


「警告だ。俺はお前に触れることなく殺せるし、それで罪に問われる事は無い。喋れ」


「あ……あうう……」


まだ、首を横に振るか……。


俺は、完全に呼吸がとまるほどの気当たりを女に向けた。


数秒で女の目から涙がこぼれ始める。


そして、一分を過ぎたころ俺の黒いオーラを見て失禁しやがった。


『お前の殺気は、人をショック死させられるレベルじゃ』


「かひゅ……ごほ! ごほ! ……はぁはぁ」


「最後だ。これで喋らないなら、死ぬ覚悟をしろ……」


「いや! 止めて! お願い! 助けて! 死にたくない!」


「じゃあ、早く喋れ……」


「あれは……あれは姉さんが悪いのよ! 小さいころから何でも一緒だった! 何でも一緒で、私の方が必ず姉さんよりいい成績になったのよ! なのに……」


予想通り、嫉妬に狂った妹が教団に姉を差し出していた。


腐ってやがる……。


どおりで姉の評判がいいはずだ。


こんな歪んだ妹と一緒にいれば、気も長くなるよな。


『本当に性格がいいか、よほど腹黒かったのじゃろう』


だよね~……。


俺は、さらに情報を聞き出しこの妹を城の人間に拘束させた。


教団側に情報が流れても面白くないんでね~。


さて、今回はヘビーだな。


『あの三人には少し厳しいじゃろうな』


俺もそう思う……。


それに、今回もしかするとだ……。


『そうじゃな……』


一人で行くべきだ。


****


ホテルに帰り、仲間たちに明日から動くと伝えて自室へと帰った。


そして、俺は夜の闇にまぎれて行動を開始した。


まさか、その事が俺を絶体絶命の窮地に追い込むとは思いもしなかった。


たく……。


やってらんね~……。

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