六話
「じゃあ……ここに書いてあるもの全部ね」
リリーナお嬢様からメモが、渡された。
「これ全部……。俺一人でですか?」
「あたりまえでしょ! 加させてあげてるだけで、感謝してほしいものよ! のクズ!」
あれぇ?
確か文化祭って、徒全員に参加の権利があるはずなんだけどな。
俺には当然の権利すらないのか?
「早くいきなさいよ! クズが!」
俺はお嬢様の催促で文化祭の買い出しに行くことになった。
木材に食材やペンキ……。
何十キロになるんだよ、この荷物。
因みに、俺にこの買い出しを本来はファナさんが頼む役割だったらしいが、喋りたくないと言う理由でギリギリ会話のできるお嬢様が頼み……命令してきた。
もぉ~……クラス全員死ねよ。
先週から俺達は、学園での文化祭準備を進めている。
この日から俺の運命は、一気に流転を始める。
****
エルフのお姫様二人に嫌われた翌日すぐにこの重労働って……。
もう、帰りたい……。
うちのクラスは喫茶店をするらしいが、重労働は全て俺の役割らしい。
これも修行になるさ……なんて、思えるほど俺の心は広くない!
クラスの男子全員殴って行きたい! 女子全員を色々悪戯してやりたい!
****
個人商店では商品を売ってくれないので、ホームセンターとスーパーで目的の物を購入した俺は、大量の荷物を担いで俺は学園へ帰って来た。
その俺が学園の門をくぐったところで、下を向いて本を読みながらこっちに走ってくる少女がいる。
そんなので走るな! 歩けよ! あぶなっ!
大量の荷物を持った俺は当然避ける事が出来ずに、少女とぶつかった。
正確に言うと、俺に突っ込んできた少女が、一人で吹っ飛ばされた。
俺の足腰なめんな。
「いたた……」
まずい、これはまた何を言われるか……。
その少女がこちらに顔を上げた。
おお……。
天然のソフトなパーマがかかった髪を持つ、美少女だ。
少女は急いで近くに落ちた眼鏡を拾い、かけた。
見事なまでの瓶底眼鏡を……。
眼鏡をとると美少女なんて、現実でありえるんだな。
初めて遭遇したよ。
さあ……これから俺は、どんな批判を受けるんだ?
「あっ! 先輩すみません。急いでたもので……」
おおぅ?
謝られた。
「い……いや……」
「じゃあ、急いでますんで、すみません」
そう言うと少女は、俺の前から走って立ち去った。
眼鏡をかけてまで俺が認識できなかった?
いや、有り得ないだろう。
でも、俺に謝るほうが有り得ない。
ぬう……。
「そんなに悩む事ないんじゃないの?」
今度は、俺に別の男子生徒が話しかけてきた。
「え? あ……確か、セシルさん」
俺に話しかけてきたのは、セシル:バージルさん。
この国の本当の勇者だ。
説明しておくと、この国には勇者の家系というものが存在している。
大昔、王国誕生の時に一人の勇者がいて、セシルさんはその勇者の子孫だ。
このアルティア王国の首都は元々、邪悪な魔人が支配する土地だったが、初代国王と大賢者そして、勇者が魔人を倒したらしい。
魔人を倒した後、この国が今も信仰する聖なる神の力で邪悪な魔力が満ちていたこの土地を清め、今の王国を建国したそうだ。
聖剣を受け継ぐセシルさんの家は、代々優秀な聖騎士を輩出している。
このセシルさんも例にもれず、二年ですでに剣術法術ともに学園一位だ。
去年の武道会では一年生にもかかわらず優勝した、サラブレッド中のサラブレッドで、女子にもモテモテだ。
俺とは生きる世界の違う、恵まれまくってる野郎だ……。
何で、俺なんかに話しかけてきたんだ?
「ははっ、そんなに変な顔しないでくれよ。ただ、彼女の事教えようと思っただけだから」
うおっ! 歯が光った! 眩しっ!
なんて爽やかさなんだ。
「はぁ……」
「彼女は、貴族ではないが大企業であるモータル商会の一人娘で、ラナ:モータルちゃんだよ」
「そうですか……」
「レイ君は有名人だから彼女も噂は知ってるかもしれないけど、彼女は気にしないと思うよ」
「なんでです?」
「彼女は学園一の変わり者だそうだ。本が異常なくらい好きで、頭がすごくいいんだけど、本からの知識や情報以外には一切関心がないんだそうだ」
「へぇ~……変わってますね。俺を蔑まないなんて……」
「ははっ……。俺も君を蔑んでいないよ」
え?
「だから、その鳩が豆鉄砲をくらったような顔はやめてくれよ」
「な! なんでです?」
「俺は、噂じゃなく自分の目を信じる。君はどう見ても落ちこぼれなんかじゃないし、性格も皆が言うほど腐ってないと思う」
こんな事を言ってくれたのは、セシルさんが初めてだ。
うわっ! ちょっと泣きそう。
「それは……」
「君の体さばきは独特だけど、悪くないと思ってるし、その数十キロはある荷物を担いで平然としている事が強さの証拠になるんじゃないかな? それに、ここまで人に馬鹿にされて、我慢してるのに性格がうわさ通りなら、死人の一人や二人くらい出てそうだしねぇ」
俺は、どんな噂をされてるんだ?
それよりもこの人は中身まで本当の勇者なのかよ。
「ただ、不器用そうには見えるけど」
セシルさんは、そう言ってまた爽やかな笑顔を俺に向けた。
やべぇ、俺が女なら百パー惚れるわ。
こいつ、マジで勇者だ。
俺の素性がばれすぎるのは命の危機だが、この人なら……。
「じゃあ、重そうなのに引き留めてすまなかったね」
心地のいい風をなびかせて、セシルさんは颯爽と校内に戻って行った。
俺に話が出来る友達とまでは言えないが、知り合いが出来た。
嬉しい。
彼女もそうだけど、男の友達なんて一生できないと思ってた。
****
その日、俺はお嬢様やクラスメイトのひどい扱いも、気にせず過すことが…………出来るか!
さんざん文句や悪口を言い続けながら面倒な事や、重い荷物持ち、難しい作業を全部俺がやらされた。
マジで全員殴りてぇ。
クラスの喫茶店化は、ほぼ俺が行った。
クラスメイトのほとんどが、ただ座ったり喋ったり、俺に文句を言うことしかしなかった。
自分が努力していない文化祭のどこが楽しいよ?
終わった後の感動なんて、これじゃあ味わえないぞノータリンども!
****
日が沈みきったところで、俺は何とか明日の文化祭に間に合うように準備を終えた。
クラスメイトはもう誰も残っていない。
もうと言うか、いつもの下校時間に全員帰りやがった。
挙句、楽しいかも知れない明日の実作業は、全くやらせてもらえないそうだ。
確かに俺がウエイターをすると客は来ないだろうが……。
いいとこどりも、ここまで来ると清々しいよ……まったく。
片づけはきっと俺一人だろうなぁ。
やってらんね~……。
****
俺は翌日の文化祭当日、裏庭に一人で座っていた。
クラスに俺がいると客が来ないと追い出され、別のクラスがやっているミックスジュースを買おうとしたが、販売を拒否された。
俺に売るものは何もないそうだ……。
これなら、屋敷に帰って剣の修練でもしたい。
ここは泣いてもいいところだよね?
あ~あ……。
「くすくす……」
裏庭の隅で体育座りをしている俺の耳に、笑い声が届く。
何だ?
俺を馬鹿にしに来た奴でも……。
あれ?
「ははっ、ごめんごめん。そんな恨めしそうに見ないでくれよ。隣……いいかい?」
そう言って俺の返事を待たずに横に座ったのは、セシルさんだった。
「どうしたんですか?」
「いや~……。俺の周りに人だかりが出来て逃げてきたんだ」
おっと……俺とは正反対な理由かよ。
「だから、その恨めしそうな目やめてくれよ。レイ君だってもう少し器用に立ちまわればこれくらいすぐなんじゃないの?」
俺は正直ドキリとした。
こいつもしかして本当に、俺の実力を認識出来ているのか?
達人にはそういう事が出来るって言うけど……。
「ははっ、分かるよ。ある程度だけどね」
うお! 考えを読まれた! まさか超能力者!?
「え~とね。君、日ごろのポーカーフェイス忘れて、全部顔に出てるんだよ」
ああ、俺のミスね。
俺の実力なんて疑われたの初めてで、動揺しちまったらしい。
てか、これ……ん軽く俺の死刑が近づいてませんか?
「ん? なんか理由がありそうだね。大丈夫! 二人だけの秘密だよ」
そう言ってセシルさんは爽やかに笑っている。
う~ん……。
俺が、同性愛者なら、ほれ……。
いやいや、俺何考えてるんだ。
「俺はここにしか居場所がないだけですが、セシルさんはこんなところにいていいんですか?」
「うん……。こう見えても色々なプレッシャーがあってね。たまには息抜きしないと病気になりそうなんでね」
「そうですか……」
俺には一生関係ない話だろうが、恵まれた人間には恵まれた人間の苦労もあるのだろう。
正直、俺は天才が嫌いだ。
才能がある奴の苦しみや傷なんて、天才同士で舐め合えばいいんだ。
俺みたいに何もない人間に、理解しろと言ってくる奴らの神経が分からない。
でも、セシルさんには理解しろと言う押しつけを感じないし、この人の心は本当の勇者なんだろうなぁ。
心底自分が惨めになってくる。
「俺には君の苦しみが全部は分からない……」
「はい?」
「でもさ。話を聞くことくらいは出来ると思うんだ」
ああ……。
本当に俺の考えを読み取るのがうまい人だ。
もしかすると、俺はアドルフ様以外に自分が本当に尊敬すべき人間に出会えたのかもしれない。
「何かあれば言ってくれよ。聞くことくらいしか出来ないかもしれないけどな」
「ありがとうございます……」
俺は、いつもとは違う種類の熱いものが目に溜まってきた。
「あ! そうだ! ラナちゃんが古本の露店してたから、行ってみない?」
「え? でも、俺は……」
「大丈夫! 僕と一緒に行こう」
差し出されたセシルさんの手をとった。
こんなことは人生で二度目だ。
一度目はアドルフ様。
そして、二度目はセシルさん。
勇者とはその力や血筋ではなく、そのあり方であり、何をなしたかで決まるって本で読んだ事がある。
この人は、本物の勇者の資質を持っているんだろうなぁ。
****
セシルさんの人を引き付ける力と、俺の人を遠ざける力がうまく働き、人が必要以上に寄ってこなかったので、二人でなら何とか学園内を移動できるようになっていた。
「あ! 先輩方!」
そして、俺とセシルさんは中等部の出している露店の中からラナちゃんの店を見つけた。
「どう? 売れてる?」
「それが、全く売れないんですよ……」
セシルさんの問いかけに、ラナちゃんは表情を暗くする。
俺はすぐにその理由が分かった。
露店に並べている商品は、彼女の私物だったものだろうが……。
こんなクソ難しそうな本、誰が露店で買うか。
それも、外国の言語も多数ある。
「じゃあ……。僕はこれをもらおうかな?」
「本当ですか! ありがとうございます!」
そう言って、セシルさんは一冊の文献を買っていた。
その時俺はある本に目を止める。
俺本来の母国語で書かれた小説だ。
少しだけ中を読ませてもらおう。
「あの……先輩?」
「あ! ごめん!」
気が付くと、俺はその本を立ったまま熟読してしまっていた。
「気にいったなら、買ってあげれば?」
「じゃあ、これもらえる?」
「ありがとうございます!」
ラナちゃんは嬉しそうに笑ってくれている。
「五千ギリです」
うお! 高けぇぇ!
日ごろから、アドルフ様にもらっている給金を使っていないから問題ないが……。
売れないもう一つの理由が分かった。
元々は二万ギリくらいしそうだから、得なんだろうけど……。
露店で売る価格の物じゃないぞ、瓶底眼鏡。
「あれ? そんな言葉読めるんだ?」
「あ……少しだけ」
「やっぱり頭も悪くないんじゃないか」
この人は……。
セシルさんは観察眼が鋭すぎる。
この人の前では不用意なことはできないな。
「毎度ありがとうございましたっ!」
本を買い終わった俺とセシルさんは、ラナちゃんの店を後にした。
セシルさんはそこで、女子の群につかまった。
助けを求めるセシルさんから目線をそらし、俺は元の裏庭に帰った。
そして、両親から教わった言語で書かれた小説を読む。
****
購入した小説は、不器用な主人公が苦難に負けず、一生懸命生きていく物語だった。
俺とは違い、真っすぐに生きていく主人公。
何故だか読んでいて、この純粋な主人公に好感がわいた。
「あ~……君」
小説を読んでいた俺は、見知らぬ男性二人に声を掛けられた。
黒ずくめの男二人組。
例の事件がらみか?
いや、魔力を感じないし研修先で見たあの黒ずくめとは感じが違う。
見た感じマフィアとかっぽいな。
「なんですか?」
「ラナ:モータルって子知らないか?」
「知ってますけど……」
「おお! そうか! 俺達は彼女のお父さんの会社の人間なんだが、呼んできてくれないか?」
ああ……そう言う事か……。
「いいですよ」
****
男達の頼みを聞いた俺は、すでにへこみぎみで露店の片づけをはじめていたラナちゃんを、裏庭に連れて行った。
そして、万が一の事を考え、近くに隠れて監視することにした。
なにか、ラナちゃんが機嫌悪くなったぞ?
男の一人が帰ろうとするラナちゃんの口と鼻を、ハンカチで押えた。
次の瞬間ラナちゃんが力なく倒れる。
そして、二人の男は彼女を担ぐとその場から逃走しはじめた。
なるほど、大商会の一人娘の誘拐ってことか。
目的は金かな?
まあ、例の事件とは無関係だ。
よかった、よかった。
……。
……。
あれ?
やばい! 誘拐! 犯罪!
あほか俺!
俺は、急いでその二人を追っていこうとするが、その瞬間校内から強力な魔力の反応が……。
どうする!?
どうする!?
「まずい事になったね」
「え!?」
セシルさんがいつの間にか俺の後ろに立っていた。
この人、気配の消し方まで俺並かそれ以上なのかよ。
「ここは、俺に任せてもらっていいかな?」
「お願いします!」
そう言ったセシルさんは、すでにその場から走り出して。
速い! 正直、俺より速いんじゃないか?
まさか、こんな人がこの学園にいるとは思わなかった。
おっと、魔力側を急がないと!
****
俺が、魔力のするほうへ近づいていくと、悲鳴が大きくなっていく。
庭園に設置された露店から、人がちりじりに逃げている。
こいつは……。
校庭中を大量のゴーストが飛びまわっており、人を襲っている。
学園に潜入している軍の人間が抵抗しているおかげで死人は出てなさそうだが、けが人はでているようだ。
そして、魔力の一番大きな位置には、ローブを着た骸骨野郎が浮かんでいる。
ゴーストは、あれが操っているのか?
これはどうしたものかな?
今回は、モンスターの中でも厄介なアンデッド系だ。
文献で読んだ事がある。
アンデッドの中でもかなりレベルの高い、リッチー。
生前賢者と呼ばれるほど強かった魔法使いが、悪魔と契約することで不死を手に入れた死者の王だったかな?
今回の敵も、間違いなくBランク以上だよ。
勘弁してくれよ……。
俺で倒せるか?
どうする?
……。
ええい! やるしかないか!
俺は、マスクと服を装備して魔剣を呼び出した。
そして、リッチーが使役しているらしいゴーストに斬りかかった。
その時、自分に十分勝機がある事が分かった。
俺の持つ武器は、魂を食らう魔剣ソウルイーター。
ゴーストは、物理攻撃を普通なら受け付けないが、俺の剣は魂を直接食らう魔剣。
ゴーストは全てただの餌にすぎないらしい。
これならいける!
ゴーストを切れば切るだけこっちの力は増していく!
そして、俺は短時間でゴースト全てを食らいつくした。
残るはリッチーのみ。
リッチーは骨だけになっている腕で印を結び、破壊の魔法を放ってくる。
遅すぎるな。
球体の魔法は地面や露店を薙ぎ払う威力があった。
だが、速度が遅すぎて、俺には当たらない。
シーサーペントの水流弾とは大違いだ。
庭園の上空三メートルほどに浮いているリッチーに対して、俺は重力を無視したように壁を上空に向かいかけのぼる。
リッチーは急いで、壁に向かい破壊の魔法を放つが、反応が遅すぎる。
魔法の爆発による粉じんに紛れた俺は、壁を蹴ってリッチーとの距離をなくし、剣を振るった。
よし! やはりリッチーもこの魔剣なら食える!
一撃で全部は無理だったか……。
リッチーの左肩から先を全て食いつくしたが、まだ行動不能には出来なかった。
しかし、お前には負ける気がしねぇ!
さあ……あれ?
なんとそのリッチーは、そのまま上空に凄い速度で昇って行った。
そして…………逃げやがった……。
俺……かっこ悪……。
周りの兵士達が俺に警戒して包囲しようとしてくるので、その場は逃げることにした。
****
マスクと服をピアスに戻し、兵士達に見つからない様に裏庭へ逃げ込む。
そこには、セシルさんとラナちゃんがいた。
良かった。
ラナちゃんの事件も、解決できたようだ。
さすがセシルさん。
俺は二人に駆け寄った。
裏庭に、乾いた音が響く。
勿論、俺がビンタされた音です。
何故!?
「先輩! 最低です!」
ラナちゃんは、早足で裏庭から立ち去って行く。
****
呆然と頬をさする俺に、セシルさんが説明をしてくれる。
ラナちゃんは、意識を失う寸前に俺の姿を見たらしい。
つまり、彼女からすると、自分を見捨てた最低な男に、俺はなってしまったらしいのだ。
セシルさんが弁解しくれたそうだが、聞く耳を持ってくれなかったらしい。
因みに、あの犯罪者二人組は病気の妹のために仕方なく犯罪をしようとした奴らだったそうで、二度としないと誓わせて見逃すことにしたそうだ。
俺は、彼女の中で実際に犯罪もしていないのにその二人よりも、最低だと判断されたそうだ。
知り合いを見捨てるなんて許せないと言っていたと、セシルさんに同情のまなざしを向けられた。
いや……。
ほら、今回は俺が馬鹿だったんだけどさ……。
俺は、どうやれば女性とのフラグが立つんだ?
せめて友達とか与えてくれてもいいじゃん!
神様よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
死んだら、地獄行きでもいいからお前のケツ蹴りあげてやるからな!
絶対に!
****
その日、文化祭の後片付けを一人で終わらせてから俺は、屋敷に帰宅した。
帰宅すると、アドルフ様に呼ばれ部屋に行き、大変な報告を受けた。
例の国全体を使った魔法陣が、ほぼ完成してしまったらしい。
「これは!」
「分かるか?」
「はい。法術を完全に無効化する呪いの魔法陣……」
「うむ。王都の中心部のみに効果を発揮するようだ」
「王都の中心部だけでは、魔族が攻めて来るためのものではなさそうですね……」
「うむ。目的が分からんのだ……。阻止しようとしたが、ことごとく死者が出てしまった。残るは……」
「はい。ここまで完成すれば分かります。学園がこの陣のかなめ部分になりますね……」
「今日のアンデッドの件も聞いている。引き続き阻止に努めてくれ」
「了解しました」
****
アドルフ様との打ち合わせたを終えた後、日課の修練を行う。
しかし、今日は疲れた。
学園祭で俺のクラスは売り上げ順位三位に入り、クラス全員に学食の食券千ギリ分が渡されたそうだが、もちろん俺の手元には何も届かない。
そして、遅くまで一人で片づけ……。
やってらんね~……。