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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第五章:島国の漂着者編
63/106

十話

最悪の朝だ……。


気持ちがいいはずの夜明けの空を見ながら、こんなに気分がなるなんて思わなかった。


しかし、ミスズ姫からは聞いてたけど……。


あそこまで脆いとは。


俺の周りって……。


ネジが飛んでて、情緒不安定な奴多すぎるって……。


なに? 人間てそんなものなの?


いや~……。


俺には理解出来んな。


鎖国に始まって、戦争に姫様達にコトネ……。


その上、馬鹿の仲間まで出てきてるっぽいし……。


めんどくせぇぇぇぇ!!


すんげぇぇ、めんどくせぇぇよ!!


ったく……。


やってらんね~……。


なんで俺は毎回面倒なんだ?


今回こそは、面倒に巻き込まれずに国を出て見せる!


馬鹿の仲間から、情報をゲットしてこの国から逃げ出してやるんだ!


俺は! 俺の幸せを手に入れるんだ!


そして今日の朝ご飯は、目玉焼きだ!


「お~い……飯が出来たぞ……」


「ん?……ああ……」


胃が痛い……。


無言とかやめてよ。


何か昨日の事は何もなかった感じで、何時も通りの会話をしようよ!


じゃないと……。


じゃないと! 胃が!


俺の胃が!


あばばばっ!


飯の味がしない!


俺何も悪い事してないのに……。


「その……昨日はすまなかった。忘れてくれ」


「あっ……ああ」


うおおおう!


さらに空気が重くなった!


とことん俺を殺そうとしてるのか!


やらせん! やらせんぞ!


「お前の事を、全部分かってやれるとは思わんが……。俺はお前を裏切るつもりも、死ぬつもりもない」


どうだ!


俺の脳から出せる、最高にいい言葉だ!


これで駄目なら!


多分……血を吐くね。


きっと胃に穴が開くよ……。


俺……想像以上に薄っぺらいな。


駄目だ! 男が泣いていいのは親が死んだときと、食べ物を落とした時だけだ!


てか、コトネ、うつむいたままなんですけど!


何にも言ってくれないんですけど!


俺! 吐きそうなんですけどぉぉぉぉぉぉ!!


「……ぷっ……あっははははっ!」


はい? 大笑い?


これは……。


「は~、お前は本当に変な奴だ」


誰が変人だ!


「お前の国でも、お前に好意を持った者は多かったのではないか?」


いえっ! 基本嫌われてました!


「私は……今まで自分自身に嘘をついて生きてきた。それが、お前を見ていると馬鹿らしくなったよ」


ん~?


俺馬鹿にされた?


変人の上に馬鹿って言われたの?


絶対後でエロい事してやる!


「私は剣が好きだ!」


俺は女が好きだ!


「私も戦場に向かおうと思う! どうだ?」


「いや……それは駄目だろう。普通に」


「なっ! 私の話を聞いていなかったのか? 私は自分に正直に……」


「それとこれとは違うと思う。駄目だって」


「しかし……」


「駄目だって……」


「それでも!」


「駄目。逃げ出さないように見張るからな」


そんなに恨めしそうな顔しても、許しません!


お前が戦場に出たら、俺が守りに行って……。


巻き込まれるって展開じゃないですか!


そんな事お父さんは許しませんよ!


そんなに睨む前に、人を馬鹿の変態呼ばわりした事謝りなさい!


そんなに襖を思い切り閉めるなよ……。


今日は部屋の前で見張ってやる!


気配が読めるんだからな!


逃がさないぞ!


無理に逃げ出そうとするなら……。


抱きついて色々してやるんだからな!


うん? それもいいな。えへっ!


****


食事の片づけを終えた俺は、コトネの部屋の前に座り込む。


しかし……。


今日はいい天気だな~……。


ああ……お花畑だぁ……。


「ちょっと! レイ!」


うおおお!



寝てません! 俺寝てませんよ!


「これ!」


ミスズ姫?


何だ? 紙の文字を読めと?


え~……読めません。


「読めん」


「馬鹿っ! 琴音が戦場に行くって書いてあるのよ!」


へ~………………なんですとぉぉぉぉぉ!?


しまった……。


「もう! 馬鹿!」


馬鹿って言うな! ごめんなさい!


「早く!」


「どうするんだ?」


「決まってるでしょ! 追いかけて引き留めるのよ!」


「分かった!」


俺とミスズ姫は馬小屋に走り、馬に乗る。


一頭いない。


コトネが乗って行ったか……。


「早く!」


いや……俺に手を差し出されても……。


「あの? 乗馬は?」


「乗れないわよ! 早く後ろに乗せなさい!」


それだと遅くなるような……。


まあ、仕方ないか。


俺は、姫を後ろに乗せ、馬を走らせる。


あれ? でも……。


「関所はどうするんです? 出られないんじゃ……」


「私も琴音も通るための手形を持ってるのよ! 急いで!」


アイアイ! マァァァァム!


****


関所は本当に通り抜ける事が出来た。


手形を出すことなく、姫の顔パスで通れたよ。


俺~、ここ出られなくて困ってたのに……。


「まったく……せっかく琴音の為に私が諦めたのに……」


「はい? なんですか? 姫?」


「なっ! なんでもないわよ! それより早く!」


「うぃ~!」


しかし……人間は魔力が小さくて捉えきれない……。


何処まで……いた!


てか、いっぱいいる!


一時間馬を走らせて、戦場のベースキャンプへたどり着いた。


旗の模様から、安岐軍だと分かる。


何処にいる!?


人間が……何万人いるんだよこれ。


「馬鹿者が!」


おおう!?


コトネが……厳つい髭のおっさんに怒鳴られてる。


「あれが中条貞武……琴音の父親よ」


よかった……。


戦闘前に見つけられた。


「何度言えば分かる! 戦場に女は不要! お前は女だ!」


「しかし、父上……」


「縛り上げてでも送り返すぞ! この馬鹿娘が!」


う~ん。


良識のあるお父さんじゃないか……。


「貞武!」


「なっ! これは姫様……」


「その送り返す任、私が請け負います」


「美鈴姫に……レイ」


「これはもったいないお言葉……。姫様の手を煩わすほどの事は……」


「いいえ! 何と言おうが、琴音は私が連れて帰ります!」


「姫! 私は!」


「許しません! 姫としてではなく……友達として……お願いよ。琴音」


「姫もここまで言ってくれてるんだ。帰ろう、コトネ」


「レイ……」


「あの……姫様そちらの御仁は?」


「あ……なんて言おう」


「父上、前に文を送った新しい奉公人で……レイです」


俺よく考えると、厳密にはこのおっさんに雇われてるんだよな?


「あ……レイです。始めまして」


「そう言う事か……。私が中条家当主! 貞武だ!」


へぇ……。


本当に強そうだな。それに……。


『聖剣か魔剣の類じゃな……』


あの腰の剣、金剛丸って言ったかな?


魔力がかなり強いな。


『あれならば、人間でもモンスターに対抗できそうじゃな』


それから、あの座ってこちらを見てるおっさんの剣もそうだな。


『うむ。この二人は明らかに他と格が違っておるな』


つか、あのおっさん俺を睨んでないか?


「ん? レイ? ……ああ、あの方は本多綱吉様だ」


「貞武が副官で綱吉が最高責任者なのよ。ちなみに綱吉も樹岳っていう四天王の刀を持ってるわよ」


「綱吉殿、いかがした?」


「貞武よ。その馬上の小僧は何者だ?」


「ああ……我が家の奉公人です」


「そうか……おい! 小僧! 名は?」


なんだ? この偉そうなオヤジは?


『まあ、実際に偉いんじゃろう』


「レイです」


「そうか……レイよ! お前は何故戦に出ない?」


「只の使用人ですから……」


「刀は持っていないが、見たところ腕は立つのだろう?」


巻き込まれたくないからだよ、馬鹿。


****


ん!?


この魔力は……。


『モンスター……いや、魔族に近いな』


「美鈴姫……馬から降りましょう」


「レイ? どうしたの?」


「何か来ますよ……」


ヤバい! この展開はヤバい! 巻き込まれる!


あ~あ……来ちゃったよ。


魔剣どうしよう……。


『出さん方がいいじゃろうな』


となると……。


俺はコトネの刀を奪う。


こうすれば、コトネが戦闘に参加して危険にならないからね。


一石二鳥!


「なっ! なにをするんだ! レイ!」


「上だ!」


上空には有翼族?


羽の生えた魔力の強い人間っぽいのと、それに掴まった……角の生えたおっさん?


何あれ?


『敵じゃろうな。昨日聞いたタチカワ軍の奇襲ではないか?』


「あれは! 鬼の毘沙丸!」


「皆の者! 準備をしろ! 敵襲だ!」


この国の有翼族と有角族かな?


二十人くらいが空から降ってきた。


『気を抜くな。オニのビシャマルと呼ばれたあの有角族は……』


分かってる。Bランク上位はあるな。


魔将軍並みだよな。


「ん? ミスズ姫? 震えてますが、もしかしてあのオニのビシャマルってのご存じで?」


「あ……ああ……。あれは、立川軍最強の妖魔! 毘沙丸です! 水戸様から奪った鯛美津……四天王の刀まで持ってる……」


う~ん……。


ヤバいな。巻き込まれそう。


あれ? あの女……たしかアカネを連れて行こうとした奴だ。


「レイ! 刀を返せ!」


「駄目! 返したら戦うだろうが!」


「私は戦う!」


「駄目!」


てか、多分お前だと殺される!


俺はお前を守るの!


おっと!


俺に斬りかかってきた有翼族の攻撃をかわす。


「綱吉! そして貞武! お前らさえいなければ、この軍を蹂躙するのは容易い!」


「なるほど、奇襲で我らの首を狙ってきたか! この恥知らずの妖魔め!」


「もう俺達鬼や天狗が、お前らに虐げられるのは終りだ! 輔沖様が新たな国を作る!」


ああ……。


あの有翼族がテングって言うのか。


『呑気じゃな……』


だって、こんな戦い交ざりたくないもん。


静観ですよ。


取り敢えず、コトネと姫さんさえ守れば問題ないでしょう。


『そうじゃな』


まあ、雇い主のサダタケさんが殺されそうになれば助けるかな~……。


でも、タチカワ軍の奴を殺すと、パワーバランス崩しそうだし……。


あ……そう言えば刀は片刃だから、刃が無い方で殴ればいいか。


しかし……。


「凄い……。レイって私より弱いんじゃなったの?」


これは何?


『相手は強い者が分かるんじゃろう。魔族のように』


何で俺に五人も斬りかかってきてるの?


馬鹿なんですか?


お前ら馬鹿ですか?


本気で斬り殺すぞ!


ん? おお!


ツナヨシとサダタケっておっさん、やっぱり強いな~。


『そうじゃな、二対一とはいえビシャマルと対等に戦っておるな』


へ~……。


「な……なんだ? こいつは?」


「何故よそ見をしながら、攻撃を全て回避しているんだ? 化け物か!?」


失礼な! これでも、人間です!


ただ、高々Bランク下位やCランクの攻撃なんて食らいません!


まあ、当たれば死ぬだろうけど。


「くっそぉぉぉぉぉ! 何故五人がかりで倒せんのだ!」


「当たらん!」


いやいや……。


俺からは攻撃しないから、他の奴攻撃しろよ。


一日中やっても、俺は避け続けるよ?


いいの?


奇襲は速度が命でしょうが~。


まあ、コトネ達の手前口にはできないけどね。


「凄い……。レイは私に対して、本気を出さなかっただけなのか?」


いや、あれはあれで本気でした。


でも、負けました! コンチクショー!


「レイはなんで私達に力を隠したの?」


「私にも分からん……。あんな速度で動く人間を、私は見た事が無い……」


『しかし、あれじゃな……』


うん。


しつこいよね……。


どうしよう? 殴っとこうか?


『それも已む無しかのぅ……』


ん?


ああああっ!


「父上! 危ない!」


お前が危ない!


投げナイフ? らしきものからサダタケのおっさんを守ろうと、コトネが飛び出していた。


ヤバい! 刺さる!


おおおおおおおお!


俺は、トップスピードでコトネの前に回り込む。


こんなもん弾き飛ばしてやる!


といや!


「レイ……。お前……」


「危ないから、飛び出すな……。頼むから」


って! うわあああ!


刀同士がぶつかった、激しい音が響く。


「てめぇ! 何者だ!」


ビシャマルよ! 俺に斬りかかってくるな!


俺なんもしてないだろうが!


「ただの……使用……奉公人だ!」


「ふざけるな!」


ふざけてません! ガチです!


てか! ツナヨシ殺すんじゃなかったのかよ!


俺に必死で斬りかかってくるな!


マジでしばきますよ!


「琴音……あの男はいったい……」


「貞武……わしはあれ程の武人を見た事が無い……」


「綱吉様……」


「あれを我が軍にとりたてられるか?」


「琴音! どうなのだ?」


「あの……その……」


まぁ、異国人ってばれるとまずいもんね~。


そりゃあ、コトネも困るって……。


てか……。


お前ら馬鹿か! ビシャマル加えて六人で斬りかかってくるな!


俺を攻撃し続けると、奇襲失敗しますよ!


も~……。


面倒だからあっち行けよ~……。


「毘沙丸様!」


「くっ! ここまでか……」


ほら~。失敗した~。


タチカワ軍の奴らは撤退していく……。


「追撃を!」


「いや……無駄な犠牲が出る」


へ~……。


『なるほど、ツナヨシとやらはなかなかの将のようじゃな』


追撃なんかしたら、負けそうだもんね。


「レイ! お前!」


なんだ? コトネ?


あれ? 目がキラキラしてる。


「レイ~……。あなた本気を隠してましたね!」


ミスズ姫も……。


何だよ……。


「レイよ。お前は何処でその力を? よければ我が軍に……」


サダタケも寄ってきた……。


うわ~……面倒な事に。


どうすっかなぁ~。


って、これ!


『うむ。やつらじゃ』


「悪い。帰ったら話す! すぐ戻る!」


俺は、魔力のする方に走り出した。


コトネ達が何か言ってるが、後回しだ!


切っ掛けを逃すわけにはいかない!


ジジィ! 行くぞ!


『うむ!』


****


ありゃ?


ベースキャンプから二十キロほどの地点で、馬鹿共が使う変な怪物達に、ビシャマル達が襲われている。


「くっそぉぉぉぉ!! なんだ! こいつ等は!」


「毘沙丸様だけでもお逃げ下さい!」


「そんな事出来るか! くう! 安岐の手の者なのか?」


「ぐあああ!」


「くそっ! 敵も空を飛べるのか……」


「あれは!」


「なっ! さっきの……万事休すか……」


数は……二百!


<ホークスラッシュ>


化け物の中へ飛び込んだ俺は、端から切り捨てる。


遅い……遅い! 遅い!


止まって見えるぜ!


『なっ! さらに腕を上げた?』


へへへ……。


瀕死で修行したおかげで、この通りだ!


「あいつはいったい……」


「あの……毘沙丸。実は朱音姫を迎えに行った際も、奴に助けられました」


「本当か、雀! 奴は安岐軍ではないと言う事か?」


「かもしれません」


「奴は何者なんだ? 自身を何故か奉公人とだけ言っていたが」


おら! おら! おら! おら!


****


凄く短時間で、全ての敵を斬り殺す事が出来た。


うん!


レベルアァァァァァァァップ!


俺つおい!


「おい! 貴様! 何故我らを助けた?」


う~ん。


「敵の敵は味方って事じゃないか? 多分?」


「要領をえんな……。つまり、我ら立川軍につくと言う事か?」


「いや、俺はどっちにもつかん」


「どっちにも……。つまり安岐軍ではないのだな?」


「まぁ……」


「それにしても、何故我々を助ける?」


何だよ……見殺しにすればよかったのか?


「は~……。目の前で人が殺されそうになってるのに見過ごすなんて、気分悪いだろうが!それだけだ!」


「我々を人と認めてくれるのか? 我らは妖魔だぞ!?」


「はぁ~? 只、角と羽がある人間だろうが。俺はもう行くぞ? あ、もう、俺には斬りかかってくるなよ! 次は殴るからな!」


さて……。


コトネ達の元に……。


ん……んんんん!?


『しっかり掴まったのぉ』


なんですか~?


「放せよ! なんだよ!」


「是非我らの主に会ってくれ! すぐそこだ!」


「いや……あの……」


こいつ力つよっ!


放せよ~!


俺を巻き込むなよ~!


や~め~ろ~よ~!


は~な~せ~よ~!


痛い痛い痛い……。


足掻いていたら、ビシャマルに腕をつぶされそうな力で握られた。


痛いです……。


****


俺は三キロほど、掴まれた状態で歩かされる事になる。


その間、ビシャマル達は自分の自己紹介をしてくれた。


自分達を、普通に扱ってくれる俺が嬉しいそうだ。


てか、知らん! 放せ!


痛い痛い痛い……。


やめて下さい……。


マジで痛いんです。


右腕はビシャマルだが、左腕をつかんでいるのはスズメちゃん……。


この子着やせするんだね~。


胸が結構ある……。


ああ、柔らかい。


『……エロガキ』


思春期男子は……。


『お前もう成人したじゃろうが! 少しは落ち着かんか!』


じゃあ……う~ん。


男はみんなこんなもんさ!


『百パーセント否定はせんが、お前は酷過ぎる!』


失敬だな君は!



『もうええわい……』


つか……そんなに嬉しいのか? こいつら?


「もう逃げないから放せ」


「そうか? 絶対だぞ?」


うざっ!


「あの……昨日はありがとうございました」


「あ? ああ……。あれはアカネとカリンを助けたかったから……気にするな」


「はい! あの……それで……」


「なに?」


「レイ殿は変わってると言われませんか?」


なっ! またか! また変人呼ばわりか!


お礼の次に侮辱ってどうなの?


「ほっといてくれ……」


「いえ! あの! 私も喋るのが苦手で……。そう言う意味ではなくて……」


どう言う意味だ! 言ってみろ!


「雀を悪く思わないでくれ。お前も知っている通り、俺達は人間ではないと……妖魔として蔑まれてきた。だが、我々は自分達を人間だと思っている……」


ええい面倒だ!


「知ってるよ。亜人種だろ? もう、正直に話すが、俺は異国人だ。俺の国には亜人種がいっぱいいたし、差別する理由が俺にはないんだよ! 変人じゃない!」


「な……そう言う事か……」


「あの! 異国には私達のような者が、人と平和に暮らす国があるんですか?」


「まあ、亜人種は普通の人間種より強すぎるから色々衝突はしてるが、平和なところもあるよ」


「では! その国では……」


それから、タチカワ軍のベースキャンプまで俺は質問攻めにあった。


うざい……。


スズメの胸も腕から離れたから、ただただうざいだけだ。


でもって、その質問攻めは……。


スケオキにもされました!


もう! 全員うざい! 面倒くさい!


スケオキは超がつくほど平等主義な奴だ。


根がクソまじめすぎる!


俺とは合わん!


つか、帰りたいって言ってるのに一向に帰してくれない!


もうやだ~!


「で! レイよ! 私に力を貸してはくれんか?」


「断る」


「何故だ? お前も亜人種が虐げられるのは、よく思わないんだろう? ならば……」


「平和の手段に、戦争を選んだお前に賛同はしてない」


「さっきも言ったが、私の信念は平等だ! 亜人種だろうが普通の人間だろうが、悪い事をすれば裁くし、いい事をすれば褒めてやりたいのだ!」


「だから……。それで、死人が多く出る戦争をするなよ。もちろんあんたの信念はいいと思うし、戦争でもしないとこの国は変わらないんだろうけど……」


「そこまで分かっていて、何故力を貸してくれんのだ! お前は毘沙丸以上の猛者なのだろう? 私の元に来てくれるなら四天王の刀である最後の一振り雷光を授けてもいいぞ? どうだ?」


「他の国の行く末に関わるのはごめんだ。安岐の守も平和を目指しているのは違いないし……」


「それは違う! この国の排他的な考えは、弱者の上に成り立つ嘘の平和だ! いいか……」


「だから……」


はいはい……。


平行線でした……。


俺も平和の為に力を使うから、スケオキを否定しきれない。


でも、関係ない人間まで巻き込んだスケオキに力を貸す気にはなれない。


てか、諦めなさいよ~!


もう、お前説得するの面倒なんだよ!


それにそれ俺の仕事じゃないよ!


****


一~二時間で帰る予定だった俺は、気がつくとタチカワ軍のテントで、泊ることになっていた。


も~……。


勘弁してくれよ~……。


それも何故か俺のテントには、亜人種共が……。


狭いから!


どっか行けよ!


俺昨日も寝てないから眠りたいの!


「それで……その有翼族とは、我ら天狗に似ておるんですな?」


「そうだよ……」


「あの! あの! その有角族って人たちは力が強いの?」


「まあ……人間よりは強いよ」


ああ! もう! 勘弁して下さいよ!


「これ! 皆の者! レイ殿が困っておられる!」


「奥方様……」


「そなた達の気持は分かるが、今日はもう客人を休ませようではないか」


ふ~ん……。


なるほど、アカネの妹だけあって美人だな。


こいつがアサヒ姫か……。


みんなが姫の言葉に従って帰って行くよ……。


まぁ、これで休めるな……。


「で! レイ殿!」


「なんですか?」


「異国とは……」


お前もかい!


眠らせる気ないじゃないか!


死ねよ! 馬鹿!


「悪いが明日じゃ、駄目か? さすがにちょっと眠い」


「そうか……残念じゃ……」


こいつの喋り方……。


なんか他の姉妹と違うな……。


「あの……」


「なんじゃ?」


「その喋り方って……。他の三人……まあ、カリンは別として、アカネともミスズとも違うんだな」


「これは、帝に合わせた公家の喋り方じゃ……。小さいころから仕込まれてな」


「なるほど……。ごめん、それだけだ」


「姉上や美鈴の事を存じておるのじゃな?」


「ん? ああ……。三人とも知ってるよ」


「そうか……。あの、花梨は……妹は元気にしておるか?」


「ああ……。会うたびに腕を折られそうになるけどな」


「そうか! あの子は父上が……」


眠い目をこすりながら、花梨の出生の秘密を聞いた。


アカネで失敗したのに、カリンも鬼蜘蛛復活の為にオニ族との間に作った子供らしい。


ただ、五歳の頃、カリンは突然頭に障害が発生したそうだ……。


もしかすると、鬼蜘蛛復活と何か関わっているかもしれないが……。


政略結婚については容認したが、アカネとカリンを城から追い出した父親が、アサヒはどうしても憎かったらしい。


それでも戦争するなよ……。


****


気がつくと俺は夢の中にいた……。


まあ、徹夜明けみたいなものだったしね。


夢の中で……。


俺はとても愛おしい顔を見た……。


そんなに悲しそうに笑わないでくれよ……。


俺は、お前のそんな顔見たくないんだよ……。


ああ……。


俺は大丈夫だ……。


一人でまっすぐに歩ける……。


何も心配ない……。


俺は大丈夫だから……。


俺は俺の命が燃え尽きるまで、俺らしく歩いて行くよ。


『…………』


だから、そんな顔をしないでくれ……。


大丈夫だから……。


本当に大丈夫だから……。


全く……。


俺は、そんなにお前に心配をかけちまってるのか?


はぁ~……。


やってらんね~……。

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