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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第五章:島国の漂着者編
55/106

二話

「あっ! おはようございます!」


「ああ……」


最悪だ……。


最悪だよ……。


昨日は、ほぼ一睡もできなかった……。


「おはよう! よく眠れた?」


「今日は……パンか~……」


「おはようさん!」


「ねえ! 今日は何するの!?」


「あ~! こらぁぁ!」


「お~い! 俺のシャツは?」


「ああ! もう! こぼさないで!」


「邪魔よ! 邪魔! ほらっ!」


…………。


うぜぇぇ……。


何でこいつ等は、こんな朝っぱらから、ナチュラルハイなんだよ……。


うるせぇ。


頭痛くなってきた。


てか、眠い……。


ホテルじゃなくても、野宿の方がよかったかもしれん。


マジで最悪だ。


最悪の気分に、ガキの大声……。


勘弁してくれよ……。


****


顔を洗い終えた俺は、食堂へと向かう。


「ああ! レイさん! 違います! こっちです! こっち!」


あっ?


昨日、食堂の席には決まりがないって言ってたじゃないか……。


なんだ?


そっちに座ればいいのか?


「駄目です! こっちです!」


はぁ?


「ああ……。あの、ここにしませんか?」


俺は何処に座ればいいんだよ……。


「ここよ!」


「こっち!」


「ここなの!」


何処!?


何処に座っても一緒だろうが!


ゲッシーの妹達が、それぞれ別の席を指示してきている。


どうすりゃいいんだよ。


「あ~……。朝からすまないな、レイ」


ゲッシー……。


「妹達も悪気はないんだ。勘弁してやってくれ」


いやいや……。


俺は純粋に、お前を殴りたいんだがな。


このいびきげっ歯類が!


マジで腹立つ!


顔洗ってすっきりした顔のお前が、よけいに腹立つ!


殴りてぇぇ……。


「ジョシュー兄! リン姉達が!」


「ああ、もう! レイは俺と仕事の打ち合わせをするんだ! だから、俺の隣だ!」


「ええ~!」


「文句はなしだ! いいな!」


女性陣が、渋々引き下がる。


ゲッシーも、ここでは威厳があるんだな……。


てか、この喧嘩は何が原因なんだ?


サッパ! わからん!


「そう言う事だ!」


だから、どう言う事だ!?


ちゃんと喋んなさいよ~!


目は口ほどにものを言うって言うけども、喋らないと分からないんだよ!


てか……あれ?


何俺の顔をマジマジと見つめてんの? ゲッシー?


えっ……?


もしかしてそっち系!?


お前もそっち系なのか!?


「は~……。俺もお前みたいな顔だったらな~」


え? そっち系じゃないの?


どうなの!?


どっちなの~!?


場合によっては、殴るけど?


てか、よかったら、前歯切り落としてやるぞ?


「悪い悪い。まぁ、座ってくれ」


違うの!?


そうなの!?


どっちなの~!?


俺は、少し困惑しながらもゲッシーに誘導された席に着き、朝食を取った。


「それでだな~」


どれだよ。


ゲッシーはこの付近のギルドについて、色々と説明し始めてくれた。


でもね。


ああ……。


やばい……。


「聞いてるか?」


「ああ……」


眠い……。


飯食ったら、余計に眠くなってきた……。


なんか……。


だんだん……。


ゲッシーの声が遠くなって……。


…………。


****


「……聞いてるか?」


いかん……意識がとんでた……。


ゲッシーの顔が、目の前に……。


「……やらないか?」


うううううわあああああああああ!


食堂内に爆音が響く。


俺の魔力を纏った拳は、ゲッシーの後ろにあった机を吹き飛ばした。


「なっ! なにするんだ!? お前!」


え? え~と……。


「そんなに嫌だったのか? それなら口で言ってくれよぉ。いきなり魔法はないだろうが!」


ガキ共が泣きだしている。


大人達も、驚いてその場で固まっているよ……。


もしかして、やっちゃった?


「あ~……、悪い。寝ぼけて反射的に……。すまない」


「お……おおっ! びっくりしたぜ~。俺はてっきり俺が考えたプランでキレちまったのかと思ったぜ~?」


「いや、すまない。寝ぼけて聞いていなかった……」


「おいおい! 低血圧ってやつか? しっかりしてくれよ~!」


誰のせいだ!


いっそ、前歯以外全部へし折るぞ! ゴラッ!


「ほらほら~。みんな泣かないで~」


俺が壊した机を男性陣が片づけ、女性陣が子供達をあやす。


俺は……。


仕方なく、ガキ共に一人一人謝っていった……。


なんだこれ!?


俺のイメージ最悪になったよ! チクショォォォ!!


あ~あ……。


やってらんね~……。


何とか事態の収拾がついた後、成人組にも謝った。


皆、俺が寝ぼけたという事で、何とか許してくれたようだ。


多分……。


きっと……。


じゃないと困る……。


「しかし、お前あの一瞬で魔法を出すなんて、やっぱスゲェェなぁぁ!」


ん?


魔法じゃないんだけどね……。


「あれか? フォースだし、敵がCランクでも一人で戦えるのか?」


「まぁ……」


CどころかAランクとも戦えますよ~っと。


「じゃあ、俺がさっき言ったよりも、もう少し稼ぎのいい仕事が受けられるなぁ」


「悪い……。さっきはどんな案だったんだ?」


「なんだよ~。全然聞いてなかったのかよ。だから、用心棒をやらないか? って言ったんだよ」


用心棒を……やらないか……ねぇ。


「用心棒だと運がよければ戦闘はしないで済むし、しばらくの間固定給が入るからな~」


う~ん……。


「戦闘は俺が引き受けるから、もっと稼げる方がいいんだが?」


「そうかぁ? まあ、お前がそう言うなら……」


「頼む……」


「分かった! ところで……さっきの話、何処まで聞いてたんだ?」


「まったく……」


「しかたね~な~。もう一回説明するぞ?」


****


それから小一時間ゲッシーから、この付近のギルド事情を教えられた。


まぁ、情報はあるにこしたことはない。


「それで、隣の町なんだが、フィフスが四人もいるんだ! 凄いだろう!」


「四人? どんな奴らだ?」


もしかして、カーラ達?


「何でも四人それぞれがBランクと戦えるらしくてな、それもその四人がパーティー組んでるってんだから、とんでもない戦力だ」


マジで!?


あいつらなのか!?


「それも驚いたことに! 噂では全員が女だってんだからな~」


ああ……違う人か……。


期待させんなよ、馬鹿!


「なんだ? 強い女が好みか?」


「いや……」


正確に言うと……。


もうコリゴリです!


ヒロインに殺されそうになるなんて、もう嫌です!


金輪際、ノーサンキューです!


「それと! 最近噂になってるんだが、ゲルンって街にたった一人でBランクモンスターを、二十匹も倒した化け者みたいな奴がいるらしいぞ!」


ああ……。


それ、俺だよ……。


「世の中には、人間離れしたやつがいるもんだよなぁ」


俺はれっきとした人間です!


殴るぞ! この野郎!


「フィフスはこの街にも二人いるんだ! 英雄ってやつだ」


「へぇ~……」


「この街がモンスターの集団に襲われた時、街を守った人達だ。かっこよかったんだぜ~」


興味ないや……。


「まあ、そろそろギルドに行って依頼でも確認しないか?」


「お! おう! 行くか!」


****


俺達は、昨日寸胴を運んでいた女性……確かリン……に挨拶をして孤児院を出た。


他の成人組は、みんな仕事に出ているので、子供たちの面倒はリン一人で見ているそうだ。


そばかすたれ目のツインテール……。


磨けば輝く素材だね!


俺より四つ上だが、雰囲気は主婦といった感じだ。


料理もうまいし、結婚するならああいう子がいいんじゃないかなぁ。


「お前はあれだな……」


なんだゲッシー?


「本当にクールと言うか……。朝から、そんなに眉間にしわ寄せて、何考えてるんだ?」


女の事ですが、何か?


なんて、口に出しませ~ん。


お前の妹を、どう口説くか考えてたなんて言えませ~ん。


てか、言いませ~ん。


俺~、馬鹿じゃないからね!


「……ただの癖だ」


「そうか~。まぁ、それならいいんだが……」


****


ギルドに到着した俺達は、受付で依頼を確認する。


う~ん……。


さっぱり読めん!


なんで喋る言葉が同じなのに、ここまで文字が違うんだ!?


「これなんてどうだ?」


「だから、読んでくれ」


「ああ、近くの畑を荒らしてる、イノシシの群れ退治だ!」


「それ……いくらなんだよ?」


「え……成功報酬で五千リーグだ! 悪くないだろ?」


悪いわ!


安すぎる!


「値段表示はこれか?」


「そうだ。ここが、依頼内容だな」


「じゃあこれは五十万リーグか?」


「ああ……。でも、これはさすがに……」


「内容は?」


「北の森で、大量発生してる謎のモンスター退治だ。一匹五万リーグで十匹だぜ? これは大きなパーティー用の依頼だ」


「十匹以上は駄目なのか? 三十匹倒せば、百五十万になったりはしないのか?」


「ああ、えと……。何度でもいいそうだぞ。かなりの数がいるそうだからな。依頼元は町の議会だ。殺せるだけ殺したいんだろ? 最近かなり被害が出てるしな」


「これでいくぞ」


「お前! 俺の話を……」


「俺に任せろ……」


「このモンスターはD~Cランクらしいから、俺本当に役に立てないぞ? いいのか?」


「早く行くぞ……。お前が行かないなら、俺が一人で行く」


「わっ! 分かったよ! 待ってくれよ! 俺も行くって!」


俺は、ゲッシーに案内をさせながら北の森へと向かった。


****


う~ん……。


「謎のモンスターって、どんな奴なんだ?」


「俺も直接見たわけじゃないが……。何でもでっかい猿みたいな奴らしくてな……」


「そう言えば、どうやって数を報告するんだ?」


「ああ! それはそいつら倒すと、頭蓋骨だけは残るらしくてなぁ」


なるほど、それを持っていくのか……。


しかし、塵にならないモンスターか。


いや、あの馬鹿は俺が殺したんだ……。


大陸が違えば、俺の知らないモンスターもわんさかいるだろう……。


「さて……。この付近なんだが、どうやって捜す? どうした、レイ?」


マジでか……。


俺の予想ってのは、どうしてこうも悪い方に当たるんだ……。


ジジィ!


『屋敷を襲っていた主犯と、人魚を襲った主犯は別だったとも考えられるな』


数は……。


二十七……。


屋敷での護衛のお陰で、こいつ等の気配が手に取る様になったのは、皮肉ってやつかな……。


『まあ、お前のレベルが上がっておるのもあるじゃろう』


行くぞ!


「レイ? うおっ! 剣? お前、魔道士じゃないのか?」


「俺は、一言も魔道士なんて言ってないぞ。下がってろ……」


「えっ! 敵がいるのか? 何処だ?」


木の陰からゲッシーの背後へ飛びかかった、サル? 三匹を切り捨てる。


毛のない猿だ。


牙と爪だけやたらでかいな……。


相変わらず、気持ちが悪いなぁ。こいつ等は。


おお……。


『頭骨は残るんじゃな……』


さてっと……。


一斉に飛び掛かってくるサルもどきを、端から斬り捨てる。


こいつらに、あんまり知能がないのは助かる。


仲間がやられたくらいじゃ逃げたりしないからな。


『……Cランク下位といったところか』


集団だとCの中位くらいになるのかな?


「はぁ~……。お前は本当にすごいな」


「こっちは俺一人でいいから、その頭蓋骨拾ってくれ……」


「ああ! 分かった!」


おお! 入れ食い!


サルもどきがいっぱい寄ってくる!


ラッキー!


『……楽しそうじゃな』


これだけ動きが遅いと、ただの遊びだ。


それも十匹で五十万リーグ!


おいしいです! おいしいですよ! これはぁぁぁぁ!


寝不足で脳内から、変な化学物質が出てるぅぅぅぅ!


ヒィィィィィィ……ヤッホォォォォォォォ!!


****


ハイパーナチュラルハイモードの俺は、一時間ほどでサルもどきを二百匹斬り殺していた。


ちょっとやりすぎた……。


『まあ魔力が補給出来たし、人に害なすものじゃ』


あ~……。


でも、弱過ぎてあきた……。


『わがままな奴じゃ』


ここまで弱いと修練にならん。


「おい! レイ!」


「なんだ?」


「もう持てないぞ?」


「ん? その下あごの骨だけでいいのか?」


「ああ! 受け付けて貰えるのはこっちだけだ」


二百個の下あごの骨……。


袋いっぱいだな~……。


「じゃあ、昼になるしいったん帰るか?」


「おお! これだけあれば、今日の稼ぎは十分だ!」


いやいや、お前は日銭でいいかも知れんが、俺は稼げるだけ稼ぎたいんだよ。


「これで、ガキどもにいいもの買ってやれる……」


ふ~。


『まあ、一千万リーグじゃ。Bランク三匹分の稼ぎにはなったのぉ』


こいつ等を、毎日狩れれば言う事ないんだけどね~……。


『今までの事と繋がりはあるんじゃろうから、それもいいじゃろう』


この魔道生物の元は、見つけ次第潰す!


『うむ……』


あの馬鹿に仲間がいたって事か?


『まだ、なんとも言えんな。お前も多少の予測はしているじゃろうが、思い込みは時に真実を隠す』


調べるか……。


「おい! レイ! 聞いてるか?」


「……なんだ?」


「分け前なんだが……。二割貰えないか?」


ああ……。


「半分やるよ……」


「いっ! いいのか!?」


「いらないなら、やらんぞ?」


「いや! 欲しい!」


「だから、やるよ……」


「へっへへ……。これで、ガキどもにいい飯が食わせてやれる……」


泣きそうになるな!


男の涙なんて気持ちが悪いんだよ!


『……そう言うお前は素直になれん病気か?』


誰が! 病気だ!


お前が病気だ!


『わっ? わしが!?』


何時もと違う事言ったぐらいで、そこまで動揺するなよ、ジジィ。


『抜かった!』


はっ! ば~か!


『ぐぬぬぬ……』


いやいや……。


そこまで本気で怒るな……。


『寝る!』


ふて寝しやがった。


大人げない……。


****


「しかし、お前は変わってるなぁ。魔法で剣を収納してるのか?」


「ん? ああ、この剣自体が特殊なんだ……」


街までの道中、ゲッシーと色々な事を話した。


ジジィ以外とここまで喋ったのは、久し振りだ。


ゲッシーは、終始自分の大家族の話をしている。


ガキ共に久し振りに肉が喰わせてやれると、テンションが少し高めでうざい……。


「で! レイは妹達の誰が好みだ?」


はぁ~?


「……まだ、顔と名前が一致しきっていない状態だぞ?」


「そうか~……。じゃあ、俺が説明してやるよ!」


「……いや、いいよ」


「いいから聞けって!」


強引ですね、この野郎。


「上からリン、メイ、リサ、ジュディー、エマだ」


中の下、中の中、上の中、上の下、中の上だな!


「リンは家庭的で、メイは個性派、リサは器用で、ジュディーは気が強い、エマはおっとりしてるってところか」


あれ!?


これもしや……。


まさかのハーレムイベント!?


マジっすか!


「あいつらと血のつながりはないけど、俺にとっては命よりも大事な家族なんだ。俺はあいつらの為ならなんだってやるぜ!」


それ駄目!


それ死亡フラグだから!


俺生きて帰ったら結婚するんだ、並みのフラグだよ! それ! 多分!


「そこまで思いつめなくても、それぞれがそれぞれの人生を生きるもんだ」


「悪いな……。こんな事言える奴あんまりいなくてさ」


いじめられっ子だもんねぇぇ。


てか、さらにフラグ踏んでませんか? こいつ……。


こいつ死ぬんじゃね?


てか、俺面倒事にまた巻き込まれてね?


いや! 絶対巻き込まれた!


ちぃ! 油断した!


奴は常に俺を狙ってるんだった!


神様! この野郎!


死ぬまでに剣の腕もっと上げて、会った瞬間斬りかかってやるからな!


****


「おい! これ見ろよ~! 一千万だぜ!」


分かってるよ。


計算ぐらいできるっての。


俺を馬鹿にしてんのか? こいつは?


てか、問題はその換金までに、五回もお前がからまれた事じゃないのか?


俺が追っ払ったけど、こいつはみんなにどれだけ舐められてるんだよ。


なんか、こいつと関わっても俺損なだけじゃないか?


妹の一人でも生贄に貰わないと、割に合わんぞ!


誰にしよう……。


俺の中ランキングはリサ、リン、エマなんだよな……。


ジュディーは一番きれいだけど、気が強いって言ってたからな。


もう気が強い奴は嫌だ!


きっと俺が虐められる!


う~ん……。


特にこだわるわけじゃないけど、エマが一番胸が大きいしなぁ……。


いや! やっぱ性格が一番よさそうなリンか?


メイもメガネ外せばかなりの上物の可能性が……。


う~ん……。


「……おい!」


リサはバランス取れてるしなぁぁ。


でも、ジュディーも見た目は抜群なんだよな~。


「聞こえないのか! 貴様!」


「やばいって! レイ!」


ああ?


「オーウェン様の道をふさぐとは、どういう事だ! 貴様!」


俺に言ってるのか?


避けて通れよ。


「レイ! まずいって! この方たちが今朝言ったフィフスの……」


「そこまで目くじらを立てるなルーカス。この若者は何か考え事をしていたようだ。そうだろ、ジョシュー?」


「はい! すみません。こいつ俺の相棒なんですが、最近この街に来たばっかりで……」


「かまわんよ。弟妹は元気か?」


「はい! お陰さまで……」


「なによりだ。ほら、行くぞ! ルーカス!」


「気をつけろよ! 若造!」


へぇぇぇ……。


本当に人間の出来た英雄だこって……。


んっ?


ゲッシーが見てるのは。


「あの女魔道士、知り合いか?」


「えっ! ああ……。幼馴染なんだがな……」


もしや……。


「ゲッシーはあいつの事が昔から好きだけど、英雄のパーティーに入るくらいの実力があの女性にはある。で、その実力差という負い目に、告白する勇気がでないとか?」


「なっ! 違うよ……。そんなんじゃないんだ」


どっからどう見ても、そうじゃんか。


「後悔するくらいなら、言うだけ言えば?」


「ミリーは、ルーカスさんの恋人なんだよ。それに、ほら! 俺は顔もよくないし実力も……」


「あのルーカスってのも、フィフスか?」


「ああ……」


うわっ! みじめっ!


オーウェンって奴もそうだけど、ルーカスってのもいい年だったよ?


一応二十四歳なんだから、おっさんなんかに負けんなよ~。


出っ歯じゃなければ、そんなに顔悪くないじゃんか~。


やっぱり魔剣で切り落としてやるか?


『やめろ! 歯の神経を斬ると激痛が走るぞ?』


うおお!


ジジィ! 何時の間に!


『さっきからじゃ。それにしても、お前……人の事はよく分かるんじゃな?』


人のって……。


俺は自分の事も含めて、つねに冷静に見てるよ。


『……不憫じゃ』


何が?


今回は、本当に身に覚えがないぞ!


主語をきちんとつけなさいよ!


分かんないから!


何? 俺は何かを見逃してるの?


分かんないから教えてよ!


『……アホの子じゃ』


誰がアホだ!


へし折るぞジジィ! コラ!


「レイ?」


「あ……、なに?」


「帰ろうぜ。飯が出来てる頃だ」


「ああ……」


ジジィって!


…………。


ジジィ?


ジジィ?


クソジジィ?


寝るなコラ! クソジジィ!


起きろ! この変態ジジィ!


『……変態はお前じゃ。お休み』


お休み……じゃなくて!


くっそ! 本気で眠りやがった!


死ね!


あ~! もう!


****


「あ……あの、お口にあいませんか?」


「いや……何故?」


「いえ、その……。険しい顔に……」


ああ……。


ジジィのせいです。ごめんなさい。


「悪いな、考え事だ。……美味しいと思うよ」


「そ! そうですか! よかったらお代りもありますよ!」


リンが嬉しそうに、お代りを進めてくれた。


ここは……。


断らない方がいいよな。


俺は皿を空にして差し出した。


「あっ! はい!」


やっぱり、料理をほめられるのは嬉しいんだろうな。


俺も昔アドルフ様にほめて貰ってから、よく作る様になったっけっ。



いやいや。


何してんの? この子達は……。


俺のお代り……。


俺の皿は、何故かリンとリサに奪い合われている。


「離しなさい! リサ! これは私が作った料理よ!」


「姉さんは料理ほめてほらったんだから、もういいでしょ!」


これ~……。


俺はお代り食べられるのかな?


う~ん……。


おっ! 仕事から帰ってきたメイが事情を聞いて……。


ちょっ!


なんでお前まで、皿の奪い合いに参加してんだよ!


皿がベコベコになるぞ!?


お前ら三人年長組って言ってたじゃん。


理由は分からんが落ちつけよ……。


「お前達! いい加減にしろ!」


おお……。


よくわからん以上、ここはゲッシーに任せよう。


「だってお兄ちゃん! お姉ちゃん達がぁぁ!」


「最初の発端は、そう言うリサだろうが! 俺は見てたんだぞ!」


「へへっ……。じゃあ、あたしでいいよね? ジョシュー兄!」


「お前も後から来ただろうがメイ!」


「兄さん! じゃあ!」


「ああ! 俺が注ぐ!」


お前かい!


ええ~……。


どうせなら、女の子に入れてほしかったんだけど……。


「すまね~な、レイ。まあ、食ってくれ」


心なしか、リンによそって貰った時より美味くないな……。


「なんだ? あれだけ動いたのにもうお腹いっぱいか?」


お前のせいで不味いんだ……。


「兄さん……。レイさんは日頃、もっといいもの食べてるんだよ……」


「そ……そうだな……」


何言い出すの? この子!


凄い空気になってるじゃん!


「俺をどう思ってるかは知らないが、十分美味しいぞ」


「そうか? そうだよな! リンの料理は絶品だからな!」


「わ! 私も作れますよ……」


「あたしだって! 昔からリン姉手伝ってるんだから!」


落ち込んだり、騒いだり忙しいこって……。


「また、機会があれば頼むよ。それと、俺の事はレイでいい……」


「えっ? そう?」


「あたしは、メイでいいからね!」


「じゃ……じゃあ! 私はリサで……」


お前ら全員、俺より年上だろうが……。


「了解」


だから!


顔を赤くするほど恥ずかしいなら、言うな!


ああ~……。


面倒くさい……。


こいつらめんどくせぇぇぇ……。


「そう言えば、レイよ」


なんだ? 出っ歯?


「昼からなんだが……。ギルドの仕事をしないといけないか?」


回りくどい!


「何か用事があるなら、かまわないぞ?」


「そうか! お前は話が早くて助かる! 昼から今日の金で食料を買い出しに行きたいんだ!」


それなら、俺も欲しいものがあるんだよねぇ。


ついていこうかな。


「一人で行くのか?」


「いや、リンと二人で行くんだ。リサは昼から職場に戻るが、メイが交代勤だから夜まであいてる。子守りはメイだけでも十分だからな」


なるほど……。


この人数だし、荷物持ちくらい手伝ってやるか。


****


昼飯を食い終わった俺は、院の庭で日向ぼっこ……。


ああ……。


眠い……。


これ今日もなんだかここに泊りそうだけど、ゲッシーと同じ部屋だと死ぬんじゃね?


ホテルにでも泊まろうかな~?


しかし……。


ガキ共は元気だね~。


うざいぐらい元気だ。


絵本の奪い合いを、メイが止めている。


う~ん……。


あそこも、人形の奪い合いか。


玩具が足りてないのか。


いろいろ苦労してそうだね~……。


お……。


ゲッシーとリンの準備が出来たみたいだな。


「じゃあ! 行ってくるぞ!」


「皆、いい子で待ってるのよ!」


二人の声にガキ共が大きな声で返事をする。


五月蝿いっての……。


「あ? レイもついてくるのか?」


「ああ……」


「レイもお買い物ですか?」


「武具屋をおしえてくれ、そうしたら荷物を持つのを手伝うよ」


「はい! 喜んで!」


ん?


なんだ? ゲッシー?


人の顔をジロジロと、気持ち悪い……。


「本当に、買い物が目的かぁぁ?」


「ああ。修練用の木剣か刃挽きの剣が欲しい」


「なんだ……本当に買い物か……」


なんで落ち込むの!?


何が目的?


俺の周りには、主語を話さない奴しか寄ってこないのか!?


う~ん……。


考えても無駄だよな。


「あの~。レイは好きな料理とかありますか?」


「特にこれと言ってない。食えれば問題ない」


「今日は腕によりをかけますから!」


「期待してるよ……」


「はい!」


う~ん……。


外出時でも化粧なしか……。


そっちに回す金銭的な余裕が、ないんだろうなぁ。


****


取り留めのない会話を続けた俺達は、商店街へと到着した。


「あっ! あそこが武具の店だ!」


「そうか……。少し……」


「ああ、それくらい待つって!」


俺は一人で店に入ると、刃挽きをしてある練習用の剣を購入した。


「貴様はさっきの!」


ああ~?


さっきのルーカスとかいう雑魚か。


「なんだ? 練習用の剣? はっ!」


鼻で笑う意味がわからい。


練習用の剣くらい、達人でも買うぞ?


馬鹿にしたいんだろうが、もう少し分かりやすく馬鹿にして欲しいな。


これじゃあ、殴りかかれない。


「ルーカス……」


「なんだ? ミリーはこんな奴を庇うのか? オーウェン様に、あの態度をとったこんな奴を!」


「この人、何も知らないって言ってたじゃない。ね?」


「ふん! 命拾いしたな小僧!」


お前がな、雑魚。


「ごめんね、うちのが失礼な事言って。ジョシューにも宜しく言っておいて」


そう言うと、ルーカスとミリーが店を出て行った。


店内から見えたが、店先でその二人はゲッシーと少しだけ話をしているようだ。


ありゃ~駄目だな。


完全にゲッシーに見込みないわ……。


うちのって言ってたしなぁ。


俺が恋の橋渡し役を!


無理だな。


やる気が起きない。


てか、やり方が分からない。


性格いいんだから、ゲッシーにもそのうち彼女できるだろう。


それよりも、とっととゲッシー達の買い物を手伝おう。


****


「お前……」


「なんだ?」


「見た目は正直ヤサ男なのに、力あるんだなぁ」


言葉を選べ! このげっ歯類!


「あの……。重くないですか?」


「これくらい全く問題ないんだがな……」


食材、約八十キロ……。


小さい頃から、買い出しで重い物を毎日持ってたから、今はこれぐらいまったく重くないんだがな。


行きかう人々がこっちを振り向く。


なんか恥ずかしいな……。


しかし……。


「あのさ~。さっきから、変な服をきた奴らが多い様な……」


「ああ! あれは、司祭や僧侶の服みたいなもんだ」


なるほど、国が違えば服も違うか。


「にしても、多くないか?」


「そう言えば、そうだな。なんか祭りでもあるのかな? 宗教の……」


まぁ、気にする事もないか……。


俺にはやる事があるからな。


それよりも……。


「今日も泊ることになりそうだが、頼みがある」


「おっ!? なんだ? 何でも言ってくれ」


「屋根裏でいいから、一人で眠りたい」


「へ? かまわんが……。どうしてだ?」


「一人旅が長かったせいで、一人じゃないと眠り難い」


嘘ですけどね!


お前のせいですけどね!


てか、殴りたいんですけどね!


「そうか! それなら、院長の部屋が空いてるから使ってくれ」


「すまない……」


「兄さんのいびきですよね? ごめんなさい」


リンが小声で謝ってくれた。


うん。仕方ない……許そう。


ただし、君か妹に俺の煩悩を処理してもらう予定だけどね!


『……お前最低じゃ!』


起きたか、ジジィ!


俺を止められるものなら止めてみろ!


『……お前最悪じゃ!』


なんとでも言え!


今回こそはいい思いをするんだ!


『このエロガキが……』


はぁぁぁぁぁはっははっはっ!


話は変わるが、修練用の剣を買ったぞ。


『……そうか』


なんだ? 元気ないぞ?


『……わしは疲れた』


と、孤児院にとうちゃ~く!


****


荷物を孤児院に置いた俺は、再び街に出た。


『……お前は本当に、尽くす性格じゃな』


見て見ぬふりってわけにいかないし……。


これで、彼女達の正確な数値が測れるじゃんか!


『原動力は煩悩か。褒めたわしがバカじゃった』


ジジィが馬鹿なのは、今更言わなくても知ってるよ~。


『お前!』


正確に言うと、ものっそい馬鹿!


だけどね~。


『上げ足は全部取っていいものではないぞ!』


いやいや、お前足ないじゃん!


てか、人間の体何も残ってないじゃん。


『……もう、ええわい』


さて……。


「何処に行かれてたんですか? それに、その凄い荷物……」


「食事はまだだよな? 子供達を集めてくれるか?」


偶然同時に帰宅となったジュディーに、ガキ共を集めさせた。


俺は、買ってきた物を床にばらまいた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


「これ……いいの!?」


「全員分ある。取り合いはなしだ。いいな?」


ばらまいたのは、子供用の玩具や絵本だ。


「う~ん!!」


「やったぁぁぁぁぁ!」


五月蝿いな……。


騒ぎ過ぎだ……。


寝不足の頭に響く……。


『素直に、喜んでもらえてうれしいとは言えんのか?』


別に……。


「あの……いいんですか? これ?」


子供達の騒ぎに、エマも出てきた。


訂正、大人全員が出てきた。


「本当にいいんですか? 安くはないですよね?」


「俺がガキの頃に世話になった人から、自分に恩を返すのではなく下の者に同じ事をしてやって欲しいって言われただけだ……」


俺を不憫に思えたんだろうけど、アドルフ様は俺が給金をもらえるまで、毎月本や玩具を買い与えてくれた。


わざわざ言わないが、アドルフ様に感謝するんだな、クソガキ共。


そして、さ~わ~ぎ~す~ぎ~!


五月蝿いわ!


ガキ共が、俺が床にばらまいた絵本や玩具を取り合いしている。


そして、大人達はそれの収拾……。


「ああ! もう! 取り合いしないの!」


「おお! よかったな~!」


「喧嘩するな! 本はみんなで交代に読むんだ!」


大騒ぎだな……。


取り合いするなって言ったのに、ガキは聞いてなかったようだ。


まあ、みんな笑ってるし、よしとするか……。


さて……。


俺はリンに紙袋を渡した。


「えっ? これ……」


「俺は何を買えばいいか分からないから、店員に同じものを五セット用意させた。さすがにお前らは喧嘩せずに分けろよ」


これぐらいで……。


『泣くほど感激してくれておるではないか』


大げさなんだよ。


『苦労が報われたのぉ』


なんの?


『一人で化粧品の店に入って、顔を真っ赤にして、必死に店員に言い訳しながら買い求めた品じゃ』


五月蝿い。


『必死すぎて店員がドン引きじゃったのぉ!』


五月蝿いわ!


なんでそんなに嬉しそうなんだ! クソジジィ!


殺すぞ!


『照れるなクソガキ! そして、お前が死ね!』


ちっ……。


****


その場に居たくなかった俺は、さっさと食堂に移動して、席に座った。


みんな大げさすぎるんだよ。


そう言えば、ジジィ。


『なんじゃ?』


今日は晩飯が豪勢らしいぞ。


『照れて変なテンションで、黙っているのもどうかと言うところじゃろうが、しょうもない事で呼ぶな』


あれだねぇぇ。


たまにジジィ、酷いどころじゃない時あるよね。


『……知らん』


ふ~……。


睡眠不足の俺は、騒ぎが収まるのを待っている間に眠ってしまっていた。


オーナー……。


御無沙汰です。


夢でも久し振りに顔が見えて嬉しいですよ。


分かってます。


これ以上あいつらに関われば、俺の不幸に巻き込まれます。


大丈夫です。分かってますから……。


だから、そんな悲しそうな顔しないでください。


分かってるんです……。


****


「……おいって!」


ああ?


あ~……寝てたか。


おお! 本当に豪華な食事!


えらく頑張ったな……。


「どうだ?」


「あ? うん。美味しそうだ」


「そっちじゃなくて!」


どっちだよ!


って……。


うん! 全員上ランクだ。


合格……。


俺の前に並ぶ女性達を見て、少し嬉しくなった。


きちんと化粧のしかたは知っていたようだ。


「あの! 本当にありがとうございます」


「いや……」


「私達は何をお返しすれば……」


身体を下さい!


とは、言えないもんねぇぇ。


「気にするな。それよりせっかくの飯が冷めるぞ」


俺に見せてくれようとしたんだろうけど、食事前に口紅をひくのはどうかと思うぞ。


…………。


あれ?


ジジィの突っ込みがない……。


俺が一人じゃないと、本当によく寝るな。


その日の食事は、俺以外全員のテンションが高かった。


うざい……。


駄目だ……。


俺、多分、集団、生活、無理!


みんなが、食事中に話しかけてくるなんて……。


ウッ……ゼェェェェ!


食事に集中できない!


お前らがよかれと思ってる事でも、俺には拷問なんだよ!


くっそ!


金貯まるまで毎日これかよ……。


やってらんね~……。

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