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Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第四章:新大陸の定め編
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十三話

ザクリ、ザクリと、墓地と森に寂しげな音が続く。



俺は共同墓地の隣にある森に、穴を掘った。


管理棟にあったスコップを、黙って拝借したんだ。


そして……。




一つの頭蓋骨を埋めた……。




墓標は、付近で一番大きなこの木……。


泥で汚れた手で、俺は大きな木の幹に手をそっと触れる。


気がつくと、雨が降り始めていた。


****


季節はもう冬だ……。


振り続ける雨で気温が下がり、俺の吐きだす息は白くなっていた。


俺はそのまま屋敷へと歩き出した。


その俺の服は、血で真っ赤になっている。


通りを歩く人々が、俺に振りかえっている。


しかし、俺に声を掛けてくる奴はいなかった。



雨脚が強くなり、俺はずぶぬれになった。


それでも傘のない俺はそのまま町中を一人で歩く。


****


屋敷に着くと人の気配はなく、立ち入り禁止の立て札が立っていた。


あれだけの惨殺事件があったんだから、当然か……。


俺は屋敷を囲っている塀を飛び越え、中に入った。


そして、自分に与えられていた部屋へと向かう。


引き出しに置いてあった現金を、財布に入れた。


そして、置いてあったタオルで身体を拭き、服を着替える。


いつも着用していた執事用ではなく、普通の服を……。


ふと、ベッドを見ると一枚の服が残っていた。


使用人用の……。



Lサイズの服が……。



玄関には傘が置いてあったが、何故かさす気が起きなかったのでコートだけを羽織り、外に出た。


もう、この町に居る意味はない。


金もそこそこは貯まった。


そのまま俺は……町を出た。


****


数時間ほど降り続いた雨が上がり、空に星が見え始める。


俺は濡れていない薪を集め、火を付けた。



さて、今日は久しぶりの野宿だ。


さすがに前のように木の枝で眠るだけだと、凍死するからね。


『……久し振りじゃな』


ああ……。


海で漂ったのは野宿とはいえないから……。


『四か月ぶりか?』


まだ暑い時期だったよね。


運よく朽木があって助かったよ。


生木や湿った枝じゃ火がつかないからね。


『うむ。……これからどうするんじゃ?』


はっ?


ボケたのか? ジジィ?


メアリー達を捜しに行くに決まってるじゃんか!


『そ……そうじゃな』


何!?


マジでボケたの?


それとも元々頭がおかしいの!?


しっかりしてくれよ! クソジジィ!


魂が同化してるのから、捨てられないんだぞ!


魔剣の介護って、どうすりゃいいんだよぉぉ!


『黙れ! クソガキ! 大丈夫に決まっとるじゃろうが!』


ホントにぃぃ?


『当り前じゃ!』


ちょっと、そうなった場合の契約解除方法教えといてよ。


ミスリルって……。


いくらで売れるかな?


『売ろうとするな! そして、しつこいわ!』


ジジィ、最近キレすぎぃぃ。


もう、賢者でもなんでも無いよね。


『ぐっ! 今後、何があってもフィールドも回復もないと思え!』


う~そ~で~す~!


ほら、すぐキレるぅ!


そう言うのよくないぞ!


『お前は……』


さて、俺は疲れたし寝るぞ!


お休み!


****


本当に疲れていた俺は、焚火のそばで座ったまま、すぐに寝息を立てた。


『……いつもの精神力で、なんとか立ち直ってくれたか』


ジジィが眠ろうとした瞬間、不思議な現象がおこった。


いつの間にかジジィは、人間の姿で真っ暗な世界に立っていた。


『なっ!? これはなんじゃ? 何がおこった?』


俺のせいだ……。


『……何をしておる? ここはどこじゃ?』


俺が関わった人は、死んで行くんだ……。


『どうしたんじゃ!? どうなっておるんじゃ!?』


俺さえいなければ、みんな死ななかったんだ……。


『しっかりせい! ここはどこじゃ!?』


俺がみんなを殺したんだ……。


暗闇の中で膝を抱えて座り、ただ呟き続ける俺にジジィは話しかけるが、全く反応が返ってこない。


『……そうか、ここは。前意識の領域……』


俺も昔、本で読んだ事があるが、人の意識とは四つに分かれているらしい。


意識、前意識、個人的無意識、集合的無意識……。


俺とジジィが日ごろ会話しているのは第一層目、意識部分だ。


喋る事に近い言葉はお互いに読み取れるが、少し意識を深くするとお互いに読み取れない。


そして、眠っている状態で初めて第二層目である前意識が繋がる。


『……やはり、前意識ではまだ駄目なのか……。あれは……仕方なかったんじゃ……仕方が……』


俺さえこの世に生れなければ……。


『……もう気にするでない』


母さんは、職場から追い出されて死ぬことは無かった。


『おい! 聞いておるのか!?』


父さんは俺がいなければ、トロルから逃げられた。


『これは……無意識の層なのか!?』


セシルさんは俺が殺した。


『昨日は初めての幸せで……。今日はオリビアを殺した絶望でと言う事か?』


オーナーは、俺があの石を持って帰らなければ死ななかった。


『精神の負荷が強すぎて、無意識層から漏れ出しておるのか……』


オリビアも、俺さえいなければ死ななかったんだ。


俺は、生きてちゃいけないんだ……。


『……これが命を投げ出そうとする理由か……』


何で死んじゃいけない?


なんで俺は死ねない? 死ぬことを拒む?


何で!?


そうだ……。


みんなが生きろって言うからだ……。


俺が殺した人達の言葉は守らないと……。


もう、それしか俺には出来ないから……。


でも、俺は人と仲良くなっちゃいけない……。


俺の好きになった人は、みんな死んでしまう。


俺は、死にたい。でも、死んじゃいけない。


一人で生きないといけないんだ。


でも、さみしい……。



誰か……。



駄目だ。


俺は一人じゃないといけないんだ。


『何と言う事じゃ……。これが精神の根底なのか』


死にたい……。


『全ての罪を背負い、己自身を責めておるのか……』


死ねない……。


『そして、死者の言葉が生へしばりつける……。まるで呪いじゃな』


俺は、自分の意思で死んじゃいけない……。


俺が殺した人達に殺されないといけないんだ。


『無意識に刻み込まれた生への執着……』


俺自身が認識していない部分も五感を共有するジジィは知っている。


死を目の前にした時、俺は足掻く……。


無意識で足掻く……。


敵の攻撃に対して魔剣を盾にしたり、爆発の衝撃が最低限になる様に動く……。


しかし、それを俺自身は意識しているわけではない。


遺言に縛られた無意識の動作。


『幾度もの危機回避は、悪運ではなくそのせいか……』


一人はさみしい。


喋ると人が近づいてくる。


でも、近づけちゃいけない……。


だってみんな死ぬ……。


『無口なのも、鈍感なのも……』


俺が殺してしまう。


俺は殺すことしか出来ない……。


誰も救えない……。


『全ての罪は己の罪、全ての功績は人のもの……』


死にたい……。


でも、死ねない……。


苦しい……。


『誰の言葉も、お前の闇には届かんのか? わしの言葉さえも……』


でも、誰にも気付かれちゃ駄目だ。


苦しいときほど笑うんだ……。


前のめりに死ぬんだ……。


その時まで心を殺せ……。


『何と言う……』


涙を見せるな……。


泣いてしまえば、俺はその場で動けなくなってしまう。


『歪み……』


泣く事なんて何時でもできる。


でも、二度と立ち上がれなくなる。


だから、死んでから泣くんだ!


まっすぐ前を向いて死ぬんだ!


『何と……何と弱く……強い心じゃ……』


さあ! まっすぐに立つんだ!




『なんと性格の歪み破綻した孫じゃ……』


誰が破綻してるんだ? クソジジィ!


『なっ!?』


殺すぞ! ジジィ!


『何故?』


何寝ぼけてるんだ?


『目覚めたのか?』


てか、やばい!


マジでやばい!


マジで死ぬ!


これ間違いなく死ぬ!


『どうしたんじゃ?』


いやいや! 何で分からないんだよ!


クチビル紫になって、ガタガタ震えてるじゃんか!


『……ああ』


ああ、じゃねぇぇよ!


自然なめてたぁぁぁぁぁぁ!!


焚火なんかでしのげるレベルじゃない!


死ぬ死ぬ死ぬ!


これやばい!


凍死する!


『……走るしかないのぉ』


分かってる!


なんか身体あっためる魔法無いのかよ!


『あるわけないじゃろうが、そんなもん……』


ですよねぇぇぇぇぇぇぇ!


『ずいぶんと切羽詰まっておるな……』


死ぬから! 身体が上手く動かないんだよ!


****


俺は、ガタガタと震えながら街に向かい歩き出した。


はいはい……。


そうです。


凍え方がやばいレベルまでいってるんで、走れません……。


俺……。


死ぬかもしれん……。


助けて!


マジで助けて!


あああああ!


『自動販売機じゃ!』


ああああ!


俺は振るえる手で、財布を出す。


小銭を多少ばら撒いてしまったが、そんなこと言ってる場合じゃない!


ホット! ホッ……。


なんか見たことない飲み物しかホットじゃない!


『言っとる場合か!』


あ!


温かい……。


ああ……。


俺はホットドリンクの缶を、顔などにあてた後、それを飲む。


しあわ……まずっ!


何これ!?


まずっ!


『不味かろうが、命には替えられん』


くっそ!


もうひとつのホットを!


その自販機に残されたもう一つのホットドリンクに、俺は全てをかけた!



んっ……不味ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!


両方不味いってどういう事!?


こんな町外れに、こんな不味い飲み物!


売れるか、こんなもん!


ホットドリンクを飲み、鼻水が滴ってきた。


それをハンカチで拭きとり、空き缶をゴミ箱に投げ捨てる。


怒りを込めて!


確かに少し温まったけど……。


『もう何本か飲むべくじゃな……。まともに動けんぞ?』


ですよね~……。


飲みたくねぇぇぇ……。


最悪だっ!


やってらんね~……。

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