表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第四章:新大陸の定め編
42/106

二話

「目が覚めたか、レイ」


目を開いたばかりの霞んだ視界の中……。


その光の中に、褐色の肌が見えた……。


あああああああ!


俺は左拳に、己の全てをのせてうち出した。


そう、己の魂さえかけた拳をうち出したんだ……。


パシッという、自分の目を覚ますには十分な大きさの、破裂音が耳に届く。


俺の魂は、いともあっさり受け止められた……。


俺の魂ってのは……。


こんなにも軽いのか……。


俺の全力ってのは……。


『お前は……何に、命をかけとるんじゃ?』


目の前にいる、褐色の人狼を殺す事にだよ。


「寝ぼけるな……」


俺の拳を受け止めたゴルバは、淡々とした言葉を吐いた。


『お前……あれじゃな』


何?


『散々人に頭がおかしいだの、殺人狂だの言っておいて、自分は不都合な相手を殺そうとするんじゃな。……迷いなく』


俺の貞操は、他人の命よりも大事なんだよ……。


『……クズ』


誰がクズだ! ボケ!


『……お前じゃ、人間のクズ』


俺の全てを否定すんな!


「レイ……。そろそろ起きろ」


だから、何でお前は従者なのにタメ口?


ゴルバ抹殺に失敗した俺は、布団から起き上がる。


あれ?


これ……あれ?


何で布団?


確か船の中じゃ……。


てか、民宿らしきところのパジャマ?


なんで、こんなもの着てるの?


俺が自分の姿を見ながら首をひねっていると、部屋の中央にある椅子に座ったゴルバが語ってくれた。


「お前の服と鎧は、店の者に洗ってもらっている」


えっと……。


どう言う事!?


『……説明が必要か?』


そりゃあ、もちろん!


『船の上で子娘にノックアウトされたお前は、吐しゃ物にまみれて丸一日以上眠り、港町についたんじゃ。そして、ゴルバがお前を担いでこの民宿に運びこみ、今に至る……』


何で……。


ナンデ、フクヲキガエテルノ?


『もちろん、洗うためじゃ。お前は、吐しゃ物まみれだったのじゃぞ』


ダレガ、キガエサセタノ?


『……もちろん……ゴルバじゃ』


いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


俺の純潔がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


『五月蠅い! ゴルバは何もしとらん!』


いやぃぃぃぃぃぃぃあああああああああああ!!


『黙れ! 馬鹿者!』


俺……汚れちゃった……。


『気持ち悪いわ! 人の話を聞け! 馬鹿者!』


誰が馬鹿だ!


……何もされてないの?


『わしは起きておったが、何もされておらん。じゃから……』


俺……まだ綺麗なまま?


『そうじゃ! だから最初から……』


俺……痔とかになってない?


『なっとらん! 旅立つ前に……』


俺……。


『黙れ! 話が進まん! 何度も言うが、何もされとらん! ゴルバにその気はないはずじゃ! 人狼族とは、元々忠義精神が強い種族で……』


よかった~……。


本当によかった~……。


神様、今だけはありがとう……。


ただ出来れば死んでください……早急に。


てか……。


俺、助けた相手に気絶させられて、昏倒してたのかよ……。


マジで?


やってらんね~……。


「メアリー達は町に買い物に出掛けたが、お前はどうする?」


ん?


机の上にあるお茶を飲み終えたゴルバが、質問をしてきた。


「えと……確か、もう一回船に乗るんだよな?」


「ああ、二日後にこの港から船が出る。それまでは……特にすることはないな……」


さて、俺はどうしよう……。


船酔いの薬を買っておか……。


あれ?


「三人は町に出たのか?」


「ああ」


これ……やばくね?


カーラが一番マシだけど、世間知らず三人が町中って……。


ヤバいよね? これ?


『最低でトラブル、最高で惨殺事件かのぉ……。いや、町の消滅も有り得るな』


はははははぁぁぁあぁぁぁあっと。


「ゴルバ! 服!」


「どっ……どうした?」


「いいから! 外に出られるならなんでもいいから! 早く服!」


「わっ……分かった。これを着ろ」


窓から風景を眺めていたゴルバは、俺の叫びに驚きながらも、自分用に用意してあった服を渡してくれた。


つなぎの作業着? まあいい!


おおう! 手足はゴルバの方が長い! それを折りたたむか。


早くせねば!


誰かが、なんか……。


大変なことになる!


てか! ゴルバ!


俺の着替えを凝視するな!


このガチホモが!


くそっ!


俺は時間がないので、ゴルバの前で素早く着替えると、民宿を飛び出した。


この行動が、俺の……。


再びの始まりになった……。


何かって?


勿論不幸スパイラルの……。


****


急がねば!


誰かの命が危ない!


そして、俺達が犯罪者集団として扱われる!


俺がまた……。


あの……。


逃亡生活を……。


『辛い事を思い出している所にあれじゃが……。前を見ろ』


えっ?


脳天を突き抜けるほどの、激突音が轟く。


壮大に壁にぶつかった、全力疾走中だった俺は……。


あっ……。


空がきれいだなぁ……。


「おふぅ!」


頸椎を軽く損傷しながら、空中大回転と言う大技を決めた。


そして、首から着地した……。


正直、魔剣なかったら死んでるから……。


みなさんも走るなら、よく前を見て走りましょう!


いやいや。なんだこれ?


なんで俺は、こんなどうでもいいところで死にかけてるんだよ!


やるなら、もっとなんか強敵と戦って、命かけようよ。


『因果応報という言葉を、知っておるか?』


俺が何したってんだ! クソジジィ!


今回はマジでなにもしてないぞ!


ふざけんなよぉぉぉ。


ん?


あれは……。


『……船であった……。ああ、ケインと言ったかのぉ?』


そうだ! ザコA!


ここで会ったが百年目!


麻酔なしで、奥歯一本一本抜いてやる。


『リリス達はどうするんじゃ? 急がんでいいのか?』


あうう……。


そうだった……。


くそ、重要度はあの三人のほうが上だな。


てか、ザコAは何してるんだ?


ザコAを含めて、作業着の人間が五人。


魔力は感じないから、全員人間だと思うけど……。


『……お前、いい加減にこの態勢をどうにかせんのか?』


うん?


ああ。


因みに俺は今、大きな建物の屋根……の排水溝部分に引っ掛かってます。


体が逆向きになっているので、どんどん頭に血が昇ってるわけですよ。


って、これは……。


『ふむ……。何かするつもりじゃろうな』


町への関門所で、兵士が倒れている。


ザコAとその他は、そこから出てきた。


一体、どう言う……。


「本当にいいのか? ケイン」


「ああ! あいつだけは許せん!」


「俺達は金と逃走経路さえ用意して貰えれば、構わんが……」


「心配するな。金は俺がキッチリ払うし、今着ている作業着で清掃員のふりをすれば、町からは難なく出られる」


「そうか……。しかし、お前でもかなわない奴なのか?」


「ああ……。それよりも例の物は?」


「ちゃんと用意してる」


「へへへ……。これで、俺をコケにしやがった、あの剣士とヒルダをやれる」


聞かなくても、全部喋ってくれたな。


『まさか、お前がこんな場所にいるとは思ってもいまい』


ですよね~……。


国外へと続いているこの町は、揉め事が御法度……ってカーラが言ってたから。


『……兵士を殺したのは、そのせいじゃろうな』


仕返しの為に人殺しか……。


本当のクズってのは、奴らみたいのを言うんじゃないのか?


『その通りじゃ』


さて、そろそろ頭の血がやばいし……。


****


俺は引っかかっていた服のポケットを排水溝から外し、ザコ達の前に飛び降りた。


「なっ! お前!?」


「俺を捜してたんだろ?」


狼狽えるザコAに、俺は近づいていく。


「どこから湧いて出た!」


「見て分からん奴に、言っても分からん」


「くそっ……舐めやがって! だが、お前もここまでだ!」


ん?


魔道砲か?


えらく小さいな。


魔力も感じないし……。


「なんだ、それ?」


「てめぇは知らないだろうがっ! これは、新型の銃だ!」


銃は分かってるよ。


でも、魔法なんて俺には無力だよ?


なんて、この時の俺は考えていた。


しかし、ここはすでにレーム大陸の常識が通じない場所……。


それを、俺は忘れていた。


レーム大陸では銃と言うと、魔道砲だ。


つまり、魔法を撃ち出す補助装置的な物を銃と呼ぶのが、常識だったんだ。


まさか、魔力なしの銃があるなんて、その時まで夢にも思っていなかった。


「死ね!」


俺の首筋に寒気が走る。


魔力を全く感じないそれに、何故か鳥肌が立ったのだ。


俺の体に備わっている直感は、かなり性能がいいらしい。


発砲音を聞くよりも早く、反射的にその場所から体をずらした俺は、弾丸の直撃を避けられた。


弾丸の掠った腕が、火傷の痛みを発する。


「なっ……」


なんか、飛んできた!


ものっそい、速い!


なんだ!? あれは!?


『わからん……。分からんが、何かを撃ち出す装置じゃろう。それも殺傷力がそれなりにあるようじゃ』


腕の火傷した部分からは血が流れで初めているし、俺の後ろにあった街灯が壊れている。


十分人を殺せる武器のみたいだ。


やばくね?


『……うむ。金属らしきものが跳んでくる速度は、普通の人間では避けられん速度じゃな』


音速の剣なら避けられるけど、あんな訳のわからん小さい物避けれる自信ないぞ!


なんだよ! あれ!


反則臭いぞ!


「へへへ……。さすがに焦ってるなぁ! 英雄さんよぉぉ。覚悟しな!」


うおう!


なんかやられる!


どうする?


ん? あれ?


これって……。


『……問題なかろう』


だ……だよね。


最近、化け物とばっかりやってたから、すっかり忘れてた。


集中した事で、俺の視界に映るザコAの動きがゆっくりなった。


俺はそのまま石畳を蹴って、ザコAの背後に回り込む。


何のことはない。


見た事の無い物で焦ったが、撃ち出された物は避けられないかもしれないが……。


撃つ側の人間よりは、速く動ける。


てか、目にもとまらず動けます。


鈍く大きな音が、聞こえた。


俺が、ザコAの脇腹を背後から殴りつけたのだ。


多分、肋骨が何本か折れたのだろう。


殴られた事に中々気が付かなかったザコAは、そのまま銃口を俺がいた方向へ向けて、引き金を引いた。


銃声と同時にザコAが倒れ、もだえ始める。


反応……おっそいな……。


『まあ、相手は普通の人間じゃ』


俺は石畳の上に転がった新型の銃とやらを、踏み壊してやった。


「なっ……なんだ! こいつ!?」


作業服を着たザコAの仲間達が、騒ぎだして剣を抜くので……。


はい! どっこいしょ! どっこいしょぉぉっと!


全員の脇腹に拳を叩きこんだ。


多分、全員知覚する前に気絶しただろう。


さて……。


「あぐぐぐっ……」


道端でもだえているザコAの髪を握り、顔を持ち上げる。


「二度と面を見せないってんなら、殺しはしないけど?」


「ひっ……ひぃ!」


いや、ひぃじゃなくて……。


「返事は? なんなら、もう一発殴ろうか? 今度はどこの骨がいい?」


「あぐぐ……、も! もうしません! 二度とあなた方には近づきません!」


それを聞いた俺は、ザコAを投げ捨てた。


まぁ、このまま警備の兵士が来れば、この馬鹿は捕まるだろう。


それよりも……。


『さっさと、三人を見つけんとな』


ああ……。


まったく、手間をとらせやがって。


「あれだ! あれが犯人だ!」


おっ! 兵士が来た。


どうしよう……。


『事情くらい、説明してやればよかろう?』


面倒だ……。


このままほおっておいても、目撃されてるんだからいいんじゃね~か?


『しかし……』


まぁ、いいじゃん!


なんて軽く考えました。


みなさん……。


面倒でも大事な事は、ちゃんとやったほうがいいですよ。


俺みたいになっちゃうから……。


****


俺がその場を去ろうと背を向けたとき、ある言葉が兵士の一人から叫ばれた。


「あいつも仲間だ! 逃がすなぁぁぁぁぁぁ!」


なんでだぁぁぁぁぁぁぁ!!


元凶が俺にないとは言わないが、俺は悪者倒しただけなのに!


協力しただけなのに!


何でだ!?


こうして俺は殺人犯の一味として、街中を三十人ほどの兵士に追い回される事になった。


ああ……。


また、選択肢間違えた……。


****


「中々でした。ありがとう、ヒルダさん」


「いえ、船での無礼の償いがこの街の案内でいいのでしょうか?」


「ええ、十分よ」


「我々はいま、お前を殺すわけにもいかないのでな。それよりも、さっき言っていた洋服の店へ案内しろ」


「分かりました」


「あああああああ!」


こっちくんなよぉぉぉぉ!


俺は犯人の仲間じゃないってばぁぁぁぁぁ!


「は!?」


「今のって……」


「レイだったわよな……」


「あれは、多分ゴルバの作業服ですね……」


「何で、作業服?」


「ゴルバの趣味は陶芸なんですが、その時ゴルバは汚れてもいいように作業着を着るんです」


「レイの服は、洗濯中だからな……」


「で……もしかして」


「また、何かに巻き込まれたんでしょうか……」


「世話の焼ける……」


あ、カーラ達……ってそれどころじゃねぇぇぇぇ!


「いやああああああぁぁぁぁぁ!」


ザコBとオープンカフェで楽しく昼食をとっていたカーラ達が見たのは、諸手をあげて兵士から逃げていく俺の姿だった。


そう、俺は急いでゴルバの作業着を着て飛び出していた。


作業着の色とデザインは、多少違うんだが……。


どっからどう見ても奴らの一味です。


****


何でだよ!


何でこうなるんだよ!


『じゃから、説明をせんから……』


確かに、逃げるような行動をとった俺も悪いけどさ!


でも、この服装だとどの道疑われて、投獄される可能性のほうが高いじゃんか!


『まあ……。お前なら、どの道一緒だったかも知れんな……』


選択肢、間違う以前の問題じゃないか!


何やっても駄目じゃんか!


正解できるか! こんなもん!


うえっ?


目の前が……。


回ってきた……。


何これ?


『お前は、ここ数日ほとんど何も食べとらんからな……』


力が抜ける……。


やっべ……。


視界が白くなって……。


あっ!


あそこ!


****


俺は浜辺に置いてあった、シートのかかった小舟に身を隠した。


いくら腹が減っていても、兵士よりは速く走れるからね!


さて……ここなら……。


あれ? 何これ?


やばいって……。


皆さんはおなかが減りすぎた経験はありますか?


どうなるかと言うと、胃酸の出過ぎ等で……。


気持ち悪くなります。


更に酷くなると、めまいや吐き気を伴って……。


場合によっては意識を失います。


俺は隠れていた小舟のシートの隙間から辺りを伺っていたが、兵士は執拗に捜索をしてくれました。


そのせいで限界を超えた俺は、意識を失った……。


って……。


なに?


俺どうなるの?


なんで、苦しんで苦しんで……。


また、苦しんでるの?


何これ?


何してくれてんのぉぉぉぉぉ!!


どんな殺し方しようとしてんだよ!


無理やり殺そうとするなとは言ったけども!


これも十分無理やりだからね!


何で、餓死させようとしてんだよ!


神様……チェンジ……。


死に方、チェンジィィィィィ!!


なんかこう……。


せめて、かっこよく死なせろ!


てか、これならミルフォスの時、素直に殺しとけばいいじゃん!


なに苦しみ増やしてんだよ!


なんだよぉぉぉ。これ。


やってらんね~……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ