表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mr.NO-GOOD´  作者: 慎之介
第三章:帝国と陰謀編
31/106

四話

魔族の治める土地には、原生林がかなり残っており、巨木を探すのに苦労はない。


その巨木の大人二人が楽に寝そべる事が出来る枝の上で、俺は頬杖をついて考え込んでいた。


なぁ、ジジィ……。


『なんじゃ?』


おかしくないか?


俺の考えすぎか?


『いや……。何かが蠢いておる……かのぉ?』


だよなぁ……。


本当に面倒だ……。


神様? マジで何やってんだよ!


ちょんと仕事しろよ! それか死ねよ!


『お前の神嫌いはどうしようもないのぉ……。確かに邪神はおるが、いい神もおるのじゃぞ?』


なら、頑張った俺にご褒美よこしなさいよぉぉ。


彼女とか、彼女とか、彼女とか……。


『お前の頭蓋骨の中には、煩悩しかつまっとらんのか?』


もうすぐ成人ですが……。


まだ、思春期なんで!


『そんな宣言されてものぉ……』


まぁ、それは置いといて……。


話を戻すけどさぁ。ジジィは、いつから意識があったんだ?


『お前が十三歳になった頃からか……。それ以前は半覚醒状態で、記憶が曖昧じゃな』


ボケ……とかじゃないよな?


『違うわ! 馬鹿者が!』


なら、アルティアでの魔人復活の時の事は、全部覚えてるんだよな?


『まぁな……』


多分、一番最初の魔道士とオークを倒したのって、覚えてるか?


『あの、飲食店でお嬢ちゃんに殴られた時じゃな? 覚えておるぞ』


嫌な言い方するな!


まぁ、あの時俺は魔族のことあんまり知らなかったから……。


『そうじゃな。魔道士もオークも塵になった……』


普通、魔族も人の一種だから死体が残るはず……。


『じゃが、塵になった……。あのオーガのように……』


あの魔人の手下とか言ってた妖怪ジジィの体って……。


『魔道兵機と同じ技術じゃ……』


ジジィが言うなら間違いないよな……。


考え過ぎかもとも思う。


にしては、なんか繋がってるような。


長い間も封印されてた物が、一気に目覚めるなんて有り得ないよな? 普通は。


『まぁ、その事に気がつけるのは、全てに巻き込まれたお前くらいしかおらんじゃろうがな……』


だぁぁよぉぉねぇぇ。


俺は最近の寝床である、大木の枝でうなだれた。


国が亡びそうな事件なんて、仕方ないじゃ済まないぞ。


俺に何させたいんだ! 神様!


マジで……。


やってらんね~……。


****


ん?


『お客さんじゃな……』


気配を消して忍び寄ってくる……っか。


好的なわけないよな。


さてと……。


かなり上手く気配を消して、音も出さずに素早く俺に近付いてくる誰かを迎える準備を、俺は整えた。


その客は俺の作った虚像に、躊躇なく手刀を突き刺しやがった。


まぁ、それただの残像ですけどね。


「背後取ろうとしないでくれる? 俺に何か用でも?」


俺は客の背後から、抑揚を無くした声で喋りかけた。


『なんじゃ? その要求は?』


カーラにナイフを突きつけられたのが、いまだにちょっとトラウマなんだよ……。


んっ?


バンパイア!?


振り返った女性は、バンパイアの特徴である緑色の長髪が風になびいていた。


美人ですねぇ。おねぇさん。


はぁ。また、美人に俺は命を狙われるのか……。


俺が何したんだよ!


「お前が最近、近隣の村で衣服を盗んでいる人間だな?」


『何かに答えてくれたな盗人……』


いや、あのね……。


大体その前にモンスターから、村を守ってんだけど……。


「あの、それは報酬と言うか……」


「貴様の血をよこせ」


聞く気ないよね、おねぇさん……。


爪と牙剥き出しにしないでよ。


「美人が台無しですよ?」


うわぁぁぁぁぁぁん!


やっぱり襲ってきたぁぁぁぁぁぁ!


なんで魔族はみんなこうなんだぁぁぁぁぁぁ!


馬鹿じゃねぇぇぇの!


おおぅ!


背後から、破裂音が聞こえた。


それが気になった俺は、少しだけ後ろへと目を向ける。


大木を素手で、削り取りやがった。


『これがバンパイアの力じゃ』


解説いらん!


打開策よこせぇぇぇぇぇぇ!


****


俺は、夜の森を逃げ回る。


速度は何とか俺が上だけど、パワーはドラゴン並みじゃないのか? このねぇちゃん!


流石はバンパイア。


夜の眷属なだけに、気配を消しても目視で追ってくる。


もお! しつこい!


くそ! お前のせいだからな!


俺はもう一段階速度を上げて、相手を少し引き離したところで、目の前に迫った木の幹を蹴る。


瞬間的に足にかかる圧力はかなり痛いが、骨が折れる程ではない。


木の反動も利用して、俺は速度を落とさずに百八十度の方向転換をした。


突然自分に向かってきた俺に、おねぇさんは対応できず、そのまま当て身の直撃をくらう。


「かっ! はっ……姫……様……」


また罪悪感……。


ん? 懐から……コップ?


なんでこのおねぇさんは、コップなんて持ってるんだ?


まぁ、いいか……。


俺はコップを拾い、気を失ったバンパイアのおねぇさんを肩に担ぐ。


あっ……いい匂い……。


キスとかなら……。


『やめんか、人間のクズ……』


だから、冗談だよ……。


お連れさんがいるようだから、とりあえず運ぶわ。


この魔力は、多分もう一人もバンパイアだな。


話聞いてくれるといいなぁ。


****


近くの河原に、もう一人がいた。


確かバンパイアって、血から栄養補給数だけじゃなくて、混じってる魔力で自分の怪我を治したりするんだよな?


『そうじゃ』


理由は分かったけど、もう少し穏便に話してくれれば……。


もう一人はどうやら怪我をしている。


おねぇさんは、そのお連れさんの怪我を治す為に、俺の血が欲しかったんだろう。


おおおおぉぉぉぉ!


月を隠していた雲が動き、月明かりがそのバンパイアを照らした。


めちゃくちゃ!


めっ……ちゃくちゃ美少女!


可愛い……。


その子は俺が担いでいるおねぇさんに視線を繰りながら、爪を伸ばして身構えている。


「落ち着いて……」


俺はおねぇさんを、草むらの上に寝かせて距離を取る。


「何もしないから……」


『何かする奴のセリフじゃな』


五月蝿いわ! クソジジィ!


ちょっと黙ってろ!


「ルネ……」


美少女にルネと呼ばれたおねぇさんが、目を覚ます。


ちょっと強めに当てたのに、さすがバンパイア。


だからぁぁぁぁ……。


二人して身構えるなよ。


ここは仕方がない、ジジィ。


『まぁ、よかろう』


俺は魔剣で腕を少しだけ切ると、ルネが落としたコップに血を注ぐ。


流石に、直接噛まれるとヤバいかもしれないからね。


俺ってジジィのおかげで、多少は体内の魔力って強いんだよな?


『その通りじゃ。その血には、さらに魔力を凝縮して入れておいた。これだけで、問題無いじゃろう』


俺は、そのコップを手渡す。


手渡……。


手渡すの!


身構えたままの二人は、コップに手を伸ばしてさえくれない。


受け取りなさいよ!


ここは素直に受け取ろうよ!


仕方なく、地面にコップを置き、また少し離れた。


やっと飲んだ。


へぇ~……。


本当にすぐ回復していく。


魔剣の修復みたいだなぁ。


「姫様、お加減は?」


「ありがとう、ルネ。すっかり回復したわ」


あれれ?


姫……様?


あ……魔王って。


『バンパイアじゃ』


もしかして……。


「に……人間の方、まずは礼を……。私はバーゴ帝国皇女、メアリーナ:ルーファ:バラスと申します」


ああ、やっぱね~……。


そうなるよね~……。


分かってたよ!


俺には亜人種だろうと、彼女なんて出来ないんだろ!


分かってたんだ……。


分かってたのに……。


ははっ、あぁぁはっはっ……。


ぬか喜びさせやがって……。


一枚一枚……。


足の爪引きちぎるからな! 神様!


魔王の娘なんかに手は出せねぇぇよ……。


『へこんでる所であれじゃが、彼女になってくれそうな事は、今回なにもなかったじゃろうが……。何故そこまで騒ぐ?』


ものすっ……ごく、好みなんです!


ちょっと期待しちゃったのぃぃぃぃぃ!


はぁ……。


ルネさんがまだ身構えてるから、消えるか……。


「待って下さい! 人間の方!」


「姫様!?」


何? なんかくれるの?


「あの、少しお話を……」


「姫様! なにを!」


「ルネ! ……私の見た限り、彼は私達よりも強いのではないですか? にも関わらず、血をくれただけでなく、立ち去ろうとしてくれています」


「しかし、人間ですよ?」


「少し気になる事もあるのです」


「しかし、こいつ……呼び止めただけで、駆け戻ってくるだけじゃなく、正座して愛想笑いまでしてますよ? 妖し過ぎませんか?」


「ま……まぁ、それは……」


『引かれておるぞ?』


誰が逃がすか! このチャンス!


バンパイアどんと来い!


『魔王はどうした?』


そんなもん、ドブにでも捨てちまえ!


「お願い……ルネ」


「姫様……。分かりました……」


おっ!


話がまとまったかな?


「姫様に何かすれば、ただでは済まさないぞ! 人間!」


ルネさんに凄まれる。


けど、怖くないんだって……。


俺つおいもん!


「ルネ!」


俺を睨みつけていたルネさんを、メアリーナちゃんが注意する。


それでルネさんは大人しくなった。


気持ちいい!


怒られると言えば俺、俺と言えば怒られるだったから……。


人が怒られるっていいねぇぇぇ。見てて楽しい。


『性格が歪みきっとるな……』


あははははっ。


『と言うよりも、壊れとるな……』


「あの……。まずはお名前を聞いてもいいですか?」


おっと、危うく頭の中が旅立つ所だった。


「俺は、レイ。レイ:シモンズです。メアリーナ姫様」


「メアリーで結構ですよ、レイさん」


「あっ……、じゃ俺もレイでいいですよ」


「はい……。では、レイ……。貴方は、魔剣スピリットオブデスの継承者ではないですか?」


はっ?


「先ほどの魔剣の召喚に、その右腕の紋章。それは我が帝国ではなく、魔剣の継承者の証ではないですか?」


なんで知ってんだ? こいつ!


まずい!


って……事も無いのか……。


別にばれても殺されないよな。


いいんだよね?


『まぁ、初代魔王は継承者じゃ。知っとっても不思議ではない。それに、ここでは法に触れもしとらん』


「最近村々が強力なモンスターに襲われ、謎の人物が退治していると聞いています。そして、同じ場所に人間の泥棒が出没したという報告も……」


「はぁ……、前者は俺です……」


『後者もじゃろうが!』


俺、嘘は言ってない。


ただ、ちょっと黙ってるだけだ。


『この詐欺師め!』


「そうですか……。国民を守って頂きありがとうございます。やはり、それは聖なる魔剣なのですね?」


「はぁ……」


「私に……私達に力を貸して下さい!」


なに?


「いや……あの……」


「今、我が国は父の死により内乱状態にあります……」


「姫様!」


「いいのです、ルネ。私は魔剣を……自分の祖先を信じます。何卒我らにお力添えを!」


おおぅ……。


美人に土下座したことは数限りないが、されたのは初めてじゃないか?


なんか興奮するな……。


『この変態め……』


「姫様……」


ルネさんが涙目になってる。


仕方ない。真面目に聞くか……。


「お受けする方向で考えますから、取り敢えず訳を聞かせてくれませんか?」


魔王バーゴの死は、今から半年前。


三百歳の若さで死んだそうだ。


今まで魔王の子供は男ばかりだったらしいが、今回は女であるメアリーだけ……。


その為、五将軍で一番実力がある人狼のゴルバは、自分が魔王になり、人間を滅ぼすと言い始めたらしい。


そこから帝国の内乱が始まったそうだ。


メアリーとリリス、ミネアが今まで通り人間とは戦うが、積極的には滅ぼさない穏健派。


ゴルバと俺のまだ会ったことのない五将軍の一人が、人間を滅ぼそうとする過激派。


今この二つの勢力が帝国内で争い続けているらしい。


ルネさんが喋るのを躊躇した理由が分かった。


人間には漏らしたくない情報だよな。


しかし、何だかまた別な面倒事に巻き込まれそうな予感……。


どうするかなぁ……。


「あのレイは、何故帝国に?」


なんて言うかな……。


嘘はつかないほうがいいよな……。


『まず、最初に嘘をつこうとする性格をどうにかせい』


はいはい。メアリーは、国の秘密まで喋ってくれたし……。


「俺はアルティアにいたんだけど、復活した魔人と戦おうと魔剣を使って……」


俺はアルティアを出てからの事を、超ざっくりと話した。


それを聞いたルネさんにも頭を下げられてしまい、依頼を受けた。


あはは……。


美人二人からの依頼……。


そりゃあ……。


断れませんよ!


だって二人とも美人なんだもん!


『どんな理由だ! この煩悩の塊め!』


ああ、うっさいジジィ。


今俺は幸せな気分なんだ!


邪魔すんな……。


そんな俺に彼女達が差し出したのは、〈常闇のリング〉と言う魔法具。


本来は他の種族に、バンパイアの能力を与える帝国の宝物らしいが……。


「髪は緑ですね……」


「この腕輪って……」


「一時的に完全なバンパイアになる……筈なんだけど……」


俺はリングをつけても、髪の色だけしか変化がない。


牙も生えなきゃ、爪も伸びない。


辺りは真っ暗なまんまだ。


『お前の体にはわしの魔力が流れておるじゃろうが……』


あっ! そういう事ね。


帝国の宝物より魔力強いって……。


ジジィ! すげぇじゃん!


『お前はあれじゃな……。わしを舐めとるよな?』


まぁ、パッと見はバンパイアだから帝国内で生きていけるかな。


『ほぅ、無視ときたか……』


「あの、レイ殿?」


「あっ、ごめん。魔剣のせいらしいんだよ。ただ、これでもバンパイアには見えるよね?」


「はい! では……」


「なにが出来るか分かんないけど……」


「ありがとうございます!」


メアリーちゃん! 笑顔可愛い!


可愛いすぎる!


俺……魔王になる!


メアリーちゃんはおれのもんだっ!


『勝手にせい……』


勝手にするさ!


とっ……。


お客さんか?


『また、ダークエルフの魔力もあるようじゃな……』


ああ……。


「……姫様……、本当によろしいのですか? 魔剣の継承者ですが、相手は人間ですよ?」


ルネさん、聞こえてる。


悪口は聞こえないように言ったほういいな。


てか、俺の周りはこんなのしかいないのかよ。


ん? 待てよ……。


アルティアとルナリスのお姫様って……。


『笑えるほど嫌われたのぉ……』


えっ?


もしかしてまたメアリーちゃんにもしこたま嫌われるとか?


『さあな、それよりも来るぞ!』


へいへい……。


でも、やる気しないな……。


なんか萎えた……。


『お前は……』


音もなく忍び寄ってくる魔力には、覚えがある。前のよりちょっと強いみたいだけど……。


またケルベロスか?


最近何匹も倒したから、あきたな……。


『どれだけやる気をなくしとんじゃ……』


あれ?


なんか違くね?


てかでかくね?


『なんじゃ! こいつは?』


知るか!


でっかい鱗の鎧つけた、ケルベロスが俺達の前に姿を見せる。


何メートルあるんだよ! こいつ!


俺が驚いて動きを止めてしまっている間に、ルネさんが動き出した。


内戦のおかげかもしれないけど、ルネさんは相当場馴れしているんだろう。


「はあ!」


うおおっ! ルネさんなんて魔力!


これなら……。


おっとっと……。


ルネさんが両手から放った魔法球はケルベロスにあたったが、消し飛んでしまう。


『あの鎧か……』


だろうな……。


不自然に魔法の核が消えた。


魔剣で斬れるか?


『分からんな……』


これは、マジでいくしかないよな。


『うむ……』


俺は足に溜めた力を解放して距離を消し、ケルベロスもどきの前足を斬りつけた。


「ふっ!」


その斬撃は、硬さと柔軟さを持っているらしい鱗に、力を吸収されてしまう。


くそ! 駄目か!


俺は距離を取る際に角度を変えて、ケルベロスもどきを斬りつけてみたが効果がない。


鱗に多少傷はついたが、いつもの切れ味がでない。


『魔力を無効化……。いや、魔力の力を軽減しているようじゃな』


このデカ物……速度も侮れない。


どうする?


まぁ、方法はあるか……。


「ふんっ!」


〈ホークスラッシュ〉


魔力が無くても、この技は衝撃波だ。


衝撃波は、ケルベロスを傷付ける事に成功したが……。


『鎧の硬さのせいで、効果が薄いのぉ……』


多少の切り傷じゃあ、殺せないよなぁぁ。


なら!


〈カノン〉


「ギャウン! グルル……」


よし!


鱗の鎧ごと押し込むような形で、ケルベロスに打撃のダメージを与えられた。


この衝撃砲なら、十分な効果がある!


衝撃でボコボコにぶん殴ってやる!


「ガアアッ!」


って! くそっ!


〈カノン〉乱れ打ち!


俺は衝撃砲で、ケルベロスもどきを滅多打ちにした。


しかし、相手の動きに変化がない。


「ガフッ……グルオォォ!」


だから! 何でだよ!?


衝撃砲でテメーをたこ殴りにしたのは、俺だってば!


『確実にメアリーを狙っとるな……』


こっちこいや!


つか、メアリーもルネさんも逃げろよ!


くそっ!


〈カノン〉は腕に負担がかかるから、あんまり連射出来ないのに!


『敵が向かって来てくれなければ、威力が最大値にならんな。あちらばかりに向かわれては……』


〈カノ……〉


なっ!


このケルベロスもどきは、今まで全速力では動いていなかったらしい。


今までの比ではないほどの速度で、メアリーにケルベロスもどきが向かっていく。


二人とも反応はしているが、速度的に射程外に逃げるのはもう無理だ。


ええいっ!


「ひっ……」


そおいっ!


****


へぇ……。


ケルベロスって首三つなのに、食道は一本になってるんだな。


『まあ、体は一つじゃからな』


そんで……。


熱いってか、痛いねぇ……。


いだだだだだだだ!


溶ける! 溶ける!


はいはい……。


メアリーにタックルをかました俺は、十メートルほどの化け物に丸呑みされました。


噛み砕かれないように、自分から喉の奥に飛び込んだら……。


今、胃酸に溶かされかけてます。


やっべ! これ死ぬ!


てか、熱っつ! いったい!


どうすんだよ! 俺!


『はぁ。胃には鎧がないぞ……』


それ! それだ!


いちちっ!


****


「そ……んな……」


「姫様! ここは私が食い止めます! お逃げください!」


「でも! ルネまで……」


「お願いで……す?」


身構えたメアリー達の前で、ケルベロスもどきは急に全身から力が抜け、頭から地面へと落ちていった。


「これは……」


二人の前にいた十メートルの化け物は、倒れ込むとそのまま塵に変わって行く。


勿論俺が腹の中から、化け物を乱切りにしたんだけど……。


「レイ殿!」


「レイ……よか……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ここでお伝えたい事は二つ。


魔剣は溶けた皮膚は回復出来ても、服は無理です。


バンパイアは、夜でも目が普通に見えます。


猫みたいに、虹彩が動いているようです。


まあ、つまりは、二人の目の前には真っ裸で剣を持った俺……な、わけですよ。


次は露出狂として嫌われるって、オチですかぁ……。


はいはい。


わかりますよぉ。


お前が俺のこと大嫌いで、変態として祭り上げたいって事がなぁ!


殺す! 殺しきるぞ!


神様! この野郎!


もぉ~……。


やってらんね~……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ